上から見たところ。体長4cm前後になる。身体には鱗(うろこ)がなく飴色(あめいろ)がかって透明であり、細長い。腹鰭(はらびれ)は左右合わさって、吸盤となっている。しばしばサケ目シラウオ科「白魚(シラウオ)」と混同される。
シロウオの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)
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魚貝の物知り度
★★★★
知っていたら達人級食べ物としての重要度
★★
地域的、嗜好品的なもの味の評価度
★★★
美味
分類
顎口上目硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目ハゼ亜目ハゼ科シロウオ属外国名
学名
Leucopsarion petersii Hilgendorf, 1880漢字・学名由来
漢字 素魚、白魚『日本山海名産図絵』(平瀬徹斉著・長谷川光信挿画 宝暦4/1754 名著刊行会)
由来・語源 白く透明(光が素通り)な魚の意味。基本的に素魚だが、『日本山海名産図絵』には〈西宮 白魚〉があって、絵図には間違いなくシロウオ漁である。Hilgendorf
Franz Martin Hilgendorf(フランツ・ヒルゲンドルフ 1839-1904 ドイツ)。動物学者。お雇い外国人教師として来日。第一大学区医学校で日本で初めて博物学の講義を行う。魚類の採取を積極的に行い。魚河岸や江ノ島に通い。函館など日本各地を旅行した。地方名・市場名
生息域
汽水・淡水→海。
北海道函館、青森県〜九州南岸の日本海・東シナ海・太平洋沿岸、瀬戸内海、有明海。
韓国東岸、東沙諸島。生態
普段はおだやかな沿岸域で群れて、甲殻類プランクトンなどを餌としている。
春(2月から5月)に河川の伏流水のある、きれいな石と砂が混じるような下流域にきて産卵する。
寿命は1歳で産卵後死亡する。雄は2週間に渡り孵化を見届けて死ぬ。基本情報
春の風物詩とされるもの。同時期にあがる「白魚」と書くシラウオとしばしば混同されている。シラウオがサケ目なのに対して本種はスズキ目ハゼ科。シラウオの頭部は尖っていてキツネ顔、シロウオの頭部は丸みがあってタヌキ顔である。体に透明感があり、外見的には成体には見えないのに生殖巣が膨らみ成熟してしまう。これをネオテニー(プロジェネシス)と言う。シロウオもシラウオもネオテニーということで共通点がある。
各地の河口域でとれ、沿岸部、河口域、河川の乱開発から非常にとれる量が少なくなっている。
原則的に生きているものが売られていて、非常に高価で産地以外では原則的に躍り食い(生きているまま食べる)になることが多い。踊り食いは口の中で動いている感触を楽しむもので、食べ方自体が非常に特殊。
よく卵とじとか、お吸い物などにもなるというが1キロあたり25000円〜50000円(100グラム当たり2500円〜5000円)もするため、とても一般的な食材とはいいがたい。水産基本情報
市場での評価 2月から夏にかけて、南から北に産地をかえながら入荷してくる。佐賀県から青森県までの各地から酸素入りの風船に入って随時入荷する。1袋単位で、走りの時期は(卸値以下同)1000円〜2000円弱、5月、6月になると600円前後まで落ちる。重さは25g〜50g前後なので値段は非常に高い。
漁法 四つ手網、ヤナ(一種の定置網)
主な産地 佐賀県、青森県、宮城県、和歌山県、徳島県、愛媛県などクリックで閉じます萩のシロウオ漁
萩のシロウオ漁01毛利氏の城下町萩市内を流れる松本川(阿武川)河口付近と姥倉運河で2月中旬から4月上旬にかけて行われている。古くは背負って歩ける大きさの四つ手網で、かがり火(後にはランプ)をたいて夜行われていた。選び方
原則的に生きているもの。生きのいいものを選ぶ。味わい
旬は春から夏
生きているものを食べても、あまり旨みがあると思えない。
むしろかき揚げ、汁にして美味。
鮮度低下が早く、鮮魚としてではなく原則的に生きているものを利用する。栄養
ー危険性など
ー食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)
シロウオの料理法・調理法・食べ方/生食(踊り)、卵とじ、汁(椀種)、揚げる(かき揚げ)クリックで閉じます素魚の踊り食い
素魚の踊り食い(シロウオの踊り食い) 生きた素魚(シロウオ)を水を張った器などに取る。これを適量掬いながら食べるもの。ポン酢や柑橘類としょうゆなどで食べる。ぴちぴち跳ねるのをポン酢とともにすすり込む。シロウオの味よりも口の中で暴れる、その躍動感を楽しむもの。
素魚と卵の汁(シロウオと卵の汁) カツオ節だし、酒、塩にシロウオを入れて一煮立ち。卵を溶き入れて作る。卵の比率が高いと卵とじになる。シロウオはあるかなきか、淡い味わいであるが、微かにほろ苦さを感じさせてくれる。クリックで閉じますシロウオと卵のすまし汁
好んで食べる地域・名物料理
加工品・名産品
ー釣り情報
ー歴史・ことわざ・雑学など
白魚 西宮「志らうを」の漁の模様が『日本山海名産図絵』(平瀬徹斉著・長谷川光信挿画 宝暦4/1754 名著刊行会)にある。篝火をたいていないことからもシロウオ漁に違いない。
躍り食い 生きたまま食べるのを名物としている地域がある。
つくし 吸い物にすると「つくし」の文字の形になるという言い伝えがある。実験の結果はその通りで、「つ」は雄、「く」、「し」は雌。雌の腹部には卵が詰まっていて、前半が丸く曲がらないから。
しろ魚祭 山口県萩では「しろ魚祭」が毎年春催される。
俳句 俳句などでは素魚(シロウオ)、白魚(シラウオの)混同甚だしい。
葵の紋 葵の紋が見えるので「源氏魚」と称し、徳川家をはばかって高貴な魚としたなどの言い伝えがある。これはシラウオではなくシロウオのことだと思われる。参考文献・協力
『さかな異名抄』(内田恵太郎 朝日文庫)、『日本産魚類検索 全種の同定 第二版』(中坊徹次編 東海大学出版会)、『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂)、『広辞苑』、『日本の淡水魚』(川那部浩哉、水野信彦 編・監修 山と渓谷社)