体長1m前後になる。背鰭棘は12・軟条は9-11。大きくなるにしたがい前頭部が張り出してくる。幼魚は体側に色合いの薄い縦縞がある。[体長80cmの成魚]
コブダイの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)
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珍魚度・珍しさ
★★★
がんばって探せば手に入る魚貝の物知り度
★★★
知っていたら通人級食べ物としての重要度
★★
地域的、嗜好品的なもの味の評価度
★★★★★
究極の美味
分類
顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系ベラ亜目ベラ科コブダイ属外国名
学名
Semicossyphus reticulatus (Valenciennes, 1839)漢字・学名由来
漢字 瘤鯛 Kobudai
由来・語源 東京、関西、瀬戸内海、山陰などでの呼び名。大きくなるにしたがい頭部目の上の部分がふくれて瘤(こぶ)のようになるため。
〈SEMICOSSYPHUS reticulatus C.&V こぶだひ 東京市場 sp. こぶだひ 東京市場〉『帝国博物館天産部魚類標本目録.帝国博物館』(石川千代松・松浦歓一郎 1897/明治30年)
〈咽顎族ベラ科コブダヒ屬 コブダヒ〉『日本産魚類検索』(岡田彌一郎、松原喜代松 三省堂 初版1938)
〈カンダイ 寒鯛〉『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年) 田中茂穂は標準和名をカンダイとして、寒鯛という漢字をあてている。
カンダイは東京、神奈川県江ノ島での呼び名である。榮川省造は〈昔は、雌だけを《カンダイ》とよび、雄は、《コブダイ》とよんで両者は別種のものとみていた。……カンダイと稲地ベラ科の魚に、イラ(和名)があり、カンダイとよく混称されるが、そのイラの語源は、関西方面の《イライラ》「咬みつく癇癪な魚」の意味からでているといわれる。カンダイの語源も、これと同類で「咬む鯛」の意なのかもしれない。多くの辞典には、「寒鯛」としているが、それでは呼び名の意味を表さない。〉。また「癇鯛」でもあるとしている。『新釈魚名考』(榮川省造 青銅企画出版)地方名・市場名
生息域
海水魚。
北海道〜九州南岸の太平洋沿岸、北海道〜九州西岸の日本海・東シナ海沿岸、瀬戸内海。朝鮮半島南岸・東岸南部、済州島、鬱陵島、香港。
黒潮洗う水温の高い海域よりも日本海や瀬戸内海に多い。生態
小型のときは雌で性転換して大型になると雄になる。
産卵期は春。
雄と雌が海面近くに円を描くようにのぼり、産卵する。
エサはサザエやカキ、カニなど。硬い歯でサザエなどの殻を噛み砕いて食べている。基本情報
温帯域である北海道から九州の岩場に普通に見られる1m以上になる大型魚。あまり暖かい海域ではなく日本海や瀬戸内海での水揚げが多い。定置網、釣り漁などで揚がるが量的には少ない。
大型魚でクセのないしっかりした白身なので用途は広く、フレンチ、和、中華など素材として非常に優れている。
珍魚度 珍しい魚ではなく沿岸域に普通である。ただし漁獲量は多くなく、流通にのることも少ない。探すと意外に苦労する。水産基本情報
市場での評価 入荷量は少ないが珍しいものではない。大型で上質な白身なので一定の需要があり、やや安値ながら安定している。小型魚の評価は低い。
漁法 釣り、定置網
産地選び方
触って張りのあるもの。体色の赤や褐色の濃いもの。退色してあせたもの、張りのないものは古い。大きい方が味がいい。味わい
栄養
ー危険性など
ー食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)
汁(ちり鍋、みそ汁、潮汁)、煮る(煮つけ、あら煮、煮凝り)、生食(刺身、焼霜造り、皮霜造り)、ソテー(ポワレ、ムニエル)コブダイのちり鍋 まずは中骨やあらと昆布でだしを取り、酒と塩で味つけする。ここで切り身や野菜を煮ながら食べる。中骨などから出た濃厚でイヤミのないだしと上質な白身を一緒に食べると際限なく箸がすすむ。野菜はなんでもよく、その季節のものを選ぶといい。クリックで閉じますコブダイのちり鍋
コブダイのみそ汁 コブダイのあらを湯通しして冷水に落とし、鱗などを取る。よく水分を切り、昆布だしで煮だしてみそを溶く。あらから出るだしは濃厚でうま味豊か、みそがそれに深みを出している。汁として楽しむのもいいが、ご飯のおかずとして優れている。クリックで閉じますコブダイのみそ汁
コブダイの潮汁 コブダイのあらや中骨は湯通しして、冷水に落として鱗や滑りを落とす。よく水分を切り、昆布だしで煮だして酒、塩で味つけする。好みでしょうがの搾り汁を落とし込んでもいい。青みなどはお好みで。クリックで閉じますコブダイの潮汁
コブダイの煮つけ コブダイの切り身を湯通し、冷水に落として残った鱗や滑りを取る。よく水分をきり、しょうゆ、みりん、酒、水で煮込む。酒と砂糖、しょうゆ、水でこってりと仕上げてもおいしい。仕上げ煮しょうがの搾り汁を落とす。クリックで閉じますコブダイの煮つけ
コブダイの頭のあら煮 頭部、特にこぶ下の脂身を中心にして煮つけたもの。湯通しして滑りなどをとっても煮ると汁が濁ってしまうが気にしなくてもいい。皮目、こぶ下などとろっととろけて甘味がある。冷めるそばから煮凝りになる。クリックで閉じますコブダイの頭のあら煮
コブダイの煮凝り あらにを冷蔵庫で寝かせると見事な煮凝りができる。個人的にはこれに練り辛子をつけながら酒の肴にするのがすき。ただし翌朝の炊きたてのご飯に乗せた方がもっと魅力的かも知れない。どちらにしても魅力的すぎる。クリックで閉じますコブダイの煮凝り
コブダイの刺身 師走に揚がった大振りの刺身。血合いの色といい、透明感のある身といい見た目にも百点満点。口に入れると途端に甘味がきて、やんわりと魚らしいうま味が口中に広がる。イヤミがないのでいくらでも食べられそうである。クリックで閉じますコブダイの刺身
コブダイの皮霜造り 三枚に下ろして、皮目にゆをかけて氷水に落として水分をよく切る。これを冷蔵庫などで少し寝かせて、完全に冷めてから切りつける。身の甘味に皮の食感と皮下の脂の甘さが楽しめる。少し皮が硬いのが難点だとは思うが、補って余りある味わいである。クリックで閉じますコブダイの皮霜造り
コブダイの焼霜造り 三枚に下ろして皮目をバーナーなどであぶる。氷水に落としてあら熱をとり、冷蔵庫などで少し寝かせる。完全に冷めてから切りつける。やや硬い皮をあぶることで軟らかくして、この皮目のうま味を楽しむ。ポン酢、柑橘類と塩などで食べる。みょうが、青じそ、ねぎなどを合わせても一興。クリックで閉じますコブダイの焼霜造り
コブダイの、こぶのムニエル こぶの部分は脂の多いやや繊維質の塊である。意外に室温などでは溶けない。これに塩コショウを振り、小麦粉をまぶしてじっくり時間をかけてソテーする。表面はかりっとして中はスープの入り混じったババロアのような状態になる。うま味濃厚でいながらイヤミのない味だ。クリックで閉じますこぶのムニエル
コブダイのポワレ あっさりした油(グレープシードオイルや太白ゴマ油)で塩コショウしてじっくり火を通す。大型は意外にバターよりも、淡泊な油の方がよいと思われる。ソテーしたあとデグラッセ(こびりついた身やエキスをワイン、フュメ ド ポワソンなどにこそげながら溶かし込む)して酸味を加えてソースにする。クリックで閉じますコブダイのポワレ
コブダイの酒蒸し 器に少しもどした昆布を敷く、そこに切り身を乗せて強火で10〜15分、加減を見ながら蒸す。蒸すことでふんわりふくらんだ身は適度に繊維質なので一片一片が剥がれ、これが実にうま味豊かでいい。皮はぷるんとゼラチン質で、これもとてもうまい。ポン酢、しょうがしょうゆなどお好みで。クリックで閉じますコブダイの酒蒸し
好んで食べる地域・名物料理
ー加工品・名産品
ー釣り情報
ー歴史・ことわざ・雑学など
古くは大型魚と小型魚は別種と考えられていた? 紀州魚譜に「カンダイ、体長12尺」、「コブダイ、体長23尺」とある。いずれもありえない大きさ。参考文献・協力
協力/岡部太郎さん(山形県漁業協同組合)
『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年)、『日本産魚類検索 全種の同定 第二版』(中坊徹次編 東海大学出版会)