1m TL を超える。紡錘形で背側が黒く腹側は明るい銀灰色。頭がやや大きくとがった印象を受ける。頭部を除く身体全体に鱗がある。成魚の胸鰭が非常に長く尻鰭後方小離鰭のあるところに達する。若い個体は眼が身体に対して大きく、胸鰭が短く、成長に伴って伸びる。若い個体の腹側に斜め縦縞が出る。[成魚 90cm TL]
ビンナガマグロの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)
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珍魚度・珍しさ
★★
少し努力すれば手に入る魚貝の物知り度
★★★
知っていたら通人級食べ物としての重要度
★★★★
重要味の評価度
★★★★
非常に美味
分類
顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目サバ亜目サバ科マグロ族マグロ属外国名
学名
Thunnus alalunga (Bonnaterre, 1788)漢字・学名由来
漢字 鬢長鮪 Binnagamaguro
由来・語源 江戸時代の書籍に身あるが、田中茂穂はビンナガ(ビンナガマグロ)は東京での呼び名と述べている。明治時代の初期、分類学の黎明期に、日本橋の魚河岸で採取した呼び名からだろう胸鰭を鬢(びん)に例えて、胸鰭の長いマグロの意味。
一般的には「びんちょう」、「びんちょうまぐろ」、「とんぼ」、「とんぼまぐろ」と呼ばれることが多い。
〈びんなが といへる物はあぶらを去てかまぼこ(漢字無)となすもの也〉。『物類称呼』(越谷吾山著 安永4/1775 解説/杉本つとむ 八坂書房 1976)Bonnaterre
Abbé Pierre Joseph Bonnaterre(ピエール・ジョセフ・ボナテール 1752-1804 フランス)。博物学者。地方名・市場名
生息域
海水魚。外洋表層性。
日本近海で、日本海には希。
朝鮮半島南岸・東岸。世界中の亜熱帯、温帯域。生態
熱帯では年間を通して産卵するが、北半球の盛期は夏。基本情報
マグロとしては小型で、資源量が多い。マグロ類ではもっとも安い。
古くは缶詰などに加工されていたものだが、脂ののった時期にとったものを冷凍、これをビントロ(ビンチョウマグロのトロ)として売り出してから生食用としても認知されるようになった。特に回転寿司でビントロは定番的なネタのひとつだ。
ビンナガマグロで作られるツナ缶も非常に家庭での登場回数の多いもの。サラダに使ったり、サンドイッチになったり。コンビニのおにぎりの具としても重要。
珍魚度 一般的な食用魚だが、丸のままの状態で手に入れるのはとても難しい。水産基本情報
市場での評価 関東では冷凍ものが多く、鮮魚はあまり見かけない。鮮魚は安い。ビントロという脂ののったフィレは比較的高値で取引されている
漁法 釣り、定置網、巻き網
主な産地 宮崎県、和歌山県、三重県、高知県、静岡県、宮城県
バヌアツ共和国などからの輸入も少なくない。選び方
主に冷凍フィレで目にする。フィレとして大きいもの。分厚く盛り上がって白っぽいものがいい。味わい
旬は冬。
赤身魚のひとつ。
鱗は前方だけにあり、硬い。皮は薄く弱い。骨はあまり硬くない。
黄色みを帯びた赤身で血合いはやや大きい。熱を通すとやや硬く締まる。
赤身とは マグロ族の魚(マグロ属/クロマグロ、タイセイヨウクロマグロ、タイセイヨウマグロ[Thunnus atlanticus (Lesson, 1831) : Blackfin tuna/一般的ではない] )、ミナミマグロ、メバチマグロ、キハダマグロ、コシナガ、ビンナガマグロ ソウダ属/マルソウダ、ヒラソウダ スマ属/スマ カツオ属/カツオ) および、カジキ類のシロカジキ、マカジキ、バショウカジキのこと。これにあえて加えるならカマスサワラかも。栄養
ー危険性など
ー食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)
ビンナガマグロの料理法/生(刺身、たたき、づけ、カルパッチョ、セビチェ、マリネー)、汁(ねぎま汁、潮汁、みそ汁)、煮る(コンフィ、煮食い、魚すき、がね炊き、佃煮)、揚げる(フライ、唐揚げ)、焼く(腹も)クリックで閉じます
ビンナガマグロの刺身 ビンナガは大きいほど味がいい。またインド洋などのものは脂が少なく、本州の東沖、三陸などで揚がるものの方が脂があるようである。宮城県気仙沼産の比較的脂がある背の部分を刺身にしてみた。
三枚に下ろして背と腹に分けて、皮を引く。今回のものは70cmほどなので、マグロのように体に対して平行に切り分ける必要はない。
思った以上に脂があり、口溶け感が感じられる。マグロ属特有の酸味はほどんとなく、赤身のおいしさが堪能できる。
小ビンナガの皮付き刺身 全身鱗があるものの弱い。小型は鱗をそのままに刺身にしても気にならない。水洗いして三枚に下ろし腹骨を取り、腹と背に分ける。腹側をやや薄めに切りつける。特小と呼ばれる50cm弱なのに身に甘味とうま味があり、皮に独特の風味が感じられる。非常にうまい。クリックで閉じますビンナガマグロのやまかけ サイコロ状に切ったビンナガマグロの身を生じょうゆに数分つけ込む。余分なしょうゆをペーパータオルで取り、へらいも(岩手県大槌町のやまいも)をすってかける。やまいもの甘さと味わいとマグロの酸味がとても相性がいい。クリックで閉じますビンナガマグロのカルパッチョ あまり脂ののっていないものは薄く切り、カルパッチョにする。皿ににんにくの風味をつけてオリーブオイルを敷き薄切りを並べる。塩コショウして上から叩き、香りのある野菜、ハーブを並べ、柑橘類などを搾る。クリックで閉じますビンナガマグロの焼きづけ 4分の一の背部分を皮付きのままあぶる。これを冷たく冷やした、地(醤油・煮きりみりん・煮切り、酒に強い人ばかりなら煮切る必要はない)の地に半日から一日つけ込む。わさびよりもからしほ方が合う。クリックで閉じますビンナガマグロのポケ(ポキ) ハワイで切り身を「ポケ(poke ポキと発音することも)」という。生の切り身と野菜を合わせて味つけしたもの。材料、調味料などに厳密な定義はなく、要するに小振りに切った刺身(サイコロ状がきれい)に野菜などを合わせて、しょうゆでも塩でもなんでいいので味つけする。生魚入りのサラダのようなものでもあり、マリネのようなものでもある。クリックで閉じます
ビンナガの冊を小さく切る。これを好みの野菜(ここではミニトマト、玉ねぎ、小ネギ)と合わせて、ごま油と醤油で和えた。
ビンナガマグロのマリネサラダ 刺身になる冊を、白ワインビネガー、砂糖、塩、クールブイヨンを煮つめて地を作り、マリネする。これに適当に切り、レモン、塩で味つけしたセロリ、アボカドを合わせてコショウを振り混ぜる。味見して塩を加えるなどする。クリックで閉じますビンナガマグロの刺身、酢みそ 刺身といえばわさび醤油やしょうが醤油ではなく、本種などあっさりした魚には酢みそでもいい。沖縄などで刺身を買うと酢みそがついてくる。また辛子を加えて辛子酢みそというのもおすすめである。クリックで閉じますビンナガマグロの魚すき(へか焼き、煮ぐい) 脂ののった部分を適当に切り身にして、すき焼きの地(しょうゆ・酒・砂糖・水、すき焼きのタレでもいい)の地で煮ながら食べる。島根県大田市ではこれにコンニャクを入れる。この煮染まったコンニャクが素晴らしい味になる。クリックで閉じますビンナガマグロの煮つけ あっさりした味わいで火を通すと締まるので煮方にはコツがいる。切り身を湯通しして冷水に落とし、霜降りにし、水分をよく切る。鍋に酒・みりん・醤油(甘いのが好きなら砂糖)・水を煮立てた中で短時間煮る。中まで煮染まらないようにし、煮汁とからめながら食べる。クリックで閉じますビン長マグロのコンフィ かたまりに塩コショウ、ハーブ類をまぶして1日寝かせる。これを低温のオリーブオイルで煮て、そのまま1日寝かせたもの。漬け込んだオイルと食べてもいいし、マヨネーズで食べてもいい。白ワインに好相性。クリックで閉じますビンナガマグロのカツレツ 比較的脂ののったビンナガマグロをフライにすると実にうまいが、普通のものをフライにすると硬く締まっておいしくない。ここではバターでじっくり焼き上げる。切り身にして塩コショウして、小麦粉をつけ、溶き卵にからめパン粉をつけて、多めのバターもしくはマーガリンでソテーする。クリックで閉じますビンナガマグロの味つけ天ぷら 脂のないものを単に揚げてもおいしくない。ここでは沖縄や長崎のように、塩コショウして、味のついた衣で揚げた。切り身に塩コショウする。衣は小麦粉・少量のマヨネーズ・塩・砂糖・水をつけて揚げる。衣は厚めがいい。意外にご飯のおかずになり、冷めてもおいしい。クリックで閉じますビンナガマグロの竜田揚げ 水洗いして三枚に下ろし、背と腹を分けるとき出る、血合いの周辺を使う。血合いは適宜に切り、しょうゆ、みりん、にんにく、コショウの地につけ込む。水分をよくきり、片栗粉をまぶして揚げる。少々淡泊なので濃いめの味つけがいい。クリックで閉じますビンナガマグロのムニエル 脂の乗ったものの方がおいしいが、脂のないものでも工夫次第でおいしい。切り身に塩コショウする。小麦粉をまぶして多めの油でソテーする。仕上げにバターで風味づける。このバターの香りと風味で淡泊なビンナガマグロが別の味わいになる。クリックで閉じますビンナガマグロのねぎま汁 脂がのったものが手に入ったらクロマグロ同様に「なぎま(ねぎとマグロ)汁」、「ねぎま鍋」が作れる。しょうゆ・酒・みりん・水で割り下で、適宜に切ったビンナガマグロとネギを煮る。濃厚そうに見えるが、後口のいい汁。クリックで閉じますビンナガマグロのみそ汁 あらが手に入ったら作るといい。あらは適当に切る。湯通しして冷水に落として、水分をきり、水から煮出してみそを溶く。汁の味がもの足りなかったら化学調味料などを使ってもいい。ややあっさりした味わいで嫌みがない。クリックで閉じますビンナガマグロの幽庵焼き 脂ののったものが手に入ったら焼きものにしてもうまい。切り身にして祐庵地(酒・みりん・醤油同割り)に2時間以上つける。水分をよくきり、焦がさないようにじっくりと焼き上げる。ちょっと飽きが来やすい味わいであるが、番頭などに少し入っていると魅力的だと思う。クリックで閉じますビンナガマグロの腹も干し 大型の腹もは産地では干ものにもなり、また生でも売っていたりする。比較的脂が乗っている部分なので焼いても硬く締まることがない。腹もに振り塩をする。1時間以上寝かせて、表面に出て来た水分をきり、じっくり焼き上げる。クリックで閉じますビンナガマグロの西京焼き 脂ののったものが手に入ったら、みそと合わせて焼きものにしてもいい。振り塩をして、1時間以上寝かせて、出て来た水分を拭き取り、白みそとみりんの時につけ込む。一日以上漬けて、じっくり焦がさないように焼き上げる。少し硬く締まるがお弁当などには最適。クリックで閉じますビンナガマグロの胃袋湯引き 三陸、紀伊半島などの産地などに行くと売っているのが胃袋など内臓。これを産地では湯引きにして辛子酢味噌で食べる。意外にうま味が強く、歯ごたえもいい。部分部分での味の違いがあって楽しい。クリックで閉じます関連コラム(料理法・レシピ)
肉を食べないボクの魚のポテサラ
きどきボクの車の屋根に乗って遊ぶ(じっとゲームしているだけだけど)近所のそろそろ小学3年生に、今日のお昼はなに食べた?(大人でも子供でも、必ず食事のことを聞く・・・ 続きを開く和歌山の美トンボの素焼きポルトガル風?
和歌山のドラマー、御所豊穂さんに美トンボを送って頂く。 今流行りの少年隊とか、ボクが唯一ちゃんと見る番組の鈴木愛理のような、といったらいいだろうか、全長50cm・・・ 続きを開く好んで食べる地域・名物料理
加工品・名産品
ビントロ ビンナガマグロの「びん」とトロを合わせた呼び名。ビンナガマグロには中トロや大トロはないが、非常に脂ののった時期があり、これをフィレにして急速冷凍したものをいう。クリックで閉じますなまり節そのまま食べる 二等分、もしくは4当分した身をボイルし乾かしたもの。半生状態でこのまま食べてもいいし、煮ものなどに使ってもいいだしが出る。カツオ、ソウダガツオよりもさっぱりしている。静岡県、三重県、和歌山県などで見かける。[小石商店 静岡県焼津市]釣り情報
ー歴史・ことわざ・雑学など
■1985年前後、静岡県焼津市『焼津さかなセンター』でトンボマグロの名で立ち食い握りがあって、人気だった。
■回転ずし「ビントロ」がいつの頃からあったか不明。2009年現在非常に昔からあったとしかいいようがない。一番脂ののった時期のものを「ビントロ」という。
■『東京の味』(角田猛 白光書林 1956/p50)に「アメリカ人はこれをシーチキン(海の鶏)と呼んで、かえってこの方を愛好している」とある。参考文献・協力
協力/御所豊穂さん(和歌山県)
『日本産魚類検索 全種の同定 第二版』(中坊徹次編 東海大学出版会)、『魚類学 下』(落合明、田中克 恒星社厚生閣)、『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂)