20cm SL 前後になる。メイタガレイよりも一回り小さい。両眼の間に後方に向く鈍い突起と前方に向く鈍い突起がある。有眼部(表)は薄い褐色でやや濃い褐色の斑があることがある。鱗は丸くやや不規則な配列を持ち、比較的一定の大きさの黒く丸い斑紋がある。無眼部(裏)には斑紋がない。やや大きく薄い褐色の不定形の斑紋があるものとないものがある。[薄い褐色の斑紋がない固体]
ナガレメイタガレイの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)
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珍魚度・珍しさ
★★★
がんばって探せば手に入る魚貝の物知り度
★★★★★
知っていたら学者級食べ物としての重要度
★★★★
重要味の評価度
★★★★
非常に美味
分類
顎口上目硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系カレイ目カレイ亜科カレイ科メイタガレイ属外国名
学名
Pleuronichthys japonicus Suzuki, Kawashima and Nakabo, 2009漢字・学名由来
漢字 流目痛鰈、流目板鰈 Meitagarei
由来 「流れ」の意味は不明。クリックで閉じます
目板か目痛か?
目板は目と目の間に骨質板があるため。触ると痛いから「目痛」なのか? 板状だから「目板」なのか? 和漢三才図会には「目板」、広辞苑にも「目板」とある。基本的に「目板」かも知れない。
目痛は目と目の間に棘があって、ここを持つと痛いから。〈目の近くに一本鋭いトゲがあって、うっかり手でつかむと指の先をキズつける。目にふれると痛いから「メイタ(目痛)ガレイ」と呼ぶのだろう〉『河岸の魚』(町山清 国際商業出版 1979 著者は明治38/1905年生まれ)などもあり、今も市場などでときどき「目痛」という人がいて、それもありえると考えている。なぜならば本種の標準和名も東京市日本橋魚河岸で採取されたものだからだ。要するに「魚河岸言葉」を和名としたもの。Nakabo
中坊徹次(1949年京都府生まれ)。魚類学。魚類の分類の上で多大な功績を残す。また魚類検索を一般人の手の届く形にする。魚類検索という意味合いでは松原喜代松の後継者とみてもいいかも。地方名・市場名
生息域
海水魚。水深150mよりも浅い砂泥地。
北海道余市〜[神奈川県小田原市、静岡県熱海市網代]〜九州南岸の日本海・東シナ海沿岸、北海道知内、岩手県宮古〜九州南岸の大平洋沿岸、瀬戸内海西部、東シナ海大陸棚縁辺。生態
基本情報
2009年に新種記載されたもので、長年メイタガレイは1種だとされていた。ただ関西などの水産業者は長年2種を価値的にも別種として扱っていた。これはメイタガレイの評価が関西の方が高いからだ。関西でメイタガレイは刺身などにすることが多く高級魚なので、ナガレメイタのように生食に向かないカレイが混ざり込むと困るからだ。
北海道南部以南で水揚げされるが、まだ生息域などわからないことが多いのではないかと思う。
山陰島根県浜田などの底曳き網で揚がるメイタ類では、本種の比率が圧倒的に多いとされている。
実際、大阪などでは山陰産のメイタは「バケ(バケメイタでナガレメイタのこと)」が多いという認識がある。
関西では本メイタ(メイタガレイ)と比べると断然安いため、厳密に区別している。
見分け方は本種は全体に褐色で、濃い褐色の小さな丸い斑紋(比較的大きさが同じ)が散らばるが、メイタガレイのように不定形で濃い褐色の斑模と濃度の違う不定形の斑紋などで斑模様をを作らない。またナガレメイタは皮が剥きやすい。
メイタガレイと比べると水分が多く身が脆弱であり、とても安いとされているが、底曳きで揚がるために鮮度に問題があるのかも。刺身にこだわらなければ非常に美味だ。
珍魚度 普通の食用魚だ。ただメイタガレイと区別するのが極めて難しい。問題は同定能力である。水産基本情報
市場での評価 関西では厳密にメイタガレイと区別して扱われる。関東でも水揚げされるし流通もするが、区別しないことが多い。値段は安い。
漁法 底曵網
主な産地 島根県選び方
身がしっかり硬いもの。底曵網でとるものなので、全般に鮮度は悪い。味わい
栄養
ー危険性など
ー食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)
ナガレメイタの料理法・調理法・食べ方/生食(刺身)、煮る(煮つけ)、揚げる(フライ、唐揚げ)、ソテー(ムニエル)、焼く(塩焼き)クリックで閉じます
ナガレメイタの煮つけ 皮には微かに臭みがあるが、剥きやすい。皮を剥いた状態で西日本のスーパーなどに並んでいるものは、本種である可能性が高いと思っている。基本的な料理法が煮つけだ。
水洗いして頭部を落とし水分をよくきる。湯通しし、氷水に落とすと皮が簡単にとれる。水分をよくきり、酒・みりん・醤油・水の中で煮る。
身離れがよく、身にうま味と甘味があってとても味わい深い。ご飯とのよく合う。
ナガレメイタのフライ 小型種ではあるが、水洗いして五枚に下ろす。塩コショウして小麦粉、衣(卵・小麦粉・少量の水)をからめ、パン粉をつけて短時間強火で揚げたもの。さくっとした食感の中に豊潤な身、独特の風味が好ましい。クリックで閉じますナガレメイタの唐揚げ 水洗いして皮を剥かないで唐揚げにしてみた。頭部を切り落とし、五枚に下ろし、中骨と身の水分をよく拭き取る。片栗粉をまぶして、じっくり二度揚げにする。鰭や皮が香ばしく、中骨まで食べられてとてもおいしい。クリックで閉じますクリックで閉じます
ナガレメイタの刺身 関西などでは比較的まとまって入荷してくるようだが、底曳き網でとったもの、すなわち野締めばかりだった。写真は神奈川県小田原市 小田原魚市場で見つけた活魚を活け締めにして持ち帰ったもの。
水洗いして五枚に下ろし、皮を引いて刺身にした。
透明感のある白身で血合いはほとんど感じられない。五枚に下ろして刺身にしたら、とても味がある。後味に甘味が感じられてとてもおいしい。ただし、鮮度や食感が落ちるのが早い。メイタガレイは翌日でも刺身になるが、本種は翌日は食感も消えておいしくない。
好んで食べる地域・名物料理
ー加工品・名産品
ー釣り情報
船からのカレイ釣りの対象魚。片天秤、アオイソメ、スナイソメなどのエサで釣る。歴史・ことわざ・雑学など
ー参考文献・協力
協力/株式会社 特水(大阪府大阪市) 林晋也さん(網代漁業株式会社)
『日本産魚類検索 全種の同定 第三版』(中坊徹次編 東海大学出版会 20130226)、『日本魚類学会 シノニム・学名の変更』、『日本産魚類検索 全種の同定 第二版』(中坊徹次編 東海大学出版会)