生息域 |
海水生。
青森県日本海側以南、日本各地。近年、日本海でも普通になり北上傾向にある。 |
生態 |
産卵期は瀬戸内海では6月〜9月前後でピークは6月と9月の2回。産卵期は地域によって違う。
寿命は約1年。
心臓は鰓の付け根に1、鰓の左右に2の計3。
大型の甲殻類や貝などを補食する。
墨汁嚢を持ち興奮したり危険を感じると墨を吐く。
ウツボなどが天敵。
■ 腕と胴(頭に見える部分)を合わせて60センチ前後になる。腕はほぼ同じくらいの長さ。 |
基本情報 |
タコ総論
一般に食用になるタコのほとんど総てがマダコの仲間。
国内ではマダコ、ミズダコ、ヤナギダコ、イイダコなどが代表的なもの。
また韓国人気から最近ではテナガダコもクローズアップされてきている。
「のらくろ」などの著者として有名な田川水泡の代表作に「たこのはっちゃん」があり、葛飾北斎の浮世絵など文化的な方面でも人気がある。
その中心的なものがマダコであるが近年減少気味となっている。
これを補っているのが日本海や北国で水揚げされるミズダコ。
またタコは常に需要が供給を上回っており、それをアフリカモーリタニアからの輸入で満たしている。
鮮魚としてもゆでだこ、珍味などでも重要なもの。
本種(マダコ)について
タコといったら本種のことをさす。
国内でとれるのは他にはミズダコ、ヤナギダコ、テナガダコ、イイダコなど。
タコの水揚げ量はは5万トンあまり。
マダコはミズダコ、ヤナギダコよりも漁獲量は少なく、近年では高価なものとなっている。
瀬戸内海や大阪湾では夏が旬とされ、東京湾では冬がうまいともいう。
またタコの卵はなかなか美味。塩漬けにしたものを海藤花(かいとうげ)という。
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水産基本情報 |
市場での評価 活けものと、ゆでたものがある。ともに非常に高価だ。年々入荷量が減ってきているように思える。
漁法 たこつぼ(箱)漁、釣り、底曵き網
産地 兵庫県、福岡県、岡山県  市場でのマダコ
マダコは生で食べられることは希。煮ダコ(ゆで)に加工されて出回る。市場では口を上にして胴(一見頭に見える)を下に置くのが一般的。関東では総て加工されたものを扱うが、関西では店頭で生を加工することもある。普通、小豆色のものが国産、赤いのがアフリカ産。  国産の煮ダコ
国産の煮ダコ。  冷凍輸入されたマダコ
アフリカ産原料で作られた煮ダコ。冷凍輸入されたものを解凍、2〜3パーセントの塩水でゆでる。古くは脚が丸まらないために煮ダコ原料に適さないとされていたが、1963年に茨城県那珂湊の『あ印水産』、『山正水産』などが偶然、加工法を発見した。 |
選び方 |
ゆでたものは身が張って硬いもの。活けはやせていないものを選ぶ。 |
味わい |
味のいいのは冬、たくさんとれるのは夏。
タコのうまさは筋肉のもつ食感のよさ。大量に含まれるタウリン、甘みを感じさせるグリシン、ベタインなどに起因する。
また独特の豆類を思わせる香りがあり、これもうまいと感じさせる要因に思える。
この旨味は生よりもゆでたり焼いたりして強くなる。 |
栄養 |
タウリン
タウリンはアミノ酸の一種で血圧を正常に保つ働きがある。また貧血予防、肝臓の解毒作用の強化、血中コレステロールの定価、強心作用、インシュリンの分泌促進、視力の回復などの効果がある。
銅
銅は血液中にあるヘモグロビンを作るために必要なもので貧血などを予防する。
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寄生虫 |
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食べ方・料理法・作り方 |
料理法
茹で蛸(しょうゆで、ガリシア風など)、煮る(芋たこ煮、トマト煮込み、柔らか煮)、刺身、天ぷら、オリーブオイル焼き
ゆでる 一般にはゆでる。
ゆでたものを酢の物に、またそのまま食べてもうまい。
煮込み イタリアなどではトマトと煮込む。
トマトのグルタミン、甘みと相乗効果で旨みが強くなり、非常に美味。
柔らか煮、桜煮 煮ると硬くなるのだが、長時間ゆっくり熱を通すことで柔らかくなる。
これを柔らか煮という。
なかなか難しい料理なのだが美味。
醤油を使うと、ちょうど桜の樹皮を思わせる色合いになるので、桜煮ともいう。
刺身 兵庫県、大阪府などでは盛んに活けタコの刺身が作られる。旨味よりも食感を楽しむものながら、とても美味。
天ぷら 珍しいところでは天ぷらにしてもうまい。
オリーブオイル焼き ニンニク風味のオリーブオイルで焼いてもいい。  マダコの刺身
刺身
煮ダコを薄く食べやすく切ったものを刺身という。  たこぶつ
たこぶつ
足の先端の細井部分などをざっくりランダムに分厚く切ったものを「ぶつ(たこぶつ)」という。  タコのトマト煮
煮込み
イタリア料理のタコのトマト煮。トマトのグルタミン酸と合わさって、非常に美味。  干しダコを使ったたこ飯
たこ飯
干しダコを水で戻して、炊き込みご飯に。 |
好んで食べる地域・名物料理 |
■大阪でな半夏生(はんげしょう)の7月2日にタコとハモを食べる習慣がある。時期的に「麦わらだこ」と呼ばれている。
■奈良県などでは「さなぶり(田植えが終わったころの骨休め)にタコの酢の物を食べる。
玉子焼き 兵庫県明石市。卵、だし、小麦粉でたこ焼き状に焼き上げるもの。具はタコのみ。これをだし、ソースなどで食べる。 |
加工品・名産品 |
 マダコの干しダコ
干しダコ
瀬戸内海、九州などで盛んに作られるもの。薄く切ってあぶって食べてもいいが、これを使った炊き込みご飯がうまい。岡山県下津井では寒くなって、年末年始まで、熊本県天草では夏に作られている。写真は岡山県下津井のもの。焙って食べる。水で戻して炊き込みご飯にしても美味。 干しだこ 塩をしてあまり硬くならない程度に干したもの。[明石浦漁業協同組合 兵庫県明石市]
たこみそ 兵庫県明石市『ヒカリ扇』。甘みの強い練り味噌にタコを入れたもの。ご飯に合う。
アヒージョ ガーリックオイルで煮込んだもの。スペイン料理。[輸入元 アシストバルール 大阪府大阪市中央区] |
釣り情報 |
タコテンヤという独特の釣り具にガザミ(ワタリガニ)のエサをつけて手釣りする。 |
歴史・ことわざ・雑学など |
半夏生 夏至から数えて11日目。この日までに田植えなどを終えておく。大阪では半夏生(7月2日)にタコを食べる。〈朝早くから魚屋さんが大きなたこを持ってくる〉、〈小麦もち、麦わらだこ、出合いもんのじゃがいもと真竹と二度豆の煮つけを食べる。この時期のたこを麦わらだこといいゆでてしょうが醤油か二杯酢で食べる/南河内村〉(聞書き大阪の食事)
蛸の八ちゃん 田川水泡(漫画家。代表作は『のらくろ』 1899〜1989)の漫画。この作品により「たこのはっちゃん」という言語が今に残る。
鮹の文字 延喜式(編纂開始延喜5年・905年)に蛸の文字がある。
夏の季語 「蛸壺やはかなき夢を夏の月」。『季語集』(坪内稔典 岩波新書)
たこからげ 着物の裾のあちこちをまくり上げること。
タコる ノーヒットで終わること。
蛸入道
鮹を釣る 人を詰問してせい誅を加えること。『明治東京風俗語事典』(正岡容 有光堂 1957)
タコと芝居は血を荒らす 久保田万太郎の言葉。『夷斎小識(石川淳 中公文庫)』 |
参考文献・協力 |
『日本近海産貝類図鑑』(奥谷喬司編著 東海大学出版局) |