ウバガイ

Scientific Name / Pseudocardium sachalinense (Schrenck,1862)

代表的な呼び名ホッキガイ

ウバガイの形態写真

殻長15cm、殻高12cm、重さ600gを超える。黒っぽい殻皮があり、膨らみが非常に高く三角お握り型。前後の側歯は強く大きい。[14cm SL・600g]
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殻長15cm、殻高12cm、重さ600gを超える。黒っぽい殻皮があり、膨らみが非常に高く三角お握り型。前後の側歯は強く大きい。[14cm SL・600g]殻長15cm、殻高12cm、重さ600gを超える。黒っぽい殻皮があり、膨らみが非常に高く三角お握り型。前後の側歯は強く大きい。[14cm SL・600g]殻長15cm、殻高12cm、殻幅10cm、重さ600gを超える。黒っぽい殻皮があり、膨らみが非常に高く三角お握り型。殻長15cm、殻高12cm、重さ600gを超える。黒っぽい殻皮があり、膨らみが非常に高く三角お握り型。前後の側歯は強く大きい。殻長15cm、殻高12cm、重さ600gを超える。黒っぽい殻皮があり、膨らみが非常に高く三角お握り型。前後の側歯は強く大きい。[14cm SL・600g]握り型。殻長15cm、殻高12cm、重さ600gを超える。黒っぽい殻皮があり、膨らみが非常に高く三角お握り型。前後の側歯は強く大きい。[11.5cm SL・143g]
    • 珍魚度・珍しさ

      ★★
      少し努力すれば手に入る
    • 魚貝の物知り度

      ★★★
      知っていたら通人級
    • 食べ物としての重要度

      ★★★★
      重要
    • 味の評価度

      ★★★★
      非常に美味

    分類

    軟体動物門二枚貝綱異歯亜綱マルスダレガイ目バカガイ超科バカガイ科バカガイ亜科ウバガイ属(Pseudocardium)

    外国名

    学名

    Pseudocardium sachalinense (Schrenck,1862)

    漢字・学名由来

    漢字 姥貝、雨波貝 Ubagai
    由来・語源 『目八譜』から。「ウバガイ」はもとは福島から銚子当たりまでの呼び名。武蔵石寿は明らかに千葉県から福島県あたりの個体を見て名付けたのだと考えられる。貝殻が薄汚れて見え、姥(老婆)を思わせるため。
    岩川友太郎はホッキガイとしている。
    目八譜
    1843(天保14)、武蔵石寿が編んだ貝の図譜のひとつ。図は服部雪斎が描く。武蔵石寿は貝類を形態的に類別。1064種を掲載する。現在使われている標準和名の多くが本書からのもの。貝類学的に非常に重要。

    地方名・市場名

    ポキセイ
    場所アイヌ語 参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 
    ドンブリガイ
    場所北海道十勝・釧路 参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 
    ツウツウレップ
    場所北海道長万部 参考文献 
    ウバッカイ
    場所茨城県 参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 
    ホッキゲイ
    場所青森県八戸 参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 
    ホッキガイ[北寄貝] ホッキ
    場所北海道道南地方・網走・十勝、東北、青森県八戸・野辺地、岩手県旧九戸郡、宮城県仙台、福島県相馬市、東京、関東周辺、九州 備考アイヌ語のポキセイからきたものだと思う。漢字を当てたのは後世のことだろう。 
    ニシホッケ
    備考アイヌ語で。 参考文献より。 

    生息域

    海水生。潮間帯下〜水深50mの砂泥地。
    鹿島灘・北海道日本海沿岸以北。
    千島列島、サハリン、沿海州、オホーツク海の浅い砂地に生息。

    生態

    河川の影響を受けない砂地に生息。
    海水中の植物プランクトンやデトリタスをエサとしている。
    生殖腺の色(やや赤い乳白色-雄、乳白色-雌)。
    産卵期は初夏から夏。

    基本情報

    国内では茨城県以北の太平洋沿岸、北海道で揚がる。水揚げ量は圧倒的に北海道が多い。市場などでは主にホッキガイと呼ばれている。漢字にすると「北寄貝」で北のイメージが強い。ウバガイという標準和名はもとは福島県での呼び名で、流通の場ではまったくといっていいほど使われていない。
    代表的な産地は北海道、青森県、福島県など。貝ケタ網漁でとる。流通量は多く、比較的安い。
    基本的に剥き身にして利用するが、非常に剥きやすい。
    万人向きの味なのでもっと一般家庭でも利用すべきだと思う。
    珍しさ度 流通量は決して少なくない。手に入らなければ通販でも入手できる。

    水産基本情報

    市場での評価 北海道、東北太平洋側などから日常的に入荷してくる。活(生きている状態)での入荷以外に冷凍ものもある。市場にはない日はないというくらいに重要なものだ。比較的安い。市場では黒くて大きいものほど高く、色合いの薄くて小さいものは安い。
    漁法 けた網漁
    産地 北海道、福島県、宮城県

    福島県相馬市原釜 揚がったばかりのウバガイ。小さいものは茶色で、大きなものは黒い。また非常に大型になると殻皮が白っぽくなる。漁業対象としては福島県が南限だと思っている。
    大きい 同じ重さのアサリと比較すると、大きさがわかりやすい。[約290g]

    選び方

    持ち重りのするもの。しっかり貝殻を閉じているもの。

    味わい

    旬は不明。
    貝殻は厚く重みがある。砂を噛んでいることが多い。
    足(すしネタなどに利用する部分)が大きく、つけ根部分の中にざらっとした肝膵臓がある。
    クセのない味わい。熱を通すと少し硬くなる。

    剥き身 軟体部分は総て食べられるが、足のつけ根の部分、柔らかいどろっとした部分は押し出して捨てることが多い。鳥のクチバシ状の部分が足。
    ウバガイ(ホッキガイ)の足身 左は軽く湯引きしたもの。右は生。熱を通すと赤くなり、甘味がます。また生よりも生臭みが少ない。

    栄養

    危険性など

    ヒモビル 環形動物門無針綱ヒモムシ目。外套腔に寄生する。人体にはまったく影響しない。

    食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)

    ウバガイの料理・レシピ・食べ方/生食・湯引き(生もしくは軽く湯引く、和え物、サラダ)、ソテー(バター焼き、オリーブオイル焼き)、煮る(鍋、煮貝)、焼く(焼き貝)、揚げる(天ぷら、フライ)、ご飯(リゾット、炊き込みご飯)

    ホッキガイの刺身(ウバガイのゆびき) 完全な生でもおいしいが、軽く湯引きすると甘味や食感が増す。ボリューミーくせのない味わい。万人に好まれる味だと思っている。
    剥いてヒモや内臓を切り取り、塩水の中で砂などをていねいに流す。身(足)を開いて赤く染まるくらいにやや強めの塩水で湯引き、氷水に落としてぬめりをとる。水分をよく切り、大きさによっては半分に切る。軽く酢洗いしてもいい。

    ホッキガイのぬた(ウバガイのぬた) 基本的に剥き身にして湯引きする。ひも、貝柱、足などを適当に切る。ノビルなど好みの野菜はゆでて、冷水に落として水分をよくきり、適当に切る。これを酢みそ(みそ・酢・砂糖、野菜によっては辛子)で和える。
    ホッキガイのサラダ(ウバガイのサラダ) 足の部分を開き、湯通しして冷水に落として粗熱を取る。水分をよくきり、適当に切る。野菜はアボカドが合う。ここではコリンキーと一緒にレモン、塩、オイル、マヨネーズを合わせたもので和える。マヨネーズとアボカドは本種とよく合う。
    ホッキガイのしゃぶしゃぶ(ウバガイのしゃぶしゃぶ) 剥き身にして砂などを洗い流して水切りしておく。足などは開く、水管は半割にしてざっと洗うなどして、昆布だしのなかで火を通しながら食べる。自分好みの火の通し加減で食べる。酒のアテに最高。
    ホッキガイの中華炒め(ウバガイの中華炒め) 中華風に塩味で炒めてみた。剥き身にして処理をし、適当に切る。野菜は適当に切っておく。油に塩を加えて熱し、しょうが、ねぎの風味をつけて野菜と本種を炒める。仕上げに味見してコショウを振る。本種は油脂を使った料理にとても向いている。
    ホッキガイのバター焼き(ウバガイのバター焼き) 剥き身にして処理をし、水分をよくきっておく。一緒に炒める野菜(ここでは玉ねぎ)などは切っておく。これを熱したマーガリン(バター)でさっと炒めて、しょうゆで風味づけする。好みでニンニクを加えてもおいしい。ここではご飯に乗せたが、パンを合わせてもおいしい。
    ホッキガイの鍋(ウバガイの鍋) 剥き身にしてていねいに砂を洗い流す。カツオ節出しに塩、酒で味つけ。ここでウバガイの足、ヒモ、水管と豆腐を温めながら食べる。野菜は好みのものを。煮すぎない方がうまい。
    ホッキガイの煮貝(ウバガイの漬け込み) むき身にしてヒモと水管を外し、ヒモの黒い部分をこそげ取る。足の内臓の部分を押し出して捨てる。みりん、酒、しょうゆ、水を味加減したところに貝を入れて火を通す。硬くなる前に取りだし、煮汁を少し煮つめて冷やす。ここに貝を戻して一日置く。
    ホッキガイの焼き貝(ウバガイの焼き貝) 剥き身にして一度貝から外してていねいに塩水のなかで、砂などを流す。片方の貝殻に乗せて強火で焼き上げる。仕上げに醤油・酒を合わせたものを加える。
    ホッキガイの天ぷら(ウバガイの天ぷら) むき身にして内臓を取る。水管、ヒモのの汚れを取り、とんとんと包丁目を入れる。軽く湯通しして、氷水に落として粗熱をとり、水分をよくきる。小麦粉をまぶして衣をつけて強火で短時間揚げる。
    ホッキガイのフライ(ウバガイのフライ) 足の部分を開いて湯通しして冷水に落とす。粗熱をとり、水分をよくとる。塩コショウして小麦粉をまぶして衣(小麦粉・卵・水)をからめてパン粉をつけてやや高めの温度で揚げる。揚げすぎると硬くなる。
    ホッキガイ(ウバガイ)のリゾット(Risotto) 剥き身にして砂などをよく洗い流す。足のつけねにあるどろっとした部分を押し出して捨て、軽く湯引きして冷水に取り、水分をよくきり適当にきる。ゆで汁はとっておく。玉ねぎとマッシュルームを細かく切り、ニンニクで香りづけしたオリーブオイルで炒める。ここに生の米を入れて少し炒めヒモと水管を加え、ゆで汁で煮上げる。米と押し麦がアルデンテになったら粉チーズとバターを加えて刻んだ足を加えて火を止める。
    ホッキガイ(ウバガイ)の炊き込みご飯 水加減したところに水管、ヒモなどを入れて塩と酒で味つけして炊飯したもの。蒸らすときに足(刺身にする部分)を加える。

    好んで食べる地域・名物料理


    ほっきカレー(うばがいカレー) 昔は肉よりもホッキ(ウバガイ)の方が安かったため、産地でよく作られていた。剥き身にして適当に切り、野菜と一緒に炒めるときから加えて、後は普通にカレーを作る。軟体は硬くなるものの、貝をたっぷり使うとおいしい。[北海道苫小牧・白老、福島県浜通]
    ほっきみそ(うばがいみそ) むき身を少量の水でゆで、身を取り出し、ゆで汁とみそを合わせて、水分を飛ばす。水分がなくなったら身(あし)、ひも、水管などを刻んで加える。身などを加えると水分が出るので加減が難しい。砂糖などで甘味を加えるとご飯に合う。[福島県相馬市原釜]
    ホッキ貝のみそ汁 剥き身にし、水管などの砂を洗い流す。足の元にある内臓を指で押し出して取り、水から煮てみそをとく。実際に作って見ると、アサリほどではないがうま味豊かなだしが出て美味。[北海道釧路市]
    酢のもの 原釜漁港で水揚げをしていた方に聞いた料理。ていねいに水洗いして湯引きする。これをきゅうりもみと合わせた酢の物。[福島県相馬市原釜]
    ほっき飯 福島県浜通。ホッキをそのまま炊き込むものと、甘辛く煮て、混ぜるタイプがある。そのまま炊き込むと本種は硬くなるがご飯自体のうま味が豊か。写真は甘辛く煮たウバガイを炊きたてのご飯に混ぜ込んだもの。
    うばがいのかゆ 干しウバガイの足の部分はそのまま食べ、ヒモや水管の部分を集めて置き、かゆに煮る。米と一緒に煮ると軟らかく甘味がある。「うばがい」のうま味の出たかゆも優しい味でいくらでも腹に収まる。[山梨県甲府市周辺]

    加工品・名産品


    むしほっき(蒸し北寄、蒸北起)
    ■「(石川啄木)の明治45年の日記に「夜になると熱は下がったが、からだは疲れてゐた。豆銀糖を食ってゐると、不図私は盛岡の蒸し北起が食いたくなった」。
    「(昭和30年代生まれ)幼いときから蒸しホッキをまるごと、豆腐などの食材と一緒に入れた『おつゆ』を食べていた」、「(同父親の回想)ホッキ貝は盛岡では珍しいものではなく、冬ともなれば竹串に三つずつ刺したものを売っていた」[『盛岡学 vol.2 2006』内「石川啄木が愛した盛岡の味」松田十刻]
    ■「ホッキ貝の蒸したものをお雛様に供えました(雛の節供に食べていたと言うことかも)」[金谷つた 1904年盛岡市生まれ『おばあちゃんからの聞き書き 明治・大正・昭和の食卓』(ハウス食品ヒーブ室編 2001)]

    干し姥貝(乾うば貝) 山梨県甲府市などで作られスーパーなどでも売られている。煮貝の老舗「みな与」は古くは魚屋(鮮魚店)で少なくとも戦前から作られていたという。「ウバガイ」は主に福島県での呼び名で、主に東北などから送られてきたものかも知れない。非常に硬いものだが基本的にそのまま口のなかに入れてじっくり唾液に馴染ませて食べる。子供には足の先端に孔をあけて糸を通して首にかけておやつとして与えていたという。おしゃぶりの代わりだろう。水管やひもなどはかゆにする。[みな与 山梨県甲府市ほか]

    釣り情報

    歴史・ことわざ・雑学など

    母恋 北海道室蘭市。駅名にもある。アイヌの語「ポクセイ・オ・イ」。ホッキガイ(ウバガイ)がたくさんとれるところ、という意味から。

    参考文献・協力

    『日本近海産貝類図鑑』(奥谷喬司編著 東海大学出版局)、『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社)、『商用魚介名ハンドブック』(日本水産物貿易協会編 成山堂)、『新北のさかなたち』(水島敏博、鳥澤雅他 北海道新聞社)、『魚介類に寄生する生物』(長澤和也 成山堂書店)、『釧路港 味覚の散歩道』(工藤虎男 釧路新書別巻)、『聞き書 福島の食事』
  • 主食材として「ウバガイ」を使用したレシピ一覧

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