イタヤガイ

Scientific Name / Pecten albicans (Shröter,1802)

イタヤガイの形態写真

SL 10cm前後になる。よく膨らむ。放射肋は幅が広く8本前後ある。
イタヤガイの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)
SL 10cm前後になる。よく膨らむ。放射肋は幅が広く8本前後ある。SL 10cm前後になる。よく膨らむ。放射肋は幅が広く8本前後ある。SL 10cm前後になる。よく膨らむ。放射肋は幅が広く8本前後ある。
    • 珍魚度・珍しさ

      ★★★
      がんばって探せば手に入る
    • 魚貝の物知り度

      ★★★★
      知っていたら達人級
    • 食べ物としての重要度

      ★★
      地域的、嗜好品的なもの
    • 味の評価度

      ★★★★
      非常に美味

    分類

    軟体動物門二枚貝綱翼形亜綱イタヤガイ目イタヤガイ上科イタヤガイ科イタヤガイ亜科イタヤガイ属

    外国名

    学名

    Pecten albicans (Shröter,1802)

    漢字・学名由来

    漢字 板屋貝、車渠 Itayagai
    由来・語源 『本草和名』より。板屋とは板で葺(ふ)いた屋根のこと。この板屋葺きの屋根に似た貝殻の文様から。
    車渠・板屋貝・海扇 〔車渠という名の玉がある。この蛤はそれに似ている。それでこう名づけられた〕、車渠は「ほたてがい」とも読む。〔俗に帆立貝ともいう。また板屋貝ともいう〕。「ほたてがい」、「いたやがい」ともイタヤガイのことだ。〔そもそも車輪の溝のことを渠というがこの背の文様が車の溝に似ている(ので車渠)〕。〔また板屋葺の形にも似ているので板屋貝とも〕。〔形は扇のようなので海扇(かいせん)とも〕。『和漢三才図会』(寺島良安 東洋文庫 平凡社 正徳2年 1712)
    いたらがい また古くは「いたらがい」。また漢字で書くと「板屋貝」すなわち、板葺き屋根のような貝ということ。下の写真を見るとわかるが右側の貝殻が深いのを利用して柄杓(ひっしゃく)をつくることから「柄杓貝(ひしゃくがい)」とも言われる。

    地方名・市場名

    生息域

    海水生。水深10〜100メートルの砂地。
    北海道南部〜九州。
    朝鮮半島、中国沿岸、東シナ海。

    生態

    雌雄同体。
    産卵期は冬。
    ときに大発生したり、まったくいなくなったりする。
    幼貝は岩などに足糸で固着。
    成貝になると自由生活をする。

    基本情報

    北海道南部から九州までの浅い砂地にいる貝で、古くから美味で知られていた。
    国内では産地が限定的である上に、資源が不安定であるので食用としてはローカルな存在。島根県などでは養殖が試みられているが、難しいためかあまり盛んではない。
    味のいいことは知られており、大発生したときには食用として出回り、それなりに高値で取引される。
    ヒオウギガイ、ツキヒガイとともに味ではイタヤガイ科中の最高峰だと思う。
    珍魚度 古くから知られている食用貝ではあるが産地は限定的。しかも好不漁があるので探さないと手に入らない。

    水産基本情報

    市場での評価 流通漁は少なく、味の割りに安い。
    漁法 貝桁網(底曳き網)、底曳き網
    産地 山口県、島根県、

    選び方

    原則的に生きているもの。貝殻がしっかり閉じるもの。貝殻表面につやのあるもの。

    味わい

    旬は不明。
    可食部は主に貝柱(閉殻筋)。
    柔らかく豊かな甘みがある。比較的軟らかくて刺身などに向いている。
    煮るといいだしが出る。

    栄養

    危険性など

    食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)

    イタヤガイの料理・レシピ・食べ方/生食(刺身)、揚げる(フライ、天ぷら)、焼く(焼き貝)、煮る(塩ゆで、煮つけ、佃煮)

    イタヤガイの刺身 同じ大きさの貝柱の味としてはホタテガイ以上だと思っている。剥き身にして貝柱の周りの筋と皮膜を取り去る。水分をていねいに拭き取り、刺身状に切る。
    ホタテガイよりも貝柱は小さく、白い。うま味豊かで甘く、しかも後味がいい。イタヤガイ科の中でも最高峰のひとつ。

    イタヤガイのフライ 貝柱は取り出したら水分をていねいに拭き取る。塩コショウして小麦粉をまぶす、バッター液にくぐらせてパン粉をつけて高温で短時間揚げる。もともと濃厚な味わいがより凝縮される。食感がよくて非常にうまい。
    焼きイタヤガイ 小振りの個体の貝柱、ヒモ(外套膜)、生殖巣などを集めて置く。水分をていねいに取る。貝柱は適当にきり、小麦粉をまぶし、衣をまとわせて高温で短時間揚げる。揚げかたによっては貝柱が硬くなるのが難点であるが、非常に濃厚なうま味と貝らしい歯触りでやたらにうまし。
    焼きイタヤガイ 剥き身にして軟体部分を塩水の中でていねいに洗う。貝殻も流水できれいにして水分を拭き取っておく。軟体を深い方の貝殻にもどして天火の強火で短時間に焼き上げ、仕上げに酒と醤油を合わせたものを振り入れる。焼いた香りからして絶品。熱いうちに食べて欲しい。
    イタヤガイの塩ゆで 底曳き網などでとれるものなので泥などで汚れていることがある。とりあえず剥き身にして塩水の中で泥や汚れを洗い流す。仕上げに流水で洗い、水分をよくきる。これを沸騰した塩水で4、5分ゆでる。ゆで方が中途半端だと生臭みがでる。生殖巣、ヒモ、貝柱とそれぞれ違う味が楽しめる。
    イタヤガイのわた煮つけ 刺身にしたときの生殖巣、ヒモなどを集めて置く。塩水のなかでていねいに洗い。流水でよごれを流す。水分をていねいに切る。これを酒・みりん・醤油を合わせたなかで、煮汁をからめるようにさっと煮る。

    好んで食べる地域・名物料理

    加工品・名産品

    釣り情報

    歴史・ことわざ・雑学など

    貝殻節 鳥取県の貝殻節は本種を粉に引くことで生まれたというのを聞いたことがあるが、それほど漁獲されていたのだろうか? と本種のことを調べるうちに駿河湾、土佐湾などで今現在ほそぼそと漁獲されていることが判明した。そして普段、生息数の少ないはずの本種が何年かに一度大量発生する。鳥取の貝殻節もそんな豊漁年の歌であろうか?
    貝杓子 イタヤガイの貝殻の深い方を杓子(しゃくし)にする。これを貝杓子という。

    参考文献・協力

    協力/青山鮮魚(山口県宇部市 ■https://www.youtube.com/c/%E9%9D%92%E5%B1%B1%E9%AE%AE%E9%AD%9Atvaoyamasengyotv)
    『日本近海産貝類図鑑』(奥谷喬司編著 東海大学出版局)、『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社)、『水産無脊椎動物Ⅱ 有用・有害種各論』(奥谷喬 恒星社厚生閣)

    地方名・市場名

    シャクシガイ
    場所三重県志摩市大王町 参考林市兵衛さん 
    アサヒガイ[旭貝]
    場所三重県志摩市阿児町 参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 
    ヒオガイ
    場所三重県浜島町 参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 
    カミサラガイ
    場所三重県熊野市二木島 参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 
    イタラ イタラガイ
    場所北海道函館、千葉県君津市、大阪府泉佐野、山口県、香川県、大分県 参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 
    オシャクリ
    場所千葉県富津市萩生 参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 
    カマゲー
    場所千葉県富浦 参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 
    アネサマゲッコ
    場所千葉県富浦・館山 参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 聞取 
    カイガラガイ
    場所千葉県富浦町 参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 
    ミミッケ
    場所千葉県木更津市 参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 
    イタヤガイ イタヤ
    場所千葉県相浜、福岡県玄海 参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 
    ホタテガイ
    場所千葉県銚子市・外川・勝浦市・鴨川市・天津小湊・館山など、神奈川県三浦半島周辺、静岡県伊豆・白須賀・浜名湖、福井県、三重県浜島町、和歌山県、岡山県、鳥取県、長崎県、大分県など 参考中上光さん、『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 
    カマゲーコ カマゲッコ
    場所千葉県館山 参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 
    アンビガイ
    場所和歌山県串本 参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 
    ホタラガイ
    場所和歌山県有田市 参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 
    インタラガイ インタラゲ
    場所大分県蒲江、鹿児島県 参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 
    ホタテ
    場所神奈川県三浦市・横須賀市、京都府宮津市、鳥取県 参考中上光さん、『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社 1988) 
    シャクシ
    場所神奈川県江ノ島、和歌山県白浜 参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 
    シンナベガイ
    場所福岡県志賀島 参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 
    カェージャクシ カイジャクシガイ
    場所福岡県津屋崎 参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 
    イタノガイ
    場所若狭湾 参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 
    ホタテゲー
    場所長崎県 参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 
    オシャモジガイ
    場所静岡県御前崎町 参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 
    シャモジガイ
    場所静岡県御前崎町、愛知県西尾市・西尾市一色 参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 
    ホウマイカンガラ
    場所香川県三豊詫間町 参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 
    イタンガラ
    場所香川県坂出市 参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社)  
    エタラガイ
    場所香川県小豆島 参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 
    エタノガイ エタノカイ
    場所香川県小豆島・庵治町 参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 
    ホウマカセ
    場所香川県小豆島阪手 参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 
    オオマキガイ
    場所香川県津田町 参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 
    ソウゴガイ
    場所香川県津田町北山 参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 
    シャクシゲ
    場所鹿児島県志布志町 備考ホタテガイ(ホタテゲー、ホタラガイもその変化)という地域が多い。 参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 聞取 
    ヤアタリ
    場所岡山県笠岡市飛島 参考文献より。 
  • 主食材として「イタヤガイ」を使用したレシピ一覧

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