トコブシ

Scientific Name / Haliotis diversicolor Reeve, 1846

トコブシの形態写真

殻長7cm前後になる。貝殻に明瞭な筋状のもの(成長脈)がない「トコブシ型」。呼吸孔(貝殻にあいた穴)は実際に開いているのは5〜7。アワビのように煙突状にならない。[兵庫県淡路島産]
トコブシの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)
殻長7cm前後になる。貝殻に明瞭な筋状のもの(成長脈)がない「トコブシ型」。呼吸孔(貝殻にあいた穴)は実際に開いているのは5〜7。アワビのように煙突状にならない。[兵庫県淡路島産]孔は7-8個で煙突状に伸びない。フクトコブシと比べるとふくらみが弱い。成長脈が明瞭で強い「ナガラメ型」。[徳島県産]成長脈が明瞭で強い「ナガラメ型」。[徳島県産]非常に螺肋、成長脈の強い台湾産の「ナガラメ型」。台湾産は基本的にこの「ナガラメ型」である。国産ものには、しばしば貝殻上にキクスズメがついている。
    • 珍魚度・珍しさ

      ★★
      少し努力すれば手に入る
    • 魚貝の物知り度

      ★★★
      知っていたら通人級
    • 食べ物としての重要度

      ★★
      地域的、嗜好品的なもの
    • 味の評価度

      ★★★★
      非常に美味

    分類

    軟体動物門腹足綱前鰓亜綱古腹足目ミミガイ科ミミガイ属

    外国名

    Tokobushi abalone

    九孔
    言語台湾 

    学名

    Haliotis diversicolor Reeve, 1846

    漢字・学名由来

    漢字 床伏、常節、常伏
    由来・語源 『目八譜』より。「床」は浅い場所のこと、「ふし」は小さいという意味合い。
    浅い場所にいていつまでたっても小さいアワビの意味で、常に石など窪みに「伏している(隠れている)、「常伏」の意味。

    地方名・市場名

    生息域

    海水生。潮間帯の岩礁域。
    北海道南部〜九州。台湾。

    生態

    クロアワビ、メガイアワビなどよりも浅い場所にいる。
    産卵期は夏から秋。
    放精、放卵し、海中で受精。
    トロコフォア、ベリジャー幼生期をへて二昼夜ほどで海底生活に入る。

    トコブシの噴水孔キクスズメ 噴水孔は肛門からの排泄物を出すためのものなので、付近に有機質を求めてキクスズメが付着している。このキクスズメがついているものはまず間違いなく国産のもの。

    基本情報

    北海道南部から九州までの潮間帯にいる小型のアワビの仲間(ミミガイ科)。丸みがありふくらんでいるフクトコブシ型(トコブシの亜種 Haliotis diversicolor diversicolor Reeve, 1846)、貝殻が薄く成長脈が強いナガラメ型、トコブシ型の3型がある。古くから和の食材として珍重されてきた。
    古くは磯で手軽にとれていたもの。これが激減して現在では高級なものになってしまっている。
    本来はアワビなどとは違って磯遊び(浜下り)などに採取していたが、今はとてもこんなことはできない。
    徳島県などでは今でも浜下りに食べる風習があるが、それも重箱などにつめて磯にもっていくものとなっている。高価なものとなり、減少が著しいので種苗生産、放流が行われている。
    国産が高価なので煮貝などには輸入ものが使われていることが多い。
    また活けも国産よりも台湾産の養殖ものを見かける機会が多くなっている。
    珍魚度 減少傾向にあるので海辺で採取は難しい。流通上探すことになる。そんなに入手は難しくはない。

    トコブシとアワビの違いアワビとの違い
    アワビのように煙突状にならない。

    水産基本情報

    市場での評価 活け、もしくは冷凍もので入荷してくる。量は少ない。関東などでは近場のものは非常に高価。
    漁法 採取、潜水
    主な産地

    選び方

    原則的に生きているもので触ってよく反応するもの。硬くしまっているもの。

    味わい

    旬は春〜初夏
    貝殻は薄く、硬い。生の状態では軟らかい。
    アワビのように熱を通しても硬くならない。

    栄養

    危険性など

    食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)

    トコブシの料理・レシピ・食べ方/煮る(塩ゆで、しょうゆ煮、ワイン蒸し、酒蒸し、卵とじ丼)、焼く(焼き貝)、ソテー(ムニエル)

    トコブシの塩ゆで 流水などで汚れを洗い流し、水分をよくきる。これをやや強めの塩水で加減を見ながらゆでる。生きているものを短時間塩ゆですると、ふんわり柔らかくゆであがる。ゆでた香りからして磯の香りがする。貝らしいうまみも強く非常に美味。

    トコブシの煮貝 表面などを流水でよく洗い。酒、しょうゆ味であっさり短時間煮上げたもの。あまり火を通しすぎないのがコツ。貝らしい甘味があり軟らかくて食べやすい。塩味で酒と水半々で煮てもうまい。
    トコブシのワイン蒸し 少量のオリーブオイル、白ワイン、塩で蒸し煮にしたもの。にんにく、ディルの香りをつけている。蒸し煮にあいた汁をからめて仕上げるが若い赤ワイン、白ワインに合う。
    トコブシのしゃぶしゃぶ 三重県紀伊長島市の料理民宿『美鈴』の名物料理「しゃぶしゃぶ」を再現したもの。魚醬(いしる)、酒、水で汁を作り、しゃぶしゃぶしながら食べる。口に入れた途端に溶けるそのうまさは筆舌に尽くしがたい。
    トコブシの卵とじ丼 流水などで汚れを洗い流す。水分をよくきり、酒・水で軽く蒸し上げて貝殻を外し、適当に切っておく。鍋に酒蒸しで出た汁(場合によっては水を加える)・みりんをわかし、ねぎもしくは玉ねぎを煮て切り身を加えて煮上がりに溶き卵を加えて出来上がりだ。とても簡単にできて、とてもおいしい丼になる。

    トコブシの焼きトコブシ 流水などでていねいに汚れなどを洗い流す。これを焼きながら食べる。酒・しょうゆを垂らしてもうまいが、このまま何もつけないで食べてもとてもおいしい。またバターを垂らしてもうまい。
    トコブシのトコブシのムニエル 流水などでていねいに汚れを洗い流す。水分をよくきり、足の方に塩コショウする。この足の部分に小麦粉をまぶしてバターでソテーする。バターの強い風味のなかにもトコブシのうま味が浮かび上がる。

    好んで食べる地域・名物料理

    加工品・名産品


    貝付流子味付 徳島県県南、室戸・阿南国定公園内でとれたトコブシをしょうゆ、砂糖、みりんで煮たものを缶詰にしたもの。磯の香りがほどよく、柔らかくうま味豊かだ。[角田商店 徳島県海部郡美波町]

    釣り情報

    歴史・ことわざ・雑学など

    参考文献・協力

    協力/地利雄さん(沼津市菊)
    『日本近海産貝類図鑑』(奥谷喬司編著 東海大学出版局)、『日本及び周辺地域産軟体動物総目録』(肥後俊一、後藤芳央 エル貝類出版局)、『たべもの語源辞典』(清水桂一編 東京堂出版)、『水産無脊椎動物Ⅱ 有用・有害種各論』(奥谷喬 恒星社厚生閣)、『商用魚介名ハンドブック』(日本水産物貿易協会編 成山堂)、『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社)、『貝』(波部忠重、奥谷喬司 学習研究社)、『エビの栄養・イカの味 貝の生態』(奥谷喬司、鈴木たね子 アボック社)

    地方名・市場名

    ゴケンジョウ[ご献上?]
    場所三重県志摩市大王町 参考林市兵衛さん 
    フクダメ
    場所三重県鳥羽市安楽島 参考出間リカさん 
    ウエジゴ
    場所長崎県平戸市度島 参考福畑敏光さん 
    ナガレコ[流子]
    場所徳島県、高知県宿毛市・大月町など日本隔離 参考公益財団法人 黒潮生物研究所/中地シュウ、聞取 
    コブク
    場所静岡県沼津市 
    セツムシ
    場所愛媛県伊方町三机(聞き取り 上田、清水) 
    センネンゴ
    場所山口県下関・豊北 備考この貝が何年経っても大きくならないことから。 
  • 主食材として「トコブシ」を使用したレシピ一覧

関連コンテンツ