ウグイ

Scientific Name / Tribolodon hakonensis (Günther,1880)

ウグイの形態写真

体長30cm前後になる。やや側扁(左右に平たい)し、下顎は上顎よりも前に出ない。尻鰭の外縁は少し湾入する。全体が銀色で産卵期には下方頭部から腹にかけて赤い筋ができる。
ウグイの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)
体長30cm前後になる。やや側扁(左右に平たい)し、下顎は上顎よりも前に出ない。尻鰭の外縁は少し湾入する。全体が銀色で産卵期には下方頭部から腹にかけて赤い筋ができる。体長30cm前後になる。やや側扁(左右に平たい)し、下顎は上顎よりも前に出ない。尻鰭の外縁は少し湾入する。全体が銀色で産卵期には下方頭部から腹にかけて赤い筋ができる。尻鰭の外縁は少し湾入する。産卵期に追星(おいぼし)が出た個体。
    • 魚貝の物知り度

      ★★★
      知っていたら通人級
    • 食べ物としての重要度

      ★★
      地域的、嗜好品的なもの
    • 味の評価度

      ★★★
      美味

    分類

    動物門脊椎動物門顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区ニシン・骨鰾下区骨鰾上目骨鰾系コイ目コイ科ウグイ亜科ウグイ属

    外国名

    学名

    Tribolodon hakonensis (Günther,1880)

    漢字・学名由来

    漢字 石斑魚、鵜食
    由来 東京。琵琶湖での呼び名。鵜がとらえて食べる魚。
    うぐひ 〈漢名しれず、江湖に生す、状こひに似て……〉。魚鑑
    Günther,
    Albert Karl Ludwig Gotthilf Günther (アルベルト・ギュンター 1830-1914 ドイツ→イギリス)。動物学者。

    地方名・市場名

    生息域

    淡水魚。海に下るタイプもいる。湖沼、河川の上流域から感潮域。
    北海道、本州、四国、九州。

    生態

    淡水型と降海(海に下る)型がある。
    北にいくほど降海型が増える傾向がある。
    産卵期は春から夏。
    北にいくほど遅くなる。
    雑食性で昆虫、藻、腐肉など食べる。

    基本情報

    日本全国の河川に生息するやや大型になる魚で、主に秋から春にかけて漁が行われて利用されている。天然魚だけではなく、長野県では養殖されてもいる。ただし利用する地域、人は徐々に減少している。
    秋から冬にかけてとるものは主に素焼きにして干して、甘露煮などにする。
    春〜初夏の産卵期のものがいちばん人気が高い。産卵場を人工的に作り、そこに集まる成熟したものを取る長野県の「つけ場漁」、栃木県「瀬づき漁」などが行われ、観光資源ともなっている。
    釣り魚としても人気が高い。

    水産基本情報

    市場での評価 関東ではまったく流通しない。滋賀県、長野県では販売されている。安い。
    漁法 網(つけば漁、瀬つき漁)、やな、釣り
    産地 栃木県、長野県、滋賀県
    瀬つき漁 流れのある転び石のある場所にウグイは産卵する。その産卵場所を作り、そこに集まる産卵期の脂ののったウグイを投網でとる。[栃木県那賀川町]

    選び方

    原則的に生きているもの。鮮度の低下が非常に早い。

    味わい

    鮮度のいいウグイは釣り人、もしくは川魚漁の行われている地域のみのもの。
    旬は冬期から産卵期(晩春、初夏)。
    小骨が多く、少しでも鮮度が落ちると生臭くなる。
    天然のウグイを生食すると寄生虫などの危険があります。食べる場合には自己責任で

    栄養

    危険性など

    食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)

    焼く(塩焼き、魚田、干ものなども)、生食(背ごし)、揚げる(南蛮漬け、唐揚げ)、煮る(煮浸し、甘露煮)


    ウグイの南蛮漬けウグイの南蛮漬け 小振りのウグイは内臓を串などを使って取る。内臓はそのままでもいいが、少し苦みがある。水分をよく切り、片栗粉をまぶしてじっくりと二度揚げにする。これを三杯酢(酢、砂糖、しょうゆ、少量のだし)に揚げたてを漬け込む。
    ウグイの唐揚げウグイの唐揚げ 小振りのウグイは内臓と頭部を取る。よく水分をきっておく。片栗粉をまぶしてじっくりと二度揚げしたもの。さくさくと香ばしいなかにウグイの風味が感じられる。味つけは塩コショウでもカレー塩などでもいい。
    ウグイの背ごしウグイの背ごし 長野県佐久市で養殖されているものを使用。生きているものの鱗をひき、頭部と内臓、鰭を取る。これを端から出来るだけ薄く切り離したもの。生きているもので、まったく臭みがなく味わい深い。
    ウグイの焼き浸しウグイの焼き浸し 串などを使って内臓を取り、水分をよく切る。小さなものは内臓を取らなくてもいい。素焼きにしてしょうゆ、酒、みりんを煮立てて冷ましたもにに漬け込んだもの。さっぱりとして酒の肴にもってこいだ。また焼いて甘辛くじっくり煮た甘露煮もうまい。
    ウグイのみそ煮ウグイのみそ煮 小振りのウグイは串などを使って内臓を取る。内臓はそのままでもいいが、少しほろ苦い。これを素焼きにする。みそ、砂糖(好みで)、酒を合わせたもので煮る。

    好んで食べる地域・名物料理

    ざっこ蒸しざっこ蒸し
     使う「ざっこ」は「くき(ウグイ、エゾウグイも含むと思われる)、「だいとうあ(オイカワ)、アブラハヤ(あぶらべ)、モツゴ、タモロコ、「ニゴイ(みごい)」、フナ(ギンブナ)、コイ。モツゴ、オイカワ、ニゴイは移入後に使われ始めたもの。
     生きている「ざっこ」は流水で水洗いする。これを鍋に入れて塩を加える。少しかき混ぜて塩を行き渡らせる。
    フタをして火にかけて10分ほど蒸し煮にする。これを「塩蒸し」という。
    10分経ったら鍋に溜まった水分を捨てる。フタをして空だきして水分を出し、出て来た水分を捨てる。これを3回ほど繰り返す。
    平たい場所にスダレなどを敷き、塩蒸しされた「ざっこ」を広げて扇風機で水分を飛ばす。
    「ざっこ蒸し」はほどよい塩加減で思った以上に食べやすく、ほろ苦さが酒に合う。[秋田県横手市雄物川町]
    ざっこの貝焼き(ざっこのかやき) 「ざっこ」は流水で洗う。鍋に水を入れてみそしゃもじなどで入れる。このまま火をつける。このとんとみそを入れて火をつけることを「落としみそ」という。湧き上がってきたら味見。ここに生きている「ざっこ」を入れてふたをして煮る。仕上げに酒を入れる。豆腐やねぎを入れてもいい。「ざっこ」をみそで煮ただけなのにうま味のある汁になり、「ざっこ」もわたがほろ苦くておいしい。「ざっこ」は「だいとうあ(オイカワ)、「くき(ウグイ、エゾウグイも含むと思われる)、アブラハヤ(あぶらべ)、モツゴ、タモロコ、「ニゴイ(みごい)」、フナ(ギンブナ)、コイ。
    あいそ炭火焼きあいそ炭火焼き ウグイの産卵期である春に作られるもの。振り塩をした「あいそ(ウグイ)」をじっくりと炭火焼きに。山椒みそをつけて食べる。産卵期のいちばんうま味と脂ののった時季の焼きものの味は最上級。[久那瀬漁業生産組合 栃木県那須郡那珂川町]

    つけば料理 産卵に適した川底を人工的に作り、網でとる漁のこと。ここでとれたウグイを料ること自体も「つけば(つけば料理)」という。千曲川沿いの小屋(かなり大きなもの)で「赤腹(婚姻色)」の出たものの塩焼きを食べた。子(卵巣)がたっぷりつまり、脂がのったウグイのうまいこと。これに味噌をつけた魚でん、天ぷらも出たがやはり塩焼きが最高の味。[長野県上田市ほか]
    高菜とウグイの炊き合わせ、ウグイの刺身 「柿木村食生活改善推進協議会」島根県鹿足郡吉嘉町柿木村
    田楽 つけば漁で取れたばかりのウグイを焼いて田楽(みそをつけて焼き上げる)にしたもの。千曲川市
    甘露煮 素焼きにして干したものを甘辛く煮たもの。[山形県鮭川町]
    塩焼き 滋賀県長浜市。
    さなぶりに食べる 5月の産卵期にとって生かして置いた「くき」を「さなぶり(田植え後の振る舞い)」に焼いて食べる。[佐藤正彦さん 秋田県横手市雄物川町]
    いだの冷や汁 いだ(ウグイ)を素焼きにしてほぐし、すり鉢ですり、みそと合わせてまたする。これに水を加えて季節のきゅうりやみょうが、ねぎなどを加える。これが「冷や汁」といいご飯にかけて食べる。愛媛県北宇和郡松野町で昔食べられていたもの。淡水魚の生臭みはまったくなく味わい深い。夏ならではの料理。[農家民宿 わらび 愛媛県北宇和郡松野町]
    焼きあいそ 春、産卵期のあいそ(ウグイ)を炭火で焼いたもの。栃木県那須郡那珂川町

    関連コラム(郷土料理)

    記事のサムネイル写真冷や汁(焼く)・愛媛県松野町イダの冷や汁
    愛媛県松野町では町を流れる広見川の「いだ(ウグイ)」を使って「冷や汁」を作る。 素焼きにして、みそと一緒にすり鉢ですり水を加える。夏の香辛野菜である青じそ、ネギ・・・ 続きを開く
    記事のサムネイル写真冷や汁(焼く)について
    っかけ飯の一種だろう。白身魚、もしくは「いりこ(煮干し)」を生か、焼くか煎ってみそと合わせて、すり鉢でする。すった状態をすり鉢に均等にならし、表面を焼くものと・・・ 続きを開く

    加工品・名産品

    桜ウグイのひねずし(さくらうぐいのひねずし) 石川県能登半島柳田村(現鳳珠郡能登町)でつくられるなれずし。柳田村は能登半島で唯一海に面していない。
    甘露煮 素焼きにして干したものを甘辛く煮たもの。[福島県柳津町]
    あいその甘露煮あいその甘露煮 産卵期のウグイのために作った瀬(産卵に適したきれいな石の瀬)についた、「瀬つきのあいそ(ウグイ)」を投網でとり、新鮮な内に素焼き煮して甘辛く、骨まで軟らかく煮たもの。[栃木県那須郡那珂川町]
    やなぎば天日干やなぎば天日干 鱗内臓を取り、開いてやや強く干している。非常に風味がよく、うま味も充実している。非常にうまい。[西浅井漁業組合 滋賀県高島市]
    ウグイの唐揚げ唐揚げ 長野県佐久市などで作られる。揚げて甘辛いタレに漬けたもの。

    釣り情報

    徳島県美馬郡貞光町(つるぎ町)ではどぶん(ぶっ込み釣り)で狙う。麦飯、鳥の肝、豚の肝、魚のアラなどをエサにする。

    歴史・ことわざ・雑学など

    ■栃木県那須郡那珂川町では「骨を残して(塩焼きを)くうのは素人だ」という。
    ■春の産卵期に産卵しやすい場所を作り、そこに群れる産卵群を投網でとる。長野県
    ■徳島県貞光町(美馬郡つるぎ町)では夏から初秋はまずくて食べないがと前置きして「塩焼き、天ぷら、焼き干して飴炊き、だしに干して使っていた」
    うぐい最中 「うぐい乃舞最中」、「うぐい最中」など。うぐい形の最中。[小池菓子舗 福島県県柳津町]

    参考文献・協力

    協力/佐藤正彦(秋田県横手市雄物川町)、日比野友亮さん
    『日本の淡水魚』(川那部浩哉、水野信彦 編・監修 山と渓谷社)、『日本産魚類検索 全種の同定 第二版』(中坊徹次編 東海大学出版会)

    地方名・市場名

    ウグイ
    場所岐阜県中津川市田瀬・萩原、愛知県足助・海部津島(津島市と旧海部郡など) 備考標準和名 参考20201119足助理髪店、北原こうじ店、『萩原文庫6 萩原の風土と生きもの』(はぎわら文庫編集委員会 岐阜県益田郡萩原町 1984) 
    オンギャ
    場所岩手県大船渡市盛 参考寺沢菓子店 
    クキ
    場所岩手県花巻市高木・一関市千厩、秋田県横手市雄物川町(佐藤正彦) 参考聞取。佐藤正彦さん、髙橋さん(花巻市)、鈴木さん(一関市) 
    ヤナギバ
    場所滋賀県西浅井町 
    アイソ
    場所栃木県那賀川町など那珂川周辺 
    イダ[伊多]
    場所徳島県美馬郡つるぎ町貞光町貞光川、佐賀県佐賀市兵庫町、福岡県久留米市田主丸 参考物類称呼 
    イダゴイ
    場所岡山県高梁市備中町向長屋 宮本さん 
    ネコマタギ[猫またぎ]
    場所愛知県海部津島(津島市と旧海部郡など) 
    ツギザッコ カンザッコ[寒雑魚]
    場所山形県鮭川町 
    クゥケェ
    場所秋田県横手市雄物川町(佐藤正彦) 
    ハヤ
    場所長野県千曲川中流域 参考長野県民俗の会会報34 西澤一富 
    ヤナギバ
    場所滋賀県高島市西浅井町 
    アカッパ
    場所佐賀県佐賀市兵庫町 サイズ / 時期産卵期のもの 
    アカハラ[赤腹]
    場所長野県上田市など サイズ / 時期産卵期のもの 
    タチイダ
    場所徳島県美馬郡つるぎ町大田吉野川 サイズ / 時期産卵期のもの 備考産卵期に大群を作る。 
  • 主食材として「ウグイ」を使用したレシピ一覧

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