ブダイ

Scientific Name / Calotomus japonicus (Valenciennes, 1840)

ブダイの形態写真

体長45cm前後になる。やや側扁する。鱗が大きく目が小さい。頬の鱗列は1。歯は完全に癒合せず、見た目は乱ぐいの犬歯。尾は円形。成長して雄に性転換し、雄は青い。これを「青ブダイ」とも。[雄]
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体長45cm前後になる。やや側扁する。鱗が大きく目が小さい。頬の鱗列は1。歯は完全に癒合せず、見た目は乱ぐいの犬歯。尾は円形。成長して雄に性転換し、雄は青い。これを「青ブダイ」とも。[雄]大形になると雄に性転換する。写真は性転換する前のメス。これを「赤ブダイ」とも。体長45cm前後になる。やや側扁する。鱗が大きく目が小さい。頬の鱗列は1。歯は完全に癒合せず、見た目は乱ぐいの犬歯。尾は円形。成長して雄に性転換し、雄は青い。これを「青ブダイ」とも。[雄 36cm SL ・1.372kg]
    • 魚貝の物知り度

      ★★★
      知っていたら通人級
    • 食べ物としての重要度

      ★★
      地域的、嗜好品的なもの
    • 味の評価度

      ★★★
      美味

    分類

    顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系ベラ亜目ブダイ科ブダイ属

    外国名

    学名

    Calotomus japonicus (Valenciennes, 1840)

    漢字・学名由来

    漢字 部鯛、不鯛、武鯛、醜鯛、舞鯛 Budai
    由来・語源 ブダイは東京、相模湾、伊豆方面の名。
    ■ 海の中でも水槽でもクルリクルリと舞うように泳いでいるため。
    ■ 「武ばった顔つき」から。
    ■ 「不細工」であるから。
    Valenciennes
    アシル・バランシエンヌ(Achille Valencienne 1794-1865)はフランスの動物学者。ジョルジュ・キュビエとともに『魚類の自然誌』を刊行。国内で水揚げされる多くの魚を記載。

    地方名・市場名

    生息域

    海水魚。浅い藻場、砂礫地。
    千葉県外房〜九州南岸の太平洋沿岸、山陰〜九州北岸・西岸、伊豆諸島、小笠原、伊予灘、奄美大島、南大東島。

    生態

    ■ 産卵期は夏。
    ■ 性転換をする。子供の頃から雄で、雄として成熟する一次雄。子供の頃は雌で大きくなって雌に性転換する二次雄がある。
    ■ 夏には石灰藻、甲殻類や低生動物を食べ、冬には海藻を主に食べている。

    基本情報

    温暖な地域では食用魚として馴染み深いもの。あまりたくさんとれないので流通上での知名度は低い。
    旬は海藻を食べる冬。産地では刺身はもちろん鍋物などにして親しまれている。
    また伊豆半島、伊豆諸島での開き干しは有名。

    水産基本情報

    市場での評価 入荷量は少ない。活魚はやや高値となるが、野締めなどの値は安い。
    漁法 刺し網、定置網、釣り
    主な産地

    選び方

    味わい

    旬/海藻を食べる冬がいちばん安定的においしい。ただし暖かい時季のものでサザエ刺網などにかかった野締めは臭みがあるが、定置網などにはいったもので活魚は非常においしい。よって一概に寒い時季が旬とは言いがたい。
    鱗は薄く柔らかく非常に大きい。皮は厚く、ゼラチン質。骨はあまり硬くない。
    上質の少し赤みがかった白身で少し水分が多い。熱を通しても硬く締まらない。ただソテーなどすると身が崩れやすい。
    煮ていいだしが出る。皮や骨にゼラチン質が多く、冷めると煮こごる。

    ブダイの切り身ブダイの切り身 クセのない上質の白身で少し水分が多い。ほどよく繊維質で熱を通しても硬く締まらない。皮はぶ厚くゼラチン質を含む。

    栄養

    危険性など

    食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)

    ブダイの料理法/煮る(煮つけ、まーす煮)、汁(ちり鍋、ちげ鍋、しょう油仕立て鍋、みそ汁、潮汁、しょう油仕立て汁)、蒸しもの(清蒸、酒蒸し)、揚げる(天ぷら、唐揚げ)、刺身(焼き霜造り、たたき)、焼く(塩焼き、干もの)、ソテー(バター焼き、オリーブオイル焼き、ムニエルなど)
    ブダイの煮つけ
    ブダイの煮つけ 本種に持ち味をもっとも生かせる料理が煮つけだと思う。大型なら兜煮(頭部だけ)にしてもいいし、小型ならまるのまま煮つけてもいい。水洗いして一度湯通しする。冷水に落として残った鱗やぬめりを流す。これを水、酒、しょうゆ(薄口しょうゆ)で煮る。ご飯のおかずに煮るなら砂糖やみりんを使ってもいい。食べた後の煮汁などは冷やすと煮凝りになる。

    ブダイのまーす煮ブダイのまーす煮 大型なので頭部だけを使った。水洗いして水と泡盛、塩で強火で煮る。短時間に強火で煮ることでうま味が煮汁に出て軽く白濁する。豆腐と一緒に煮ると、主役以上にうまい。青みはあればフーチバー(ヨモギ)、なければ小松菜など。

    ブダイのみそ汁ブダイのみそ汁 基本的にはあらを使うが小振りなものは適当に切り、使う。あらなどは湯通しして冷水に落とす。残った鱗やぬめりを流す。よく水をきり、水から煮出してみそをとく。非常に強いうま味が感じられてとても味わい深い。ご飯のおかずにも向く。
    ブダイのちり鍋ブダイのちり鍋 上質の白身で煮ても硬く締まりすぎない。鍋物材料としてとても優れている。あらだけでもいいし、二枚に下ろして適当に切ってもいい。これを湯通しして、冷水の落とす。残った鱗やぬめりを流し、よく水分を切る。これを基本的には昆布だしで、酒、塩の味つけで煮る。ただ韓国風のちげ、しょう油仕立てなど、どのように変化をさせても美味。
    ブダイの潮汁ブダイの潮汁 ぶだいのあらを湯通しし、冷水に落として残った鱗やぬめりを流す。よく水分を切り、昆布だしで煮て酒、塩で味つけする。うま味が豊かなので単に水で煮だしてもうまい。薬味には青みと粒コショウなどを。
    ブダイの刺身ブダイの刺身 旬の2月に揚がった活魚を刺身にしてみた。下ろしていくと身が盛り上がるように感じられる。皮を引いて普通に刺身にして美味。なにもつけないで口に入れても生臭みはなくほんのりと甘い。後々も強いうま味が感じられるのは脂がのっているためかも。
    ブダイの皮霜造りブダイの皮霜造り 寒い時季の大型を三枚に下ろして皮目に湯をかけて、冷水に落とす。あら熱をとり、水気を切り、刺身状に切ったもの。旬のものは皮が柔らかく、皮目のうまさと身の甘さがあいまって非常に美味。旬を外した夏などのものは皮が硬く身にうま味がない。

    ブダイの昆布締め<ブダイの昆布締め 小振りのものや、旬をはずしたもので臭味のないものは、単に刺身にするよりも、昆布締めにして味がいい。三枚に下ろして皮を引き、刺身状に切る。これを濡れ布巾で拭いた昆布の上に乗せて締める。上質の白身で昆布の味がよくきく。非常にうまい。
    ブダイのセビチェブダイのセビチェ セビチェ用に魚を下ろしてもいいし、刺身を造ったときの切れ端などを使って作ってもいい。本料理を使いと上身を無駄なく使える。小さく切り、塩とライム(別の柑橘類でも)で白濁するくらいにしめる。紫玉ねぎと辛い唐辛子を加えて、少し置き皿などに盛る。爽やかな味わいのなかに魚の真味が感じられる。テキーラなどのスピリッツに合う。
    ブダイのぬたブダイのぬた 三枚に下ろして皮を引き、やや小さめに切る。これを辛子をきかせた酢みそで和える。香りのあるアサツキや山菜、春菊などを合わせるといい。食べる直前に和えるか、酢みそを添えて出す。
    ブダイの清蒸(ちんじょん) 蒸して、魚醤、醤油などを合わせたタレをかけ、熱したピーナッツオイルをかけ回したものを、清蒸(ちんじょん)という。これが美味。また酒蒸しなどにも向いている。
    ブダイの唐揚げブダイの唐揚げ 頭部やかま、腹骨の部分などを食べやすい大きさに切る。水分をよく拭き取り、片栗粉をまぶして二度揚げにする。揚げたてに塩コショウ(ガラムマサラ、カイエンヌペッパーなど)を振る。揚げることで身は適度にしまり、皮目が香ばしい。
    ブダイの長崎風天ぷらブダイの長崎風天ぷら 一般的な薄い衣のものより、沖縄や長崎の厚い味がついた衣をつけて揚げて美味。三枚に下ろして皮付きのまま血合い骨などを取る。これを厚めのへぎ造りにして小麦粉をまぶし、砂糖・塩・コショウなどで味つけした衣をつけて揚げる。沖縄天ぷら粉などを使うと便利。
    ブダイの干もの 上質の白身だが少し水分を多く含む。単に塩焼きにしてイヤミのない味わいだが、判明味に特徴がない。あえて言えば皮目のうまさだが、少しもの足りない。それを干すことで水分を少なくしてうま味を揚げる。干した皮目のうまさがあり、ほどよく繊維質で身離れがいい。

    好んで食べる地域・名物料理

    日本各地で煮つけにしている。寒い時季に旬を迎えるので正月に食べるということも。

    えがめののたえがめののた 徳島県南の宍喰周辺ではブダイの刺身を酢みそで食べる。香り高い麦みそで作った酢みそで食べる「のた」は非常においしい。面白いのは高知県室戸市まで南下すると酢みそで食べないで、わさびじょうゆで食べる。[徳島県海部郡海陽町宍喰・竹ヶ島]
    いがみの煮つけいがみの煮つけ・えがめの煮つけ 和歌山県田辺市では正月に「いがみの煮つけ(ブダイの煮つけ)」を食べる。特に寒い時期なので「煮こごり」が最高だとのこと。[かんてき 和歌山県田辺市]

    関連コラム(郷土料理)

    記事のサムネイル写真三重県西部・東紀州の郷土料理、魚のじふ
    じふ」は三重県西部・東紀州の、紀伊長島や尾鷲で作られている家庭料理である。 地元の漁港で水揚げされる様々な魚で作られているが、言うなれば魚のすき焼き、大阪など・・・ 続きを開く

    加工品・名産品

    開き干し 東京都伊豆大島、伊豆半島などで作られている。白身の美味しさが端的にわかる。
    ブダイひものブダイの干もの(かしかめの干もの) 伊豆大島で作られているもの。ブダイを開いて塩をして干したもの。丸ごと一尾を使っているので豪華で、食べ応えがある。しかも上品な白身なので食べ飽きない。[伊豆大島海産物センター 東京都伊豆大島]

    釣り情報

    歴史・ことわざ・雑学など

    参考文献・協力

    協力/沼津市菊地利雄、長尾桂一郎さん(徳島県海部郡海陽町宍喰)、小田原魚市場、マルモト(伊勢原市)
    『日本の海水魚』(岡村収、尼岡邦夫編・監修 山と渓谷社)、『日本産魚類検索 全種の同定 第二版』(中坊徹次編 東海大学出版会)、『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂)、『商用魚介名ハンドブック』(日本水産物貿易協会編 成山堂)

    地方名・市場名

    トネ
    場所三重県 参考文献 
    ドメ
    場所三重県志摩 参考文献 
    イソダイ
    場所和歌山県湯浅 参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 
    ウシ クズナ
    場所大阪府堺 参考文献 
    テスダイ
    場所徳島県美波町由岐 
    ブダイ
    場所東京、神奈川県、静岡県 参考聞取 
    モハン
    場所熊本 参考文献 
    アカブダイ
    場所神奈川県三崎、伊豆 参考文献 
    オオガン
    場所長崎 参考文献 
    オウガン
    場所長崎県五島 参考長崎おさかな方言辞典(五島編) 
    イカミ
    場所関西 参考文献 
    アオタ
    場所静岡県妻良 性別雄 参考静岡県水産・海洋技術研究所・伊豆分場 
    ハチウオ モハミ[藻食み]
    場所鹿児島 参考文献 
    イラブチ エラブチ
    場所鹿児島県奄美 参考文献 
    モハミ[藻食]
    場所鹿児島県種子島 参考『種子島の釣魚図鑑』(鏑木紘一 たましだ舎 2016年) 
    アオジョー
    場所鹿児島県種子島 性別雄 参考『種子島の釣魚図鑑』(鏑木紘一 たましだ舎 2016年) 
    アカジョー
    場所鹿児島県種子島 性別雌 参考『種子島の釣魚図鑑』(鏑木紘一 たましだ舎 2016年) 
    イガミ[啀]
    場所静岡県西伊豆、三重県志摩市和具、和歌山県太地町、高知県室戸市三津[イセエビ漁師]・宿毛市田ノ浦すくも湾漁協 備考「啀(いがむ)」とは犬などが歯をむき出して争う様をいう。この魚、釣り上げると歯がむき出しになり啀のだ。 参考日比野友亮さん/和具の方言、静岡県水産・海洋技術研究所・伊豆分譲 
    イガメ エガメ
    場所静岡県沼津市、和歌山や関西、九州宮崎県 備考「啀(いがむ)」とは犬などが歯をむき出して争う様をいう。この魚、釣り上げると歯がむき出しになり啀のだ。 
    エガミ
    場所徳島県海部郡海陽町宍喰漁業協同組合・竹ヶ島、高知県柏島・須崎・土佐清水・西南部 備考「啀(いがむ)」とは犬などが歯をむき出して争う様をいう。この魚、釣り上げると歯がむき出しになり啀のだ。 参考聞取、文献 
    カシカメ
    場所東京都神津島 
    ゴンタ[権太] テスノジョウ[てすの上]
    場所徳島県阿南市椿泊(椿泊漁業協同組合) 備考義経千本桜の“いがみの権太”から。 
    バンド
    場所愛媛県宇和郡愛南町 
    モハメ[藻食]
    場所鹿児島県南さつま市笠沙 参考伊東正英さん 
  • 主食材として「ブダイ」を使用したレシピ一覧

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