40cm SL 前後になる。頭部の断面は四角く細長い。胸鰭は翼状で大きい。胸鰭下部の3つの軟条が昆虫の脚のように分離している。鳴く魚。稚魚期には黒く、若魚から成魚へと赤くなる。[31cm SL]
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![40cm SL 前後になる。頭部の断面は四角く細長い。胸鰭は翼状で大きい。胸鰭下部の3つの軟条が昆虫の脚のように分離している。鳴く魚。稚魚期には黒く、若魚から成魚へと赤くなる。[31cm SL]](https://www.zukan-bouz.com/public_image/Fish/151/Thumb630/20231125139.jpg)






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珍魚度・珍しさ
★★
少し努力すれば手に入る魚貝の物知り度
★★★
知っていたら通人級食べ物としての重要度
★★★
一般的(流通量は普通)味の評価度
★★★★
非常に美味
分類
硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目カサゴ亜目ホウボウ科ホウボウ属外国名
学名
Chelidonichthys spinosus (McClelland, 1844)漢字・学名由来
漢字 魴鮄、竹麥魚、竹麦魚、保宇保宇、保宇婆宇 Standard Japanese name / Houbou
由来・語源 古くから一般的に使われていた呼び名である。頭部が方形であることと、釣り上げるとしきりにホーホーと鳴くことからとされている。。
〈形、方頭(カナガシラ)〉に似て〈這う魚〉の意味。
〈這う魚 はうさかな〉がホウボウに転訛した。胸鰭下部軟条が脚のような役割をして歩くところからきている。
鰾(浮き袋)の振動による鳴き声が「ほうぼう」と聞こえるため。
〈保宇婆宇〉『和漢三才図会』(寺島良安 正徳3年/1713 東洋文庫 平凡社)
〈保宇保宇〉は『物類称呼』(越谷吾山著 安永4/1775 解説/杉本つとむ 八坂書房 1976)、『魚鑑』(武井周作 天保辛卯 1831)
〈竹黍魚〉。竹麦魚は当用漢字に置きかえたもの。「竹麦」には意味がないと思えるので、なぜこの文字が存在するのか不明。『大言海』(大槻文彦 冨山房 初版 1932-1935)
〈ホオボオ 魴鮄〉『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年)
学名/Chelidonichthys spinosus 属名Chelidonichthysはツバメの魚、種小名spinosusは棘の多い。『日本産魚類全種の学名 語源と解説』(中坊徹次・平嶋義宏 東海大学出版部 2015)
英名/Bluefin searobin 鰭の青い、searobinはホウボウ類のことで、「海のコマドリ」。コマドリはスズメ目の小型の鳥。McClelland
John McClelland (ジョン・マクレランド/1805〜1883)。イギリスの医者で魚類学者。地方名・市場名
生息域
海水魚。水深25mから615mの砂泥地。普通は比較的浅場にいる。
北海道日本海沿岸・太平洋沿岸、津軽海峡〜九州南岸の日本海・東シナ海・太平洋沿岸、八丈島(希)、瀬戸内海、東シナ海大陸棚域。
渤海、黄海、朝鮮半島全沿岸、済州島、台湾、中国南シナ海・南シナ海、ピーター大帝湾。生態
海水魚。水深25メートルから615メートルの砂泥地。
産卵期は3月から5月。ただし、駿河湾でのしらす漁などをみていると、少し早まってきているように思える。
稚魚は真っ黒で大きくなるにしたがって赤くなる。稚魚期は浮遊生活をするが、成長すると底生生活をするようになる。
底生生活では胸鰭下部の3つの軟条が指のように動き、砂の中の獲物を探し、またこれで海底を歩く。
小型のエビやカニなどの甲殻類、環形動物などを捕食。大きくなるとヒメジやワニギスなどの小魚なども食べている。
浮き袋を使ってググと鳴く。基本情報
北海道から九州までの比較的浅い砂地に生息する魚である。代表的な産地はなく関東など大消費地には日本各地から入荷してくる。大きなものは古くからの高級魚である。
胸鰭が翼状で美しいこと、鳴く魚としても有名で、大きな鰾(鳴き袋)でゴーゴー、グッグと音を出す。
非常に上質の白身で江戸時代には、「君の魚」といって上流階級の食べるものとなっていた。また、胸鰭が赤い色をしているので、お食い初めの魚としても使われている。
釣りの対象魚としても人気がある。
珍魚度 普通の食用魚。やや高値なので関東などではスーパーにはあまり並ばないが、手に入れるのは比較的たやすい。水産基本情報
市場での評価 関東では定番的魚のひとつ。入荷量も多く、値段も安定して安い。活け締め、大型魚はやや高い。
漁法 刺し網、定置網、釣り
産地選び方
ー味わい
旬は冬から春だが、地域によって違いがある。
頭が大きく、刺身にすると歩留まりが悪い。鱗は柔らかく取りやすい。あまり鱗の存在が気にならない。皮はしっかりして引きやすい。上質な白身で鮮度がよいと透明感がある。熱を通すと締まる。
あらなどからいいだしが出る。浮き袋(鳴き袋)、肝なども美味。
料理の方向性
料理法を選ばない重宝な魚だ。歩留まりは非常に悪いが、あらが非常にうまいので、煮る、汁などにすると無駄なく使える。刺身など生食にするというのは比較的新しい。産卵前の秋から春にかけてとても脂がのっていて味がいい。栄養
ー危険性など
ー食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)
ホウボウの料理・レシピ・食べ方/生食(刺身、カルパッチョ、セビチェ、焼き切り)、汁(鍋、ブイヤベース、潮汁、吸い物)、焼く(若狭焼き、塩焼き)、煮つけ、揚げる(唐揚げ、フライ)クリックで閉じます
ホウボウの刺身 近年、ホウボウの刺身はありふれたものとなっている。うま味が強く食感が楽しめて美味。旬は秋から春だが、比較的安定的においしい刺身が食べられる。
胸鰭は切り取り、水洗いして三枚に下ろす。腹骨・血合い骨を取り、皮を引き刺身にする。活魚は薄く造るといい。
寒い時季は脂が乗っていて、上品な白身なのにうま味豊かで食べ応えがある。身自体に味があるのが魅力的である。
ホウボウの湯引き 比較的脂のない個体で単純に刺身にしても、おいしくないと思った固体を使ってみた。やはり脂の口溶け感はないものの、皮と皮直下に味がある。皮の食感を楽しみながら、身の甘味が追いかけてくるようだ。水洗いして三枚に下ろす。腹骨・血合い骨を取る。皮付きのまま刺身状に切り、湯通しして氷水に落とす。水分をよくきる。柚子風味の辛子酢みそを添える。クリックで閉じますホウボウの焼き切り 皮が硬いので湯をかけての霜皮作りよりも、表面を焼いての焼霜造りの方が向いている。水洗いして三枚に下ろす。腹骨・血合い骨を取り、皮目を上に向けてあぶる。氷水に落として粗熱をとり、少し冷蔵庫で皮を落ち着かせてから刺身状に切る。皮のうま味と皮下の一度溶け出した脂身のうまさが非常に好ましい。クリックで閉じますホウボウのちり 鍋材料のひとつと考えている。寒くなるとときどきホウボウのちり鍋を作る。水洗いして適当に切る。湯通しして氷水に落としてぬめりと残った鱗を流す。水分をよくきり、昆布だしに酒と塩で味つけし、あら、ぶつ切りにした身、鳴き袋、肝などを煮ながら食べる。クリックで閉じますホウボウの煮つけ 煮つけは漁師さんなどの家では定番的な料理法である。なによりも皮、骨に付着した身など余すとことなく食べられる。またご飯のおかずに向いている。水洗いして大型は適当に切る。小型は丸のまま煮てもいい。湯通しして冷水に落として残った鱗とぬめりを流す。これを酒・砂糖・醤油・水を沸かした中で煮る。クリックで閉じますホウボウの潮汁 寒時期は鍋材料としても優秀。あらなどは汁がいい。あっさりとし塩味でもしょうゆ味で煮て汁にしても、みそ汁にしてもうまい。水洗いして適当に切る。大型などは刺身にしたときのあらを使ってもいい。湯通しして冷水に落とし、残った鱗とぬめりを流す。水分をよくきり、昆布だしで煮だして酒と塩で味つけする。クリックで閉じますホウボウのフライ 小振りのものをフライにしてみた。三枚に下ろして腹骨・血合い骨を取る。皮を引いて塩コショウする。小麦粉をつけ、溶き卵にくぐらせ、パン粉をつけて高温で揚げる。表面の香ばしさ、身のほどよく繊維質でふっくらとしているところなど非常に美味。クリックで閉じますホウボウの唐揚げ 小振りのものを背から開いて中骨を取り丸ごとじっくりと揚げたもの。唐揚げはさくっとして身が甘い。小振りのものはまるのまま、大きなものは適宜に切り唐揚げにしてもうまい。フライもいい。小振りのホウボウは背から包丁をいれて頭部を残して開く、水分をよくきり、片栗粉をまぶしてじっくり時間をかけて二度揚げする。クリックで閉じますホウボウの塩焼き 東京などでは塩焼きの定番的な魚であった可能性がある。ただし焼きにくい。水洗いして水分をよくきり、適当に切れ目を入れて振り塩をする。塩が馴染むのに時間がかかるので2〜3時間寝かせる。これをじっくり時間をかけて焼き上げる。皮目の風味のよさは別格だと思われる。身はしっとりとして柔らかい。クリックで閉じますホウボウの鳴き袋一夜干し 浮き袋で少しだけ膠質である。ねっとりした触りごこちがする。煮つけなどに一緒に入れてもおいしいが、軽く干して焼いた方がいいようだ。浮き袋を取りだし、流水で洗い。水分をよくきる。立て塩(塩水に10分つける)にして日日かけて干す。表面は香ばしく中は柔らかくうま味が非常に豊かである。クリックで閉じますホウボウの若狭焼き 皮目に味があるので焼き物にも向いている。切り身にして弱めの振り塩をする。少し寝かせて表面に出て来た水分を拭き取る。これをじっくりと焼き、焼き上がりに醤油・酒(ここでは酒のみ)を塗りながら焼き上げる。塩焼きの単調な味わいに酒のうま味を加えたもの。いい酒の肴になる。クリックで閉じますホウボウのみそ汁 小振りのものは水洗いしてぶつ切りにする。大型魚はあらでもいい。湯通しして冷水に落とし、残った鱗やぬめりを流す。水分をよく切り、水から煮出してみそを溶く。写真は白みそと信州味噌の白の合わせみそ。単一のみそよりも合わせみその方がいい。野菜などと一緒に作ると非常においしい。クリックで閉じますホウボウ塩漬けのパスタ 小型のホウボウは三枚に下ろして、身に強めの塩をしてビニールなどに密閉する。これをフライパンににんにく風味をつけた油の中でかりっと香ばしくソテーする。コショウを振り、生のトマトを加えた少しソテーして、ゆでたパスタを加える。ここではディルの風味をつけた。塩味は魚のだけで足りると思うがもの足りなかったら追加する。クリックで閉じます関連コラム(料理法・レシピ)
ホウボウの鳴き袋を一夜干しに
ウボウの鰾(浮き袋)のことを「鳴き袋」というかはわからない。出典が不明である。ボクの42年も前のカード(民俗学の)に、「鳴き袋とでもいうのかな?」として、以後・・・ 続きを開く好んで食べる地域・名物料理
ーホウボウのみそ汁 長崎県平戸市生月島(いきつきしま)の郷土料理だ。魚のみそ汁はいたって普通の料理だが、高級なホウボウを大胆にも大振りに切り、みそ汁にしてしまうというのは産地ならではである。長崎県なので麦みそを使い、つきものだという豆腐を加えて作ってみた。実に滋味豊かで、最後の汁一滴までおいしい。[福畑敏光さん 長崎県平戸市]クリックで閉じます関連コラム(郷土料理)
旬はもう少し後のホウボウ
ウボウは年の瀬になるとじょじょに脂をため込んでいき、3月から5月の産卵とともに味が急落する。この産卵期が産地で違っている。 今回の茨城県産は、北茨城市の大津漁・・・ 続きを開く長崎県平戸市、毎日でも作りたい、ホウボウのみそ汁
魚のみそ汁はたぶん国内全域で作られていると思っている。特に漁師さんにとっては日常食に近いものだろう。 そのせいか、漁師さんに「みそ汁を作りますか?」、「どんな魚・・・ 続きを開く加工品・名産品
釣り情報
浅場の砂地でシロギス釣りに混ざる。天秤仕掛け、エサはアオイソメ。
大型のものはマイワシエサのヒラメ釣りの代表的な外道。歴史・ことわざ・雑学など
魴鮄 冬の季語。〈魴鮄の髯脚立てて貌そろう 秋山牧車〉『最近俳句歳時記 冬』(山本健吉 文藝春秋 1972)
魴鮄のひらき 滝沢馬琴の日記にある。白身魚で嫌みがないためお見舞いや返礼に使われていた。
焼き魚 〈魚類は大体焼いたものよりは煮たものが多く、比目魚(ひらめ)、鰈(かれい)、鰺、鯡(にしん)、鮫(さめ)、生節(なまりぶし)等は皆煮つけで、焼くのは蒸し鰈、魴鮄(ほうぼう)、鰯、飛魚ぐらいであったが、煮魚は私は嫌いであった。〉。谷崎潤一郎は幼少時代まずしかったとしているが、東京市内(現東京都都区部)でもこれだけの魚が普段食べられたのは非常に贅沢だったと思われる。しかもどうやら当時は高級だった無塩もの(鮮魚)らしい。『幼少時代』(谷崎潤一郎 岩波文庫 初版は文藝春秋社1957)関連コラム(歴史)
谷崎潤一郎にみる明治の魚食事情 塩焼き編
谷崎潤一郎は明治19年(1886年)生まれで、成人して文学者となるまで、明治時代の東京を生きた。生まれは下町、日本橋蛎殻町(在の中央区日本橋人形町)で豊かさと貧・・・ 続きを開く参考文献・協力
『日本産魚類検索 全種の同定 第二版』(中坊徹次編 東海大学出版会)、『魚類学 下』(落合明、田中克 恒星社厚生閣)、『新釈魚名考』(榮川省造 青銅企画出版)、『島根のさかな』(島根県水産試験場 山陰中央新報社)、『滝沢馬琴一家の江戸暮らし』(高牧實 中公文庫)