SL 22cm前後になる。小型。赤系統の色合いで棘が多く、無数の皮弁があるなど派手派手しい。体高は低く断面はやや円形に近い。吻は著しく長くなく、体側の後半に黒い斑点がある。
オニカサゴの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)
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珍魚度・珍しさ
★★★
がんばって探せば手に入る魚貝の物知り度
★★★★
知っていたら達人級食べ物としての重要度
★★★
一般的(流通量は普通)味の評価度
★★★
美味
分類
顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目カサゴ亜目フサカサゴ科オニカサゴ属外国名
学名
Scorpaenopsis cirrhosa (Thunberg, 1793)漢字・学名由来
漢字 鬼瘡魚、鬼笠子 Onikasago
由来 神奈川県三崎での呼び名。「鬼」は単純に刺々しく鬼を思わせるため。
〈cirrhosa ,Thunb をにかさご(やまのかみ) 安房〉。『帝国博物館天産部魚類標本目録.帝国博物館』(石川千代松・松浦歓一郎 1897/明治30年)
〈頬甲族カサゴ科オニカサゴ屬 オニカサゴ Scorpaenopsis cirrhosa (THUNBERG)〉。『日本産魚類検索』(岡田彌一郎、松原喜代松 三省堂 初版1938)
カール・ペーテル・ツンベルク(チュンベリーが18世紀に国内で採取、持ち帰って記載した。標準和名も古い。Thunberg
Carl Peter Thunberg [カール・ペーテル・ツンベルク(チュンベリー) 1743-1828 スウェーデン]。博物学者。1775(安永4)-1776(安永5)長崎の出島に滞在。江戸参府も果たしている。『Flora Japonica(日本植物誌)』。地方名・市場名
生息域
海水魚。水深5〜171メートル。
伊豆諸島、千葉県外房〜鹿児島県志布志湾までの太平洋沿岸、秋田県〜九州北岸の日本海沿岸、長崎県橘湾、大阪湾。
少ない/屋久島、トカラ列島、沖縄伊江島。
済州島、台湾北東部・南部、香港。生態
ー基本情報
本州の暖かい海域の浅場にいる小型のカサゴである。いかめしい姿とは裏腹に全長25とあまり大きくならない。専門の漁はなく、刺網や浅場での釣りなどに混ざるもの。
流通上の価値もさほど高いとは言えないものの、オニカサゴは東京、千葉県の呼び名であり、相模湾では「おにかご」はイズカサゴの呼び名であることから混乱が生じている。
珍魚度 珍しい魚ではないが、流通上見かける機会が少なく。手に入れようと思うと苦労すると思う。水産基本情報
市場での評価 入荷量は少ない。あまり高くはない。
漁法 刺し網、釣り
産地 長崎、熊本、和歌山など選び方
外見からは鮮度がわかりずらい。触って硬いもの。鰓がきれいなもの。味わい
旬は秋から春
棘に気をつけて料理して欲しい。慣れない人は最初にキチンばさみなどで棘を切り取っておくといいかも。
鱗は細かく、鱗引きよりもワイヤーブラシなどの方が取りやすい。骨はやや硬く、皮はしっかりしている。
透明感のある白身。あらから非常にいいだしが出る。栄養
ー危険性など
ー食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)
オニカサゴの料理法・食べ方/煮る(煮つけ、鍋)、汁(みそ汁、潮汁)、揚げる(唐揚げ)、生食(刺身)クリックで閉じます
オニカサゴの煮つけ 水洗いして湯通しする。冷水に落として残った鱗やぬめりをていねいに流す。これを酒・しょうゆ味で煮つけたもの。みりん、砂糖など甘味を使ってもいい。非常に豪華絢爛な煮つけになる。皮、骨の間の身などをじっくり食べて欲しい。締まった身に甘みがあり、部分部分の味を楽しめる。骨湯はぜひともやっていただきたい。
オニカサゴの鍋 身よりも皮、胃袋、肝などの内臓がうまい。そしてだしのうまさも出色。骨と棘だらけなので、歩留まりが悪い。あまり大きな魚ではないので水洗いして適当に切り、湯通しする。冷水に落として残った鱗やぬめりをていねいに流す。これを昆布だし、酒・塩で煮ながら食べる。身は煮ても硬くならず甘みがある。いいだしが出るので、汁と一緒に食べて欲しい。野菜や豆腐などはお好みで。クリックで閉じます
オニカサゴの潮汁 あらや腹腔膜、胃袋、肝などを集めて置く。小型はそのまま適当に切る。湯通しして冷水に落として、めんどうでもていねいに鱗やぬめりを流す。これを昆布だしで煮だして酒と塩で味つけする。非常にうま味豊かで、しかも上品なだしが出る。煩わしければ汁だけのんでもいいが、へばりついた皮や身もうまい。クリックで閉じます
オニカサゴのみそ汁 小型はそのまま適当に切る。大型は刺身などにもなるので、あらや腹腔膜、胃袋、肝などを集めて置く。湯通しして冷水に落として、めんどうでもていねいに鱗やぬめりを流す。これを水から煮出してみそを溶くだけ。味わい豊かな汁でご飯にも合う。クリックで閉じます
好んで食べる地域・名物料理
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アラカブオコゼのみそ汁 長崎県雲仙市の佐藤厚さんに教わったもの。ただオニカサゴを水で煮てみそを溶くだけだが、これがいちばんうまい作り方でもある。魚のほかにワカメ、豆腐、あおさ(ヒトエグサ)、ねぎなどを入れる。ここではあおさ、玉ねぎ、ねぎを使った。雲仙市のみそ汁の基本は麦みそである。当地の麦みそを取り寄せて作ってみたらまったりとした柔らかな味わいに仕上がった。
アラカブオコゼの湯がけ(ギョブの湯がけ) 長崎県雲仙市小浜富津の郷土料理。比較的一般的な料理用語では「皮霜造り」にあたる。水洗いして三枚に下ろし、腹骨と血合い骨を抜く。片身をまな板などにのせて湯をかけて、氷水に落とす。水分をよく取り、刺身状に切る。梅肉やしょうが醤油、わさび醤油、柑橘類などで食べてもいい。[佐藤厚さん]クリックで閉じます関連コラム(郷土料理)
湯がけ・長崎県の湯がけ
長崎県雲仙市小浜富津・平戸市度島で作られているもの。他の地方でも作られているはずだが、まだ情報を収集できていない。 地域によって魚種が代わる。 魚を皮付きのまま・・・ 続きを開く加工品・名産品
ー釣り情報
陸からの投げ釣りなどにかかってくる。小魚を生き餌にしてもくる。歴史・ことわざ・雑学など
■ 江戸時代の武士の家では端午の節句にお膳につけた。
磯の笠子は口ばかり 磯にいる笠子は口ばかり大きくて食べるところがない。すなわり口ばかり達者で実行が伴わないの例え。参考文献・協力
『日本産魚類検索 全種の同定 第二版』(中坊徹次編 東海大学出版会)、『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂)、『新釈魚名考』(榮川省造 青銅企画出版)、『魚』(1940 田中茂穂 創元社)、『魚偏に遊ぶ 日本回遊博物誌』(田中秀男 PMC出版)