カツオ
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珍魚度・珍しさ | ★ いつでも手に入る |
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魚貝の物知り度 | ★ 知らなきゃ恥 |
食べ物としての重要度 | ★★★★★ 非常に重要 |
味の評価度 | ★★★★ 非常に美味 |
分類 | 硬骨魚類条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目サバ亜目サバ科マグロ族カツオ属
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外国名 | Striped tuna, Skipjack tuna, Oceanic bonito
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学名 | Katsuwonus pelamis (Linnaeus, 1758)
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漢字・学名由来 | 漢字 鰹、堅魚、堅木魚、勝魚、勝つ魚、松魚、加豆乎 Standard Japanese name / Katuo Linnaeus Carl von Linné(カール・フォン・リンネ 1707-1778 スウェーデン)。二名法を確立。 Kishinouye 岸上鎌吉(きしのうえ かまきち 慶応3年〜昭和4年 1867-1929)。東京帝国大学教授。動物学者・水産学者。水産学の黎明期に甲殻類、棘皮動物、魚類など様々な分野を研究した。 |
地方名・市場名 |
概要
生息域
海水魚。
日本近海。本州以南にいる。日本海には昔は少なかったが2023年時には増えつつある。
朝鮮半島南岸、済州島。世界中の熱帯〜温帯海域。
生態
産卵期は夏と冬。赤道周辺では周年。
国内での多くは夏に産卵。仔魚は熱帯・温帯域に分布。日本近海のカツオは北上回遊する。
西から黒潮に乗って北上する群れ、小笠原海域から北上する群れ、遙か東の海域から北上する群れがある。
これが三陸東沖に到達して、南に下る(戻る)。
稚魚、仔魚期は動物性プランクトンを、成長に伴い魚を捕食するようになる。
大型のマグロ類、カジキ類に捕食される。
鰓蓋が動かないので酸素を取り入れるために泳ぎながら、海水を鰓孔に流入させる。止まると即窒息死する。
この遊泳能力を支えるためには、体の代謝を活発化させる必要があり、そのためには体温をある程度高く保つ必要がある。
これに大きな働きをしているのが奇網(ワンダーネット)と呼ばれる血管。代謝によって温められた血液と、鰓から取り込んだ酸素を含んだ冷たい血液の熱交換をし、血液を常に一定の温度に保っている。
基本情報
世界中の温暖な海域に生息している。世界中で食用となっているが、古代から節になり、日本の食文化を生み出してきた。また節(カツオ節)以外では江戸時代以来、昭和高度成長期までは塩ガツオ、なまり節などの四十物(塩干)として出回っていたものが基本だった可能性が高い。
江戸時代後期から刺身用(実は現在のたたき)の魚として人気に。江戸時代、安永から文政期までは岸寄りに回遊する春(旧暦の4月)のカツオに熱狂し、初夏(旧暦の5月)を待たずに法外な値で競って買い求めている。ただし、初物を尊んだのは一部富裕層に限られたもの。それが安房(千葉県房総)でも揚がる後期になると庶民にも手が届く存在となった。ただし安くなっても、やはりごちそうのたぐいだった。
ちなみにこの初鰹の騒ぎは江戸だけの話で全国的なものではない。江戸時代以前から海辺や地方都市では普通にカツオの生食を行っていた可能性が高い。カツオをこの江戸限定的な話でくくるのは大間違いだと考えている。
今現在では温暖化のためにこの初鰹は曖昧模糊なものとなり、年間を通して水揚げをみるようになっている。あえていうと下りガツオ(秋に三陸沖で揚がる)に季節感を感じる。またカツオがほとんどとれなかった日本海産は今でも、「迷いガツオ」などとされているが、現実には普通に回遊するようになっている。山陰などでは大量に水揚げされることがしばしばである。「迷わないカツオ」となっているのだ。新潟県から山陰にかけてなど秋から初冬のカツオの一大産地になる可能性が高い。
近年ではカツオの刺身は年間を通してスーパーの定番となっている。たたきなど加工品(総菜類)も多彩で人気がある。
珍魚度 珍魚度ゼロに近い。つでもどこでも食材としてのカツオは手に入る。魚屋さんなどにお願いすれば丸のままのすぐ手に入ると思う。
水産基本情報
関東の市場には1月から出回り始め、晩秋まで見られる。冷凍物も多い。値段は沿岸でとれた高級品から冷凍の廉価なものまで様々。鮮魚の産地としては宮城県気仙沼、千葉県勝浦などが有名。
また少ないながら長崎県から山陰、若狭湾、能登半島、富山湾などでとれるものを迷いガツオといい高値で取引される。1982年12月中旬に富山湾の定置網にカツオ入網の記録がある。
漁法 釣り、巻き網
主な産地 静岡県、宮城県、三重県、東京都、宮崎県、高知県
選び方・食べ方・その他
選び方
体表にある縞模様がはっきりしているものほど新鮮。鮮度が落ちてくると鈍い色合いになってくる。
鰓(えら)が鮮紅色なもの。鮮度が落ちてくると鈍い赤になり、やがて白くなる。
味わい
周年おいしい。脂ののっている時季は秋だけど旬とは言えない
硬い鱗が前部にだけある。これをそぎ落としてから下ろす。皮は薄い。骨は軟らかい。
内臓、頭部などに血液が多い。赤身で血合いが大きい。熱を通すと硬く締まる。
あらなどからうま味の強いだしが出る。
栄養
非常に良質なタンパク質が多い。中性脂肪を減少させ、血栓ができにくくし、心臓病、認知症などを予防し、軽減するDHA、EPAが豊富。また赤身には吸収のよい鉄分が豊富。肌などを健全に保つナイアシンも多い。
危険性など
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食べ方・料理法・作り方
水洗いして三枚に下ろし、背と腹を分ける。皮を引き刺身状に切る。写真は背だが、腹の方が脂の層は厚い。
薬味はしょうが、にんにく、ねぎなどいろいろ取り混ぜて食べると楽しい。
好んで食べる地域・名物料理
かちゅー湯 沖縄県沖縄本島で風邪のときや、慌ただしい日に作られるもの。カツオ節に熱湯を注いで作るものだが、みそ、もしくはしょうゆで味つけする。コラムあり
【飯】
かつお飯(鰹飯) 静岡県。薄味に煮たカツオを、桜飯に炊きあげたご飯に混ぜ合わせる。
かつお飯(鰹飯) 静岡県焼津市。甘辛く煮たなまり節を炊きたてのご飯に混ぜる。
りゅうきゅう すりごま、しょうゆ、みりんなどで作った地に魚の切り身を漬け込んで、ご飯にのせて食べるもの。湯、もしくはお茶をかけてもいい。[大分県全域]
【茶漬け】
かつおの茶漬 炊きたての暖かいご飯にカツオのつくり(造り=刺身)をのせ、醤油をかけ、その上から熱いお茶(新茶)をかける。
カツオ茶漬け 厚めに切った刺身を醤油、みりん、卵のたれに漬け込み、熱いご飯にのせ熱い番茶をそそぐ。
大根の塩辛煮 大根をだし汁で柔らかくなるまでたき。塩辛を加えて煮上げる。
カツオの切り身をしょうゆ、みりんなどに漬け込み、お茶碗に温かいご飯とともに入れてバターをのせ、電子レンジで加熱するもの。料理時間は漬け込み時間を入れても半時間ほどしかかからない。『秘伝 おふくろの味 静岡県海のさち山のさち』(静岡県生活改良普及員編 静岡新聞社)
加工品・名産品
ツナ缶(カツオの缶詰) ビンチョウマグロのシーチキンに対して『はごろもフーズ』ではシーチキンマイルドという商品名になっている。
冷凍カツオ 「とろかつお」など商品名あり。皮付き、皮なしなどあり、ロイン(4分の1)、フィレ(三枚に下ろした身)などいろいろある。
塩蔵カツオ 産地や消費地で強い塩をしたもの。塩引き、だぶ漬け、塩カツオなどと言われ、東北から紀伊半島までの地域で作られている。また旧紀州である三重県志摩・熊野、和歌山県などで作られている「塩ぎり」もそのひとつである。
釣り情報
外房、相模湾などで生き餌釣り、ルアー、かったくり(疑似餌)で狙う。
歴史・ことわざなど
年取魚 正月が近づくと「塩かつお」を切り身(一人前ずつ)にして麹(甘酒)で漬け込んだ。[岐阜県恵那郡中野方/鈴村 20180908]
いろり 「鰹色利」、「鰹煎汁」:「いろり」。鰹節を煮出した汁。
結納品 結納の品のひとつ「勝男節(かつおぶし)」。
忙しい種 すし屋では「忙しい(足が速い、腐りやすい)」種として嫌う向きがある。
俳句 有名な俳句に「目に青葉山ほととぎす初かつお」山口素堂(江戸時代前期の俳人)、「鎌倉を生て出けむ初鰹」芭蕉
勝負にかつお 小田原で船遊びをしていた北条早雲(伊勢宗瑞)の子の氏綱が舟遊びをしていると、舟の中へカツオが飛び込んだので、「勝つ魚だ!」と大喜びし、それ以後、出陣の酒肴に「勝負にカツオ」をいつも用いた。「北条五代記」『魚の文化史』(矢野憲一 講談社 1983)
刺身屋 〈鰹およびまぐろの刺身を専らとし、この一種を生業とする者諸所に多し。銭五十文、百文ばかりを売る麁製(そせい/粗末な)なれども、料理屋より下直(げじき/安い)なる故に行はる。けだし活魚の類少しづゝ兼ね売り、あるいは鮮魚も格別下直の日は売る〉『近世風俗志(守貞謾稿)』(喜田川守貞著 宇佐美英機校訂 岩波文庫 天保8/1837)
初鰹 江戸時代、初鰹に熱狂したといわれるが、これは18世紀半ばくらいから。「女房を質に置いても初鰹を食う」のも江戸時代半ば以降のこと。
魚鑑 〈四月(旧暦で現在の5月)相州鎌倉海上始てこれを出す、実に夏月の上珍(しやうちん)これに過るはなし、故に東都の諸人上下となく、その魁を競ふ、別て六七月のころ、相豆房総の海上にこれを釣り得て急き小船に帆をまて、順風激浪のはかちなく、夜中(よるのうち)に来るを夜かつをと称へて、好事(ものずき)の酒客(さけのみひと)、千金をもなげうつところなり〉『魚鑑』(武井周作 天保辛卯 1831)
鰹塩物・生 万延元年(1860)、9月1日日(旧暦以下同)に酒肴鰹・とふふ、10月3に鰹塩物。『紀州藩士 酒井伴四郎関係文書』(小野田一幸 髙久智広 清文堂)
初鰹 カツオの逸話として、江戸時代、文化九年(1812)旧暦3月25日に、初鰹が総数17本入江戸の町に荷した。そのうち6本は将軍家に、2本は権門へ、1本は有名な料理屋八百善へ行き、人気歌舞伎役者市川歌右衛門が魚屋から1本3両で買って芝居小屋で振る舞った。
芝造り 皮付きの刺身。(『芝居の食卓』(渡辺保 朝日文庫))
江戸時代の鰹の刺身 江戸時代カツオの刺身といったのは、表面をあぶったもの。別名「あぶり」とは現在の「カツオのたたき」のこと。『たべもの東海道』(鈴木晋一 小学館ライブラリー)
鰹醢(たたき) 〈江戸時代「たたき」と呼ばれていたのは現在のカツオの塩辛のこと。〉『たべもの東海道』(鈴木晋一 小学館ライブラリー)、〈肉の端および小骨をたたき和めて醢(しおから)とする。紀州(熊野)・勢州(桑名)・遠州(荒井)のものを上とする。相州(小田原)のものがこれに次ぐ。奥州(棚倉)のものは色が白くて味は佳い。〉『和漢三才図会』(寺島良安 正徳3年/1713 東洋文庫 平凡社)
酒盗 〈鰹の腸(わた)を醢にしたものである。阿波で作られるものが有名である。〉『和漢三才図会』(寺島良安 正徳3年/1713 東洋文庫 平凡社)
硬い魚 古くは「堅魚(かたうお、かたな)」、「堅魚木(かたなぎ)」。これは明らかに生のカツオではなく乾物をさしている。「かつお」という言葉は海から遠い都などで生まれたか?
カツオノエボシ カツオノエボシ(鰹の烏帽子)というヒドロ虫類がいる。触手に猛毒を持ち、電気クラゲとも呼ばれる。
カツオ節 現在のカツオ節は江戸時代延宝2年(1674年)土佐の甚太郎によって始められた。ゆでたものを焙乾するなどの工夫が行われたのだ。
カツオ節産地 カツオ節の古くからの産地は房州、伊豆、紀州、阿波、土佐、薩摩
鰹木 「鰹木」、「硬魚木」:「かつおぎ」と読む。宮殿、神社などの棟木の上に並べられた装飾用の木のこと。「勝魚木」、「葛緒木」とも。
鰹鳥 鳥綱ペリカン目カツオドリ科カツオドリ属のカツオドリ。南大西洋、西太平洋に生息する海鳥。
カツオブシムシ カツオブシムシ科の甲虫。衣料品やカツオ節など乾物などを食害する。
地方名・市場名
備考「へそもたし」は「臍持たし」で「へそ」とは心臓のこと。カツオの胸部に心臓が包み込まれているため。 参考林市兵衛さん 場所三重県志摩市大王町
備考秋にとれるカツオ。 参考日比野友亮さん/和具の方言 場所三重県志摩市志摩町和具
参考田崎鮮魚市場20181121、『種子島の釣魚図鑑』(鏑木紘一 たましだ舎 2016年) 場所兵庫県豊岡市竹野・熊本県熊本市、鹿児島県種子島
参考『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂) 場所北陸地方、富山県新湊・四方・富山、新潟県出雲崎、北海道
参考『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂) 場所宮城県、高知県
場所山口県萩市・長門市・阿武町
備考病気かなにかで身がオレンジ色で虹色を発し、うま味が少なく歯触りがごりごりする固体。 参考長尾桂一郎さん 場所徳島県海部郡海陽町宍喰
備考大小、外見に関係なく、下ろすと硬くて味がない個体のこと。 参考聞取 場所日本各地
備考下ろした身が口に入れてゴリゴリ硬くて味がないもの。 参考聞取 場所日本各地で
サイズ / 時期大型 参考『魚名からみる自然認識:沖縄・伊良部島の素潜り漁師の事例から』(高橋そよ 2014年03) 場所沖縄県伊良部島
参考『美ら海市場図鑑 知念市場の魚たち』(三浦信男 ぬにふぁ星 2012) 場所沖縄県南城市知念漁協・石垣島
場所沖縄県宮古
参考『原色 沖縄の魚』(具志堅宗弘 タイガー印刷 1972) 場所沖縄県本島・八重山・宮古
参考奄美漁業協同組合 場所鹿児島県奄美大島
場所富山県氷見市藪田浦漁業協同組合
備考単にカツオはソウダガツオ類であることがある。 場所熊本県熊本市
備考単にカツオはソウダガツオ類であることがある。 場所長崎県
備考塩をしたカツオや乾製品が基本の時代、鹿児島県枕崎では生で食べられる新鮮なものをブエンカツオ(無塩鰹)という。 場所鹿児島県枕崎
部位腹の薄い部分 場所千葉県勝浦市、静岡県沼津市
部位腹の薄い部分 場所高知県
部位腹の薄い部分 場所宮崎県日南市
部位腹の薄い部分 場所鹿児島県枕崎市(造語)
部位腹の薄い部分 場所鹿児島県枕崎市
部位心臓 場所静岡県沼津市
部位心臓 場所静岡県焼津市、吉田町
部位心臓 場所高知県
部位心臓 場所宮崎県日南市
部位心臓 場所鹿児島県枕崎市
参考文献より。
サンゼンボン[三千本]
サイズ / 時期小型 参考文献より。
エボシウオ[烏帽子魚]
備考頭の形から。