70cm SL・10kg前後になる。頭が非常に大きく、鰓蓋骨以外に目立つ棘はない。頭部目の後方上に2対の棘があり、皮弁はない。体側背面には微少な棘を持つ鱗がある。尾鰭の後縁、もしくは後縁近くには透明な帯がある。
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![70cm SL・10kg前後になる。頭が非常に大きく、鰓蓋骨以外に目立つ棘はない。頭部目の後方上に2対の棘があり、皮弁はない。体側背面には微少な棘を持つ鱗がある。尾鰭の後縁、もしくは後縁近くには透明な帯がある。[38cm SL・1.096kg]](https://www.zukan-bouz.com/public_image/Fish/199/Thumb630/20230302195.jpg)





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珍魚度・珍しさ
★★
少し努力すれば手に入る魚貝の物知り度
★★★
知っていたら通人級食べ物としての重要度
★★
地域的、嗜好品的なもの味の評価度
★★★
美味
分類
顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目カジカ亜目カジカ科ギスカジカ属外国名
学名
Myoxocephalus polyacanthocephalus (Pallas, 1814)漢字・学名由来
漢字 棘鰍、棘杜父 Togekajika
由来・語源 鰓蓋上部の棘(とげ)が強く大きいカジカの意味。トゲカジカは明らかに魚類学的な名だ。ただし北海道ではマカジカ(真鰍)、ナベコワシ(鍋壊し)ということが多い。
明治時代、主に北海道(千島、函館、陸奥青森)で、「うみかじか(海かじか)」とも呼ばれていた可能性がある。『帝国博物館天産部魚類標本目録.帝国博物館』(石川千代松・松浦歓一郎 1897/明治30年)
〈頬甲族カジカ科ギスカジカ属トゲカジカ(新称) Myoxocephalus polyacanthocephalus (PALLAS)〉『日本産魚類検索』(岡田彌一郎、松原喜代松 三省堂 初版1938)Pallas
Peter Simon Pallas (ペーター・ジーモン・パラス 1741年〜1811年)。ドイツの動物・植物学者で、サンクトペテルブルク科学アカデミーの教授になり主にロシアで研究する。主に冷水域の魚を記載した。ホッケ類、アイナメ類など国内海域にいる多くの魚類を記載。地方名・市場名 ?
生息域
海水魚。水深50-300m。
新潟県佐渡、秋田県、青森県、岩手県、北海道全沿岸。
朝鮮半島東岸〜沿海州、間宮海峡、千島列島、オホーツク海東部・北部、カムチャツカ半島東南岸、アリューシャン列島、チュクチ海南島〜ベーリング海、アラスカ湾。生態
産卵期は12月〜翌2月。
産卵のために岸寄りに移動する。基本情報
東北以北で水揚げがある。北の海に、カジカ科の魚は多種あるが、もっとも大きくなり、市場などでは想像以上に大きいのでビックリする。海カジカ類としては、いちばん味がいいとされているので「真カジカ」、「なべこわし(鍋壊し)」という。「なべこわし(鍋壊し)」は汁にしてあまりにもうまいので、「鍋の底に残った一滴の汁も余さないようにすくい取ろうとして鍋を壊すほどだ」という意味。
北海道ではもっとも代表的なカジカで流通する量も多く、寒い時期、産卵期には「かじか汁(みそ汁)」に、鍋物にと大活躍する。
関東などにも入荷してくるが、なじみがないために人気がない。1980年代に北海道で初めて何度か煮返したみそ汁をいただいて以来のファンであるが、なぜか都内で食べてもその感動は得られない。
珍魚度 珍魚ではない。北海道ではともかく、関東などには入荷が少なく、探さないと手に入らない。それでも大型の海カジカ類の中ではもっとも手に入れやすい。水産基本情報
市場での評価 寒くなると北海道から入荷してくる。関東では非常に安い。
漁法 底曳き網、刺網、釣り
主な産地 北海道選び方
触って硬いもの。粘液をまとっているが鮮度がいいと粘り、古くなると緩くなる。鰓が鮮紅色のもの。味わい
旬は冬。
鱗はほとんどなく汁にするなどしても気にならない。皮は厚くしっかりして硬い。骨はあまり硬くない。
血合いがよほど鮮度がよくないと赤くなく、同様に透明感のある白身だが、ボケやすい。繊維質が少なく。ぼろっとしている。
料理の方向性上身(左右の身)よりも頭部や中落ち、腹骨についている身の方がうまい。よほど鮮度がよくないと身は繊維質に乏しく、生では食感が悪く、またうま味も少ない。また熱を通すと硬く締まるので、焼くよりもむしろ煮込む方がいい。鍋で何度も煮返した汁がうまいのも特筆すべき点だ。卵巣はサケの卵巣と同様にしょうゆ漬けにする。栄養
ー危険性など
アニサキスは袋形動物門線形動物綱回虫目ヘテロケイルス科アニサキス亜科に属している数種。最終宿主はイルカを始め鯨類とアザラシなど。卵が最終宿主の排泄物と一緒に海に。これを第一宿主であるオキアミ類などが食べ、魚などに餌として取り込まれる。魚は第二宿主にあたる。カジカ類の腹、筋肉などからはしばしばアニサキスの仲間が見つかる。アニサキス症には緩和型と激症型がある。アニサキスを食べると胃や腸に痛みを起こし、嘔吐感を感じる。激症には非常に強い痛みがあり、しばしば急性腹症と間違われて開腹手術を受けることがあるという。食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)
トゲカジカの料理・レシピ・食べ方/汁(みそ汁、潮汁、鍋もの)、揚げる(唐揚げ)、煮る(煮つけ)、生食(生)クリックで閉じます
トゲカジカのみそ汁 汁にすることが多い。醤油仕立てや塩仕立てでもいいが、みそとの相性がとてもいい。大根やにんじん、じゃがいも、玉ねぎなど野菜を加えてもおいしい。
水洗いして適当に切る。このとき肝名胃袋などは取り分けておく。湯通しして冷水に落とし(鮮度がよければ不要かも)、ぬめりなどを流す。水分をよくきり水からじっくり煮だしてみそを溶く。実にいいだしが出る。付着した皮や身も味わい深い。いちばんうまいのは肝だが、つぶして汁に溶いてもうまい。
トゲカジカの煮つけ 本種の料理法は基本的に汁か煮るか、だ。煮つけるときには玉ねぎやじゃがいも、大根、にんじんなどと合わせて煮ることが多い。水洗いして適当に切る。これを湯通しする。冷水に落として皮の表面のぬめりをしっかりと取る。水分をよくきり、酒・砂糖・醤油・水を沸騰させた中で煮上げる。玉ねぎは煮上がる少し前に入れると適度な食感が楽しめる。クリックで閉じますトゲカジカの唐揚げ 水洗いして鰭際、腹骨周りなどを適宜に切り、片栗粉をまぶして揚げる。揚がったら塩コショウ、もしくは塩とカレー粉を振る。身は鶏肉を思わせて締まっていて、鰭や皮が香ばしい。クリックで閉じます好んで食べる地域・名物料理
加工品・名産品
ー釣り情報
ー歴史・ことわざ・雑学など
■鍋こわし(なべこわし)とは「あまりにうまいので、鍋の底までかき回し、鍋を壊してしまうほどうまい」という説と「まずいので鍋をこわしてしまう」という説がある。
■「オレンジ色の肝(肝臓)は海のフォワグラと呼ばれる」参考文献・協力
協力/丸の野水産(北海道羅臼町 ■https://www.tabechoku.com/producers/27483)
『日本産魚類検索 全種の同定 第二版』(中坊徹次編 東海大学出版会)、『新北のさかなたち』(水島敏博、鳥澤雅他 北海道新聞社)