サンマ
代表的な呼び名サンマ
全関連コラム
珍魚度・珍しさ | ★ いつでも手に入る |
---|---|
魚貝の物知り度 | ★ 知らなきゃ恥 |
食べ物としての重要度 | ★★★★★ 非常に重要 |
味の評価度 | ★★★★★ 究極の美味 |
分類 | 硬骨魚類条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スメグマモルフォ系ボラ亜系ダツ目トビウオ亜目サンマ科サンマ属
|
---|---|
外国名 | Pacific saury
|
学名 | Cololabis saira (Brevoort, 1856)
|
漢字・学名由来 | 漢字 秋刀魚、秋光魚、三馬(馬がつくことから築地などで符丁的に「午(うま)」の字を使う)、鰶 Sanma |
地方名・市場名 |
概要
生息域
海水魚。外洋表層性。
オホーツク海、北海道〜九州南岸の日本海・東シナ海沿岸、北海道〜九州南岸の大平洋沿岸、瀬戸内海、屋久島。
朝鮮半島東岸、ピーター大帝湾、北米西岸バハカリフォルニアまでの北太平洋。
生態
■日本には日本海系群と太平洋北西部系群のふたつの系統の群が存在する。一般に流通するサンマのほとんど総てが太平洋側を回遊しているもの。
■産卵期は秋から春。流れ藻(ホンダワラ類)に産卵する。日本海では夏。また少ないながら年間を通してどこかで常に産卵しているのがサンマの特徴でもある。
■太平洋生まれの系群には3-7月の春生まれと、10-2月の秋〜冬にうまれるのがある。春生まれの方が大型になる。
■稚魚は暖流とともに北上する。
■サンマに胃はなく、腸が短い。プランクトン食で主に小型の甲殻類、オキアミなどを餌にする。
■寿命は2年〜2.5年。
基本情報
サンマ科(広い意味でのサンマの仲間)は世界中に4種。もっと狭めてサンマ属は太平洋に2種だ。サンマ科で食用となるのは太平洋にいるサンマと大西洋にいる1種類。ただしサンマほど大量にとれ、食用として重要な種はいない。
サンマは北太平洋に広く分布。非常に大きな群れを作り、回遊している。産卵期が長く、多くの系群がある。日本海にもいてときに定置網などでまとまって揚がるが、比較的脂が少ない個体が多い。一般的にサンマというと太平洋北海道道東に出現して南下するものをさす。太平洋側の方があるかに水揚げ量は多く、主な産地は北海道、三陸から千葉県銚子までだ。ちなみに銚子以南に南下したサンマは伊豆半島〜和歌山県では名物の1本干しになる。
2020年くらいから年々漁獲量が急激に減少している。2021年現在、1万トン前後の水揚げしかない。1990年代から台湾、中国の公海上での漁獲が始まったのも原因と考えている模様だが、それ以上に環境の変化、特に温暖化の影響である可能性の方が高いと考えている。
江戸時代江戸では秋に房州(千葉県)のサンマをよしとし相模湾まで下るとまずくなるとされていた。古くは塩蔵か干ものとして食卓をにぎわせていた。江戸時代江戸の町で食べていたものも、また山間部などに送られていたものも干もの、もしくは塩蔵品だ。また江戸の町にとって本来の産地は千葉県、もしくは伊豆半島だったと思われる。北海道、本州、九州などでとれるサンマは時季や場所によって利用法などが変わるのもサンマの特徴である。
一年を通してスーパーなどで見かけない日はない。鮮魚、解凍もの、加工品、とサンマの一般家庭に占める役割は大きい。これが2020年くらいを境に激減している。
年中出回るサンマであっても、7月の新ものは最近では初夏の風物詩ともいえそうだった。これも昔のように大大的に報道されなくなっている。またより深刻なのは熊野灘のサンマの丸干しなど伝統的な食材への影響である。
8月も後半になると1尾100円代で脂ののった個体が買えたが、最近では10月くらいに脂が乗り始め、大振りのものは小売店では扱えないものとなっている。160gを超えるとデパートなどで1尾1000円以上は当たり前である。
珍魚度 非常に一般的な食用魚で、不良になったとはいえ、スーパーなどで簡単に手に入る。
水産基本情報
初夏から秋にかけての太平洋側のもの。冬から春にかけての日本海側のものがある。
量的には圧倒的に太平洋側に多く、一般に見かけるほとんどすべてが太平洋側のもの。
太平洋 2019年は初夏の解禁日の高値が有名だったが、不漁によって値段はピークがなく質が悪く高い状態が続いた。
日本海 2020年2月、富山湾などから入荷している。あまり値はつかないものの思った以上に質がいい。注目を浴びる可能性あり。
漁法 棒受け網、刺し網、定置網
産地(漁獲量の多い順) 北海道、宮城県、福島県、岩手県
選び方・食べ方・その他
選び方
鮮度は全体の色合いで選ぶ。銀色の腹の部分が輝いているもの。鰓が鮮紅色のもの。脂ののりは頭の後ろが盛り上がっているもの。触ってぬめっとしているもの。
味わい
旬/夏から秋
鱗は小さくて薄く取りやすい。棒受け網などのものはほとんど鱗のないものが多い。皮は透明で薄いが強い。骨は軟らかい。小骨がない。
赤みを帯びた白身で脂が層を作り、また身に混在する。熱を通しても硬く締まらない。
栄養
DHA(ドコサヘキサエン酸)、IPA(イコサペンタエン酸)が豊富。
血栓のできるのを防ぎ、脳などに必要な栄養素でアルツハイマー予防などに効果がある。
ビタミンD(骨を丈夫にし、成長期の子供に欠かせない)も多い。
危険性など
サンマヒジキムシ/
食べ方・料理法・作り方
好んで食べる地域・名物料理
さより飯 「しおけめし」のひとつ。岐阜県旧益田郡萩原町ではガデふやし(米を節約するために雑穀や野菜を一緒に炊き込む)ではなくごちそうとして作る、まぜご飯もしくへ炊き込みご飯のひとつ。〈サンマ身をほぐして炊き込む〉。この地区のサンマは塩蔵品であったようだ。要するに塩サンマの炊き込みご飯だ。『萩原文庫4 萩原の四季と味』(はぎわら文庫編集委員会 岐阜県益田郡萩原町 1981)
岐阜県旧益田郡・高山市 サンマはとてもよく食べていた。基本的に「塩さんま」であったが、ここ十数年(2000年以降か?)、生を食べるようになったとのこと。[フレッシュフードまるけん/岐阜県下呂市萩原町]
加工品・名産品
塩さんま 今では比較的塩分濃度の低い製品が作られているが、古くは非常に塩分濃度の強いものが作られていたようだ。その歴史は古いが産地はまだわからない。これが岐阜県や長野県、奈良県の山岳部に送られていた。
煮もの レトルトなどで出回っている。醤油味、みそ味などがある。単に煮たものから、あぶって煮たものなど多彩。
酢漬け 甘酢漬けや野菜と漬け込んだもの。サラダなどとうたったものなど種類が多く、小売店などでは普通。
釣り情報
ー
歴史・ことわざなど
歳時記では/秋 サンマは戦前戦後くらいまでは秋にとれるものであった。特に10月になって千葉県銚子で豊漁が続くことが多かった。
長野県長野市えびす講のサンマ 長野県長野市七二会では11月20日のえびす講にサンマを食べる。『聞書き 長野の食事』(農文協)
鰶 〈「さんま騒がせ」と言って、十月下旬、房州で秋刀魚が漁れ始めると大漁が続き、その全部が「一塩もの」となって東京に集まる。「お祭り騒ぎのような忙しさ」が東京市場でも幾日か続いて、そのうち幾晩か徹夜続きにもなる程であるが……〉。『干もの塩もの』(石黒正吉 毎日新聞社 1975)
諺(ことわざ) に「秋刀魚が出ると按摩(あんま)が引っ込む」。サンマを食べると栄養豊富で健康になり、按摩が必要なくなるの意味。同義の諺に「秋刀魚は按摩泣かせ」。
落語「目黒のさんま」 三代将軍徳川家光(1605〜1651)が鷹狩りの折に目黒の茶店に立ち寄り、食事を所望した。この茶店の彦四郎さんは気さくに夕食用のサンマを焼いて差し出した。これにいたく感激した家光が茶店から見える限りの土地を進ぜようと言ったが、辞退した。「さんまは目黒に限る」と言ったというのは後の作り事。
えびすこうさんま 江戸では旧暦10月20日、えびす講に供えて「えびすさんま」、「えびすこうさんま」といった。
わらべ歌 三重県鈴鹿市の正月の様子を表現した「わらべ歌」があり、「正月さんはええもんや、赤っかいべべ着てちゃらはいて、雪より白いまま食べて、こっぱのようなかど(サンマ)そえて、下駄の歯のようなもち食べて」。「かど」は一般的には「とと(魚)」。
「秋刀魚の歌 詩人、作家の佐藤春夫(和歌山県新宮市生まれ 1892〜1965)に「秋刀魚の歌」がある。
■サンマは養殖されていない。百パーセント天然もの。サンマにて「天然もの」の文字があるのは不自然。
■サンマの漁獲量は戦後、夜間に灯火(明かり)で集めたサンマを棒受け網でとるようになってから増えた。全国的になりはじめたのも、それほど古くはない。
■今では一般的なサンマも昭和30年代には食べ方などが普及していなかった。
■2017年くらいまでは、道東沖で7月中旬、限定的に小型船だけでのサンマ漁は始まる。この時期のサンマは値段も超がつくほど高く、200グラムほどのものが1匹で1200円なんてこともある、しかもこれが卸しの段階なのであるから、一般の魚屋やスーパーに出回るわけがない。
■2017年くらいまでは、8月半ばになり全面的に漁が解禁されると値段がストンと下落。1匹が100円くらいから80円くらいまで下がる。(註大型船解禁時の値段は年によって大きく違ってくる。1匹が40円前後まで下がるかと思えば、2002年のように200〜300円が秋口まで高値安定するなどという事もある)。
■2017年くらいまでは、サンマがいちばんうまいのはやはり値段も下落した初秋、北海道東沖から三陸、女川港などで水揚げされる頃が脂ののりもピークになる。
初競りkg50万円 2018年7月11日、北海道札幌「札幌市中央卸売市場」での初競り最高値はkg50万円だった。最高値のみ報道するマスコミというのは程度が低いと思う。日本人の愚かさを露呈している。2023年8月21日、札幌の初競りは2㎏23万円。
地方名・市場名
参考『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂) 場所三重県志摩市和具、和歌山県串本町・和深、京都(魚鑑)、兵庫県淡路・播磨地方
参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 場所三重県熊野市、和歌山県
参考文献 場所三重県鳥羽
参考『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂) 場所京都府宮津
備考サンマの北上群、若魚、幼魚 場所伊豆半島、沼津、伊東
備考サンマの北上群。幼魚、若魚。 参考スーパー干もの 場所千葉県、静岡県伊東市
参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 場所和歌山県新宮市三輪崎、三重県尾鷲、熊野浦
参考『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂) 場所大阪、三重県、和歌山県
参考『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂) 場所大阪府、三重県、和歌山県
備考『魚鑑』(武井周作 天保辛卯 1831)に〈京にてさよりと称う〉。 参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 場所岐阜県下呂市萩原町、愛知県三谷、岐阜県大垣市、和歌山県由良町白崎・田辺、石川県大聖寺、富山県
参考文献 場所新潟県
参考『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂) 場所新潟県佐渡
参考『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂) 場所新潟県佐渡島
参考『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂) 場所東京都・八丈島、関東、石川県輪島、福井県鷹巣、東北地方、福岡県玄海町、山口県下関など
参考『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂) 場所福岡県宗像市玄海町
参考『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂) 場所長崎県大村・五島・壱岐・対馬、福岡県宗像市玄海町・志賀島
参考『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂) 場所長崎県長崎市・壱岐
場所三重県伊勢地方
備考三重県伊賀では塩をして干したもおのをサイラ、サイレ。生をサンマ。『海の博物館』鳥羽市、平賀大蔵先生。三重県からサンマを供給されていたために大阪でも「さいら」。 参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929)、『続・大阪弁のある風景』(三田純一 東方出版 1995)、山崎博司さん 場所三重県伊賀・志摩市和具、和歌山、大阪府大阪市、徳島県那賀町和食
場所日本海佐渡地方
サザイオ ザザアジ サーベラ
参考文献