50cm SL 前後になる。紡錘形で少し側へん、大小によって形態は変わらない。細長く赤みがかる。目の色はややくすんだ黄色。背鰭は黄色みがかることはあるが他の鰭は透明か赤みを帯びる。側線有孔鱗数は70〜74。尾鰭は全体に赤褐色だが後縁がとくに赤いというわけではない。[34cm SL ・850g]
ヒメダイの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)
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珍魚度・珍しさ
★★
少し努力すれば手に入る魚貝の物知り度
★★★★
知っていたら達人級食べ物としての重要度
★★
地域的、嗜好品的なもの味の評価度
★★★★
非常に美味
分類
顎口上綱硬骨魚類条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ亜目フエダイ科ヒメダイ属外国名
学名
Pristipomoides sieboldii (Bleeker, 1857)漢字・学名由来
漢字 姫鯛 Himedai
由来・語源 「姫鯛」は神奈川県江ノ島での呼び名。標準和名は古いが、江ノ島で成魚が揚がったかどうかは不明。「姫」は小さいという意味で使われるので、幼魚でつけた和名ではないかと考えている。
学名種小名の「sieboldii」はシーボルトにちなむ。
『日本魚類圖説』(岡田彌一郎、内田惠太郎、松原喜代松 三省堂 初版1935)にフエダヒ科ヒメダヒ屬ヒメダヒ。〈東京近海では希。盬焼として美味〉。
チビキは混乱のもと
別名、チビキモドキ。
田中茂穂はチビキ。『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年)
『原色日本魚類図鑑』(蒲原稔治 1955年初版 1975年)ではチビキ(ヒメダイ)。
たぶん田中茂穂がチビキを和名に選んだのではないか? ただ本来チビキはハチビキのことだ。
Chaetopterus sieboldii Bleeker, 1855はシノニム。Bleeker
Pieter Bleeker(ピーター・ブリーカー 1819-1878 オランダ)。医師、魚類学者。『東インドオランダ領の魚類図鑑』(Atlas Ichtyologique des Indes Orientales Netherlandaises 1862-1878)。軍医としてバタビア(現インドネシアジャカルタ)に赴任。インド洋、西太平洋の魚を採取。
von.Siebold
フィリップ・フランツ・バルタザール・フォン・シーボルト(Philipp Franz Balthasar von Siebold ドイツ生まれ。1796〜1866年)。医師、博物学者。1824〜1828年まで長崎市出島に滞在。江戸参府も経験。鳴滝塾を開き、日本の医学に貢献するとともに、膨大な動植物を採取し、持ち帰る。地方名・市場名
生息域
海水魚。水深100以深。
熊本県天草、伊豆諸島、小笠原諸島、北硫黄島、硫黄島、神奈川県三崎、相模湾(成魚も珍しくはなくなっているが、冬に湾北部で小型が上がるようになってきている)、駿河湾、三重県熊野市、和歌山県南紀、土佐湾、[大分県佐伯]、宮崎県、鹿児島県大隅海峡、奄美大島以南の琉球列島、南大東島。
朝鮮半島南岸、台湾、東沙諸島、インドー太平洋域。生態
産卵期は晩春から夏。基本情報
相模湾・九州以南の沖合いの深場に生息している。最近では相模湾でも増えているようであるが、もともとは東京都諸島部、鹿児島県、沖縄県で水揚げされていた魚で、いまでもこの地域での水揚げがいちばん多い。また本来は春から夏にかけてとれる魚であったが、近年年間を通して大小はあるものの流通している。幼魚以外は高級魚である。
東京では小笠原諸島返還(1968)後1980年代に小笠原丸による定期便が出来たために比較的当たり前の魚になる。東京都内だけではなく関東周辺で高級白身魚で、「おごだい」としての認知度が高い。
珍魚度 珍魚ではなく普通の食用魚である。高級魚で、手に入れやすさ、手に入れにくさの難易度に地域差がある。東京都や関東周辺では比較的手に入れやすい。水産基本情報
市場での評価 東京では伊豆諸島や小笠原から安定して入荷がある。値段は高い。
漁法 釣り
産地 鹿児島県、東京都、高知県、沖縄県選び方
目に透明感があり、触って硬いもので鰓が鮮紅色のもの。味わい
旬は春から夏。年間を通じてあまり味が落ちない。小さくでも味のいい魚である。
鱗は小さくて取りやすい。皮はやや硬くて強い。骨は硬い。
透明感のある白身で血合いは薄くて弱い。熱を通しても縮まない。
ヒメダイの料理の方向性非常に上質の白身で夏を通しても硬く締まらない。淡い味わいだが刺身にして甘味が感じられておいしい。皮はやや硬いが皮を生かしてもいい。皮に厚みがあり硬い。塩焼きにもソテーしてもいい。頭部などからうま味豊かなだしが出るので汁にしてもいい。またあら煮も美味。身の部分はしょうゆ味の煮物もいいが、あっさりと塩主体の味つけのほうがよい。栄養
ー危険性など
ー食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)
ヒメダイの料理・レシピ・食べ方/生食(刺身、皮霜造り、焼霜造り、セビチェ、カルパッチョ)、ソテー(ポワレ、ムニエル)、煮る(煮つけ)、汁(みそ汁、潮汁)、揚げる(フライ)、焼く(塩焼き)クリックで閉じますオゴダイの刺身
ヒメダイの刺身 血合いが弱く、脂がのっていると白濁する。刺身に引いてとても美しい。鮮度がいいと食感が強いが、比較的すぐに柔らかくなる。この軟らかさが甘味を際立たせる。この上品な味わいをそのまま楽しむのがいちばんいいかも知れない。
ヒメダイの焼き切り(焼霜造り、あぶり) 水洗いして三枚に下ろし、腹骨と血合い骨をぬく。皮目をあぶり(バーナーでも直火でも)、冷水に落として粗熱を取る。水分をよくきり、刺身状に切る。皮目にあぶった香ばしさが加わり、また独特の食感が楽しめる。身の端正な味わいもいい。クリックで閉じます
小ヒメダイの焼霜造り(あぶり) 本種の特徴は小さくてもおいしいことだ。皮は小さくても硬いことだけが問題である。皮霜造にすると皮が気になるので、皮目をあぶって氷水に落として刺身状に切る。皮が厚い分、その周辺のうま味も豊かである。身に甘味がありとても味わい深い。クリックで閉じますヒメダイの皮霜造り 皮は厚みがあって強い。皮目に湯を当てて、冷水に落として水分をよく切る。これを刺身状に切る。これが基本だが皮が硬いと感じるかも知れない。ただし皮目のうま味と脂は魅力的だと思う。また焼霜造りにすると少しだけ、焼いた香りがじゃまをする気がする。クリックで閉じますオゴダイの皮霜造り
ヒメダイのポワレ 上身にすると長方形に近いので、切り身にしても無駄が出ない。その上、皮に厚みがあり強いのでポワレに非常に適している。実際にフレンチなどでの需要がある。三枚に下ろして血合い骨を抜く。塩コショウして多めのオイルのなかでじっくりと香ばしくソテー。切り身を取り出して白ワインとバターでデグラッセする。クリックで閉じますオゴダイのポワレ
ヒメダイの酒塩煮 水洗いして二枚に下ろして、骨つきの方を湯通しし冷水に取り残った鱗やぬめりを流す。水分をよく切り、酒・塩だけであっさりと煮上げたもの。強火で煮ると切り身からうま味が出て煮汁がおいしくなる。あまり煮立てないで煮ると切り身にうま味が残るが煮汁にはうま味が行かない。煮方は好みでやるといい。酒・塩は酒に合う。クリックで閉じますオゴダイの酒塩煮
ヒメダイのあら煮 刺身やソテーしたときに出たあらを、こってりとしょうゆ味で煮たもの。ヒメダイは淡泊なので濃い味つけは向かないと思うが、ご飯との相性は抜群にいい。食べ終えた後の骨湯も美味である。ここでは酒・しょうゆ・砂糖の味つけをしたが酒、みりん・しょうゆで味つけするとやや軽い味わいになる。クリックで閉じますオゴダイのあら煮
ヒメダイのみそ汁(魚汁) あらなどを集めて汁にすると、思った以上にうま味豊かな出しがでる。これを酒・塩で味つけするのもよいが、ご飯と合わせたいならみそがいい。付着した身はせせり食べ、汁をご飯にかける、なんて野性味があっていいと思う。クリックで閉じますグルクンマチの魚汁
ヒメダイの天ぷら 近年相模湾などでは、オオヒメとともに幼魚の水揚げが増えている。小さくても味がいいのが本種の特徴である。また皮にうま味があるので、皮付きで衣をつけて揚げてみた。三枚に下ろして腹骨・血合い骨を取る。軽く振り塩をしてしばらく置き、表面に出て来た水分を拭き取る。小麦粉をまぶし、衣をつけて高温で短時間揚げる。クリックで閉じますヒメダイのフライ 小笠原諸島などからの入荷が多いので、鮮度的にいっても高級魚とはならない。上品な白身魚としては比較的手に入れやすい。これを三枚に下ろして血合い骨を抜き、皮を引いて、フライにする。フエダイ科は意外に身が締まらず、フライにしても豊潤である。クリックで閉じますオゴダイのフライ
好んで食べる地域・名物料理
ー加工品・名産品
ー釣り情報
東京周辺、伊豆諸島付近ではオゴダイ、と呼ばれて、中深場釣りの対象魚として人気がある。歴史・ことわざ・雑学など
ー参考文献・協力
『日本産魚類検索 全種の同定 第三版』(中坊徹次編 東海大学出版会)、『商用魚介名ハンドブック』(日本水産物貿易協会編 成山堂)、『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂)、『魚河岸の魚』(高久久 日刊食料新聞社 1975)地方名・市場名 ?