ムシガレイ

Scientific Name / Eopsetta grigorjewi  (Herzenstein,1890) 

代表的な呼び名ミズガレイ

ムシガレイの形態写真

雌の方が大きくSL 40cm前後に、雄はSL 30cm前後になる。有眼側(表 カレイでは右側)に無数の虫食い状の斑紋があるが、3対の斑文が目立つ。口がカレイ類では大きめ。裏返すと透明感のある白。
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雌の方が大きくSL 40cm前後に、雄はSL 30cm前後になる。有眼側(表 カレイでは右側)に無数の虫食い状の斑紋があるが、3対の斑文が目立つ。口がカレイ類では大きめ。裏返すと透明感のある白。裏側は透明感のある白。有眼側(表 カレイでは右側)に無数の虫食い状の斑紋があるが、3対の斑文が目立つ。
    • 珍魚度・珍しさ

      ★★
      少し努力すれば手に入る
    • 魚貝の物知り度

      ★★★★
      知っていたら達人級
    • 食べ物としての重要度

      ★★
      地域的、嗜好品的なもの
    • 味の評価度

      ★★★★
      非常に美味

    分類

    顎口上目硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系カレイ目カレイ亜科カレイ科ムシガレイ属

    外国名

    学名

    Eopsetta grigorjewi  (Herzenstein,1890) 

    漢字・学名由来

    漢字 虫鰈、蟲鰈 Standard Japanese name / Mushigarei
    由来・語源 ムシガレイは東京、神奈川での呼び名。表側に虫食い状の斑文があるため。
    〈異體亞目カレヒ科カレヒ亜科ムシガレヒ屬ムシガレヒ〉。『日本産魚類検索』(岡田彌一郎、松原喜代松 三省堂 初版1938)
    『日本山海名産図絵』(平瀬徹斉著・長谷川光信挿画 宝暦4/1754 名著刊行会)には「蒸鰈」というのがあるが、これはヤナギムシガレイではないかと考えている。

    虫食い状の斑紋 本種の特徴は有眼部(表)に円形に近い斑紋が無数にあることだ。この斑紋を虫に食われた木の葉に見立てたのだろう。なかでも中心部分の左右3対の斑紋が目立つ。
    herzenstein
    Solmon herzenstein(ソロモン・マルコビッチ・ヘルツェンシュタイン 1854-1894)。ロシアの動物学者。

    地方名・市場名

    生息域

    海水魚。水深200mよりも浅場の砂泥地。水深300mで釣れた個体あり。
    北海道〜長崎県の日本海・東シナ海沿岸、北海道〜土佐湾の太平洋沿岸、瀬戸内海。
    渤海、黄海、朝鮮半島沿岸、上海近海、ピーター大帝湾。

    生態

    産卵期は日本海西南部で1〜3月、日本海北部で4月〜6月、銚子付近で2月〜5月、三陸北部で6月〜6月。
    底生の甲殻類や環形動物をエサとする。

    基本情報

    北海道から長崎の日本海、銚子以北に多い。主に底曳き網などでとれ、鮮魚でも出回るが、大量に水揚げされる日本海側では、ほとんどが干ものに加工される。
    鮮魚としての流通は産地周辺が多く、東京都など消費地では黒ガレイ(クロガレイ・クロガシラガレイ)、アサバガレイなどと比べると遙かに少ない。またカレイ類のなかでも価格は安い部類に入る。
    利用法/多くが干ものに加工される。鮮魚は比較的安くて嫌みのない味のカレイだ。生食もできるが煮つけたり、ソテーしたり、焼き物にしたり、揚げたりと、くせのない味なので料理法を選ばない。
    珍魚度 平凡な食用魚だが、あまり鮮魚では出回らない魚なので、少々探さないと手に入らない。

    水産基本情報

    市場での評価 鮮魚での流通は少ない。関東の市場ではあまり見かけない。またヤナギムシガレイほど高くならない。加工品(干物)は市場では定番のものだが、やや高級品である。
    漁法 底曳き網、延縄漁
    主な産地 島根県、長崎県など

    選び方

    身のしっかり硬いもの。表側の3対のの斑文のはっきりしているもの。

    味わい

    旬は秋から春。卵巣がうまいので産卵直前の晩春もおいしい。
    また筋肉は卵巣が膨らむ前の夏〜冬が美味。筋肉自体に味がある。
    大きい方がおいしく、大型は活け締めにすると刺身にしてとても味がいい。
    鱗は薄く細かく取りやすい。皮はしっかりして強い。骨は軟らかい。
    透明感のある白身でやや水分が多く、小型はうま味は少なく、大型の方が美味。

    栄養

    危険性など

    食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)

    ムシガレイの料理・レシピ・食べ方/生食(刺身、焼霜造り)、焼く(若狭焼き、干もの、塩焼き)、揚げる(唐揚げ)、煮る(煮つけ)、ソテー(ムニエル)、揚げる(フライ、天ぷら、唐揚げ)

    ムシガレイの焼霜造り 小型のものは単に刺身にしても味がない。これは皮を生かして造りたい。五枚に下ろして水分をよく拭き取り、皮目をあぶって氷水に落とす。水分をよくきり、皮目を落ち着かせるために少し寝かせて刺身状に切る。焼いてうまい魚なので皮目の香り、味が抜群にいい。皮下に脂が感じられて、身が甘い。
    ムシガレイの刺身 体長25cmのやや大型を釣り上げて活け締めにして持ち帰ったもの。水洗いして五枚に下ろして、皮を引き刺身にする。野締めとは違い、身(筋肉)に味があり、身が緻密で非常にうま味豊かである。本種の味も扱い次第であることがわかる。

    ムシガレイの一夜干 水洗いして尾と頭部を落とす。水分をよくとり、立て塩に30分漬け込む。水分をよくきり、じっくり焼き上げる。身離れがよく、皮に独特の風味がある。身はほんのり赤味があり、うま味が豊かである。
    ムシガレイの塩焼きムシガレイの塩焼き 水洗いして水分をよくきり、振り塩をして少し寝かせる。これをじっくりと焼き上げたもの。本種にとってもっとも定番となる料理法。冬から春の子持ちは特に珍重されている。焼いて初めて皮目の風味や上質の白身が生きてくる。非常にうまい。干ものにするとより風味が増す。

    ムシガレイのフライ 水分が多いものの、クセのない味わいでほどよく繊維質の身質だ。また皮目にも臭味がない。このような魚は揚げ物に向いている。五枚に下ろし、塩コショウして小麦粉をまぶし、衣(卵・水・小麦粉)をつけてパン粉をまぶし揚げる。さくっと香ばしく身はほどよくしっとりとして柔らかい。美味。
    ムシガレイの天ぷら 五枚下ろしにして水分をよくペーパータオルなどに挟んでとる。軽く振り塩をして小麦粉をまぶし、衣をつけて高温で揚げる。無駄な水分が抜け、うま味が増す。さくっとした食感も心地よくとても味わい深い。
    ムシガレイの唐揚げ 小振りのものは丸のまま、大型のものは適当に切る。ここでは5枚下ろしにして、中骨、身を別々に上げて見た。表面はさくっと香ばしく、中は適度にしまって甘味がある。
    ムシガレイの南蛮漬け 今回は和風にしたが、エスカベッシュにしてもいい。水洗いして五枚下ろしにする。片栗粉をまぶしてさくっと揚げて、合わせ酢(米酢・砂糖・塩・昆布だしを合わせて一煮立ちさせたもの)につける。揚げた切り身に酢を加え、好みの野菜を乗せて、また揚げた切り身を乗せと重ねておき、漬け込む。
    ムシガレイの煮つけ 春に揚がった子持ちを煮つけに。水洗いして、湯通し。冷水に落として残った鱗やぬめりを流す。水分をよくきり、酒・しょうゆ・水で煮上げたもの。臭い消しはしょうがを使ったがごぼう、ねぎなどお好みで。身離れがよく身に甘みがあり、卵巣はこっくりとした甘味とうま味がある。

    ムシガレイの魚すき(煮食い、いりやき、へか焼き) すき焼き地、もしくはしょうゆ味で煮ながら食べるもので、日本各地に同様の料理がある。水洗いして、適当に切り、湯通し、冷水に落として残った鱗やぬめりを流す。これを酒・みりん・しょうゆ・水の地で煮ながら食べる。野菜などはお好みでコンニャクが合う。

    ムシガレイの揚げ煮 時季を外した魚や、本種のように普通に流通すると味のない魚に向いている。天草の出口典彦さんに教わったもの。水洗いしてていねいに水分を拭き取る。片栗粉をまぶして揚げる。これを酒・砂糖・醤油・水を沸かした中で煮汁に絡めるように煮る。こってりした味わいでご飯に合う。
    ムシガレイのムニエルムシガレイのムニエル 上品で淡泊な味わいで、やや物足りなさを感じる。その分、油を使った料理法も向いている。水洗いして水分をよくきり、小麦粉をまぶして多めの油でじっくりとソテーしたもの。バターで風味づけするとより味わい深くなる。

    好んで食べる地域・名物料理

    加工品・名産品

    干もの 本種は基本的に干ものに加工される。この多くが島根県浜田市で作られている。浜田市のカレイの干もの加工は1918年(大正7)、浜田の干もの作りの礎を築いた松森栄作が未利用のカレイを利用したことから始まる。今や浜田市では乾物加工が重要な地場産業となっている。

    水がれいの干もの 「一夜干し」は本種の定番的な加工品。やや水っぽいのが干すことで味が濃縮されて、独特の風味が生まれる。島根県、山口県、秋田県など日本海側で盛んに作られている。[島根県浜田市]

    釣り情報

    相模湾、駿河湾などでのマダイ釣りの外道のひとつ。タナが低いと釣れてしまう。

    歴史・ことわざ・雑学など

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    参考文献・協力

    協力/明石浦漁業協同組合(兵庫県明石市)、海鮮市場 マルモト(神奈川県伊勢原市)、マルコウ水産(東京都八王子市)
    『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年)、『あいちの水産物 ハンドブック100』(愛知県農林水産課)、『日本産魚類検索 全種の同定 第二版』(中坊徹次編 東海大学出版会)、『島根のさかな』(島根県水産試験場 山陰中央新報社)、『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂)

    地方名・市場名

    オオサンボウ ホウサンボウ
    場所兵庫県明石 参考文献 
    イソガレイ
    場所兵庫県香美町香住・津居山・但馬 参考文献 
    アサワ アサワガレイ
    場所富山県富山県東岩瀬・新湊・生地・魚津 備考内田恵太郎はカレイの総称としている。 参考文献 
    ベチャガレイ
    場所富山県滑川 参考文献 
    ダイバ ダイバガレイ
    場所山形県全域・鶴岡市由良漁港 参考文献など 
    マガレイ
    場所島根県大社町・浜田 備考カレイの干ものの中でも生産量の多いもので、たくさんとれて利用度が高いという意味だろう。 参考文献 
    トノサマガレイ[殿様鰈]
    場所広島県賀茂郡 参考文献 
    スキヤガレイ
    場所徳島県 参考文献 
    デビラ
    場所愛媛県川之江 参考文献 
    アサバガレイ
    場所新潟県佐渡・新潟市・寺泊 参考聞取 
    ダイバン
    場所新潟県出雲崎 
    タイナガレ キクナガレイ
    場所新潟県出雲崎 参考文献 
    タイカレイ
    場所新潟県寺泊 参考文献 
    ベタガレイ ヤマブシガレイ
    場所有明海 参考文献 
    スガレイ
    場所石川県、福井県三国 参考文献 
    ミズビラメ
    場所神奈川県小田原市 参考20190423 
    ピタピタ
    場所神奈川県江ノ島 参考文献 
    コナワガレイ
    場所福井 参考文献 
    コノハ コノバ カンナワガレイ
    場所福井県 参考文献 
    ムシガレイ
    場所福島県いわき市、茨城県、関東周辺、新潟県寺泊 参考『さかな異名抄』(内田恵太郎 朝日新聞社 1966) 
    ムシ
    場所福島県いわき市、茨城県全域・水戸、神奈川県江ノ島 参考文献 
    ムシビラメ
    場所福島県小名浜 参考文献 
    ニクブカ ニクブカ
    場所茨城県久慈浜 参考福島水試 
    サイベ
    場所青森県八戸 参考野呂恭成さん 
    サントガレイ
    場所青森県八戸市 参考野呂恭成さん 
    モンガレイ[紋鰈]
    場所兵庫県但馬地方 
    キクアサバ
    場所新潟県上越市浦本 備考新潟県上越市浦本ではカレイ類を「あさば」という。背面の斑紋を菊の花にみたてた。 
    キクカレイ キクガレイ
    場所新潟県糸魚川市、長野県松本市魚平 備考背面の斑紋を菊の花にみたてた。 
    ジンナイカレイ
    場所広島県倉橋島 
    デバ
    場所山形県鶴岡市由良漁港 
    トサンボ サンボガレイ
    場所兵庫県明石市 
    バンガレイ
    場所愛知県 
    ヒガレイ
    場所岩手県久慈市 
    ミズカレイ ミズガレイ[水がれい]
    場所北海道、宮城県仙台・石巻市石巻魚市場、福島県相馬・猪苗代町、福井県小浜市、愛知県、京都府久美浜・舞鶴市舞鶴魚市場、兵庫県但馬地方、島根県、広島県呉市 備考水分が多く鮮魚で食べても水ぽいため。 参考『石巻の四季のさかな』(石巻魚市場株式会社)、聞取 
    ミズクサガレイ[水草鰈] ミズクサ
    場所北海道岩内、青森県鰺ヶ沢町・むつ市 
    ヤマガレイ
    場所京都府久美浜 参考文献 
  • 主食材として「ムシガレイ」を使用したレシピ一覧

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