殻長15cm、殻高12cm、殻幅10cm、重さ600gを超える。黒っぽい殻皮があり、膨らみが非常に高く三角お握り型。
ウバガイの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)




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魚貝の物知り度
★★★
知っていたら通人級食べ物としての重要度
★★★★
重要味の評価度
★★★★
非常に美味
分類
軟体動物門二枚貝綱異歯亜綱マルスダレガイ目バカガイ超科バカガイ科バカガイ亜科ウバガイ属(Pseudocardium)外国名
Hen-clam学名
Pseudocardium sachalinense (Schrenck,1862)漢字・学名由来
漢字 姥貝、雨波貝。
由来・語源 『目八譜』から。「ウバガイ」はもとは福島から銚子当たりまでの呼び名。貝殻が薄汚れて見え、姥(老婆)を思わせるため。地方名・市場名 ?
ホッキガイ[北寄貝] ホッキ
場所北海道道南地方・網走・十勝、東北、青森県八戸・野辺地、岩手県旧九戸郡、宮城県仙台、福島県相馬市、東京、関東周辺、九州 備考アイヌ語のポキセイからきたものだと思う。漢字を当てたのは後世のことだろう。生息域
海水生。潮間帯下〜水深50メートルの砂泥地。
鹿島灘以北、日本海北部から沿海州、オホーツク海の浅い砂地に生息。
生態
生殖腺の色(やや赤い乳白色-雄、乳白色-雌)。
産卵期は初夏から夏。基本情報
ウバガイという標準和名はまったく流通の場では使われない。市場などでは主にホッキガイと呼ばれている。
東北以北では古くから重要な食用貝で肉の代わりに本種のカレーなども作られていたようだ。代表的な産地は北海道、青森県、福島県など。
主に軽くゆでて、これを刺身といい、また料理店などでは生のままで食べることもある。
最近ではスーパーなどにも並んでいることがあるが高級なイメージである。水産基本情報
選び方
持ち重りのするもの。しっかり貝殻を閉じているもの。味わい
栄養
ー寄生虫
ヒモビル 環形動物門無針綱ヒモムシ目。外套腔に寄生する。人体にはまったく影響しない。食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)
ウバガイの料理法・食べ方/生食(湯引き、生)、ソテー(バター焼き、オリーブオイル焼き)、煮る(鍋、煮貝)、焼く(焼き貝)、揚げる(天ぷら)、ご飯(リゾット、炊き込みご飯)クリックで閉じます
ホッキガイの刺身(ウバガイのゆびき) 剥いてヒモや内臓を切り取り、塩水の中で砂などをていねいに流す。身を開いて赤く染まるくらいにやや強めの塩水で湯引く。赤みが出るのを見ながらゆでる。熱を通すことで本種ならではの甘味が増す。貝らしい食感も楽しめ最高にうまい。
ホッキガイのぬた(ウバガイのぬた) 基本的に剥き身にして湯引きする。ひも、貝柱、足などを適当に切る。ノビルなど好みの野菜はゆでて、冷水に落として水分をよくきり、適当に切る。これを酢みそ(みそ・酢・砂糖、野菜によっては辛子)で和える。クリックで閉じますホッキガイのしゃぶしゃぶ(ウバガイのしゃぶしゃぶ) 剥き身にして砂などを洗い流して水切りしておく。足などは開く、水管は半割にしてざっと洗うなどして、昆布だしのなかで火を通しながら食べる。自分好みの火の通し方で食べる。酒のアテに最高。クリックで閉じますホッキガイの中華炒め(ウバガイの中華炒め) 中華風に塩味で炒めてみた。剥き身にして処理をし、適当に切る。野菜は適当に切っておく。油を熱して野菜・貝を加えて炒め、鶏ガラスープ(素)・塩を合わせたものを加えて炒めて、コショウを振る。ほんの二三分で炒めることができる。本種は油脂を使った料理にとても向いている。クリックで閉じますホッキガイのバター焼き(ウバガイのバター焼き) 剥き身にして処理をし、水分をよくきっておく。一緒に炒める野菜(ここでは玉ねぎ)などは切っておく。これを熱したマーガリン(バター)でさっと炒めて、しょうゆで風味づけする。好みでニンニクを加えてもおいしい。ここではご飯に乗せたが、パンを合わせてもおいしい。クリックで閉じますホッキガイの鍋(ウバガイの鍋) 剥き身にしてていねいに処理をする。カツオ節出しに塩、酒で味つけ。ここでウバガイの足、ヒモ、水管と豆腐を温めながら食べる。煮すぎない方がうまい。クリックで閉じますホッキガイの煮貝(ウバガイの漬け込み) むき身にしてヒモと水管を外し、ヒモの黒い部分をこそげ取る。足の内臓の部分を押し出す。みりん、酒、しょうゆ、水を味加減したところに貝を入れて火を通す。硬くなる前に撮りだし、煮汁を少し煮つめて冷やす。ここに貝を戻して一日置く。クリックで閉じますホッキガイの焼き貝(ウバガイの焼き貝) 剥き身にして一度貝から外してていねいに塩水のなかで、砂などを流す。片方の貝殻に乗せて強火で焼き上げる。仕上げに醤油・酒を合わせたものを加える。クリックで閉じますホッキガイの天ぷら(ウバガイの天ぷら) むき身にして内臓を取る。水管、ヒモのの汚れを取り、とんとんと包丁目を入れる。適宜に切り、高めの揚げ油で短時間で揚げる。クリックで閉じますホッキガイ(ウバガイ)のリゾット(Risotto) ウバガイは貝のままゆでて、ゆで汁と身を分けておく。身は足とヒモ、水管に分ける。玉ねぎとマッシュルームを細かく切り、ニンニクで香りづけしたオリーブオイルで炒める。ここに生の押し麦、米を入れて少し炒めヒモと水管を加え、ゆで汁で煮上げる。米と押し麦がアルデンテになったら粉チーズとバターを加えて刻んだ足を加えて火を止める。クリックで閉じますホッキガイ(ウバガイ)の炊き込みご飯 水加減したところに水管、ヒモなどを入れて塩と酒で味つけして炊飯したもの。蒸らすときに足(刺身にする部分)を加える。クリックで閉じます好んで食べる地域・名物料理
ーほっきカレー(うばがいカレー) 肉の代わりにホッキを使っているだけの素朴なもの。その昔は肉よりもホッキ(ウバガイ)の方が安かったため。産地では昔、野菜と一緒に炒めるときから加えていたが、これでは硬くなる。本種のエキスと少々硬くなるのが肉に近いものだったのかも。[北海道苫小牧・白老、福島県浜通]クリックで閉じますほっきみそ(うばがいみそ) むき身を少量の水でゆで、身を取り出し、ゆで汁とみそを合わせて、水分を飛ばす。水分がなくなったら身(あし)、ひも、水管などを刻んで加える。身などを加えると水分が出るので加減が難しい。砂糖などで甘味を加えるとご飯に合う。[福島県相馬市原釜]クリックで閉じますホッキ貝のみそ汁 むき身を洗い、内臓を指で押し出して取り、水から煮てみそをとく。実際に作って見ると、アサリほどではないがうま味豊かなだしが出て美味。[北海道釧路市]クリックで閉じます酢のもの 原釜漁港で水揚げをしていた方に聞いた料理。ていねいに水洗いして湯引きする。これをきゅうりもみと合わせた酢の物。[福島県相馬市原釜]クリックで閉じますほっき飯 福島県浜通。ホッキをそのまま炊き込むものと、甘辛く煮て、混ぜるタイプがある。そのまま炊き込むと本種は硬くなるがご飯自体のうま味が豊か。写真は甘辛く煮たウバガイを炊きたてのご飯に混ぜ込んだもの。クリックで閉じますうばがいのかゆ 干しウバガイの足の部分はそのまま食べ、ヒモや水管の部分を集めて置き、かゆに煮る。米と一緒に煮ると軟らかく甘味がある。「うばがい」のうま味の出たかゆも優しい味でいくらでも腹に収まる。[山梨県甲府市周辺]クリックで閉じます加工品・名産品
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むしほっき(蒸し北寄、蒸北起)
■「(石川啄木)の明治45年の日記に「夜になると熱は下がったが、からだは疲れてゐた。豆銀糖を食ってゐると、不図私は盛岡の蒸し北起が食いたくなった」。「(昭和30年代生まれの友人の弁)幼いときから蒸しホッキをまるごと、豆腐などの食材と一緒に入れた『おつゆ』を食べていた」、「(同友人の父親の回想)ホッキ貝は盛岡では珍しいものではなく、冬ともなれば竹串に三つずつ刺したものを売っていた」[『盛岡学 vol.2 2006』内「石川啄木が愛した盛岡の味」松田十刻]
■「ホッキ貝の蒸したものをお雛様に供えました(雛の節供に食べていたと言うことかも)」[金谷つた 1904年盛岡市生まれ『おばあちゃんからの聞き書き 明治・大正・昭和の食卓』(ハウス食品ヒーブ室編 2001)]
ー干し姥貝(乾うば貝) 山梨県甲府市などで作られスーパーなどでも売られている。煮貝の老舗「みな与」は古くは魚屋(鮮魚店)で少なくとも戦前から作られていたという。「ウバガイ」は主に福島県での呼び名で、主に東北などから送られてきたものかも知れない。非常に硬いものだが基本的にそのまま口のなかに入れてじっくり唾液に馴染ませて食べる。子供には足の先端に孔をあけて糸を通して首にかけておやつとして与えていたという。おしゃぶりの代わりだろう。水管やひもなどはかゆにする。[みな与 山梨県甲府市ほか]クリックで閉じます釣り情報
ー歴史・ことわざ・雑学など
母恋 北海道室蘭市。駅名にもある。アイヌの語「ポクセイ・オ・イ」。ホッキガイ(ウバガイ)がたくさんとれるところ、という意味から。参考文献・協力
『日本近海産貝類図鑑』(奥谷喬司編著 東海大学出版局)、『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社)、『商用魚介名ハンドブック』(日本水産物貿易協会編 成山堂)、『新北のさかなたち』(水島敏博、鳥澤雅他 北海道新聞社)、『魚介類に寄生する生物』(長澤和也 成山堂書店)、『釧路港 味覚の散歩道』(工藤虎男 釧路新書別巻)、『聞き書 福島の食事』