27cm SL前後になる。全体に赤く、尾鰭は截形もしくは微かに湾入するがわかりにくい。側線の上下に褐色帯状に見える斑紋がまったくないものと、あるものがある。[長崎県産。全体に赤く側線の上と真下に褐色の斑紋がある東シナ海など]
ユメカサゴの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)
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珍魚度・珍しさ
★★
少し努力すれば手に入る魚貝の物知り度
★★★★
知っていたら達人級食べ物としての重要度
★★★
一般的(流通量は普通)味の評価度
★★★★
非常に美味
分類
顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系カサゴ目カサゴ亜目メバル科ユメカサゴ属外国名
学名
Helicolenus hilgendorfii (Döderlein, 1884)漢字・学名由来
漢字 夢笠子 Standard Japanese name / Yumekasago
由来・語源 田中茂穂の命名したもの。由来などはまったく不明。
小種名の「hilgendorfi」はドイツの動物学者ヒルゲンドルフに献名された。国内での博物学の幕開けに寄与した、デーデルラインとヒルゲンドルフの繋がりがうかがえて、とても興味深い。
〈カサゴ科ユメカサゴ屬ユメカサゴ Helicolenus dactylopterus (DE LA ROCHE)〉。Helicolenus dactylopterus (Delaroche, 1809) はミナミアフリカユメカサゴの学名。『日本産魚類検索』(岡田彌一郎、松原喜代松 三省堂 初版1938)
Helicolenus hilgendorfi (Steindachner and Döderlein, 1884)→Helicolenus hilgendorfii (Döderlein, 1884)Tanaka
田中茂穂(Shigeho Tanaka 明治11-昭和49 1878-1974 高知県)。東京帝国大学にて魚類の分類を始める。日本魚類学の父。170種前後の新種を記載。献名された種も少なくない。
Hilgendorf
Franz Martin Hilgendorf(フランツ・ヒルゲンドルフ 1839-1904 ドイツ)。動物学者。お雇い外国人教師として来日。第一大学区医学校で日本で初めて博物学の講義を行う。魚類の採取を積極的に行い。魚河岸や江ノ島に通い。函館など日本各地を旅行した。
Döderlein
ルートヴィヒ・デーデルライン(Ludwig H. P. Döderlein/1839-1936)。ドイツの動物学者。1879/明治12-1881/明治14、東京大学のお雇い教師として日本滞在。神奈川県江ノ島や三崎で水産生物を採取。地方名・市場名
生息域
海水魚。水深130mから980mの砂泥地。
青森県〜[宮城県]〜薩南半島の太平洋沿岸、伊豆諸島、秋田県、山形県、[新潟県親不知沖]、富山県、若狭湾〜九州北西岸の日本海・東シナ海沿岸、東シナ海縁辺。
済州島、台湾。生態
卵胎生。基本情報
本州以南のやや深い場所に生息する赤いカサゴである。古くは長崎県など西日本が産地だったが日本海、東北などでも底曳き網でまとまってとれ始めている。
カサゴ類はすべて高級であるが、本種の釣りもの、関東では近場の相模湾産などは非常に高価だ。
味は抜群によく、鍋ものや焼きものなど本種を使うことで高級感が出る。
珍魚度 珍魚ではなく比較的一般的な食用魚。日本海西部や九州でまとまって揚がり、消費地にも流通している。少し探せば手に入る。水産基本情報
市場での評価 大きくなっても全長30cmほどの中形のカサゴで、生で流通するためにやや高値。
漁法 底曳き網、釣り
産地 兵庫県、長崎県、福岡県、福島県、静岡県選び方
赤など色合いが鮮やかなもの。目が澄んでいるもので、鰓の色合いが赤いもの。味わい
旬は寒い時期〜春。
鱗は薄く細かく取りやすい。皮は厚みがあり、強い。骨はあまり硬くない。
透明感のある白身で熱を通しても硬く締まらない。栄養
ー危険性など
ー食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)
ユメカサゴの料理・レシピ・食べ方/煮る(しょうゆ煮、塩煮、アクアパッツァ)、汁(鍋、潮汁、みそ汁)、生食(皮霜造り、焼霜造り)、揚げる(唐揚げ)、ソテー(ムニエル、バター焼き)クリックで閉じます
ユメカサゴの煮つけ 大型のものは半分に切って煮る。鱗を取り小振りのものは内臓をずぼ抜きにする。湯通しして冷水に落として残った鱗やぬめりを流す。これを酒・しょうゆ・水で煮る。しょうゆと酒は何度かにわけて加減する。みりん、砂糖など甘味を加えてもいい。上質な白身で煮ると適度にしまり、しょうゆ味に適度に煮染められる。煮染めても本来の甘味はそのままで、適度に繊維質の身が口の中でほどける。非常にうまい。
ユメカサゴと大根の煮つけ(たきもの) 魚と竹の子、大根や野菜、海藻を一緒に煮る。この合理性を大切に思っていきたい。本種を水洗いして、水分をよくきり、湯通しする。冷水に落として残った鱗やぬめりを流し、酒、少量のみりん、薄口しょうゆの味つけで煮たもの。魚のうま味がしみた大根やしらたきが実に味わい深い。クリックで閉じます
ユメカサゴの湯上げ(湯煮) 日本各地で水洗いした白身の魚をゆっくり煮上げるという料理がある。まーす煮、炒り煮の対岸にある料理で穏やかに火を通すことで、うま味や脂が煮汁に出てしまうのを防ぐ効果がある。ここでは昆布だしを使った。水洗いして肝だけを残す。水分をよくきし、ぬるま湯程度の昆布だし・酒・塩でゆっくり煮る。クリックで閉じますユメカサゴのまーす煮 鱗を取り、内臓はずぼ抜きにする。水分をよくきり、やや濃い塩水で短時間、強火で水分を飛ばすように煮る。塩辛い煮汁がうまい、本体はほどよく塩味が移り、旨みとしっとりした身がまた美味。豆腐、青味野菜などを加えるとよい。クリックで閉じますユメカサゴのちり鍋 昆布だしに酒、塩で味つけした汁で煮ながら食べる「ちり鍋」。上品な白身なのでしょうゆやみそなどを使わない方がうまい。野菜はお好みで。水洗いして適当にきる。湯通しして冷水に落として残った鱗やぬめりを流す。水分をよく切り、これを野菜などお好みのものと煮ながら食べる。クリックで閉じますユメカサゴのあら汁(潮汁) 大型はあらを、小型は丸のまま使う。あら、肝、胃袋などを集めて湯通しする。冷水に落として鱗やぬめりなどを取る。これを昆布だし(水でも可)で煮出す。酒、塩で味つけする。うま味の強い汁になり、あらなどにつく身に甘みがある。クリックで閉じますユメカサゴの焼霜造り 歩留まり的に問題があるが生食にしてもいい。三枚に下ろして血合い骨を抜く。皮目をバーナーなどであぶり、氷水に落として水を拭き取る。水分をよくきり、刺身状に切ったもの。身にあぶった香ばしさ、甘みがあり心地よい食感が楽しめる。クリックで閉じますユメカサゴの霜皮造り 水洗いして三枚に下ろし、血合い骨を抜く。皮目にゆをかけて氷水に落としてよく水分を取る。上品な白身でほんのりとした甘味があるものの、どこかしらもの足りない味である。これをゼラチン質の皮が補ってくれて、あまりある。クリックで閉じますユメカサゴの塩焼き 小振りのものは鱗を取り、内臓はずぼ抜きする。肝はまた腹に戻して振り塩をする。1時間以上置きじっくりと焼き上げる。少し水分が多いのが難点ではあるが、焼くと身の甘味が強まり、またそれほど硬く締まらないのもいい。非常にうまい。クリックで閉じます好んで食べる地域・名物料理
祝い事 昔、宮城県気仙沼ではマダイがとれなかったので、お食い初めや地鎮祭、上棟式などの祝い事のときに、主に金山吉次とよばれるユメカサゴが塩焼きにして出された。神事での魚は神主さんに魚種を指定される事がほとんどなので、魚を持ち帰る持ち帰る神主さんの好みが反映されているのかも。ほかにはマタナゴ(ウミタナゴ類)、クロソイ、マツダイなどが使われた。[佐藤誠さん(濱喜/宮城県気仙沼)]関連コラム(郷土料理)
水と塩だけの、石川・福井の塩いり・浜いり
石川県、福井県で作られている「塩いり」、「浜いり」は呼び名は違うが同じ調理法だ。 「塩いり」は石川・福井両県でみられるもので、資料としても残っている。浜(漁港)・・・ 続きを開く加工品・名産品
釣り情報
伊豆半島周辺の釣りでは100〜200メートル前後でイズカサゴやアラなどと共に釣り上がる。餌はサバの切り身やイカのたんざく。胴突きしかけでも天秤でもよい。歴史・ことわざ・雑学など
ー参考文献・協力
協力/岩崎薫さん(神奈川県)
『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年)、『日本産魚類検索 全種の同定 第二版』(中坊徹次編 東海大学出版会)、『日本の海水魚』(岡村収、尼岡邦夫編・監修 山と渓谷社)