
全長30cm前後になる。外套膜は卵状で表面は顆粒が目立ち鮫肌。第2腕と第3腕の腕膜上に暗色の丸い地に金色の輪紋がある。
イイダコの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)
-
魚貝の物知り度 |
食べ物としての重要度 |
味の評価度 |
★★ これは常識 |
★★★ 一般的(流通量は多くも少なくもない) |
★★★★ 非常に美味 |
分類 |
動物界軟体動物門頭足綱八腕目無触毛亜目マダコ科Amphioctopus属
|
外国名 |
Ocellated octopus,Poulp
|
学名 |
Amphioctopus fangsiao (d'Orbigny, 1839)
|
漢字・学名由来 |
漢字 飯蛸、望潮魚(和漢三才図絵より)。
由来・語源 卵を持つ春が旬で、煮ると卵が飯粒のようになる。
タコとは
■ 漢名「海蛸子」。これは海にいるアシダカグモという意味合い。これを略して「蛸」一文字とした。
■ 【た】は「手」、【こ】は「許多(ここら)」の意。手が多いことから。
■ 【た】は「手」、【こ】は「ナマコ(海鼠)」の意。手を持った動物のこと。
■ 「テコブ(手瘤)」の意。
■ タコの手は物に凝りつくから「手凝」になった。
■ 足が多いから「多股」の意。
■ 鱗(うろこ)のない魚であることから「ハタコ(膚魚)」の意。
■ 女房詞(朝廷などに使える女性の隠語)で「天蓋(てんがい)」。タコの足が垂れ下がるのを天蓋に見立てた。
■ 正月などに揚げる「凧(たこ)」は長い尻尾をつけたさまがタコに似ているため。
■ 英語でoctopus。
由来・語源 卵を持つ春が旬で、煮ると卵が飯(いい)、飯粒(ご飯)のようになる。写真は塩ゆでしたもの。卵巣の卵粒がはじけるとまさに飯粒そのもの。 |
地方名・市場名 [?] |
|
生息域 |
海水生。浅い干潟や内湾。
北海道南部以南、日本各地。朝鮮半島南部、中国沿岸。 |
生態 |
■ 産卵は春。
■ 卵は8ミリほどにもなり、米粒形。
■ 貝殻などに卵を産みつけ、雄(おす)が保護する。
■ 浅い砂地に生息。 |
基本情報 |
主に本州以南の浅い内湾に生息している。底曳き網、蛸壺などでもとれ、古くから漁獲されている食用ダコだ。
春の季語歳時記にもあるごとく、国内でもっとも愛されている小型のタコ。
「いい」とは「飯」のことで春に飯粒状の子を持つことからこの名がある。名の通り、本種の価値は卵のあるなしによって決まり、雌の方が圧倒的に高い。
関西以西ではおでん種としても利用され、需要が高いのでタイなどから近縁種が輸入されてもいる。 |
水産基本情報 |
市場での評価 春から初夏にまとまって入荷してくる。春の子持ちは非常に高く、雄の二倍以上する。
漁法 底曳き網
産地 瀬戸内海沿岸、三河湾など |
選び方 |
白っぽくないもの。目が澄んで輪紋がくっきりしているもの。 |
味わい |
旬は春
小振りのタコで滑りなどは少なく、熱を通してもあまり硬くならない。
タコらしい小豆を煮たときのような香りは控えめ。
甘みとほどよい旨みがあり、まったくクセはない。
「飯蛸」とあるように卵巣が米粒を思わせる食感、形で、ほっくりした甘みと食感がある。
雄の白子の方が柔らかく、食感は乏しいが味がいい。
下処理
1 胴の部分をめくり墨のみを取り除く。取りにくいので墨を袋から押し出すようにしてもいい。
2 卵、肝膵臓、鰓などを胴にもどす。
3 まず手でもみ、滑りが出てきたら、塩でまたもむ。粘液を何度も洗い流し、水を切っておく。
|
栄養 |
ー |
寄生虫 |
ー |
食べ方・料理法・作り方 |
イイダコの料理法・調理法・食べ方/煮る(しょうゆ煮、塩ゆで、マリネ)、ソテー(アヒージョ、オリーブオイル焼き、ソース焼き)、焼く(つけ焼き)、ご飯 イイダコの桜煮る しょうゆで甘辛く煮た桜煮。酒、砂糖、醤油で煮る。やや甘めの味つけにして美味。煮てもタコらしい味わいが生きているもので、飯(雌の卵)のほっくりして甘いのがよく、白子の端正で柔らかい味もいい。煮たものを細かく刻み、煮汁とご飯に混ぜ込んでもいい。
イイダコの塩ゆで 「ゆでイイダコ」というべきか? 頭を裏返し、はらわたを出す。最初はそのまま手でもみ上げ、仕上げに塩もみしてぬめりを取り水洗い。これを塩水でゆでる。ゆで加減はときどき揚げて足の部分などを触る。「飯(卵巣)」が入っていたら10分くらいゆでるといい。
イイダコと柑橘類のマリネ 短時間軽くゆでたイイダコをまだ熱いうちに、ワインビネガーと塩を合わせた地につけ込む。熱が冷めてきたら柑橘類(ここでは黄金柑、ブラッドオレンジ)とルッコラなどを合わせて和える。タコには柑橘類が非常に合う。 イイダコのオリーブオイル焼き 頭を裏返して食べられない内臓部分、墨を抜く。これをさっと塩もみして水洗い。水分をよくきり適当に切る。これをにんにく風味をつけたオリーブオイルでさっと火を通す。仕上げにバルサミコを振ってみた。 イイダコのアヒージョ 腹部(内臓などの入った頭に見える部分)をゆでたものを適当に切る。耐熱性のあるものに油(ここではグレープシードオイルだけどなんでもいい)、にんにく、イイダコ、トマトを入れて火にかける。仕上がりにパセリなど青みを振る。 イイダコの混ぜご飯 見た目は地味だが春らしい味になる。桜煮を細かく切る。ご飯が炊き上がったら、切った桜にと煮汁を加えて15分以上蒸らす。蒸らし終わったらざっくりと混ぜて出来上がりだ。 イイダコのつけ焼き 頭部を裏返して内臓とすみを抜く。手でよくもみ、ぬめりを出して水洗い。水分をよく切っておく。これに串打ちをして炭火であぶり、2〜3回、たれをつけて仕上げる。 |
好んで食べる地域・名物料理 |
ー |
加工品・名産品 |
干しだこ 兵庫県明石市。生の足を串で広げて硬く干し上げたもの。焼いて食べるが、硬い。 |
釣り情報 |
白い陶器のラッキョ型のものをつけたテンヤ、もしくはラッキョ自体をつけたテンヤ、豚の脂身などをつけたテンヤで船釣り、投げ釣りで釣る。 |
歴史・ことわざ・雑学など |
■ 俳句では春の季語。
明石古代蛸壺 弥生時代、古墳時代にはイイダコ専用の小型の蛸壺が作られていた。明石市周辺、瀬戸内海ではこの古代に作られた素焼きの小型蛸壺が今でも底曳き網などにかかり、あがる。
栄螺の空貝 〈栄螺の空貝(から)を網に繋いで水中に投じる。すると久しくして鱆は貝の中に入る。〉『和漢三才図会』(寺島良安 東洋文庫 平凡社 正徳2年 1712) |
旧ページ内容 古い記載が含まれている可能性があります | 産卵期は春なので秋から冬にかけて「飯(いい)」を持つ。このメスはなかなか高価で醤油味で煮たものは「いい」にコクがありとてもうまい。
また夏は肉の味は最高の時期で、さっと茹でてわさびじょうゆで食べたい。
おでんには下ゆでしたイイダコをいれる。ことこと出汁の中で長時間ゆすぶられて柔らかく煮上がったときが食べ頃。
関東ではイイダコと里芋もしくはジャガイモの煮ものを祭などに作るのだが、これもうまい。 |
参考文献・協力 |
『日本近海産貝類図鑑』(奥谷喬司編著 東海大学出版局)、『新版 水産動物学』(谷田専治 恒星社厚生閣)、『たべもの語源辞典』(清水桂一編 東京堂出版)、『新版俳句歳時記』(角川書店)、『日本語源大辞典』(小学館)、『魚と貝の事典』(望月賢二 柏書房) |
-
-
関連コンテンツ