クロマグロ
代表的な呼び名ホンマグロ
全関連コラム
コラム
塩マグロのトマトソース、バーミセリコラム
熟成深まる塩マグロのお握り加工品
『魚善』さんに教わった塩マグロを作るコラム
マグロのあらをもらった翌朝の朝ご飯料理法・レシピ
めじの中骨だけで、ラーメンを1ぱい加工品
めじで伝統食品、「塩まぐろ」を作る料理法・レシピ
めじの腹もを素揚げにして朝ご飯郷土料理
江戸の居酒屋の定番メニュー「ねぎま」を作ってみたコラム
壱岐勝本漁港のメジでねぎまコラム
市場でマグロ解体中なら中落ちないか? と聞いてみるべしコラム
本マグロのあらでねぎま郷土料理
大分県の「ひゅうが」郷土料理
日本各地にある、づけ・茶漬け・づけ飯とは郷土料理
千葉県産大メジ郷土料理
マグロのポシェ料理法・レシピ
【さかな飯】ルーローハン風
魚貝の物知り度 | ★★ これは常識 |
---|---|
食べ物としての重要度 | ★★★★ 重要 |
味の評価度 | ★★★★★ 究極の美味 |
分類 | 硬骨魚類条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目サバ亜目サバ科マグロ族マグロ属
|
---|---|
外国名 | Pacific bluefin tuna
|
学名 | Thunnus orientalis (Temminck and Schlegel,1844)
|
漢字・学名由来 | 漢字 黒鮪、黒真黒 Kuromaguro Temminck コンラート・ヤコブ・テミンク Coenraad Jacob Temminck(1778-1858 オランダ) シュレーゲルとともにシーボルトの持ち帰った脊椎動物を整理、記載。『Fauna Japonica』(日本動物誌)を執筆。 Schlegel ヘルマン・シュレーゲル(Hermann Schlegel 1804-1884年)はドイツの動物学者。テミングとともにシーボルトの持ち帰った脊椎動物を整理、記載。『Fauna Japonica』(日本動物誌)を執筆。 |
地方名・市場名 |
概要
生息域
海水魚。外洋表層域。
日本近海。
朝鮮半島南岸・東岸、サハリン、千島列島南部のオホーツク海、アラスカ湾、北緯5-40度の太平洋。
生態
産卵は夏。
沖縄、西南諸島、台湾東方で5月〜7月。
日本海でも7月〜8月に山陰、秋田沖などで小規模な産卵が行われる。
1歳、2歳では日本近海を回遊するとともに、一部はアメリカ海域まで移動する。
1歳で56センチ、体重4キロ、3歳で108センチ、26キロ、10歳で191センチ、130キロになる。
寿命は20年以上。
肉食魚でイワシ類、カツオやイカ類などをエサとする。
基本情報
マグロのなかのマグロといった存在がクロマグロで別名「本マグロ」とも呼ばれている。マグロ類中もっとも北方にまで回遊、もっとも大型になる。魚類中もっとも高価に取引され、2012年初競りでは祝儀値段とは言え、キロあたり21万円、1本5649万円で取引されたことがある。また019年には3億3000万円などという法外な値段がついたこともある。
またクロマグロの漁獲量には幼魚、若魚が含まれており、築地市場の大物競り場で取り扱われるマグロらしいものはマグロ全体からするとわずかばかり。
身体の中心部分にある赤い身を赤身という。微かに酸味があり、旨みがたっぷりあり、他のマグロにないこくがある。クロマグロ本来の味わいが楽しめると通好みの部分。
中トロは脂がほどよく、赤身の旨みに脂の甘みを加味したもの。
大トロは室温でとろけるほど脂に満ちている。当然、口中に入れただけで脂がとろける。「とろ」の語源が「溶ける」にあるとしたら、まさにトロのトロである。
水産基本情報
若魚(めじまぐろ)も年間を通して入荷してくるが、こちらは手頃な値段である。
漁法 延縄(釣り)、巻き網
主な産地 長崎県、島根県、青森県、北海道、静岡県
統計から/クロマグロは国内で1万5000トンあまりを漁獲、輸入と合わせて4万トン。輸入ものの方が多い。クロマグロのマグロ全体の比率は8パーセントほどだが、ここには幼魚、若魚が含まれており、一般に本マグロといわれるサイズを意味するものではない。
養殖 近畿大学で完全養殖(採卵して稚魚を確保、出荷まで育てる)が成功してますます養殖ものが増えていきそう。大西洋岸、地中海、東南アジア、沖縄、西南諸島など、海外国内など産地は増えるばかり。
選び方・食べ方・その他
選び方
鮮度は体表の色合い、目が澄んでいるか、鰓などを見る。
脂ののり具合は、大型のものはプロにしかわからない。
小型は表面をさわってぬめりを感じるもの、あまり硬くないもの。
味わい
赤身魚のひとつ。大型のものに天然と養殖があり、また天然の小型のものがある。
大型は赤身、中トロ、大トロなどと脂の強さで呼び分ける。
赤身は中心のいちばんたくさんとれる部分で、酸味があり、マグロ本来の旨みが感じられる。
中トロは赤身の味わいに脂の甘み、まったり感が加わってくる。
大トロは甘みが強く、これは脂がもたらすもの。脂のうまみを食べているといっていい。
クロマグロは中トロ、大トロがもてはやされるが、これはさばいた全体の15パーセント前後しかなく(養殖は別)、ましてや大トロはその5分の一前後となる。養殖ものはトロの部分が多い。味はよく、一般人では天然養殖の区別はつけられないと思う。
また10kg以下を「めじまぐろ」といいこれも寒い時季が旬。
赤身魚とは マグロ族の魚(マグロ属/クロマグロ、タイセイヨウクロマグロ、タイセイヨウマグロ[Thunnus atlanticus (Lesson, 1831) ] : Blackfin tuna/一般的ではない)、ミナミマグロ、メバチマグロ、キハダマグロ、コシナガ、ビンナガマグロ ソウダ属/マルソウダ、ヒラソウダ スマ属/スマ カツオ属/カツオ) および、カジキ類のシロカジキ、マカジキ、バショウカジキのこと。これにあえて加えるならカマスサワラかも。
栄養
栄養/脂質が高いがここにはDHA、EPAが多く、成人病など防ぎます。鉄分、カルシウムが豊富。ビタミン類も豊富です。
危険性など
ー
食べ方・料理法・作り方
好んで食べる地域・名物料理
まぐ茶 ご飯の上に残ったぶつをのせて、あぶった海苔をちぎってのせて、さっと醤油をかけて、熱いお茶をを注いで出来上がり」。
稚魚、小さなものを新前(しんまえ)、新子(しんこ)といい高知県、鹿児島県などで好まれている。
ひゅうが ゴマをすり、卵黄を合わせて、しょうゆ、みりん、砂糖などで味つけ。ねぎなどを加えたものにマグロの赤身を漬け込む。これをご飯にのせて食べる。[大分県津久見市保戸]
加工品・名産品
釣り情報
山口県などでは生き餌での乗り合いが出ている。
相模湾では夏から秋にかけてルアー釣り、疑似餌を使ったカッタクリ、サビキ釣りなどが盛ん。
歴史・ことわざなど
幼魚をヨコワ、20キロくらいまでをメジ、ゴンタ、20キロ〜30キロくらいまでを中坊、小マグロ。
『本朝食鑑』(人見必大元禄8年・1695年)に二、三尺を〝目鹿〟、四、五尺を〝真黒〟、七、八尺以上を〝鮪(しび)〟と呼ぶ。
江戸時代後期には「めじか」、「まぐろ」、「しび(はつ)」というのが定着。
古くは「鮪」と書いて「しび」と読ませた 古事記に平群の臣 志毘(しび)として登場。当時は人名に動物の名をつけることが多かった。『出雲の風土記』に島根半島東部で「しび」がとれたことが記されている。
マグロは江戸時代後期から 「まぐろ」と呼ばれるようになったのは江戸時代後期。
刺身屋 〈鰹およびまぐろの刺身を専らとし、この一種を生業とする者諸所に多し。銭五十文、百文ばかりを売る麁製(そせい/粗末な)なれども、料理屋より下直(げじき/安い)なる故に行はる。けだし活魚の類少しづゝ兼ね売り、あるいは鮮魚も格別下直の日は売る〉『近世風俗志(守貞謾稿)』巻之五(生業上)(喜田川守貞著 宇佐美英機校訂 岩波文庫 天保8/1837)
クロマグロ資源の問題 大西洋のクロマグロ資源の急速な低下が、漁獲量を減らす、輸出の禁止などを含めて早急の処置が必要とされている。マグロ類全般に乱獲問題が深刻ともいえそう。
トロのとれるマグロ 一般にトロのとれるのはメバチマグロ、クロマグロ、ミナミマグロの3種。厳密にいうとクロマグロとミナミマグロだけという人もいる。また大トロがとれるのはクロマグロとミナミマグロだけ。
天保のマグロ大漁 天保三年(1832年)の春、マグロの大漁があり、当時日本橋にあった魚河岸にあふれかえった。非常に安値となり、『南総里見八犬伝』の作者滝沢馬琴の日記に、三尺のマグロが二百文、滝沢家では二尺あまりのマグロの片身を八十文で買っている。かけそば十六文で検討をつけると面白い。
仙台鮪 [三陸の漁場でとれた鮪が、明治初年頃から東京あたりに出廻るようになり、「奥州仙台(領)」の広義の「仙台」を冠して、仙台鮪と呼ばれました。]。近海でとれたものでも東京の送られると鮮度が落ち、[東京では以前は「仙台鮪」と凡そうまくない鮪の代表としていた。(仙台魚風土記)]。斎藤緑雨のインタビューに「車屋が仙台鮪の安いのを買って帰り、女房は家にゐて破れ火鉢の側に、コロツブ(コロップ=コルク)の取れた徳利に酒を買って待っている」(唾玉集)、「……初春になると著しく味が落ちる。此の時期でも仙臺方面で取れたセンダイマグロと称して東京へ入荷させられたクロマグロは相当に美味である」『魚と人生』(田中茂穂 楽浪書院 1934)
べっこう 今でもマグロの赤身を「づけ」と呼ぶことがある。静岡県では「べっこう」。これは古くはマグロは赤身がうまいとされ、保存のために醤油につけたことからくる。今でもマグロの漬けを作ることは珍しくない。
あら トロの値段が高くなったのは戦後のこと。それまではマグロのアラでしかなかったということも言われる。
まぐろ茶漬 魯山人のエッセイに「まぐろ茶漬」。『春夏秋冬 料理王国』(北大路魯山人 ちくま文庫)
大トロ(だいとろ) 1955年映画『帰って来た若旦那』で柳家金語楼の岸本平太郎が清川虹子にたいして「あんな中トロ、いや大トロ」と言う。このとき「中トロ」、「大トロ」という言語が普通に使われているのがわかる。ちなみにこの場合の「とろ」は「とろい」、「ばか」などの意味。
地方名・市場名
部位小型 参考林市兵衛さん 場所三重県志摩市波切
サイズ / 時期小型 備考カツオがあまりとれないため。カツオは「マガツオ」。 参考田崎鮮魚市場20181121 場所熊本県熊本市
サイズ / 時期若魚 参考『種子島の釣魚図鑑』(鏑木紘一 たましだ舎 2016年) 場所鹿児島県種子島
サイズ / 時期小型 場所山形県鶴岡市由良漁港
サイズ / 時期小型 場所関東周辺(千葉県、東京都、神奈川県)、山形県鶴岡市由良漁港、富山県高岡市
備考関東の市場ではホンマグロ・ホンマと呼ばれることが多い。 場所関東の市場
サイズ / 時期小型 場所徳島県海部郡海陽町宍喰、高知県宿毛市田ノ浦すくも湾漁協
サイズ / 時期小型 場所高知県宿毛市田ノ浦すくも湾漁協
備考【出世魚】シビコ→ヨコワ→ヒッサゲ(引っ下げる)(10kgを超えると)→シビ。 場所京都府宮津市・伊根町新井崎漁港
備考古くは大正、昭和戦後高度成長期まではシビマグロ。
イモシビ ウシシビ ウメゾメ ウラマワリガツオ オオシビ オオタロ オオマグロ カタマ カンバ クロ クロシビ ゴトウ ゴトウシビ ゴンタ ゴンダ サンダ シビ シビツ シビツユ セナガ デンボ デンボク トウツケ トヨマ ニンダ ハツ ホンシビ マゴロ ムツ ヤツ ヨカゴ ヨツ ヨツワリ
参考文献より。
オオトロ[大トロ] トロ
部位脂の強い内臓を包む部分 備考「大トロ」もしくは単に「トロ」。
チュウトロ[中トロ]
部位背と腹の部分で皮に近い部分の脂がのった部分 備考を「中トロ」。
アカミ[赤身]
部位背と腹の中骨に近い中心部分 備考「赤身」もしくは「づけ」。