カワヨシノボリ

Scientific Name / Rhinogobius flumineus (Mizuno, 1960)

カワヨシノボリの形態写真

6cm前後になる。岡山県高梁川
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6cm前後になる。岡山県高梁川6cm前後になる。高知県四万十川支流5cm前後になる。徳島県勝浦郡勝浦町勝浦川
    • 魚貝の物知り度

      ★★★★★
      知っていたら学者級
    • 食べ物としての重要度

      ★★
      地域的、嗜好品的なもの
    • 味の評価度

      ★★★★
      非常に美味

    分類

    顎口上目硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目ハゼ亜目ハゼ科ヨシノボリ属

    外国名

    学名

    Rhinogobius flumineus (Mizuno, 1960)

    漢字・学名由来

    漢字 川葦登
    由来・語源 「葦登(ヨシノボリ)」は長野県での呼び名。吸盤があるので葦にも登のだろう、という意味合いか? その海にくだらないで一生を河川で暮らすため。
    かなびしゃ・じんぞく 『本草綱目』(李時珍1518-1593) 中国の本草書。日本には1607年に林羅山が入手して徳川家康に献上。この国の本草学を生み出す基本となる)にもありとある。『和漢三才図会』(寺島良安 正徳3年/1713 東洋文庫 平凡社)

    Mizuno
    水野信彦(1933-)。動物生態学、分類学(特にハゼ科)。淡水魚に関する著書が多い。

    地方名・市場名

    生息域

    淡水魚。河川の中流域〜渓流域。
    静岡県富士川・富山県神通川よりも西の本州、四国、九州北部、壱岐、福江島。

    生態

    ヨシノボリ属でも陸封型。
    川の流れのゆるやかな、浅い場所に多い。
    5月から8月に石の裏側、天井に卵を産みつけ、雄が守る。

    基本情報

    日本各地で食用とされているが現在では流通に乗ることはほぼない。また減少傾向にあり、琵琶湖などをのぞくと漁業的な対象となっていない。
    古くは山間部などでの貴重なたんぱく源だった。

    水産基本情報

    市場での評価 流通の場にはほとんど来ない。
    漁法
    主な産地 岐阜県、滋賀県

    選び方

    鮮魚としての流通は未だ見ていない。

    味わい

    旬は春から夏。
    小魚なので丸ごと食べる。
    白身で皮に独特の風味旨味を感じる。
    いいだしが出る。

    栄養

    危険性など

    食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)

    カワヨシノボリの料理法/揚げる(天ぷら、唐揚げ)、煮つる(佃煮)、汁
    ジンゾクの唐揚げ
    カワヨシノボリの唐揚げ 小型の淡水魚なので基本的には丸のまま食べる。川で取り、場合によっては一定期間清水などで食べた餌などを吐かせる。これに片栗粉をまぶしてじっくりと揚げる。香ばしさのなかに淡水魚の風味が感じられて美味。

    好んで食べる地域・名物料理

    日本各地で少ないながら唐揚げ、佃煮などになっている。
    たらいうどん
    たらいうどん 江戸時代末期に土成町(現阿波市)宮川内谷の木こり(このあたりは土成町でも山間部で香川県との県境になる)が川原にかまどを作り、手打ちうどんをゆでて、食べたことに始まる。これをゆで汁ごと「はんぼう(たらい)」に移して供するようになった。このつけ汁のだしに使われていたのが「じんぞく(カワヨシノボリ)」だ。宮川で押した(取ること)「じんぞく」はバケツなどのなかで塩もみし、ぬるを取り、沸騰した湯に入れてだし汁を取る。「たらいうどん」の名称は昭和6(1931)年より。現在「じんぞく」は使われていないに等しいが、少ないながらだしに加えている店があるようである。[樽平 徳島県阿波市宮河内]『聞き書 徳島の食事』などより

    加工品・名産品


    カワヨシノボリの煮つけうるり煮つけ 「ウルリ(カワヨシノボリ)」の味をそこなわず、あっさりとしょうが風味で煮上げたもので、上品でとてもおいしい。名品だと思う。岐阜県関市には「うるり煮つけ」を売る店が何店舗かある。[山憲商店 岐阜県関市]

    釣り情報

    歴史・ことわざ・雑学など

    鮴押し(ごりおし) 「ごり」がカジカなのか、ヨシノボリなのかは不明だが、ヨシノボリが群れをなして川を上るとき押し合いへし合いすることから来た言葉。先を争い上ることから強引にものごとを行うことにつながった。実際に1960年代くらいまでは、多くの河川で川底に敷き詰められたように思えるほどに生息数が多かった。
    ジンゾク 徳島県美馬郡つるぎ町半田下竹ではジンゾクをたくさんとり、煮て食べていた。(1933生まれ。女性 20180102)
    桑の枝で釣る 徳島県美馬市美馬町では昔、桑の枝に木綿糸をつけて3つくらいハリをつける。ミミズをつけて、川の流れに垂らして石などで固定して釣っていた。釣り上げた「じんぞく(カワヨシノボリ)」は鶏のエサにしていた。[77歳(2019年)の美馬町出身の女性に聞く。2019年07月23日]


    そろで魚をとる 四国剣山から流れてくる吉野川水系・貞光川の徳島県美馬郡つるぎ町(旧貞光町)あたりでは、1960年代くらいまでは「じんぞく(カワヨシノボリ)」が非常に多く、川の底を砂利が動いているように見えた。これを当時の子供は独特の網やそろ(えびしょうけ)で取っていた。この道具を「そろ」と呼ぶのはつるぎ町貞光の他に美馬町(現美馬市美馬)、三好市などだ。子供が魚とりに使うという点でも同じだ。当時、「そろ」にブリキのバケツ、「せんにち」と呼ぶゴム草履が子供の魚とりのいでたちだった。もっともたくさんとれたのが、「じんぞく」。「ぎぎ(アカザ)」、フナ、「小うなぎ(ニホンウナギ)」、「川どじょう(オオシマドジョウ)」、エビなどもとれた。

    参考文献・協力

    『日本産魚類検索 全種の同定 第二版』(中坊徹次編 東海大学出版会)、『日本の淡水魚』(川那部浩哉、水野信彦 編・監修 山と渓谷社)

    地方名・市場名

    イシャンコ イシャンタ
    場所兵庫県多可町八千代 参考門脇さん・廣田眞智子さん 
    トチクボ
    場所兵庫県香美町山崎 参考聞取 
    ゴト ゴトチ
    場所岐阜県下呂市萩原 参考20201224萩原若竹屋、『萩原文庫6 萩原の風土と生きもの』(はぎわら文庫編集委員会 岐阜県益田郡萩原町 1984) 
    ゴッチ
    場所岐阜県下呂市金山 参考20201224萩原若竹屋 
    ビンガ
    場所岐阜県美濃市・八百津町 備考八百津町にて聞取。 参考古田時計店/聞取 
    イサンコ
    場所愛知県豊田市足助 参考20201119足助理髪店 
    ウロリ ゴリ
    場所滋賀県琵琶湖周辺 サイズ / 時期稚魚 
    ウリンコ
    場所福岡県久留米市田主丸 
    ウルリ ウルル ウロリ
    場所岐阜県岐阜市、関市 
    ゴリ
    場所兵庫県香美町新家、高知県 サイズ / 時期成魚。 
    ジンゾク
    場所徳島県美馬郡つるぎ町貞光町・半田町 備考徳島県貞光町(現つるぎ町)では本種などヨシノボリの仲間をジンゾク、小型のものをジンペイと呼ぶ。子供が物心つき初めての川遊びで初めて捕まえる、そんな雑魚のひとつである。和漢三才図会に「かなびしゃ」と並んで「じんぞく」がある。「四国の人は『志牟曾久(じんぞく)』という」とある。 参考『和漢三才図会』 
    ジンペイ
    場所徳島県美馬郡貞光町(現つるぎ町) サイズ / 時期小型 備考徳島県貞光町(現つるぎ町)では本種などヨシノボリの仲間をジンゾク、小型のものをジンペイと呼ぶ。子供が物心つき初めての川遊びで初めて捕まえる、そんな雑魚のひとつである。和漢三才図会に「かなびしゃ」と並んで「じんぞく」がある。「四国の人は『志牟曾久(じんぞく)』という」とある。 参考『和漢三才図会』 
    チチコ
    場所岐阜県岐阜市・郡上市白鳥・大和町 参考聞取(黒岩) 
  • 主食材として「カワヨシノボリ」を使用したレシピ一覧

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