ミズダコ

Scientific Name / Enteroctopus dofleini (Wülker, 1910)

ミズダコの形態写真

全長3m前後になる世界最大のタコ。胴(頭に見える部分)の表皮は透明感があり、たるむ。腕は全長の70-80%の長さで、8本が同じくらいの長さをしている。腕の先が非常に細くなる。
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全長3m前後になる世界最大のタコ。胴(頭に見える部分)の表皮は透明感があり、たるむ。腕は全長の70-80%の長さで、8本が同じくらいの長さをしている。腕の先が非常に細くなる。全長3m前後になる世界最大のタコ。胴(頭に見える部分)の表皮は透明感があり、たるむ。腕は全長の70-80%の長さで、8本が同じくらいの長さをしている。腕の先が非常に細くなる。
    • 魚貝の物知り度

      ★★★
      知っていたら通人級
    • 食べ物としての重要度

      ★★★
      一般的(流通量は普通)
    • 味の評価度

      ★★★★
      非常に美味

    分類

    動物界軟体動物門頭足綱八腕目無触毛亜目マダコ超科マダコ科Paroctopus属

    外国名

    学名

    Enteroctopus dofleini (Wülker, 1910)

    漢字・学名由来

    漢字 水鮹(Mizudako)
    由来・語源 マダコよりも水分が多いため。

    地方名・市場名

    エラカレ
    場所岩手県久慈市 部位鰓 参考20140709 
    タコドウグ(ドウグ)[鮹道具]
    場所青森県むつ市・大間町 部位内臓 参考20191217_18むつ市・大間町 
    オオダコ シオダコ
    場所北海道 性別雄 備考雄 
    マダコ
    場所北海道 性別雌 

    生息域

    海水生。潮間帯〜水深200メートル。
    五島列島以北の日本海、駿河湾以北の太平洋。北部太平洋、サハリン、千島列島、カムチャッカ半島、アリューシャン列島、アラスカ湾からカリフォルニア州。土佐湾でもあがっている。

    生態

    一生に一度だけ産卵する。寿命は2年〜3年。雄で4.5歳、雌で5年の記録がある。
    北海道では11月〜12月に雄が精莢(せいきょう)という精子の入ったカプセルを雌に受け渡し、交接後翌年6月〜7月に死ぬ。
    産卵は6〜7月。2週間かけて50000粒前後産み、孵化まで守る。孵化後2ヶ月ほどで死ぬ。

    基本情報

    ミズダコは北太平洋に広く分布している世界最大のタコである。国内で水揚げされるタコのなかでもっとも水揚げ量が多い。
    非常に大型になり、水っぽいと評価の低いタコだったが、最近では様々な料理法などが生まれ人気がある。
    またマダコの減少からタコの代表的な加工品である酢だこなども本種が主流。マダコ同様にゆでたものも出回っている。
    また軟体部分以外にも卵巣、白子、鰓、烏トンビ(口)などが流通している。

    水産基本情報

    市場での評価 マダコの減少から本種の方が入荷量は多い。活けもあるが、足(腕)だけとなったものが多く、歩留まり100パーセントなので人気が高く高値となっている。
    漁法 釣り、カゴ漁、タコ箱
    主な産地 北海道、青森県、福島県など

    ミズダコの流通形態 活ダコもあるが、生鮮品としては足だけであることが多い。頭部を切り落として無駄な皮も除去している。年間を通して入荷があり高い。

    選び方

    ほとんどが足(腕)だけになっている。軽くたたいて動くもので、見た目に透明感のあるもの。雌の方が味がいいとされているが、違いがよくわからない。

    味わい

    旬ははっきりしない
    マダコよりもやや水分が多いが、その分柔らかい。
    ゆでても硬くならない。
    完全な生でも食べることができる。

    ミズダコの卵(卵巣) 市場では「たこたま」と呼ぶ。そのまま皮をやぶって酢の物などにする。プリプリと珍味である
    ミズダコの鰓(えら) 関東などには生ではなく、煮たもの(塩ゆで)が入荷してくる。味にコクがあって甘い、茹でてあり切ってそのまま食べられるので人気がある

    栄養

    危険性など

    食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)

    ミズダコの料理法・調理法・食べ方/煮る(塩ゆで、煮つけ)、焼く(あぶり)、揚げる(唐揚げ、天ぷら)

    ミズダコの塩ゆで(ゆでだこ) 完全な生でも食べられるが、少し火を通した方がおいしいと思う。ここでは無駄な皮を取り、約2分ほど塩ゆでにしたもの。ゆで上がりを氷水に取り、水分をよく切り、薄切りにする。水分が多いもののタコらしい風味と甘味があってとてもうまい。

    ミズダコの吸盤 吸盤の部分を30秒間塩ゆでにしてもの。吸盤は裏側に筋肉が盛り上がるようについている。これがコリコリして、独特のうま味があってとてもおいしい。大型個体の特に雄の大きな吸盤は吸盤だけでも実においしい。
    ミズダコのあぶり(焼き蛸) 足(腕)の吸盤と皮を取り去る。表面を強火で焼き目がつくくらい焼き上げる。氷水に落として粗熱をとり、薄切りにしたもの。焼いた表面にタコらしい香りがして、中の生の部分と対照的な味わいがする。
    ミズダコの頭の塩ゆで 頭部の塩ゆでは単独でも流通する。活を買った場合は頭部は別に数分かけて塩ゆでする。粗熱をとり水分を飛ばす。皮を剥いて食べると柔らかく、タコらしい風味には乏しいがイヤミがない。

    ミズダコのガリシア風 3分ほど塩ゆでして、薄くスライスする。皿に並べてカイエンヌペッパーを振り、オリーブオイルを回しかける。単純な料理ではあるが、オリーブオイルの香り、カイエンヌペッパーの風味があいまってとてもうまい。

    ミズダコのしゃぶしゃぶ 腕は冷凍庫で半分凍らせる。これをできるだけ薄くスライス。昆布だしのなかで自分の好みの火の通し加減で食べる。ほとんど生で食べるのと、しっかり火を通すのとで味は大いに違う。その違いを楽しむ。
    ミズダコの桜煮 生を塩もみをしてヌメリを流す。よく水洗いして、軽くゆでて冷水に取る。これを鍋に入る大きさに切り、水・しょうゆ・みりん・酒・好みで砂糖でじっくり1時間くらい煮上げる。ゆっくり煮立たせないように煮るとあまり硬く締まらず、タコらしい風味がしておいしい。

    ミズダコの頭のトマト煮込み 頭部は適当に切る。オリーブオイルでにんにくを炒めて香りだしをして、切り身とトマトを炒めて、トマトだけの水分で煮込む。じっくり煮込むと柔らかくトマトのうま味と相まってとても美味。

    好んで食べる地域・名物料理

    たこ焼き 島根県浜田市長浜ではミズダコのたこ焼きが作られている。

    タコざんぎ(ミズダコの唐揚げ) 足(腕)を食べやすい大きさに切り、唐揚げにしたもの。タコ足(腕)は軽く塩ゆでにする。切れ目を入れながら適当に切り、酒・みりん・しょうゆで下地をつける。水分をよく拭き取り、片栗粉をまぶして高温で短時間揚げる。[北海道]
    タコのライスカレー 肉が高かった頃、ミズダコを使ってカレーを作っていたという。肉と同じように玉ねぎなどと炒め、水を加えてタコが柔らかくなるまでじっくりと煮込む。ジャガイモやニンジンは別のフライパンで炒めて途中で加えるといい。煮えたら火をとめて市販のルーを溶くだけ。[北海道各地]
    道具汁(ミズダコの内臓の汁) 本来は生の内臓(鰓や生殖巣)を適当に切り、水(昆布だし)で煮て、豆腐、ねぎなどを加え、塩もしくはしょうゆ、みそで味つけしたものかも知れない。下北半島では一般家庭ではゆでた「道具」で汁を作るという。化学調味料を使う人が多いようだが、昆布だしで煮だして味付けするだけでもとても味わい深い。写真は塩としょうゆで味つけした、しょうゆ仕立ての「道具汁」。

    加工品・名産品

    煮たこ 塩もみして、塩ゆでしたもの。これを切ると刺身になり、酢の物、すしダネなどになる。
    皮むきたこ イボの部分をのぞいて足(腕)の皮をむいたもの。流通上もっとも一般的なもの。
    ミズダコの酢だこ酢だこ 北海道、福島県などで作られている。非常に甘塩っぱい味。無着色のものもあるが、ほとんどが赤く着色されてどぎつい感じ。じょじょに無着色の別の種類(ヤナギダコや輸入ダコ)で作られた酢だこに取って代わられようとしているが、根強い人気を誇る。岐阜県、東京を始め関東、東北、北海道などでは正月商品の代表的なもの。年中手に入るが師走になると大量に出回る。

    たこどうぐの塩ゆで(ミズダコの内臓の塩ゆで) ほとんど捨てるところのないのがミズダコだと思う。軟体をはじめ、内臓総てが食材として流通する。下北半島ではこれを「たこの道具」という、塩ゆでも生もある。塩ゆでは切り分けて酢みそなどをつけて食べるようだが、非常においしい。

    釣り情報

    歴史・ことわざ・雑学など

    参考文献・協力

    『新北のさかなたち』(水島敏博、鳥澤雅他 北海道新聞社)、『聞書き 北海道の食事』(農文協)
  • 主食材として「ミズダコ」を使用したレシピ一覧

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