クロダイ

代表的な呼び名チヌ

クロダイの形態写真一覧 (スワイプで別写真表示)
50cm SL 前後になる。黒ずんだ銀色で側変して体高が高い。鰭なども黒い。若い個体は横縞が目立つ。背鰭棘中央部下の横鱗列は側線まで5.5以上。[SL37cm 関東ではクロダイ]
50cm SL 前後になる。黒ずんだ銀色で側変して体高が高い。鰭なども黒い。若い個体は横縞が目立つ。背鰭棘中央部下の横鱗列は側線まで5.5以上。[SL23cm 関東ではカイズ]
50cm SL 前後になる。黒ずんだ銀色で側変して体高が高い。鰭なども黒い。若い個体は横縞が目立つ。背鰭棘中央部下の横鱗列は側線まで5.5以上。[SL12cm 関東ではチンチン]

全関連コラム

珍魚度・珍しさ★★
少し努力すれば手に入る
魚貝の物知り度 ★★★
知っていたら通人級
食べ物としての重要度 ★★★
一般的(流通量は普通)
味の評価度 ★★★★
非常に美味
分類
顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目スズキ亜目タイ科ヘダイ亜科クロダイ属
外国名
Blackhead seabream
学名
Acanthopagrus schlegelii (Bleeker, 1854)
漢字・学名由来

漢字 黒鯛、鳥頬魚 Standard Japanese name / Kurodai
由来・語源
『和漢三才図会』(寺島良安 東洋文庫 平凡社 正徳2年 1712)にも「くろだい」。東京での呼び名。体色から。
「鳥頬魚」は『物類称呼』(越谷吾山著 安永4/1775 解説/杉本つとむ 八坂書房)
〈くろだひ ……その味美味し、真鯛に次ものなり【気味】甘温(かんうん)毒なし、妊婦食ふときわ堕胎(はんさん)す〉。『魚鑑』(武井周作 天保辛卯 1831)
〈CHRYSOPHRYS hasta くろだひ 紀伊 和歌山〉。『帝国博物館天産部魚類標本目録.帝国博物館』(石川千代松・松浦歓一郎 1897/明治30年)
〈タヒ科クロダヒ属クロダヒ Sparus swinhonis GUNTHER〉。『日本魚類圖説』(岡田彌一郎、内田惠太郎、松原喜代松 三省堂 初版1935)

Bleeker
Pieter Bleeker(ピーター・ブリーカー 1819-1878 オランダ)。医師、魚類学者。『東インドオランダ領の魚類図鑑』(Atlas Ichtyologique des Indes Orientales Netherlandaises 1862-1878)。軍医としてバタビア(現インドネシアジャカルタ)に赴任。インド洋、西太平洋の魚を採取。
地方名・市場名

概要

生息域

海水魚。内湾、汽水域や沿岸の岩礁。
北海道〜九州南岸の日本海・東シナ海沿岸、北海道〜九州南岸の太平洋沿岸、瀬戸内海。
朝鮮半島全沿岸、済州島、台湾、渤海、中国東シナ海・南シナ海沿岸、ベトナム。

生態

■ エビやカニから海藻、またスイカや果物なども食べる雑食性。
■ 産卵期は春から夏。
■ 産卵後小さな時期は総てが雄(オス)。15センチから25センチくらいには両性型。満2年まではオスとして機能する。
■ 3年目からは雌雄が分かれ、それぞれ成熟し産卵活動をする。また大きくなると多くがメスに分化する。
■ クロダイの仲間はもっとも内湾を好むもので、ときに川を登ることもある。それで各地で「川鯛(かわだい)などとも呼ばれている。

基本情報

北海道から九州までの浅い内湾、河川の河口域にいる。浅場や汽水域にいて全長50cmを超えることから食用としても、釣りの世界でも人気が高い。クロダイは関東での呼び名で、関西から西では「チヌ」だ。昔、大阪湾を「茅渟の海(ちぬのうみ)」といったのは、チヌが多産したからだという説もある。
関東では昔は、夏、井戸水でも生かしておけるので、夏の白身として高級魚だったという。山形県庄内地方では旧藩時代に殿様が磯釣りを武士の間で奨励した。
雑食性でなんでもどん欲に食べることから、嫌う向きもある。これは江戸の町でも大坂でも日常的な場所で見られ、家庭から出たゴミなどあさっている光景が見られたためだろう。同じような水域にいるスズキが上物として扱われるのに対して評価が分かれるのは雑食性であるためだ。また、卵巣を食べないという地域は取り分け多い。
東日本よりも西日本で食用魚として重要。古くは真鯛に次いで美味と評されていたが、近年人気がない。特に関東では不祝儀に使われるために縁起の悪い魚だと考えられていることもある。
近年では安くても売れないので、未利用魚とされることもある。
西日本では名物料理も多い。特に瀬戸内海の漁師料理の「ちぬ飯(たきこみごはん)」は豪快で、しかも非常にうまい。
寒い時季のクロダイはうまさ際立つといったところがあるが、意外に値段は安い。今やもっともお買い得な魚といえそうである。
珍魚度 珍しい魚でもなんでもなく普通の食用魚。ただ最近関東では人気がなく、関東などでは探さないと手に入らない。

水産基本情報

市場での評価/年間を通して入荷してくる。昔は一定の値がついていたが、近年下落傾向にある。活け、活け締め以外は非常に安い。
漁法/釣り、定置網
産地/広島県、愛媛県、愛知県、兵庫県

選び方・食べ方・その他

選び方

触って硬いもの。鰓が鮮やかに赤いもの。消費地では活け締め、活魚が好ましい。

味わい

旬は深場に落ちる晩秋から春。相模湾では5月になると産卵直前で不安定になり、6月、7月になると痩せた個体が見られる。クロダイは産卵が近くなると急に味が落ちるので見極めが難しい。
相模湾では漁の盛期と脂の乗りを考えると2月から5月初旬が旬。いちばん味の落ちるのは5月から7月初旬ではないかと思ってる。千葉県では、スイカがたくさんとれ安くなる8月下旬から味がよくなるとしている。
味では11月から3月までが旬。
鱗はあまり硬くなく取りやすい。皮は厚くてやや硬い。骨はあまり硬くない。
血合いは赤く、透明感のある白身。熱を通しても縮まない。素晴らしい煮凝りができる。
生殖巣(真子・白子)はとてもおいしい。

クロダイの身色 透明感のある白身で血合いが赤い。熱を通しても硬くならない。

栄養

危険性など

食べ方・料理法・作り方

クロダイの料理・レシピ・食べ方/生食(刺身、皮霜造り、焼霜)、煮つけ、汁(潮汁、みそ汁、鍋、ブイヤベース)、揚げる(フライ、唐揚げ)、ソテー(バター焼き、ポワレ)、焼く(塩焼き、みそ漬け)、炊き込みご飯
クロダイの刺身 寒い時季の大振りの活のクロダイを水洗い。三枚に下ろして皮を引き、単に刺身に切りつける。ここでは角造りにしたがそぎ造りにしても、薄く作ってもいい。血合いが赤く見た目にも美しく、身はタイ科ならではの上品でいながらうま味豊かでおいしい。

クロダイの皮霜造り 活け締めのクロダイが脂乗っていて、皮目が柔らかく思えた。これを皮霜造りにしてみる。三枚に下ろして腹骨・血合い骨を抜き、皮目に湯をかけて氷水に落として粗熱をとる。後は刺身状に切った。やはり脂がのっていると皮が柔らかい。この皮の食感に皮下の脂の甘さがあいまって非常にうまい。
クロダイの焼霜造り 大型の皮は硬いので、皮霜よりもバーナーであぶった方が食べやすい。水洗いして三枚に下ろす。腹骨をとり、背と腹に分けて血合い骨を切り放す。皮目をあぶり、氷水に落として粗熱を取る。水分をよくきり切りつける。焼いた香りと皮・皮直下のうま味、身の食感が相まって非常にうまい。
クロダイのカルパッチョ 三枚に下ろして皮を引く、出来るだけ薄く切る。皿ににんにくをなすりつけ(すり下ろしたにんにくをオリーブオイルに溶かし込んでもいい)、オリーブオイルを塗り塩コショウ、切り身を並べていく。並べ終わったらスプーンなどでとんとんとなじませ、上からも塩コショウ。オリーブオイルをかけて好きな青みを散らす、野菜類を載せるなどする。
クロダイのマリネ 刺身を作ると必ず中途半端な部分が出る。これを集めて置く。小さめに切り、塩とクラッシュ黒コショウでしめる。半日ほどしめてライムと油(ここではグレープシードオイル)でマリネする。ここに野菜を合わせる。
ちぬ飯南予風 たれ(煮きり酒、煮きりみりん、しょうゆ、少量のだしを合わせたもの)と溶き卵(卵黄だけでもいい)を混ぜ、切り身を漬け込んだものをご飯にのせて食べる。さらさらとご飯がよくすすむ。また2杯目は湯もしくは茶を注いで食べてもいい。
クロダイのポケ(ポキ) 胡麻油でもいいし、なんでもいいのかも知れない。目先を変えるといった料理だ。魚臭さがとれ、パンなどにも相性がよく、また朝ご飯にもいい。
不安定な6月、7月の個体などを使ってもいい。また刺身の切り落としを集めて細かく切ったものでもいい。胡麻油と醤油で和えてねぎを散らす。ホットチリや好みの野菜を加えてもいい。
クロダイのフライ 上質の白身魚のよさをもっとも引き出してくれる料理である。パン粉の香ばしさの中に豊潤な身があり、甘味とうま味がある。食べ飽きない味だし、弁当のおかずにもなる。
三枚に下ろし、腹骨と血合い骨を取る。皮を引き、塩コショウする。小麦粉をまぶし、溶き卵をからめ、パン粉をつけて揚げる。
クロダイのフィッシュ&ティップス 非常に緻密で豊潤な白身なので、揚げると表面のぱりっとした食感との対比が面白い。ジャガイモと一緒に揚げたものがフィッシュ&ティップスである。ご飯にもなる。
水洗いして三枚に下ろし、腹骨と血合い骨を取る。塩コショウして小麦粉をまぶし、小麦粉・重曹(必ずしも必要ではない)・油・水の衣をつけて揚げる。
クロダイの甘酢あんあけ 香ばしい身に、熱々の甘酢あんをかけてもので、あんごとすくい取って食べる。白身のうま味、甘味があり、あんにからんで食べでがある。
水洗いして三枚に下ろし腹骨・血合い骨を取る。切り身に塩コショウして片栗粉をまぶして表面がさくっとするくらい揚げる。ここに中華味のスープに薄口醤油・塩・砂糖・酢で味つけして片栗粉であんにしてかける。
クロダイのバター焼き(ムニエル) 三枚に下ろして適宜に切る。塩コショウして小麦粉をまぶし、これを最初は油でじっくりとソテー。皮目がこんがりと香ばしくなったら、マーガリン(バター)を加えて仕上げる。パセリや乾燥ディルなどを使うと豪華に見える。また柑橘類もいい。パンに好相性だが、最後にしょうゆを振るとご飯によく合う。
クロダイの兜焼き(塩焼き) 水洗いして頭部を梨子割りにする。振り塩をして1時間以上寝かせる。これをじっくりと焼き上げる。時季のものなら内側から染み出した脂で皮と身を揚げるように焼き上がる。身はしっとりと甘味があってとても味わい深い。柑橘類、大根下ろし、しょうがなどお好みのものを添えて。
クロダイの木ノ芽焼き 漁の最盛期が山笑う時期でもある。ここでは出盛りの山椒の芽(木の芽)を香りづけにする。水洗いして頭部を梨子割りにする。振り塩をして1時間以上寝かせる。水分をよく拭き取り、じくりと焼き上げる。8分通り焼き上がったら酒を塗りながら仕上げ、最後に木の芽を散らして少しだけ焼く。
クロダイの白みそ漬け(西京漬け) タイ科なので筋繊維が発達していて、身のほぐれ感が楽しめる。ただ焼くと硬く締まる傾向にある。このあたりが回遊性の高いサバ科の魚との違いだ。みそ漬けのみそは塩分濃度が低い方が柔らかく漬け揚がる。切り身にして水分をよくきり、白みそにみりんを加えた地で半日以上つけ込む。写真は24時間。焦がさないように焼き上げる。程よく身が締まり、白みその甘さと魚のうま味が相まって実に美味。
クロダイの白子焼き 春の白子もとても美味である。ここでは白子を取り出して塩をして密閉保存。取り出して水分をよくきり、焼き上げたもの。中はクリームで甘みがある。後味がいいのも魅力的だ。
クロダイちり鍋(鯛ちり) ちりは身をだしに入れたとき、ちりりと身が縮むからなどというが、由来語源は不明。水洗いして、二枚に下ろして骨つきの方を適宜に切る。これを湯通しして、冷水に落とし鱗やぬめりなどを流して、よく水をきっておく。昆布だしにあらを加えてだしをとり、酒、塩で味つけして汁を作る。この汁で切り身と豆腐、野菜を煮ながら食べる。見た目を気にしないならあらも一緒に煮ながら食べるとより美味。

クロダイのあら煮 4月の抱卵個体を刺身、塩焼きで食べた残りのあら、真子(卵巣)、肝などを煮つけにする。あらは湯通しして冷水に落として残ったぬめりや残った鱗を流す。水分をよくきり、酒・砂糖・醤油・水で煮る。あらからいいだしが出て、頭部を始めすべておいしい。また真子・白子も美味。卵巣は火の通りが悪いので食べないという地域が少なくない。要注意かも知れぬ。
クロダイの兜焼き 割烹料理の基本である、たまり醤油を使った煮つけ方で作った。梨子割りにした頭部は湯通しして冷水に落とし、残った鱗やぬめりを流す。これを酒・砂糖・濃口醤油・たまり醤油・水で煮上げる。こってり味に見えるが実は煮染まっているわけではなく、調味料は身は白い状態である。煮汁をからめながら食べる。
クロダイの真子煮 真子を食べない地域は少なくない。火の通りが悪いからとか、当たるからとかの理由が見られるが、実際にはとても味わい深い。
春の大型個体の多くが真子を抱いている。クロダイの真子・白子はとてもおいしい。真子は適当に切り、湯に落として開かせておく。水分をよくきり、酒・砂糖・醤油・水でさっと煮る。煮て冷めるまで鍋止め。鍋止めすることで卵粒が適度にしまる。ほっこりして甘くとても味わい深い。
卵巣は火の通りが悪いので食べないという地域が少なくない。要注意かも知れぬ。

クロダイの潮汁 頭部、あらなどを湯に通して鱗やぬめりを取る。これを昆布だしで煮だして酒、塩で味つけする。青みはお好みで。じっくり煮出すとよりこくが出て滋味豊かな汁になる。青みはお好みで。薬味は粗挽き黒コショウがいい。柑橘類は好相性だ。
クロダイのみそ汁 刺身やバター焼きなどにしたときに出たあらを湯に通して、氷水に落として鱗、血液、滑りなどを洗い流して、よく水分を切っておく。これを水(昆布だしでも)から煮出す。こくのあるうま味豊かでいながら後味のいいみそ汁になる。酒の後にも持って来いだが、この汁で食べるご飯がとてもいい。

好んで食べる地域・名物料理

ちんちん釣り/雑煮・甘露煮 千葉県内房では秋になるとチンチン(15㎝以下)を雑煮のだしに使う。実際に見ているのは、秋から暮れにかけて、館山方面から車で北上するときなどに、保田川河口、大貫海岸などの防波堤などで長竿でチンチン釣りの光景である。腰に魚籠(びく)をつけていたと記憶する。
〈“チンチン”というのは、海津(黒ダイ)の当歳もので、この釣りの面白味は…〉釣り上げたものは串に刺して焼き、串のまま焼きがらす(焼いた物を乾かすという意味)。これをだしにしたり、甘露煮にする。参考/『海には海の楽しみが』(刈込碩哉[1918生] 崙書房 1989)
産後に食べる 愛媛県西条市ではチヌ(クロダイ)かキビレ(キチヌ)は「産後の乳の出がいい」、と産褥期の母親に食べさせる。
ちぬ飯 はクロダイの炊き込みご飯。瀬戸内海周辺では1尾丸ごと炊き込むが、一般家庭では半身、もしくは切り身を炊き込む。切り身に振り塩をして少し寝かせて、水分を拭き取り、少し干したものを炊き込むとうま味が強く出る。柑橘類や青じそ、ねぎなどお好みの薬味で。
干もの 三重県鳥羽市小浜ではカイズ(25〜30cm)を干ものにする。非常に人気が高い。

加工品・名産品

釣り情報

■ 陸からの釣りというと、防波堤(関西では波止)、磯などからという手軽さから根強い人気がある。陸からの釣りには浮き釣り、ふかせ釣りなど。沖の防波堤などでは落とし込み釣り(一種のふかせ釣り)。
■ 湾内などにイカダ、小舟をとめての釣りもある。
■ 関東では内房などで船釣りが行われている。コマセを使い、天秤仕掛け。
■ 餌は多様。オキアミ、カイコのさなぎ、カニエサ。
■ 真夏にだけ行われるスイカエサのパックン釣りなんてのもある。

歴史・ことわざなど

出世魚 関東では成長に伴って呼び名が代わる出世魚でもある。当歳魚のごく小さなものを「ちんちん」、15〜20cmくらいを「ちんちん」、25cm〜30cm弱を「かいず」、それ以上を「くろだい」という。大きさは人によって違いがある。
ちぬ 「チヌ」と呼ぶ地域が多く。出雲風土記に「鎮仁(ちに)」、和名抄に「知沼」。
幸田露伴 釣りの対象魚の代表的なもののひとつで、明治の頃の東京湾隅田川河口での本種を釣る様子は幸田露伴の短編にも描かれる。
黒鯛(ちぬ)を賞味 〈霊亀二年(716)、元正天皇の和泉離宮(珍努宮)造営の理由の1つに、特産の黒鯛(ちぬ)を賞味することがあげられていた。当時大阪湾は茅渟(ちぬ)の海と呼ばれるほど黒鯛が多かった〉『日本人と魚』(長崎福三 はる書房 1991)
茅渟の海 関西では「ちぬ」というが、大阪湾を古くは茅渟(ちぬ)の海といったというその「茅渟の魚」ということだろうか?
真水で生かせる 湾内や河口に多いのだけれどときにまったくの淡水域にも上る。そのため築地など市場では冷蔵庫のない時代には真水で活かせる魚と言うので重宝したという。
葬式に出す 神奈川県小田原市、二宮町などでは葬儀のときに出す料理、精進落としにクロダイを使う。やはり「黒=不祝儀」なのだと思う。
神道では葬儀に黒鯛(黒)を供える 神道(神式)の葬儀にはクロダイを供えることが多い。[神奈川県小田原市・伊勢原市]

クロダイを忌避・避けて食べない
堕胎 〈妊婦食ふときわ堕胎(はんさん)す〉。『魚鑑』(武井周作 天保辛卯 1831)
微毒有り 〈肉には微毒あり、血を損なう。産後や瘡(できもの)のある人はもっともこれを忌む。尾の長いものを海津(かいず)〔加伊豆〕という。毒が甚だしい。〉『和漢三才図会』(寺島良安 正徳3年/1713 東洋文庫 平凡社)
血を荒らす 〈クロダイは血を荒らすといって妊婦に食べさせない地方が多いが、その反対に血を洗うといって特別に食べさせる地方もある。〉『鮓・鮨・すし すしの辞典』(吉野ます雄 旭屋出版)

地方名・市場名

ナベワリダイ
参考文献 場所三重県・愛知県伊勢湾 
ツエ
参考出間リカさん 場所三重県鳥羽市安楽島 
シラ
サイズ / 時期20〜25cm 備考シラ→カイズ→チヌ 参考聞取 場所三重県鳥羽市小浜 
チイン
参考文献 場所九州南部地方 
キシ
参考文献 場所伊勢湾 
トオサイ[当歳]
サイズ / 時期幼魚 備考その年に生まれたばかりの個体 参考文献 場所伊勢湾など 
シオ シヲ
サイズ / 時期幼魚 参考文献 場所伊勢湾周辺 
マキ
参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 場所和歌山県串本 
カイス
サイズ / 時期幼魚 参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 場所和歌山県周参見 
クロチヌ
参考文献 場所和歌山県田辺、高知 
クロヂヌ クロジヌ
備考鹿児島県南さつま市笠沙ではヘダイをシロチヌというのに対して。 参考伊東正英さん、『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 場所和歌山県田辺、鹿児島県南さつま市笠沙 
メエチ
参考文献 場所和歌山県田辺市 
ピンチヌ オオスケ
参考文献 場所大阪 
ババタレ
サイズ / 時期幼魚 参考文献 場所大阪府 
ハダカチヌ
参考文献 場所大阪府堺 
ケンダイ
場所島根県浜田、山口県下関 
ヒチヌ
参考文献 場所愛媛県宇和島 
ズイ
サイズ / 時期大型 参考文献 場所愛知県知多 
チンダイ
参考文献 場所新潟県佐渡島、島根県浜田、山口県下関 
ヒダイ
参考文献 場所東京 
チンチンカイズ
サイズ / 時期幼魚 参考文献 場所武蔵東京・東京 
マナヂ
参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 場所水族志 
シロタイ
参考文献 場所遠州 
チンカク
参考文献 場所長崎県壱岐 
チヌダイ
参考文献 場所関西、畿内、中国、四国、佐渡島、玄海 
シラタイ シラダイ ハゴ
サイズ / 時期幼魚 参考文献 場所静岡県浜名湖 
マチヌ
参考文献 場所静岡県浜名湖、三重県松阪・熊野 
シオチヌ
参考文献 場所香川・讃岐 
クロゴ イツツ オオグロ
参考文献 場所高知 
クロ
参考文献 場所高知、玄海、有明海 
サンサイ[三才]
参考『高知の魚名集』(岡林正十郎 リーブル出版) 場所高知県浦戸・御畳瀬・手結 
チンノイオ
参考文献 場所鹿児島 
チン
備考関東では当歳魚のこと。 参考文献 場所関東、山口県下関、玄海・志賀島、有明海 
メイタ
サイズ / 時期その年生まれた体長10cm前後 場所福岡 
イッサイ[一才]
サイズ / 時期その年生まれた体長10cm前後 場所高知 
チンチン
サイズ / 時期年を越して20cm前後 場所関東 
ニサイ[二才]
サイズ / 時期年を越して20cm前後 場所高知 
ケイズ
サイズ / 時期25cm~30cm前後 場所関東 
カイズ
サイズ / 時期25cm~30cm前後 備考三重県鳥羽市小浜ではこのサイズを干ものする。非常に人気が高い。〈泉州貝津(大阪府貝塚市周辺か)で多く捕れるために幼魚をカイズ(貝津)という〉『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 参考聞取、『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 場所関東、三重県鳥羽市小浜、和歌山田辺・塩屋、大阪 
コグロ[小黒]
サイズ / 時期25cm~30cm前後 場所高知 
クロダイ
サイズ / 時期30cm以上 備考関東ではチン→チンチン→カイズ→クロダイ。 参考文献 場所東京を始め関東、名古屋、三重県二木島・尾鷲、和歌山湯浅・三輪崎・新宮、新潟 
ケエズ
備考大阪湾の貝津から出た名という。 参考『さかな異名抄』 場所千葉県銚子 
カワダイ[川鯛]
備考川にも上るために「カワダイ(川鯛)」と呼ぶ地域も多い。 場所石川県七尾市七尾魚市場・金沢市金沢中央市場 
クロデ
場所山形県鶴岡市由良漁港、千葉県内房 
クロデー
場所千葉県内房 
タケチヌ
場所島根県 
シノコダイ
サイズ / 時期小型・当歳魚 場所山形県鶴岡市由良漁港で 
チヌ
参考聞取、『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929)、阿波学会研究紀要・由岐町の魚類と淡水エビ類、聞取、伊東正英さん 場所紀州(三重県東部・和歌山県各地)、大阪府、兵庫県明石、徳島県阿南市『椿泊漁業協同組合』・海部郡海陽町『宍喰漁業協同組合』・美波町由岐、福岡県福岡市中央卸売市場、宮崎県日南市目井津漁港、鹿児島県南さつま市笠沙 
チンタ
場所愛知県知多 
ヨツツ
参考文献 場所高知県