体長80cm以上になる。鱗はヒメダイと比べると大きく、体側は赤みがかったベージュ。尾鰭の後縁は赤く、目はしずんだ黄色。頭部背側に暗色の細かい斑紋がある。[35cm SL・929g]
オオヒメの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)
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珍魚度・珍しさ
★★
少し努力すれば手に入る魚貝の物知り度
★★★★
知っていたら達人級食べ物としての重要度
★★★
一般的(流通量は普通)味の評価度
★★★★
非常に美味
分類
顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目スズキ亜目フエダイ科ヒメダイ属外国名
学名
Pristipomoides filamentosus (Valenciennes, 1830)漢字・学名由来
漢字 大姫 Oohime
由来・語源 ヒメダイに似て大型になるという意味合い。別名、クロマツ。標準和名オオヒメは学名などの混乱期につけられたものだろう。本来、特徴+属名なら、オオヒメダイにすべきだ。
ヒメダイの語源などは不明。Pristipomoides filamentosus (Valenciennes, 1830)は、『魚類の形態と検索』(松原喜代松 岩崎書店 1955)ではヒメダイの学名とされていた。
田中茂穂が Pristipomoides oculatus としてカネコフエダイをチビキモドキと改名するとしている図版は本種である可能性が強い。『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年)
標準和名は書籍では『魚類大図鑑 南日本の沿岸魚』(益田一、荒賀忠一、吉野哲夫 東海大学出版会 1975)で初出。Valenciennes
アシル・バランシエンヌ(Achille Valencienne 1794-1865)はフランスの動物学者。ジョルジュ・キュビエとともに『魚類の自然誌』を刊行。国内で水揚げされる多くの魚を記載。地方名・市場名
生息域
海水魚。100mよりも深場。
伊豆諸島、小笠原諸島、和歌山県周参見、高知県柏島、種子島、琉球列島、南大東。神奈川県三崎では幼魚。
台湾、東沙諸島、西沙諸島、南沙諸島、インド-太平洋。生態
小魚やイカ、ヒカリボヤなどを餌としている。
産卵期は沖縄では4月〜8月。基本情報
伊豆諸島以南のやや深場にいる10kg近くなる大形魚で、沖縄、鹿児島、伊豆諸島、小笠原などが産地。ヒメダイに似ているので、混同されがちだが、近年増えているように思えてならない。関東、九州、沖縄では重要な食用魚である。
高級魚で、主に料理店で利用され、小売りされることはほとんどなかった。関東、沖縄、九州では古くからプロ(水産業者)の間では馴染みの深い白身魚である。
刺身や塩焼き、煮つけ、吸い物の種など用途が広い。
珍魚度 珍しい魚ではない。熱帯域に多い魚だが、本州などでもじょじょに増えている。探せば手に入る。水産基本情報
市場での評価 入荷量はあまり多くはない。関東では白身の高級魚で一定の評価があり、値はやや高値安定。
漁法 釣り。
産地 沖縄県、東京都、鹿児島県選び方
触って張りのあるもの。鰓が鮮紅色であるもの。古くなると白っぽく退色する。味わい
旬は春〜夏。
比較的年間を通して味がいい。
鱗は大きく硬い。皮はほどよい硬さで霜皮造りにもできる。骨はあまり硬くない。
白身でほどよく繊維質で身離れがいい。まったくクセがない。熱を通しても硬くならない。
料理の方向性やや高値だが歩留まりがよく、大形魚は無駄なく切り身が取れる。白身で適度に繊維質で熱を通しても硬く締まらない。刺身はもちろんだが、煮る、焼く、ソテーするなどなんにでも使える。すべて美味。フレンチでの需要も高そう。栄養
ー危険性など
ー食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)
オオヒメの料理法・レシピ・食べ方/生食(刺身、みそたたき、ポキ、たたきなます、カルパッチョ、焼霜造り)、ソテー(バター焼き、ポワレ)、焼く(塩焼き、幽庵焼き)、煮る(煮つけ)、揚げる(フライ、天ぷら)、汁(みそ汁、潮汁)クリックで閉じます
オオヒメの刺身 非常に上質の白身で血合いがきれいである。脂は皮下と身に混在するタイプで大小に関わらず刺身にしておいしい。
水洗いして三枚に下ろして皮を引く。これを刺身状に切る。
鮮度がいいと血合いが薄紅で銀皮が美しい。また数日寝かせるとうま味が増してくるのも魅力的だ。きめ細やかな身質で呈味成分から来る甘味が感じられる。脂ののった時季など、魚類中トップクラスの味わいである。
オオヒメの焼霜造り やや上品で淡泊な味わい。ここでは小型を三枚に下ろす。皮目をあぶって冷水に落として粗熱をとる。皮は熱に弱いので少し冷蔵庫などで落ち着かせてから切りつける。上品な味わいの身に皮目の香ばしさ、うま味がプラスされて非常においしい。クリックで閉じますオオヒメのたたきなます 刺身などにするとどうしてもあまりの部分、切り落としが出る。それを上手に使うには、たたきなますがいい。切り落としなどを集めて細かく切り。ねぎやしょうが、季節によってはみょうがや大葉などを細かく切り合える。ひと味違うオオヒメの味が楽しめる。クリックで閉じますオオヒメのカルパッチョ 水洗いし、三枚に下ろして皮を引く。出来るだけ薄切りにしておく。皿ににんにくとこすりつけ、オリーブオイルとルッコラをしいて、オオヒメの切り身を均等に並べていく。並べ終わったら上からスプーンなどでとんとんとたたく。上からディルを散らし、ミニトマトの薄切りを並べる。仕上げに振り塩をして再度オリーブオイルをかける。クリックで閉じますオオヒメのポキ 刺身などにして余った部分とか、中落ち煮ついた身などを集めて置く。細かく切り、ごま油・醤油・ねぎと和える。これが基本形でいろいろアレンジがきく。ごま油が入っているのにあっさりした味わいで、酒にもご飯にもパンと合わせてもおいしい。クリックで閉じますオオヒメのみそたたき(なめろう) よく背の青い魚で作るが、白身でもときに軟体類で作ってもおいしい。切り落としや中骨の身を集めて置く。細かく切り、ねぎ、にんにく、しょうが、みそと一緒に包丁でたたく。野菜はお好みのもので。魚の味はしっかりと感じられ、みそがいいまとめ役となっている。お茶漬けにしてもおいしい。クリックで閉じますオオヒメのポワレ あっさりした白身で熱を通しても硬く締まらないので、油を使ってソテーしてもうまい。ここでは切り身に塩コショウし、オリーブオイルでじっくりと皮目が香ばしくなる程度にソテー。切り身を取りだし、クールブイヨンと白ワインでデグラッセしてソースにした。クリックで閉じますオオヒメのムニエル 切り身に塩コショウして少し寝かせる。表面の水分をていねいに拭き取り、小麦粉をまぶして多めの油でじっくりとソテー。仕上げにバター(マーガリンでも)で風味づけしたもの。ソテーしても硬く締まらずふっくらと仕上がる。クリックで閉じますオオヒメの塩焼き 水洗いして二枚に下ろし、骨つきの方を切り身に塩をして1時間ほど寝かせる。これをじっくりと焼き上げる。皮目から実にいい香りが立ち上がる。身はしっとりとしてふくらみ、甘味が強い。クリックで閉じますクロマツの塩焼き
オオヒメの幽庵焼き 大型魚なので切り身にするといろいろ使えていい。水洗いして三枚に下ろし切り身にする。これを酒・みりん・醤油の地に1時間以上漬け込む。半日程度つけてもいい。また漬け込む前に振り塩をして出て来た水分をとってから漬け込んでもいい。塩焼きよりも料理としての完成度が高く、味に深みがある。クリックで閉じますオオヒメのの兜煮(煮つけ) ここでは兜をつかったが、あらでも切り身でもいい。兜は梨子割りにして湯通しして冷水に落として残った鱗やぬめりを流す。水分をよくきり、水・酒・醤油で煮る。砂糖、みりんを加えてもいい。皮は柔らかく身離れがいい。身にうま味成分から来る甘味が感じられる。クリックで閉じますオオヒメのフライ 身は非常に緻密でほどよく繊維質なのでフライにしてもとても味わい深い。三枚に下ろして腹骨・血合い骨を取る。切り身にして塩コショウする。今回は皮付きだが、引いてもいい。小麦粉をまぶし、溶き卵にくぐらせ、パン粉をつけて揚げる。表面の香ばしさとは対照的に中は豊潤でうまい。クリックで閉じます好んで食べる地域・名物料理
ー加工品・名産品
やや高価であり、切り身にもなる大形魚なので加工品になることはまずない。釣り情報
ー歴史・ことわざ・雑学など
ー参考文献・協力
協力/田中水産(鹿児島県鹿児島市) 舵丸水産(東京都八王子市)
マチ類(奄美、沖縄、先島諸島)の資源評価/沖縄県水産技術開発センター、沖縄水産試験場
『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年)、『日本産魚類検索 全種の同定 第二版』(中坊徹次編 東海大学出版会)