9月12日に昆布に巻いた、昆布締めは、作ったこと自体を忘れていた。
東京に続けざまに行き、大の苦手の事務的なことをやりで、気がついたのが16日だった。
忘れていたにもほどがある。
昆布には大量のアルギン酸などがある。
確か殺菌作用もあったはずなので恐る恐る昆布から取り出し、端っこを食べたら、とてもいい味、じゃなくて、どえらくうまい。
ヒモ状に切ってへべすをしぼり、わさびをちょんと乗せて食べたら、結構、結構! 申し分のない味だった。
後から追いかけてくる昆布のうま味がボクの琴線に触れる。
甘いとすら思える、うま味豊かなアカアマダイと、上等の羅臼昆布の、千秋楽の取り組みのようだ。
まだ逢魔が時なのに少しだけ、「玉柏 本醸造」を室温にてやる。
残りの仕事はあきらめる。
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丸干しの焼き方はとても難しい。
ガス台のグリルを熱しておき、椅子をそばに寄せ焼き加減をみながら焼く。
みりん干しと、塩干しを作ったが、難易度の高いみりん干しから。
焼きたては醤油の香りが鼻にぶつかってとてもいい感じである。
スミクイウオの身はどこまでも柔らかく、身と脂が混ざり合ってひとつの味になる。
調味料は本種にとって邪魔者と思い込んでいたが、間違いだったようだ。
みりん干しは、干ものの王道とは言えないが、毎回セットで作ってもいいだろう。
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八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産、クマゴロウが新島沖で釣り上げたヒメを撮影しながら考えた。
標準和名のヒメは体長20cm前後の比較的原始的な魚で、本州から九州の比較的暖かい海域の沖合いに生息している。国内海域以外では台湾や韓国釜山で見つかっているだけで、魚類の中でも生息域の狭い種である。
近縁種にイトヒキヒメがいるが、こちらは国内海域では珍しい魚といってもいいが、生息海域は南半球にも及ぶ。系統的に似たもの同士は生息域が南北にずれていて、少しだけ生息域が重なることがあるが、この両種も同様である。
江戸時代が終わり、明治になってドイツから近代的な博物学が入ってくる。鉱物や生物などごちゃ混ぜの博物学は、それでも江戸時代と比べると系統立っていて科学的だった。
そんな博物学(生物学)は国内にいる生物の、実際に使われている呼び名集めから始まる。名のないものは存在しないからで、名がばらばらだと研究できないからだ。
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深夜のツマミ、深ツマは数分できなくてはならない。
しかもカロリーの高いものや、糖質は、デブにつき深夜には食べたくない。
だいたい酒=糖質なので、そこに高カロリー・糖質はだめだろう、と思ったのもある。
目の前にあるのはイカのから煎りなので油分ゼロだ。
白醤油もほんの少しだし、たぶんほぼカロリーゼロだろう。
一味唐辛子なんて痩せるためにはいいんじゃないかな? ピリピリ。
ピリピリはするものの、まことに穏やかな味に、きゅうりもみの酸味と青臭味って、残暑の候にはうれしいものだし、9月になっても熱帯のままのこの国の住人であるボクには、こんな料理がいけるのである。
今回、ケンサキイカの刺身用に皮を剥いたものを使ったら、柔らかく、ケンサキイカの甘味とイカらしいうま味が、穏やかに、しかも力強く口の中でダンス・ダンス・ダンスだった。
酒はブラックニッカのハイボールで、これも久しぶりに飲むとうまい!
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広い意味でのオオノガイの仲間(オオノガイ目)でキヌマトイガイ科に属している。キヌマトイガイ科には他に食用として流通している貝はなく、例えばキヌマトイガイは大きくても1cm前後の小ささである。
またオオノガイの仲間の主な食用部分は長く伸びる水管である。二枚貝は刺身にする部分は足、外套膜(ひも)、貝柱、水管であるが、貝の種類で食べる部分が違うこともおぼえておくといいだろう。
本種は今現在でも、「みるがい(ミルクイ)」の半値である。それでも歩留まりは「みるがい(ミルクイ)」並に悪いので、実は貝類の中ではかなり高価だ。
要するに国内の二枚貝が激減しているなか、両種とも貴重な存在になっているのだ。
「白みる(ナミガイ)」は、1980年代には「みるがい(ミルクイ)」の偽物、代用品などという人がいた。
確かに初期の回転ずしで回っていたこともあるが、需要が起こるとすぐに値を上げて、国内にいるナミガイは比較的安価な回転ずしからは消えたと記憶する。
替わって「白みる」と呼ばれて回っていたのはアメリカ、カナダなどからの輸入ものである。
この偽物呼ばわりしていたやからの多くは両種を本当に食べ比べていないのだと思っている。
両種の違いは上下ではなく、好き嫌いの範疇でしかない。
個人的にはややミルクイの方が好きだが、ナミガイが落ちるかと聞かれると、疑問符がわく。
要するにどちらもおいしいのである。
今回の愛知県三河湾産の「みるがい(ミルクイ)」は身に張りがあり、微かに渋く、苦味もあり、強い甘味と貝らしい複雑なうま味成分の絡み合いが感じられる。
1個体当たり料理店では2人前だろうが、2人前食べてももの足りなかった。
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不思議な経緯で標準和名に伊豆とついているが、主な産地は西日本である。最近ではじわじわと日本海側を北上しているようで、日本海での水揚げが増えている。
関東では食用魚とても人気が高く、「おにかさご(イズカサゴ)」釣りなど中深場釣りの主役でもある。
40cm以上の輝くような赤色が水中から上がってくるのは、それはそれは感動的ですらある。
ただ、どうやって食べるべきか、いつも迷う。
刺身、湯引きなどにすると歩留まりがやたらに悪い。
むしろその残り、あらが主役になる。
久しぶりだったので片身は湯引きにしてみた。
おいしさは皮にある。
身は弾力があって上品な味わいで嫌みがない。
これを梅肉醤油と柚子胡椒で食べたが、意外にも柚子胡椒がよかった。
それほど辛さに強くないので、ちょこんとのせて口に放り込んだが、梅肉以上に本種のよさが引き出されていた。
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「ぐじ(アカアマダイ)」などを焼くとき、若狭地(酒・醤油少々)を塗りながら仕上げるというものを「若狭焼き」という。酒の代わりにみりんを使ったものを当方では「つけ焼き」としている。この地をつけながら焼き上げるというのは、調味料はわからないが、江戸時代初めの茶会記などにフナを使った「色つけ」として出てくる。
当たり前だが江戸時代になって突然、出て来た言葉ではなく遙か古くから使われてきたものだと思っている。この料理名や調味料の変遷を考えるのは非常に面白い。
この「つけ焼き」の地(みりん・醤油同割り)は軽く火を入れると味が安定するので、ときどき作って保存している。
塩焼きや煮つけではなく「つけ焼き」にすると、日々のマンネリ感から脱却できる気がするのだけど、気のせい、かな?
ヘダイの「つけ焼き」は、安定的においしい塩焼以上に、非日常的なよさがある。
1尾丸ごと時間をかけて食べても食べ飽きない。
ヘダイの上品でいながら、味わい深いところに調味料が加わると、味に膨らみが生まれる。
時間がたち冷めるとぐっと味が入るので、半身を深夜にウイスキーハイボールの友としたが、これもグッドだった。
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今年のことだが、豊洲市場の仲卸でメバルの分類に関する蘊蓄をとうとうとやられて不愉快になった。要するに標準和名メバルが2008年に3種類に分かれたという話だが、こんな耳にタコができそうなことをよく言うよな、と呆れる。
分類しながら歩いているので、最近、3種が見分けられるが、一般客にはどうでもいいことで、全部メバルでかまわないのだ。連れは分野こそ違うが分類の世界の人間なので思わず二人して笑ってしまった。
まあ、とにもかくにも、この浅場にいるメバルは、三種に分かれようとも全部煮つけてうまいのである。
3種とも、味も、見た目もほとんどかわらないので、一般人よ、メバルでいこうぜ、といいたい。
さて、今回のメバル(シロメバル)は生殖巣が膨らんでいなかった。だいたい11月前後に交尾して産卵、腹の中で稚魚にして冬に出産する。実はこの魚、産卵、出産と旬の関わりがよくわからないために、季節ごとに買っているのである。
見るからに見事な固体で煮ると透明な粒状の泡が煮汁の表面に散った。
脂があるので身が柔らかく、身離れがいい。
このシロメバルの産卵時期はわからないが、こんなにうまいメバルの煮つけは久しぶりである。
深夜に酒の友とし、翌日の煮凝りでご飯が、めちゃくちゃでござりまする、というくらいにおいしくて、ご飯、一膳が悲しかった。
やはりメバルは煮つけかな?
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