60cm SL、重さ6kgを超える。縦扁する(縦に著しく平たい)。細長い楕円形で表側は市場などではいつも粘液で汚れている。裏側は陶器のように白い。[43cm SL・0.75kg]
ババガレイの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)
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魚貝の物知り度
★★★
知っていたら通人級食べ物としての重要度
★★★
一般的(流通量は普通)味の評価度
★★★★
非常に美味
分類
顎口上目硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系カレイ目カレイ亜目カレイ科ババガレイ属外国名
学名
Microstomus achne (Jordan & Starks, 1904)漢字・学名由来
漢字 婆鰈、母鰈 Babagarei
由来・語源 田中茂穂は1950年代以前は「ババガレヒ」で北海道の呼び名としているが、青森県下北の間違いかも。青森県では「母がれい」と書いて「ばばがれい」と読ませる。
『日本魚類圖説』(岡田彌一郎、内田惠太郎、松原喜代松 三省堂 初版1935)にババガレヒ。
Jordan
David Starr Jordan〈デイビッド・スター・ジョーダン(ジョルダン) 1851-1931 アメリカ〉。魚類学者。日本の魚類学の創始者とされる田中茂穂とスナイダーとの共著『日本魚類目録』を出版。
Starks
エドウィン・チャピン・スタークス(Edwin Chapin Starks 1867-1932)。アメリカの魚類学者。スタンフォード大学、デイビッド・スター・ジョーダンのもとで魚類学を学ぶ。ジョーダンとともに国内の魚を多数記載。地方名・市場名
生息域
海水魚。水深50〜450mの砂泥地に生息。
北海道全沿岸、青森県〜対馬の日本海沿岸。青森県〜千葉県外房、相模湾、[駿河湾]、愛知県の太平洋沿岸。
朝鮮半島南岸・東岸、黄海、ピーター大帝湾(希)、サハリン、千島列島。生態
大量の粘液を出す。
北海道沖から三陸沖に移動。100mよりも浅いところで産卵する。
産卵は3月〜4月。
成長は1歳で8センチ〜9センチ、2歳で12センチ〜15センチ、3歳で20センチ、4歳で24センチ、5歳で25センチ、6歳で27センチ、7歳で34センチ。
雌の方が雄よりも大きい。基本情報
日本海、東北以北にいる大型のカレイ。北海道、太平洋側の三陸、常磐などでは漁業的に重要なカレイ。食文化では関東以北、特に三陸などでは年取りの魚でもある。
関東でも古くから人気のあるカレイのひとつだが、これには東北との繋がりの深さを感じる。主に冬から春だが、年間を通して入荷をみる。東京で「ナメタガレイ」というのも、出荷元の三陸などの呼び名が定着したのだ。
「昔は安かった」という情報もあるが、年配の方に聞き取りを行ったところ、古くから高級なもので、〝贅沢品〟だったという。(2011年)。冬から初春には高く、2月下旬から4月になると値が下がる。この値の下がった「なめた」も関東風の煮つけにするとおいしいので、それなりに需要がある。
日本海の山陰以北でも揚がるが、漁獲量が少なく、知名度が低い。
面白いことに煮つけ以外の料理はとても平凡である。現在では煮つけをあまり作らなくなったために、知名度が徐々に落ちてきている。
最近はとても高価であるために主に料理店で使われるほか、デパートや高級魚店で売られ、一般のスーパー、一般の魚店などには少ない。水産基本情報
市場での評価 関東以北では高級魚だ。大きいものほど高い。秋口から入荷が増えてきて、真子を持った大型のものは高級魚。活けでの入荷もある。関東では昔から食べられてきた魚。東日本で高く西日本で安い。
漁法 底曳網、刺し網
主な産地(カレイ類として) 北海道、宮城県、岩手県、福島県、茨城県選び方
ぬめりに透明感のあるもの。触って厚みを感じて硬いもの。生殖巣が膨らみすぎていないもの。味わい
旬は夏から冬。生殖巣が膨らんでくると身が水っぽくなる。卵巣も膨らみすぎると味がなくなる。
大量に粘液を出す。鱗は細かく取りにくい。皮はやや硬い。
白身で生きているとき、非常に鮮度のいいときは透明感があるがすぐに微かに白濁する。
火を通すと適度にしまり、適度に繊維質で咀嚼すると心地よくほぐれる。身離れがいい。生で食べてもあまりうま味を感じない。
卵巣・白子が非常にうまい。栄養
ー危険性など
ー食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)
ババガレイの料理法・レシピ・食べ方/煮る(煮つけ、汁煮)、ソテー(ムニエル、オイル焼き)、焼きもの(若狭焼き、祐庵焼、みそ漬け、塩焼き、干物)、汁(吸いもの)、生食(刺身)、揚げる(唐揚げ)クリックで閉じます
ババガレイの煮つけ(ナメタガレイの煮つけ) できるだけ大型の雌を選び、真子(卵巣)と上質の身をともに味わいたい。こってりでも淡い味つけにしても美味。しょう油との相性がよく、みそはそぐわない。煮つけると、しまり、繊維質の身が硬くも柔らかくもなく舌にのせて心地よくほどける。ほとんど嫌みがなく、上品ななかに甘みと旨みがある。卵巣の大きいものはやや弱火で、煮汁を多くして、煮上がり時間を長くとる。卵巣の味わいは最上級。
ババガレイの汁煮 兜の部分を使ったが別に何所を使ってもいい。小型なら二、三等分にして使うといい。水洗いして切り身にする。湯通しして冷水に落として表面の滑りなどを流す。水分をよくきる。水・醤油・酒・少量の砂糖を合わせた中に入れて火をつける。あくをていねいに引きながら味加減する。身は柔らかく嫌みがない。汁は旨味たっぷりでおいしい。クリックで閉じますババガレイのムニエル 皮付きでソテーした。水洗いして切り身にする。卵巣は火が通りにくいので、取り出して別に塩コショウして小麦粉をまぶす。水分をよくきり。塩コショウ、小麦粉をまぶして多めの油でじっくりとソテーする。仕上げにバター(マーガリンでも)で風味づけする。生殖巣が大きくなりすぎて水っぽくなったものなどに向いている。とても味わい深い。クリックで閉じますババガレイの若狭焼き 水洗いして切り身にする。水分をよくきり、軽く振り塩をする。1時間以上寝かせて、弱火でじっくり焼き上げる。八分通り火が通ったら強火にして若狭地(酒・醤油)を塗りながら仕上げる。生殖巣が大きくなりすぎた水っぽい固体に向いている。クリックで閉じますババガレイのオイル焼き 切身をオリーブオイル、白ワイン、にんにくでマリネする。このとき多めの粒コショウをまぶしつける。これをじっくりと焼き上げる。焼き上げながらマリネ液をかけるとおいしくなる。クリックで閉じますババガレイの塩焼き なぜか焼くと皮目の臭いが強まる。それほど不快ではないが、イヤな人はイヤだろうなと思う。ここでは塩をして焼き、最後に酒を塗りながら仕上げた。焼き上げても硬く締まらず、適度に繊維質の身のほぐれ感がいい。酒を塗りながら焦がすように焼き上げた皮もうまい。クリックで閉じますババガレイの干もの 小振りのものは安く、煮ても本種ならではのうまさは感じられない。ここでは水洗いして立て塩にして20分(振り塩をしてビニールなどで密閉。半日以上寝かせてもいい)、水分をよくきり、一夜干しにしたもの。干すことで風味がまし、とても味わい深くなる。ご飯にも合う。クリックで閉じます
ババガレイの刺身 最近、小型が活魚で入荷してくる。これを刺身にしたもの。食感はいいものの、比較的血合いが強く身自体にうま味がない。マコガレイなどと比べると味が落ちる。ただし小型なので、大きいものの評価ではない。クリックで閉じます
好んで食べる地域・名物料理
加工品・名産品
釣り情報
茨城県日立港などではソイ釣りの外道にくる。歴史・ことわざ・雑学など
日本海のババガレイ 日本海側ではあまり食べられていない。島根県などでは安い魚でしかない。島根県のインドガレイ、舞鶴のビタガレイ(鐚は壊れたり欠けたりした銭のことで、安っぽいという意味合いを持つ)というのは人気のないカレイである証拠。
竹輪 田中茂穂は〈東北地方では是を用いて竹輪を作るのである〉とある。『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年)参考文献・協力
『日本産魚類検索 全種の同定 第三版』(中坊徹次編 東海大学出版会 20130226)、『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂)、『北海道の全魚種図鑑』(尼岡邦夫、仲谷一宏、矢部衛 北海道新聞社)、『新北のさかなたち』(水島敏博、鳥澤雅他 北海道新聞社)、『さかな異名抄』(内田恵太郎 朝日文庫)地方名・市場名 ?