アカカマス

Scientific Name / Sphyraena pinguis Günther, 1874

代表的な呼び名カマス

アカカマスの形態写真

40cm SL 前後になる。体色は薄い黄土色であったり、銀色であったりして個体によっての変かがある。細長く体側に目立った斑紋はない。第1背鰭上部は微かに黒ずむがはっきりしない個体もある。腹鰭は第1背鰭よりもかなり前にある。第2背鰭起部は臀鰭起部よりも明らかに前にある。主鰓蓋骨後縁(柔らかい)は尖る。鰓耙数は2。
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40cm SL 前後になる。体色は薄い黄土色であったり、銀色であったりして個体によっての変かがある。細長く体側に目立った斑紋はない。第1背鰭上部は微かに黒ずむがはっきりしない個体もある。腹鰭は第1背鰭よりもかなり前にある。第2背鰭起部は臀鰭起部よりも明らかに前にある。主鰓蓋骨後縁(柔らかい)は尖る。鰓耙数は2。40cm SL 前後になる。体色は薄い黄土色であったり、銀色であったりして個体によっての変かがある。細長く体側に目立った斑紋はない。第1背鰭上部は微かに黒ずむがはっきりしない個体もある。腹鰭は第1背鰭よりもかなり前にある。第2背鰭起部は臀鰭起部よりも明らかに前にある。主鰓蓋骨後縁(柔らかい)は尖る。鰓耙数は2。[31cm SL・]鰓耙数は2。主鰓蓋骨後縁(柔らかい)は尖る。第1背鰭上部は微かに黒ずむがはっきりしない個体もある。第2背鰭起部は臀鰭起部よりも明らかに前にある。
    • 珍魚度・珍しさ

      ★★
      少し努力すれば手に入る
    • 魚貝の物知り度

      ★★★
      知っていたら通人級
    • 食べ物としての重要度

      ★★★★
      重要
    • 味の評価度

      ★★★★
      非常に美味

    分類

    硬骨魚類条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目サバ亜目カマス科カマス属

    外国名

    学名

    Sphyraena pinguis Günther, 1874

    漢字・学名由来

    漢字 赤梭子魚 Standard Japanese name / Akakamasu
    由来・語源 カマスの語源は不明である。ヤマトカマスが「あおかます」と呼ばれるのに対して「あかかます」となる。
    田中茂穂は自分が命名したとしているが、「静岡県など多くの地域でアカカマスと呼ばれているのを採用した」、のだと思われる。
    漢字「梭子魚」は機織りのときに横糸を通すための道具である梭(ひ)に似ているためだ。梭は細長く笹の葉形をしている。
    〈カマス科カマス屬アカカマス〉。『日本産魚類検索』(岡田彌一郎、松原喜代松 三省堂 初版1938)
    英名/Red barracuda 英名、バラクーダはカマス科の魚の総称である。

    カマスは叺か 〈その口が、「叺」のように大きくて開いていることからでている〉という説がある。「叺(かます)」とは長方形の筵(むしろ)を二つ折りにして袋状にしたもの。昭和30年代くらいまでは水産の世界でも盛んに使われたもの。この叺のように口が大きいことからきているともとれる。ただカマス科の魚はとりたてて口が大きくなく、叺の口を広げた形ではあるが、なんとなく迂遠な気がする。
    Günther,
    Albert Karl Ludwig Gotthilf Günther (アルベルト・ギュンター 1830-1914 ドイツ→イギリス)。動物学者。

    地方名・市場名

    生息域

    海水魚。サンゴ礁域を除く比較的浅場。大型は水深100m前後にもいる。
    オホーツク海を除く北海道〜九州南岸の日本海・東シナ海・太平洋沿岸、瀬戸内海、屋久島、[種子島]、奄美大島、沖縄島。
    朝鮮半島西岸・南岸、済州島、渤海、黄海、中国の東シナ海・南シナ海、西沙諸島、インド-西太平洋(ニューギニア島とオーストラリア東岸まで)、ピーター大帝湾(希)。

    生態

    夏に産卵。
    肉食魚。小魚などを襲う。
    小さいときには浅い場所を大きくなるとかなり深い場所に群れている。

    基本情報

    日本列島に広く生息域を持つが本州・四国・九州沿岸に多い。沿岸域で比較的安定的にとれる。
    ヤマトカマスを「水カマス」、アカカマスを「本カマス」という。沿岸域で揚がるカマス科の魚で、この2種の漁獲量が圧倒的に多い。「本カマス」というのは、世間一般には本種の方がヤマトカマスと比べて味が優り、値も高いという意味だ。
    鮮魚でも干ものなどの加工品などとしても流通量は多い。鮮魚は昔、塩焼き魚とされ用途の狭い魚だった。これが近年刺身やあぶりなど生食されるようになり、鮮度によっては高価なものとなっている。
    珍魚度 いたって普通の食用魚だ。マアジやサバ類ほどは一般的ではないが、日常的に手に入れやすい。

    水産基本情報

    市場での評価 冬以外は安定して入荷する。年間を通して入荷してくる。やや高値安定。鮮度がよく大型のものは高級魚。
    漁法 巻き網、定置網、刺し網、釣り
    主な産地 愛媛県、神奈川県、熊本県など

    選び方

    目が澄んでいるもの。鰓が鮮紅色のもの。身体に張りがあって太っているもの。

    味わい

    旬は秋〜初夏。特に晩春から初夏に脂がのるが、産卵後の夏以外は味があまり落ちない。秋から春にかけてもうまい。
    関東では晩春から8月はじめ抱卵、白子を持つ時季まで脂があり、産卵後はやせるが、すぐに脂がもどる
    鱗は細かく薄く取りやすい。皮はしっかりして厚みがある。中骨は硬いが他の骨はあまり硬くはない。
    透明感のある繊維質に富む白身で血合いが強く変色しやすい。 熱を通すと適度に締まる。
    皮に独特の風味がある。
    料理の方向性
    うま味の強い白身で、ソテーやゆでるなどに向いていないと思う。関東では古くから塩焼きの魚とされている。皮を引いて料理すると見栄えが悪い。皮に独特の風味があるが、好き嫌いが出る可能性がある。生食に向くか向かないかは意見が分けれそう。生で食べる場合にはよほど産地に近い場所以外には皮つきのまま、皮目をあぶる方がいい。

    歯は危険 カマスの歯は少ないので一見安全に見えるが、前方の歯は非常に鋭く刃物のようである。

    栄養

    危険性など

    食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)

    アカカマスの料理・レシピ・食べ方/焼く(塩焼き、幽庵焼き、酒塩焼き、干物)、揚げる(フライ)、煮る(煮つけ)、生食(焼き霜造り、酢締め)、ソテー(オリーブオイル焼き、ムニエル)

    アカカマスの刺身 鮮度落ちはそれほど早くないが身色や身割れしやすい。刺身は主に産地周辺でのみ味わえるが、ていねいに活け締めしたものは流通しても味がまったく落ちない。流通がよくなった今、アカカマスは活け締めで出荷というのが普通になるかも。三枚に下ろして小骨を抜く。皮を引いて適宜に切りつけたもの。活け締めしたものはカマス科の魚特有の臭いが、むしろ匂いになり、実に魅力的である。寒い時期から初夏までの活け締めはどんなに高くても買っていい気がする。

    アカカマスの酢じめアカカマスの酢じめ 水洗いして三枚に下ろして血合い骨、腹骨を取る。振り塩、もしくは立て塩にしてよく水分を取り、甘酢もしくは生酢に漬け込む。皮目周辺にうま味があって、酢で締まることで生臭みやクセを緩和してくれて、万人向けの味わいになる。
    アカカマスの焼霜造り 水洗いして三枚に下ろし、血合い骨を抜く。皮目のあぶり、氷水に落としてあら熱をとる。水分をよく切り、冷蔵庫などで少し寝かす。これを刺身状に切りつける。焼くとカマス特有の香りが立ち、また皮目に独特のうま味があり。とてもうまい。
    アカカマスのカルパッチョ 鮮度がそれほど落ちていなくても、カマス独特の臭いが出てしまう。微かなものだが、気になるならカルパッチョやポケにするといい。できるだけ薄く切り、皿にオリーブオイルと塩、にんにくを置いた上から並べていく。ここではトマトのスライスの上に並べてみた。上に果物や香りのある野菜を乗せて、スプーンなどでとんとんと馴染ませる。


    アカカマスの塩焼き 晩秋の脂がのった大型を水洗いする。水分をよく拭き取り、塩をして1時間以上寝かせる。これをじっくりと焼き上げたもの。内側からしみ出た脂で皮や表面が揚げたように香ばしくなり、中はしっとりと揚がる。酒の肴にもいいが、ご飯のおかずにした方がうまい。

    かます飯かます飯 塩焼きか干ものを焼き上げて、骨を取り除きほぐしておく。これを炊きたてのご飯、もしくは電子レンジで温めたご飯に混ぜ込む。混ぜ込むときに少量の柑橘類の搾り汁か、酢と塩を合わせたものを振っておくと混ぜやすい。
    アカカマスのみりん焼きアカカマスのみりん焼き 水洗いして適宜に切り、水分をよく切る。じっくりと焼き、みりんを塗りながら焼き上げる。皮目の風味は好ましく思う人と、臭味に感じる人がいるが、これを緩和する。また冷めてもおいしい。
    アカカマスのフライアカカマスのフライ 小振りを三枚に下ろして小骨などを丁寧に抜く。水分をよく切り、塩コショウして溶き卵をくぐらせてパン粉をまぶして揚げる。さくっと香ばしく揚がり、皮目の風味が生きてくる。アジフライに通じるうまさで、また別種の味わいが楽しめる。
    アカカマスの煮つけ ここでは産卵前の抱卵固体を煮てみた。水洗いしてよく水分を拭き取る。水・酒・しょうゆで煮る。みりんや砂糖の甘味を加えるとよりご飯にあう。火が通ったら鍋止めする。意外に身離れがよく、イヤミのない味わいになる。真子や白子もとてもうまい。

    アカカマスのオリーブオイル焼きアカカマスのオリーブオイル焼き アカカマスを水洗い、適宜に切り、水分をよく切り、塩コショウする。少し冷蔵庫にラップをしないまま放置して表面を乾かして、オリーブオイルでじっくりと香ばしくソテーする。
    アカカマスのムニエルアカカマスのムニエル 三枚に下ろして血合い骨を抜く。皮を引き、塩コショウする。小麦粉をまぶしてソテーする。淡泊ななかにカマスの個性が生きる。オリーブオイルとアンチョビを混ぜたソースをかける。

    好んで食べる地域・名物料理


    かますの茶漬 福岡県築上町椎田で採取したもの。「かます(種不明)」の刺身を厚めに切り、醤油・ゴマ・酒などを合わせたたれに漬けておく。半日ほど漬け込んで温かいご飯に乗せて、熱いお茶を注ぐ。『聞書き 福岡の食事』(農文協)

    関連コラム(郷土料理)

    記事のサムネイル写真湯がけ・長崎県の湯がけ
    長崎県雲仙市小浜富津・平戸市度島で作られているもの。他の地方でも作られているはずだが、まだ情報を収集できていない。 地域によって魚種が代わる。 魚を皮付きのまま・・・ 続きを開く
    記事のサムネイル写真福岡県豊前椎田のかますの茶漬
    福岡県築上町椎田で作られているもの。北九州市の東、国東半島までは旧豊前の国にあたる。福岡県でも限界地方でも作られているという。 豊前地方は干潟が広がり、漁獲物が・・・ 続きを開く
    記事のサムネイル写真日本各地にある、づけ・茶漬け・づけ飯とは
    生の魚を刺身で食べて余ったものを、醤油などにつけて保存性を高めるものを「づけ(漬け)」と呼ぶ。日本各地で普通に行われているもので、あまった刺身などの保存のためで・・・ 続きを開く
    記事のサムネイル写真長崎県平戸きりごみ
    日本各地に酢を使った料理は数知れずある。保存性が高いからだ。 中でも国内全域で作られているのが「なます」だ。基本形は短冊かけん突きで細長く切った野菜に塩をして、・・・ 続きを開く

    加工品・名産品

    加工品のほとんどが干もの、もしくは煮干し。
    かますみりん干し カマスを開き、しょうゆ、砂糖、みりんで味つけして干したもの。『津田水産(長崎県佐世保市)』
    カマスの開き干し アカカマスを使ったもっとも一般的な加工品。流通する多くが開いて乾したものだ。皮に独特の風味があり、とても味わい深い。ご飯に非常に合う。[牧屋 神奈川県小田原市]
    カマスの煮干しかますの煮干し アカカマスの幼魚を塩ゆでして干し上げたもの。上品でたんぱくなだしがとれる。里芋など根菜類を煮るのに最適。また小麦粉で作った麺に合う。[徳島県、高知県、長崎県などで作られている]

    関連コラム(加工品)

    記事のサムネイル写真カマス煮干し
    漁業の町は漁師さんが魚をとる。当たり前だけどそれが核になるが、ただこれだけでは町は成り立たない。 漁獲したもので鮮魚で出荷できるものは出荷する。それ以上に加工し・・・ 続きを開く

    釣り情報

    相模湾では寒い時期に、胴付き仕掛けでエサはサバの切り身などで大型を釣る。水深100メートルを超える場所にいるアカカマスは体長50センチ前後もある。

    歴史・ことわざ・雑学など

    かますの焼き食い一升飯 はカマスは焼くとご飯に合いうまいということ。
    魚鑑 〈大なるもの五六寸味美し、只炙食ふによし、処処に出す。ひものとなすもの亦賞すべし〉とある。
    霜降りカマス 脂ののった冬のカマスを「霜降りカマス」。
    鱚や魳に類していた 東京に向かう汽車内で、西洋人の女性の目鼻立ちを〈鱚や魳に類していた〉。夏目漱石『三四郎』(1908/明治41)

    参考文献・協力

    協力/伊東正英さん(鹿児島県南さつま市)、貴龍丸(神奈川県小田原市)、金栄丸(和歌山市雑賀崎 金栄丸では魚の販売もやっています)
    『日本産魚類検索 全種の同定 第三版』(中坊徹次編 東海大学出版会)、『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂)、『新釈魚名考』(榮川省造 青銅企画出版)

    地方名・市場名

    マガマス
    場所和歌山県周参見 参考文献 
    アカガマス
    場所和歌山県塩屋 参考文献 
    ドロカマス
    場所和歌山県湯浅 参考文献 
    ヤエカマス ヤエガマス
    場所和歌山県辰ヶ浜 
    ナダカマス
    場所有明海周辺 参考文献 
    カマス
    場所東京都、鹿児島県種子島など 参考聞取、『種子島の釣魚図鑑』(鏑木紘一 たましだ舎 2016年) 
    ホンカマス[本かます]
    場所東京都など関東周辺 
    アカガマサ アカガマサー
    場所沖縄 参考文献 
    アブラガマス[油梭子魚]
    場所神奈川県小田原市・二宮町、静岡県伊東市富戸 備考同時にとれるヤマトカマスと区別する意味で。 参考20190330/二宮定置 
    オキカマス
    場所高知 参考文献 
    ツチカマス
    場所高知県 
    ヤヨイ
    場所和歌山県和歌浦周参見・串本・白崎 参考文献 
    アカカマス
    場所静岡県富戸・網代、徳島県海部郡海陽町『宍喰漁業協同組合』、高知県、長崎県平戸市度島 備考宍喰ではヤマトカマスは「クロカマス」というのに対して。標準和名。 参考福畑光敏さん、静岡県水産・海洋技術研究所・伊豆分譲 
    アラハダ アラハダカマス[荒肌]
    場所三重県鳥羽市・志摩市波切・志摩市和具・尾鷲、和歌山県和深・辰ヶ浜 備考ヤマトカマスと比べると肌(鱗)が大きくざらざらして肌荒れしているようだから。 参考日比野友亮さん/和具の方言 
    シャクハチ[尺八]
    場所和歌山県和歌山市雑賀崎、京都府丹後地方、徳島県徳島市漁業協同組合・阿南市 備考京都府丹後地方では大型。 参考丹後地方で使われている魚名方言集 
    テッポウ テッポウカマス
    場所石川県七尾市七尾魚市場 
    ネイラカマス ネイラ
    場所神奈川県小田原・二宮町 
    ホンカマス[本かます]
    場所神奈川県小田原をはじめ関東 備考関東などではヤマトカマスをミズガマス(水がます)と呼ぶのに対して。 
  • 主食材として「アカカマス」を使用したレシピ一覧

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