40cm SL 前後になる。側扁(左右に平たい)し、背鰭基部は鱗に覆われる部分があり、側線上方の鱗は斜め上に向かって並ぶ。上顎鋤骨歯帯の中央部は後方に突出。体側に黒い筋があり後方中間地点で筋が楕円形に膨らむ。この筋、楕円形の斑文は大きくなるに従い明瞭ではなくなる。
ヨコスジフエダイの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)
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珍魚度・珍しさ
★★
少し努力すれば手に入る魚貝の物知り度
★★★★★
知っていたら学者級食べ物としての重要度
★★★
一般的(流通量は普通)味の評価度
★★★★
非常に美味
分類
顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目スズキ亜目フエダイ科フエダイ属外国名
学名
Lutjanus ophuysenii (Bleeker, 1860)漢字・学名由来
漢字 横筋笛鯛 Yokosujifuedai
由来・語源
標準和名は1935年以前からヨコスヂフエダヒである。体側中央にある筋は縦方向なのに「横」になったのは、動物学的には縦筋だが一般的(日本魚類学の黎明期には東京都日本橋魚河岸の名前を和名とすることが多かった)には横筋なので、魚河岸などで「ヨコスジ」、「ヨコスジフエダイ」と呼ばれていたためだと思う。古くは稚魚・幼魚で和名をつけることがあったが、本種の場合、生活環の中で(魚類学的に)横方向の筋が出ることはない。一般的に使われている呼び名からとったために縦横問題が発生したのだ。
〈フエダヒ科フエダヒ屬ヨコスヂフエダヒ Lutjanus vitta (QUOY et GAIMARD)(現タテフエダイの学名。タテフエダイと本種はとてもよく似ている)〉『日本産魚類検索』(岡田彌一郎、松原喜代松 三省堂 初版1938)
標準和名をタルミとしていたことがある。『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年)
■キンセイフエダイ(金星笛鯛)はだれの命名か不明だが、標準和名として使われていた可能性がある。『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929)Bleeker
Pieter Bleeker(ピーター・ブリーカー 1819-1878 オランダ)。医師、魚類学者。『東インドオランダ領の魚類図鑑』(Atlas Ichtyologique des Indes Orientales Netherlandaises 1862-1878)。軍医としてバタビア(現インドネシアジャカルタ)に赴任。インド洋、西太平洋の魚を採取。地方名・市場名
生息域
海水魚。浅い岩礁域。
新潟県〜[島根県隠岐西ノ島]〜九州北岸・西岸の日本海・東シナ海、[宮城県南三陸]、千葉県館山湾〜九州南岸の太平洋沿岸、[徳島県北灘/幼魚]、瀬戸内海・[山口県宇部]、[宇和島市堤防]。
朝鮮半島南岸、台湾、福建省、中国南シナ海沿岸。生態
ー基本情報
温暖化のためか北上傾向にある。本州以南の浅い海域にいる魚だ。
西日本の紀伊半島、四国、九州にやや多く、関東でも揚がるが量的には少ない。流通上見かけるのは西日本のものが多い。近年、高値で安定していて、白身の定番的なものになりつつある。またじょじょに生息域を北に広げているので、日本各地で普通に見られる魚となりつつある。
クセのない白身で、多彩な料理に使える重宝な魚である。
珍魚度 水揚げ量は少ないものの、関東などの流通上ではいたって普通である。じょじょに水揚げ量も増えている。水産基本情報
市場での評価 入荷量は少なくはない。2022年の段階で、市場では見ない日はないくらい、いたって普通の流通魚となっている。やや高値で安定している。
漁法 定置網、釣り
産地 大分県、長崎県選び方
ー味わい
旬は冬から夏。産卵後の夏が不安定である以外あまり味が変わらない気がする。
鱗は薄く取りやすい。皮は厚みがあって強い。骨はあまり硬くはない。
透明感のある白身で鮮度がいいと血合いが美しい。
嫌みのない味わいで料理法を選ばない魚といっていい。栄養
ー危険性など
ー食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)
ヨコスジフエダイの料理・レシピ・食べ方/蒸す(蒸魚)、生食(焼霜造り、刺身)、煮る(煮つけ)、揚げる(フライ、唐揚げ)、ソテー(バター焼き)、焼く(塩焼き)、汁(みそ汁)クリックで閉じます
ヨコスジフエダイの剁辣椒蒸(蒸魚) フエダイ科の多くのは中華風の蒸魚に向いている。ていねいに水洗いする。頭部などは金ブラシで徹底的に鱗を取る。水分をよくきり、皿に乗せて酒を振り、剁辣椒(ドゥラージャオ/四川省、湖南省などで作られている赤い唐辛子の塩漬。中華食材店などで買える)を乗せて蒸す。
清蒸にしてもいい。単純に蒸し上げて、タレ(醤油・紹興酒・魚醬・砂糖を合わせたもの。中国の甘い醤油でもいい)をかけて香りのある野菜を乗せて熱い油をかける。など蒸す料理煮すると絶品。
非常に美味でご飯が矢鱈にすすむ。
ヨコスジフエダイの焼霜造り(焼き切り) 水洗いして三枚に下ろす。軽く振り塩をして少し置き、皮目をあぶる。冷たいところに置き、皮を落ち着かせて刺身状に切る。皮目の香ばしさ、味わいが実にいい。皮下の脂に甘味が感じられる。身もうま味豊かだ。クリックで閉じます
ヨコスジフエダイの刺身 水洗いして三枚に下ろして腹骨・血合い骨を取る。皮を引き刺身にする。大型の脂ののった個体の背の部分を刺身にしたものだが、脂が実に豊かで食感もよく実に味わい深い。クリックで閉じますヨコスジフエダイの煮つけ 水洗いして湯通しし、冷水に落として鱗や血液などを洗い流す。水分をよくきり、酒を醤油・水で煮たもの。みりん、砂糖で甘味を加えてもいい。甘くした方がご飯には合うと思う。クリックで閉じますヨコスジフエダイのフライ 三枚に下ろして血合い骨・腹骨を取る。皮を引き、塩コショウする。小麦粉をまぶし、衣(卵・小麦粉・水)をからめてパン粉をつけて揚げる。タラ類のようにふわっとはならないが、さほど硬く締まらず、上品な味わいでとても美味。クリックで閉じます好んで食べる地域・名物料理
ー加工品・名産品
ー釣り情報
ー歴史・ことわざ・雑学など
ー参考文献・協力
『日本産魚類検索 全種の同定 第三版』(中坊徹次編 東海大学出版会 20130226)、『原色魚類大図鑑』(安倍宗明 北隆館)、『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年)、『新釈魚名考』(榮川省造 青銅企画出版)、『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂)地方名・市場名 ?
タルミ
場所相模湾沿岸、和歌山県、徳島県鳴門市・宍喰 備考本種は古い図鑑には「タルミ」と書かれていることがあり、実際に相模湾沿岸ではそう呼ばれる。この「たるみ」とはどう言う意味かと『新釈魚名考』(栄川省作 青銅企画書房)を見ると〈「たる」はイボやお灸のあと、「み」は魚名語尾〉であると書かれている。 参考聞取