クロダイ
代表的な呼び名チヌ
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コラム
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冷や汁(焼く)について
珍魚度・珍しさ | ★★ 少し努力すれば手に入る |
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魚貝の物知り度 | ★★★ 知っていたら通人級 |
食べ物としての重要度 | ★★★ 一般的(流通量は普通) |
味の評価度 | ★★★★ 非常に美味 |
分類 | 顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目スズキ亜目タイ科ヘダイ亜科クロダイ属
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外国名 | Blackhead seabream
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学名 | Acanthopagrus schlegelii (Bleeker, 1854)
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漢字・学名由来 | 漢字 黒鯛、鳥頬魚 Standard Japanese name / Kurodai Bleeker Pieter Bleeker(ピーター・ブリーカー 1819-1878 オランダ)。医師、魚類学者。『東インドオランダ領の魚類図鑑』(Atlas Ichtyologique des Indes Orientales Netherlandaises 1862-1878)。軍医としてバタビア(現インドネシアジャカルタ)に赴任。インド洋、西太平洋の魚を採取。 |
地方名・市場名 |
概要
生息域
海水魚。内湾、汽水域や沿岸の岩礁。
北海道〜九州南岸の日本海・東シナ海沿岸、北海道〜九州南岸の太平洋沿岸、瀬戸内海。
朝鮮半島全沿岸、済州島、台湾、渤海、中国東シナ海・南シナ海沿岸、ベトナム。
生態
貝や小型の頭足類、エビやカニから海藻、またスイカや果物なども食べる雑食性。
産卵期は春から夏。
産卵後小さな時期は総てが雄(オス)。15cm〜25cmくらいには両性型。満2年まではオスとして機能する。
3年目からは雌雄が分かれ、それぞれ成熟し産卵活動をする。また大きくなると多くがメスに分化する。
クロダイの仲間はもっとも内湾を好むもので、ときに川を登ることもある。それで各地で「川鯛(かわだい)などとも呼ばれている。
基本情報
北海道から九州までの浅い内湾、河川の河口域にいる。浅場や汽水域にいて全長50cmを超えることから食用としても、釣りの世界でも人気が高い。クロダイは関東での呼び名で、関西から西では「チヌ」だ。昔、大阪湾を「茅渟の海(ちぬのうみ)」といったのは、チヌが多産したからだという説もある。
関東では昔は、夏、井戸水でも生かしておけるので、夏の白身として高級魚だったという。山形県庄内地方では旧藩時代に殿様が磯釣りを武士の間で奨励した。
雑食性でなんでもどん欲に食べることから、嫌う向きもある。これは江戸の町でも大坂でも日常的な場所で見られ、家庭から出たゴミなどあさっている光景が見られたためだろう。同じような水域にいるスズキが上物として扱われるのに対して評価が分かれるのは雑食性であるためだ。また、卵巣を食べないという地域は取り分け多い。
東日本よりも西日本で食用魚として重要。古くは真鯛に次いで美味と評されていたが、近年人気がない。特に関東では不祝儀に使われるために縁起の悪い魚だと考えられていることもある。
近年では安くても売れないので、未利用魚とされることもある。
西日本では名物料理も多い。特に瀬戸内海の漁師料理の「ちぬ飯(たきこみごはん)」は豪快で、しかも非常にうまい。
寒い時季のクロダイはうまさ際立つといったところがあるが、意外に値段は安い。今やもっともお買い得な魚といえそうである。
珍魚度 珍しい魚でもなんでもなく普通の食用魚。ただ最近関東では人気がなく、関東などでは探さないと手に入らない。
水産基本情報
市場での評価/年間を通して入荷してくる。昔は一定の値がついていたが、近年白身魚全般の評価の下落にともない、値を下げつつある。活け、活け締め以外は非常に安い。
漁法/釣り、定置網
産地/広島県、愛媛県、愛知県、兵庫県
選び方・食べ方・その他
選び方
触って硬いもの。鰓が鮮やかに赤いもの。消費地では活け締め、活魚が好ましい。
味わい
相模湾では漁の盛期と脂の乗りを考えると2月から5月初旬が旬。いちばん味の落ちるのは5月から7月初旬ではないかと思ってる。千葉県では、スイカがたくさんとれ安くなる8月下旬から味がよくなるとしている。
鱗はあまり硬くなく取りやすい。皮は厚くてやや硬い。骨はあまり硬くない。
血合いは赤く、透明感のある白身。熱を通しても縮まない。素晴らしい煮凝りができる。
生殖巣(真子・白子)はとてもおいしい。
栄養
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危険性など
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食べ方・料理法・作り方
寒い時季の大振りの活のクロダイを水洗い。三枚に下ろして皮を引き、単に刺身に切りつける。ここでは角造りにしたがそぎ造りにしても、薄く作ってもいい。
活け締めのクロダイが脂乗っていて、皮目が柔らかく思えた。これを皮霜造りにしてみる。三枚に下ろして腹骨・血合い骨を抜き、皮目に湯をかけて氷水に落として粗熱をとる。後は刺身状に切った。
大型の皮は硬いので、皮霜よりもバーナーであぶった方が食べやすい。水洗いして三枚に下ろす。腹骨をとり、背と腹に分けて血合い骨を切り放す。皮目をあぶり、氷水に落として粗熱を取る。水分をよくきり切りつける。
不安定な6月、7月の個体などを使ってもいい。また刺身の切り落としを集めて細かく切ったものでもいい。胡麻油と醤油で和えてねぎを散らす。ホットチリや好みの野菜を加えてもいい。
三枚に下ろし、腹骨と血合い骨を取る。皮を引き、塩コショウする。小麦粉をまぶし、溶き卵をからめ、パン粉をつけて揚げる。
水洗いして三枚に下ろす。血合い骨を切り落とし厚みを半分に開く。小麦粉をまぶし、衣をつけて高温で揚げる。
水洗いして三枚に下ろし、腹骨と血合い骨を取る。塩コショウして小麦粉をまぶし、小麦粉・重曹(必ずしも必要ではない)・油・水の衣をつけて揚げる。
水洗いして三枚に下ろし腹骨・血合い骨を取る。切り身に塩コショウして片栗粉をまぶして表面がさくっとするくらい揚げる。ここに中華味のスープに薄口醤油・塩・砂糖・酢で味つけして片栗粉であんにしてかける。
水洗いして三枚に下ろす。切り身にして白みそとみりんを合わせた地に1日以上漬け込んで焼く。
ここでは水洗いして、白子を取り出して塩をして半日以上密閉保存する。取り出して水分をよくきり、焼き上げたもの。
水洗いし頭部を割る。開いた頭部に塩をして少し置く。湯通しして冷水に落として残った鱗やぬめりを流す。水分をよく切り。昆布だしが冷たい状態で入れて煮る。味つけは酒と塩。
春の大型個体の多くが真子を抱いている。クロダイの真子・白子はとてもおいしい。真子は適当に切り、湯に落として開かせておく。水分をよくきり、酒・砂糖・醤油・水でさっと煮る。煮て冷めるまで鍋止め。鍋止めすることで卵粒が適度にしまる。ほっこりして甘くとても味わい深い。
卵巣は火の通りが悪いので食べないという地域が少なくない。要注意かも知れぬ。
好んで食べる地域・名物料理
ちんちん釣り/雑煮・甘露煮 千葉県内房では秋になるとチンチン(15㎝以下)を雑煮のだしに使う。実際に見ているのは、秋から暮れにかけて、館山方面から車で北上するときなどに、保田川河口、大貫海岸などの防波堤などで長竿でチンチン釣りの光景である。腰に魚籠(びく)をつけていたと記憶する。
〈“チンチン”というのは、海津(黒ダイ)の当歳もので、この釣りの面白味は…〉釣り上げたものは串に刺して焼き、串のまま焼きがらす(焼いた物を乾かすという意味)。これをだしにしたり、甘露煮にする。参考/『海には海の楽しみが』(刈込碩哉[1918生] 崙書房 1989)
産後に食べる 愛媛県西条市ではチヌ(クロダイ)かキビレ(キチヌ)は「産後の乳の出がいい」、と産褥期の母親に食べさせる。
ちぬ飯 はクロダイの炊き込みご飯。瀬戸内海周辺では1尾丸ごと炊き込むが、一般家庭では半身、もしくは切り身を炊き込む。切り身に振り塩をして少し寝かせて、水分を拭き取り、少し干したものを炊き込むとうま味が強く出る。柑橘類や青じそ、ねぎなどお好みの薬味で。
干もの 三重県鳥羽市小浜ではカイズ(25〜30cm)を干ものにする。非常に人気が高い。
加工品・名産品
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釣り情報
■ 陸からの釣りというと、防波堤(関西では波止)、磯などからという手軽さから根強い人気がある。陸からの釣りには浮き釣り、ふかせ釣りなど。沖の防波堤などでは落とし込み釣り(一種のふかせ釣り)。
■ 湾内などにイカダ、小舟をとめての釣りもある。
■ 関東では内房などで船釣りが行われている。コマセを使い、天秤仕掛け。
■ 餌は多様。オキアミ、カイコのさなぎ、カニエサ。
■ 真夏にだけ行われるスイカエサのパックン釣りなんてのもある。
歴史・ことわざなど
出世魚 関東では成長に伴って呼び名が代わる出世魚でもある。当歳魚のごく小さなものを「ちんちん」、15〜20cmくらいを「ちんちん」、25cm〜30cm弱を「かいず」、それ以上を「くろだい」という。大きさは人によって違いがある。
ちぬ 「チヌ」と呼ぶ地域が多く。出雲風土記に「鎮仁(ちに)」、和名抄に「知沼」。
幸田露伴 釣りの対象魚の代表的なもののひとつで、明治の頃の東京湾隅田川河口での本種を釣る様子は幸田露伴の短編にも描かれる。
黒鯛(ちぬ)を賞味 〈霊亀二年(716)、元正天皇の和泉離宮(珍努宮)造営の理由の1つに、特産の黒鯛(ちぬ)を賞味することがあげられていた。当時大阪湾は茅渟(ちぬ)の海と呼ばれるほど黒鯛が多かった〉『日本人と魚』(長崎福三 はる書房 1991)
茅渟の海 関西では「ちぬ」というが、大阪湾を古くは茅渟(ちぬ)の海といったというその「茅渟の魚」ということだろうか?
真水で生かせる 湾内や河口に多いのだけれどときにまったくの淡水域にも上る。そのため築地など市場では冷蔵庫のない時代には真水で活かせる魚と言うので重宝したという。
葬式に出す 神奈川県小田原市、二宮町などでは葬儀のときに出す料理、精進落としにクロダイを使う。やはり「黒=不祝儀」なのだと思う。
神道では葬儀に黒鯛(黒)を供える 神道(神式)の葬儀にはクロダイを供えることが多い。[神奈川県小田原市・伊勢原市]
微毒有り 〈肉には微毒あり、血を損なう。産後や瘡(できもの)のある人はもっともこれを忌む。尾の長いものを海津(かいず)〔加伊豆〕という。毒が甚だしい。〉『和漢三才図会』(寺島良安 正徳3年/1713 東洋文庫 平凡社)
血を荒らす 〈クロダイは血を荒らすといって妊婦に食べさせない地方が多いが、その反対に血を洗うといって特別に食べさせる地方もある。〉『鮓・鮨・すし すしの辞典』(吉野ます雄 旭屋出版)
地方名・市場名
参考文献 場所三重県・愛知県伊勢湾
参考出間リカさん 場所三重県鳥羽市安楽島
サイズ / 時期20〜25cm 備考シラ→カイズ→チヌ 参考聞取 場所三重県鳥羽市小浜
参考文献 場所九州南部地方
参考文献 場所伊勢湾
サイズ / 時期幼魚 備考その年に生まれたばかりの個体 参考文献 場所伊勢湾など
サイズ / 時期幼魚 参考文献 場所伊勢湾周辺
参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 場所和歌山県串本
サイズ / 時期幼魚 参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 場所和歌山県周参見
参考文献 場所和歌山県田辺、高知
備考鹿児島県南さつま市笠沙ではヘダイをシロチヌというのに対して。 参考伊東正英さん、『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 場所和歌山県田辺、鹿児島県南さつま市笠沙
参考文献 場所和歌山県田辺市
参考文献 場所大阪
サイズ / 時期幼魚 参考文献 場所大阪府
参考文献 場所大阪府堺
場所島根県浜田、山口県下関
参考文献 場所愛媛県宇和島
サイズ / 時期大型 参考文献 場所愛知県知多
参考文献 場所新潟県佐渡島、島根県浜田、山口県下関
参考文献 場所東京
サイズ / 時期幼魚 参考文献 場所武蔵東京・東京
参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 場所水族志
参考文献 場所遠州
参考文献 場所長崎県壱岐
参考文献 場所関西、畿内、中国、四国、佐渡島、玄海
サイズ / 時期幼魚 参考文献 場所静岡県浜名湖
参考文献 場所静岡県浜名湖、三重県松阪・熊野
参考文献 場所香川・讃岐
参考文献 場所高知
参考文献 場所高知、玄海、有明海
参考『高知の魚名集』(岡林正十郎 リーブル出版) 場所高知県浦戸・御畳瀬・手結
参考文献 場所鹿児島
備考関東では当歳魚のこと。 参考文献 場所関東、山口県下関、玄海・志賀島、有明海
サイズ / 時期その年生まれた体長10cm前後 場所福岡
サイズ / 時期その年生まれた体長10cm前後 場所高知
サイズ / 時期年を越して20cm前後 場所関東
サイズ / 時期年を越して20cm前後 場所高知
サイズ / 時期25cm~30cm前後 場所関東
サイズ / 時期25cm~30cm前後 備考三重県鳥羽市小浜ではこのサイズを干ものする。非常に人気が高い。〈泉州貝津(大阪府貝塚市周辺か)で多く捕れるために幼魚をカイズ(貝津)という〉『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 参考聞取、『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 場所関東、三重県鳥羽市小浜、和歌山田辺・塩屋、大阪
サイズ / 時期25cm~30cm前後 場所高知
サイズ / 時期30cm以上 備考関東ではチン→チンチン→カイズ→クロダイ。 参考文献、聞取 場所東京を始め関東、静岡県浜松市雄踏・湖西市鷲津、名古屋、三重県二木島・尾鷲、和歌山湯浅・三輪崎・新宮、新潟
備考大阪湾の貝津から出た名という。 参考『さかな異名抄』 場所千葉県銚子
備考川にも上るために「カワダイ(川鯛)」と呼ぶ地域も多い。 場所石川県七尾市七尾魚市場・金沢市金沢中央市場
場所山形県鶴岡市由良漁港、千葉県内房
場所千葉県内房
場所島根県
サイズ / 時期小型・当歳魚 場所山形県鶴岡市由良漁港で
参考聞取、『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929)、阿波学会研究紀要・由岐町の魚類と淡水エビ類、聞取、伊東正英さん 場所紀州(三重県東部・和歌山県各地)、大阪府、兵庫県明石、徳島県阿南市『椿泊漁業協同組合』・海部郡海陽町『宍喰漁業協同組合』・美波町由岐、福岡県福岡市中央卸売市場、宮崎県日南市目井津漁港、鹿児島県南さつま市笠沙
サイズ / 時期300g以下 備考鷲津では300gくらいまで。浜名湖での呼び名は「戦前から入出の行商人が名古屋まで運んでいたので三河湾と共通していることが多い。(外山茂昭さん/鷲津) 参考聞取、外山茂昭さん 場所静岡県湖西市鷲津、愛知県知多
参考文献 場所高知県