50cm SL 前後になる。口が非常に小さく口の後縁は目に到達しない。眼は右にあり両眼の間に鱗がある。有眼部(表)は一様に黒、もしくは黒褐色で、無眼部(裏)は一様に白い。[雌 39cmSL・745g]
マコガレイの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)
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珍魚度・珍しさ
★★
少し努力すれば手に入る魚貝の物知り度
★★
これは常識食べ物としての重要度
★★★★
重要味の評価度
★★★★★
究極の美味
分類
顎口上目硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系カレイ目カレイ亜科カレイ科マガレイ属外国名
学名
Pseudopleuronectes yokohamae (Günther,1877)漢字・学名由来
漢字 真子鰈 Makogarei
由来・語源 マコガレイは東京での呼び名。由来は不明だが、マコガレイは春になると産卵のために群れで浅場に移動してくる。古くはこの浅場にくる時季が漁期で、多くが真子(卵巣のことで精巣/白子と区別するための言語)を抱えていたため。
『魚鑑』(武井周作 天保辛卯 1831)には「まこがれひ」がある。
小種名/yokohamae タイプ標本の産地が Yokohama Bay(横浜湾)であるため。
〈異體亜目カレヒ科カレヒ亜科マコガレヒ屬マコガレヒ Limanada yokohamae〉。『日本産魚類検索』(岡田彌一郎、松原喜代松 三省堂 初版1938)
「かれい」「鰈」の由来・語源
■ 目はヌマガレイなど例外を除いて右側にある。
■ 「比目魚」、「偏魚」とも書く。
■ 古名は「からえひ」。これが「かれひ(カレイ)」に。[東雅 新井白石]
■ 「かれい」の由来01/古くは「かたわれ魚」といい。身の一方が黒く、一方が白い。目が一方に偏ってついている。魚の片割れのようなので。物類称呼、貝原益軒
■ 「かれい」の由来02/古名「からえい」が「かれい」になった。「えい」に似ているが、小さく「涸れている」ようだから。
■ 「かれい」の由来03/「韓えい」の約。朝鮮半島周辺でよくとれたから。
■ 「かれい」の由来04/「韓えい」の約。朝鮮半島周辺でよくとれたエイ(サカタザメ)に似ているから。Günther,
Albert Karl Ludwig Gotthilf Günther (アルベルト・ギュンター 1830-1914 ドイツ→イギリス)。動物学者。地方名・市場名
生息域
海水魚。水深100mより浅い砂泥地。
北海道西岸〜九州西岸の日本海・東シナ海沿岸、北海道南岸〜土佐湾の太平洋沿岸瀬戸内海。
朝鮮半島全沿岸、渤海〜東シナ海北部。生態
■ 産卵期は晩秋から春。北ほど遅くなる。
■ 内湾性で、浅場の砂泥地などに普通。
■ ゴカイなどを食べている。
■ 孵化してすぐは目は左右にあり、8ミリ前後で左目が背中に移動を始め、10ミリ前後で左目は右側に完全に移動をとげる。
■ 1歳で10センチ、2歳で15センチ、3歳で20センチを超える。
■大型は雌が多い。基本情報
九州北部から北海道の沿岸域で水揚げがある。カレイ類ではもっとも馴染み深い種のひとつだ。今現在、単にカレイというと関東などでは本種を指すことが多い。内湾生で関東、中部、瀬戸内海など大都市圏の近くでまとまってとれるので、消費地でもっとも馴染み深い食用魚のひとつだといった方がわかりやすいかも。
古くは冬から春にかけてまとまって揚がる子持ちの煮つけを好んだため、この抱卵期を旬としていた。それが近年、浅場でエサを盛んにとり、身が充実している晩春から初秋までの個体の刺身を好むようになった。抱卵期は比較的庶民的な魚だが、温かい時季は高級魚である。
すしネタ、料理店などで生食する場合、白身ではヒラメは冬のもの、カレイが夏のものといった感がある。
今、一般的なカレイは輸入ものが多いアサバガレイやコガネガレイに取って代わられているが、未だに人気は衰えていない。
珍魚度 晩秋から春には関東など食費地でも一般的な魚だ。温かい夏には高騰し手に入れるのが難しくなる。水産基本情報
市場での評価 年間を通して入荷がある。野締めは普通の値段で大形はやや高い。締めたものは高い。また活けは非常に高い。
漁法 底曳網、刺し網、釣り
主な産地(カレイ類として) 北海道、神奈川県、兵庫県、福島県、宮城県、茨城県選び方
身体に丸みがあって、厚みのあるもの。触って硬いもの。痩せて上から見て丸みのないものは脂が少ない。味わい
晩秋〜冬にかけて抱卵・白子持ちが揚がって安くておいしい総菜魚としての旬。
地域にもよるが5月〜9月にかけて身が盛り上がり、生食(刺身)用高級魚としての旬だ。
野締め(漁のときに死んだもの)と活け、活け締めはまったく別物と考えるべき。
鱗は細かく取りやすい、皮は薄いがしっかりしている。皮には微かに臭味が出ることもある。骨は軟らかい。透明感のある白身で熱を通しても硬く締まらない。栄養
低脂肪で消化のよい良質のタンパク質豊か。必須ミネラルのひとつセレンが豊富。肝臓障害や糖尿病の原因となる過酸化脂質を分解し、老化予防の効果が認められている。
骨粗鬆症を予防するビタミンD、肌を健康に保つ働きのあるナイアシンも豊富。危険性など
ー食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)
マコガレイの料理法・レシピ・食べ方/生食(刺身)、煮る(煮つけ、揚げ煮)、焼く(塩焼き、若狭焼き)、ソテー(ムニエル)、揚げる(唐揚げ)クリックで閉じます
マコガレイの刺身 初夏から秋にかけて脂が乗っているものは刺身に限る。最近では関東で夏の白身と言えば本種で、味ではヒラメを凌駕すると思っている。できれば活魚もしくは活け締めを選びたい。
水洗いして、五枚に下ろして皮を引き普通に刺身にしたもの。身に適度な食感があり、呈味成分からくる甘味がとても豊かである。縁側のうまさも特筆すべきものがある。
マコガレイの昆布締め 真子や白子が膨れ、身に張りのない個体に向いている。旬の時季の肉厚で作ってもいいが、やりすぎの感が拭えない。水洗いし、5枚に下ろし、水分をよくきる。皮付きのまま昆布に挟む。皮を引いて昆布で締めてもいいが、味が強く入りすぎる。2時間くらいで食べられる。昆布の風味が舌に強く感じるものの、ちゃんとマコガレイの味が生きている。昆布の塩気だけで食べるといい。クリックで閉じますマコガレイの煮つけ 水洗いして湯通し、冷水に落として残った鱗やぬめりを流す。これを酒・醤油・水で煮る。砂糖やみりんを使ってもいい。古くからマコガレイの煮物は庶民的な総菜の代表的なもの。歩留まりが良く、あますところなく食べられるので経済的でもある。甘辛くご飯に合う味にするのがコツ。クリックで閉じますマコガレイのムニエル 小型は丸のまま、大きなものは切り身にする。塩コショウする。少し寝かせて、小麦粉をまぶしてソテーする。表面がかりっとなったら、フライパンから取りだす。フライパンにバターを入れて風味づけする。ソテーするとふんわり豊潤になり、身に甘みがある。クリックで閉じます好んで食べる地域・名物料理
城下鰈 別府湾の奥北にある大分県速見郡日出町、木下家の居城・賜谷城の下でとれるマコガレイをとくに「城下鰈」という。非常に美味なカレイがとれることで名物となっている。現在でこそ有名になっている「城下鰈」の名称は江戸時代末くらいから使われたもの。関連コラム(郷土料理)
福島県相馬産「あおめがれい」の煮つけを作る
福島県相馬市では主に旧城下の中村でスーパーを回ってみた。休日にも開いているスーパーは旅人にはまことにありがたい。 【話の寄り道、旅の土産はスーパーで買うべし。同・・・ 続きを開く加工品・名産品
ー釣り情報
■ 東海、瀬戸内海周辺ではイソメなどのエサで投げ釣りが盛ん。大会まである。
■ 東京湾から北では船釣りで片天秤仕掛け、イソメエサでねらう。歴史・ことわざ・雑学など
参考文献・協力
『日本産魚類検索 全種の同定 第二版』(中坊徹次編 東海大学出版会)、『魚類学 下』(落合明、田中克 恒星社厚生閣)、『たべもの語源辞典』(清水桂一編 東京堂出版)、『新釈魚名考』(榮川省造 青銅企画出版)、『島根のさかな』(島根県水産試験場 山陰中央新報社)、『水産統計』(農林水産省)、『サライ』(雑誌1991/04/18 小学館)、『鮓・鮨・すし すしの辞典』(吉野ます雄 旭屋出版)