35cm TL 前後になる。細長く、紡錘形。胸鰭は一様に薄い灰色で、非常に長く腹鰭後端を超える。臀鰭起部は背鰭第3軟条よりも遙かに後方にある。胸鰭の前方から3軟条(1本目は痕跡的で指の感触でわかるのみで2、不分枝は2本に見える)が不分枝。
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![35cm TL 前後になる。細長く、紡錘形。胸鰭は一様に薄い灰色で、非常に長く腹鰭後端を超える。臀鰭起部は背鰭第3軟条よりも遙かに後方にある。胸鰭の前方から3軟条(1本目は痕跡的で指の感触でわかるのみで2、不分枝は2本に見える)が不分枝。[31cm TL・219g]](https://www.zukan-bouz.com/public_image/Fish/627/Thumb630/20231110857.jpg)


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珍魚度・珍しさ
★★
少し努力すれば手に入る魚貝の物知り度
★★★★
知っていたら達人級食べ物としての重要度
★★★
一般的(流通量は普通)味の評価度
★★★★
非常に美味
分類
硬骨魚類条鰭亜綱新鰭区新骨亜区正新骨下区棘鰭上目スメグマモルフ系トウゴロウイワシ亜系ダツ目トビウオ亜目トビウオ科ツクシトビウオ属外国名
学名
Cheilopogon agoo (Temminck & Schlegel, 1846)漢字・学名由来
漢字 飛魚 Standard Japanese name / Tobiuo
由来・語源 明治時代、東京市場(現東京都中央区日本橋)での呼び名。単に「トビウオ」というとトビウオ科全種の総称でもある。胸鰭が翼状で海面を滑空するため。
別名、アキツトビウオ、トビノウオ、本トビ(ホントビ)、トビヲ(和名抄)。アキツトビウオは「秋津飛魚」で「秋津(あきつ)」はトンボのこと。羽のある姿がトンボに似ているのと、本種がとれ始めるのが立秋以後で、トンボの季語が秋であることなどの共通点からくるのだと思っている。
種小名/agoo 西日本での呼び名「あご」から。
〈Fam. SCOMBRESOCIDAE. 族 鱵魚類 EXOCOETUS,Artedi. agoo, Schleg. トビウオ 東京市場〉。『帝国博物館天産部魚類標本目録.帝国博物館』(石川千代松・松浦歓一郎 1897/明治30年)
〈合内顎亞目トビウヲ科トビウヲ属トビウオ Cypsilurus agoo (TEMMINCK et SCHLEGELT)〉。『日本産魚類検索』(岡田彌一郎、松原喜代松 三省堂 初版1938)
Cypselurus agoo (Temminck and Schlegel, 1846)→Cheilopogon agoo (Temminck & Schlegel, 1846) 2023年。
シーボルト、日本動物誌/ファウナ・ヤポニカ(Fauna Japonica ) フィリップ・フランツ・フォン・シーボルトとその後継者、ハインリヒ・ビュルゲルなどが標本を持ち帰り、オランダライデン王立自然史博物館のシュレーゲルとテミンクが記載。Temminck
コンラート・ヤコブ・テミンク Coenraad Jacob Temminck(1778-1858 オランダ) シュレーゲルとともにシーボルトの持ち帰った脊椎動物を整理、記載。『Fauna Japonica』(日本動物誌)を執筆。
Schlegel
ヘルマン・シュレーゲル(Hermann Schlegel 1804-1884年)はドイツの動物学者。テミングとともにシーボルトの持ち帰った脊椎動物を整理、記載。『Fauna Japonica』(日本動物誌)を執筆。地方名・市場名
生息域
海水魚。海の表層。
北海道噴火湾、青森県八戸、小笠原諸島、沖ノ鳥島、仙台湾〜九州南岸の大平洋沿岸、秋田県、新潟県、富山湾、島根県隠岐、山口県日本海沿岸、九州西岸、屋久島、琉球列島。
朝鮮半島全沿岸、中国黄海沿岸・浙江省、田碗頭部、希にピーター大帝湾。生態
産卵期は秋。9月〜10月。基本情報
トビウオという言葉はトビウオ科の魚の総称として使われることが多い。一般人どころか漁業関係者も区別がつかないからだ。ここではトビウオ科の標準和名のトビウオのことである。
日本列島周辺に多い中型のトビウオである。8月くらいからまとまって入荷してくるもので、標準和名も「トビウオの代表的な」、という意味合いがあると思われる。夏枯れの時季に揚がるので人気がある。
一般的にこの国で食用となるトビウオ類はハマトビウオ、ツクシトビウオ、ホソトビウオ、トビウオの4種である。ただし種を認識している人はほとんどいないために、すべてがトビウオでしかない。
東京都では昔から食用となっていて至って一般的な食用魚なのに、認知度が低いのはトビウオはみな同じに見えるためだ。昔、築地に中央市場があったときは、本種を他のトビウオ科と区別して、ホントビとか秋トビとか区別していた仲卸もあった。
値段からして庶民的な魚なので、季節感のあるトビウオ類という魚をもっと楽しんで欲しいものだ。
珍魚度 比較的暖かい地域では一般的な食用魚だ。ただし夏から秋にかけてだけ揚がるために、いつでも手に入る魚ではない。水産基本情報
市場での評価 トビウオは季節的なもので、種を認識しているとはいえない。入荷量は夏から秋に多く、やや安値。
漁法 刺し網、巻き網、定置網
主な産地 三重県選び方
青く光っているもの。触って硬いもの。味わい
旬は秋。
鱗は薄く取りやすい。皮は薄いが強い。
透明感のある白身で血合いが大きい。熱を通すと硬く締まる。
調理する前に胸鰭と尻鰭を取るとやりやすい。
料理の方向性熱を通すと独特のうま味があるが、生は青魚特有のうま味があるものの、血合いが強く食感が弱い。生は単に刺身にするよりも「なめろう(みそたたき)」や「たたき」がいいかもしれない。汁はうま味が豊かなので絶品。同様に煮つけもうまい。単に塩焼きは少し味わいに欠けるので魚醬や漬け魚の方がいいかも知れない。他にはフライ、唐揚げなど揚げ物にすると油のためか硬く締まりすぎずにうまい。栄養
ー危険性など
ー食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)
トビウオの料理・レシピ・食べ方/生食(たたき、なめろう、刺身、酢じめ)、揚げる(フライ、唐揚げ)、汁(潮汁、みそ汁)、ソテー(ごま油焼き、ムニエル)、煮る(煮つけ)、焼く(魚醬焼き、干物、塩焼き)クリックで閉じます
トビウオのたたきなます(たたき) 熱を通してもおいしいが、生で食べるのがいちばんうまい。流通してきたものは血合いがあまりきれいではないので、ここでは皮付きのまま料理する。
胸鰭・腹鰭を切り取り水洗いして、三枚に下ろす。腹骨・血合い骨を取り皮付きのまま薄くスライスする。香辛野菜(ここではねぎ、みょうが、ハバネロ、しょうが、にんにく)と和える。
柑橘類を搾り込んで食べると、まさに夏の味である。
トビウオのなめろう(みそたたき) 水洗いして三枚に下ろす。腹骨・血合い骨を取る。細かく切り、みそ・香辛野菜(みょうが、玉ねぎ、大葉、にんにく、しょうが)を合わせてかなり執拗にたたく。トビウオは叩くことでうま味が前面に出てくる。そこにみそと香り高い野菜が相まって独特のおいしさが生まれる。クリックで閉じますトビウオの刺身 単に刺身にしてものではない。三枚に下ろして血合い骨、腹骨を取る。振り塩をして少し置き、表面の水分を拭き取り、皮を引く。これを刺身状に切ったもの。身が適度に締まり、おいしい。クリックで閉じますトビウオのたたき 水洗いして三枚に下ろして腹骨・血合い骨を取る。振り塩をして皮目を炙り、冷凍庫などで急速に冷やす。もしくは氷水に落とす。水分をよくきり、刺身状に切る。皮目に強いうま味と香りがある。身はたんぱくで嫌みのない部分を補う。クリックで閉じますトビウオの酢漬け 水洗いして三枚に下ろす。血合い骨、腹骨などを取り、軽く振り塩をする。表面に水分が出て来たら、白ワイン・ワインビネガー白・砂糖を一煮立ちさせた地につけ込んで1時間以上置く。漬け込みときにハーブ類を入れると香りがいい。酢で締めることで皮目の生臭みはとれ、適度に身が締まりとても味わい深くなる。ワインやパンにも合う。クリックで閉じますクリックで閉じます
トビウオのフライ トビウオは身は青魚と白身のよさがあり、皮に豊かなうま味があるなど、アジ(マアジ)などと共通する。トビウオフライはアジフライに決してひけをとらない味である。
胸鰭を切り、腹鰭を抜き取る。水洗いして三枚に下ろし、腹骨・血合い骨を取る。血合い骨は強いので多少身崩れしてもていねいに取るといい。塩コショウして小麦粉をつけ溶き卵(バッター液でも)をからめ、パン粉をまぶして高温で揚げる。多めの油にバターを加え、ソテーするように揚げるとより美味である。
トビウオのみそ汁 あらでもいいし、丸のまま使ってもいい。あらは集めて置く、丸のままは水洗いして適当に切る。湯通しして冷水に落として残った鱗やヌメリを流す。水をよくきり、水から煮出してみそをとく。トビウオ類は非常に味わい深いだしがでる。汁も身も味がよくご飯にも合う。クリックで閉じますトビウオのムニエル 淡泊な味わいで脂が感じられない。ぱさっとした食感が本種の難点である。これを油分でおぎなう。水洗いして三枚に下ろす。腹骨・血合い骨を取り、水分をよくきり、塩コショウする。小麦粉をまぶして多めの脂でじっくりソテーする。仕上げにバター(マーガリン)で風味づけする。クリックで閉じますトビウオの韓国風焼き魚 韓国では国内の塩焼きのようなものと、ソテーする2種類の焼き魚がある。ここではソウルなどで食べたムニエルに近いものを作った。水洗いして二枚に下ろして骨のついた方を使った。塩コショウして小麦粉をまぶしてごま油でじっくりソテーする。ここではシラチャーソースをかけたが、コチュジャン酢でもいいし、何もつけなくてもいい。ご飯に合う。クリックで閉じますトビウオの煮つけ 水洗いして適当に切る。湯通しして冷水に落としてヌメリや鱗を流す。これを酒・醤油・黒糖(白砂糖)・水で煮る。こってり煮たが、塩水であっさり煮てもおいしい。硬く締まるものの、たんぱくで嫌みのない味わい。黒糖がこくを産む。クリックで閉じますトビウオの塩焼き 関東では、塩焼き魚と考えられていた可能性がある。水洗いして邪魔になる胸鰭などを切り取る。振り塩をして1時間ほど寝かせてから、じっくり焼き目がつくくらいに焼き上げる。非常に淡泊な味わいで、青魚らしいうま味が豊かである。このあっさりした味を好んでいた時代が確実にある。クリックで閉じます関連コラム(料理法・レシピ)
秋津トビウオはフライに限る、かな?
毎年、立秋を過ぎるとやってくるのがトビウオだ。トビウオはトビウオ科の総称だけど、季節ごとに入荷するトビウオの種類が代わるのである。そして、ちょうど今頃から秋深ま・・・ 続きを開く好んで食べる地域・名物料理
ー加工品・名産品
干もの、くさや釣り情報
ー歴史・ことわざ・雑学など
盆だて 〈八月六日ころまでに、嫁が実家に、そうめんを重箱いっぱいと、とびうおの塩干ものを重箱のふたを逆さにした上にのせて持って行く。実家では半分を受け取り、残りを返す〉(南河内山村 トビウオ種不明)
〈お盆には塩干しとびうおの焼いたものと、じゃがいも、焼き麩、湯葉、かんぴょうの煮ものを食べる〉(南河内山村 トビウオ種不明)
焼く魚 〈比目魚、鰈、鮎並、鰺、鱈、鯡、鮫、生節等は皆煮つけで、焼くのは蒸し鰈、魴鮄、鰯、飛び魚くらいであたが、煮肴は私は嫌いであった〉『幼少時代』(谷崎潤一郎 岩波文庫 初版は文藝春秋社1957)関連コラム(歴史)
谷崎潤一郎にみる明治の魚食事情 塩焼き編
谷崎潤一郎は明治19年(1886年)生まれで、成人して文学者となるまで、明治時代の東京を生きた。生まれは下町、日本橋蛎殻町(在の中央区日本橋人形町)で豊かさと貧・・・ 続きを開く参考文献・協力
『魚類学 下』(落合明、田中克 恒星社厚生閣)、『日本産魚類検索 全種の同定 第三版』(中坊徹次編 東海大学出版会)、『聞書き 大阪の食事』(農文協)、『南大阪の伝統食』(小林至編著 大阪公立大学協同出版会)