
こんな日には逢魔が時に、早すぎるけどビールを開け、天ぷらを揚げて憂さを晴らす。
一緒に揚げたのは季節感がなくなったとはいえ、一応夏野菜のナス、ピーマン、みょうがで、贅沢だけど、すだちをつける。
悲しいことに総て加温野菜である。
太平洋側相模湾のシロギスは生殖巣が膨らんでいる時季だけど、日本海側山形県ではまだ生殖巣が膨らんでいない。
揚げるとふんわりして豊潤である。
日本海ものは、まだまだ脂がたっぷりのっているとは言えないが、甘味が強いし、うま味もある。
シロギスの味の表現で、上品な白身などというが、間違いである。
身(筋肉)の味も決して単調ではないし、最大の特徴は皮の野性的な風味である。
これがなければシロギスの存在価値はゼロだ。
揚げても意味がない。
本当に疲れた日にだけの、本物ビールの晴れ風を雨降りに飲む。
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そんなときは酒を飲む。
最小限の酒の量で、最小限の肴で、だ。
夜も昼もなくドタバタしているので、眠れない時間はごくわずか、腹にたまらない、軽い物をつまみに、今回は昔いただいたウイスキーを飲む。
5年くらい前、午前2時過ぎの、都心のスーパーで、「仕事やめました」と、ときどき挨拶を交わすだけの人に言ったら、買ってくれたものだ。
普段飲んでいるものらしく、「(LOCH LOMOND WHISKIES 12 は)高いものじゃないけど、あげるね」、と言われたのが昨日のことのようだ。
意外に飲みやすいスコッチウイスキーだけど、ウイスキーはめったに飲まない。
ボクの基本は日本酒なので、まだ半分くらい残っている。
今回コルクが壊れていることに気づいたこともあり、当分深夜酒はLOCH LOMOND WHISKIESとなりそうだ。
とても香り高く、しかも存在感の強い、LOCH LOMOND WHISKIES に、この落ちこぼれマイワシのみりん干しが味で負けていない。
1尾しかないのでじっくり小かじりにかじりながら食べて、LOCH LOMOND WHISKIESをちびりとやっていると、味は互角だと思った。
漬け地の甘さにも小さなマイワシは負けていない。
やはりマイワシってうまい魚なんだな、と思う。
こんなに小さいのにとても大きな味がする。
思わず、LOCH LOMOND WHISKIESをごくりと飲む。
文庫本、みりんぼしの染み、ウイスキーの染み。
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だれでも知っているといった野菜であってもよさそうなものなのに、八百屋ではいまだに小松菜の影に隠れて売れないといった存在である。
ベトナム人のお姉さんなど「おいしいよ」と喜んで買って行くので、東南アジアなどの新しい野菜だと思って手が出ないのかも知れない。
ルッコラ(ロケット菜)がたぶんだが戦前から作られていた古い野菜かも知れないのに、いまだに新しい野菜と誤解されているのに似ている。
八百屋、スーパーなどで一般的なのは大量収穫しやすい、青ツルムラサキだ。
ボクはこのままゆでてとんとんとたたき、納豆と一緒に食い食いしたりする。
マヨネーズにも合う。
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今回の東京湾産もポケ、刺身、煮つけ、兜焼き、潮汁、そしてフライにした。
1尾1000円で、骨くらいで何も残らなかったので実に安いと思う。
魚というと刺身、刺身となりそうだけど、意外にトリで登場したフライが上だった。
これは時季ではなく、痩せているクロダイだったせいだ。
ほんの少しだけ、カレー粉を振ったのがよかったかも。
クロダイの場合、パン粉をつけて揚げると、筋繊維の間にジュ(肉汁というべきか)がたまる。
パン粉の香ばしさの内側に豊潤な地帯ができる。
この豊潤さにこそ、天然もののタイ科らしいよさがあると思っている。
ボクはじゃぶじゃぶウスターソース派なのだけど、大衆食堂的な味になってくれたところもうれしい。
半合のご飯を食い切るのにちょうどよかった。
デザートのまんじゅうはなしだけど、満足。
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ちなみに最近、北海道のブリのほとんどが活ジメである。
外れがない。
刺身にして背の1㎏上を塩蔵する。塩鰤である。
我が家の塩鰤は松本の市場で出合った方達と、市内の魚屋、岐阜県飛騨地方の魚屋で聞いたとおりのやり方である。
本来は浜で作るものだが、最近、松本平や飛騨地方では家庭や魚屋で切り身で作ることが多いという。
大量の塩でまぶし、翌日水が出たら塩を足してまたまぶす。
これを1週間繰り返して、密閉する。
以上は前回、前々回も書いた。
塩ブリはときどき、気がついたように切り取って食べている。
塩の中で回転させて長々と塩蔵にしたので、切り身の芯の部分にまで塩が入っている。
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当然国内各地で聞取をする必要があるが、例えば漁業者に聞いてもいいが、加工品業者、買受人(大卸・仲卸)、小売業の話も重要であり、消費者も重要だということを忘れている人がいる。むしろいちばん未利用魚がわからないのは行政、そして漁業者かも知れないという現実も知るべきだ。
また最近、未利用魚にマイナー魚を加えるなど、魚価の変動を知らずにいろいろ語る、間違ったことを言うヤカラまでいる。
魚価を知らなければ、未利用魚はわからない。そのためには、日常的に魚を買っていないとダメだが、そんな人間見た事がない。
未利用魚として問題になるダツとは、標準和名のオキザヨリとテンジクダツと、ダツの3種である。とりわけ前2種が深刻である。
国内海域にいるダツ科の魚は、サンマ、ハマダツ、ヒメダツ、ダツ、リュウキュウダツ、タイワンダツ、オキザヨリ、テンジクダツと8種類である。需要が高く水揚げ量の多いサンマ以外はすべての魚が未利用魚である。
ハマダツは本州青森でも見つかっているが、いまだに四国、九州以南に多く、全国的にみてそれほど問題のある存在ではない。ヒメダツ、リュウキュウダツ、タイワンダツも国内では比較的珍しい。
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朝と昼ご飯は米の飯なので、米の飯に合うものを作る。
アジの塩焼きに、酢の物に、みそ汁は、理想に近い、ので、なんどもなんどもこのワンパターンを繰り返している。
中には近所の釣り師が釣り上げた体長34cmという超大アジもいたし、長崎県産もあり、紀伊半島の漁師さんから来た黒っぽいのもあった。
どれもこれもおいしすぎて困ったが、神奈川県二宮沖、体長17cm・90g前後がいちばんおいしかった。
比較するのは下の下だけど、マアジに関しては勉強中である。
例えば同じ相模湾産でも大アジ(マアジ)とは比較したい。
当たり前だけど、比較のために別の産地のものと一緒の日に焼いて食べてみたが、皮が柔らかくて、皮の間から吹き出してきた脂の風味がよくて、と二宮定置に分があった。
おいしいアジの塩焼きはご飯を食べるのを忘れさせる、と思っているが、残ったご飯にみそ汁をかけて食う日々だった。
蛇足になるが、築地場内(現豊洲市場)で仲卸のアジ担当は、目利きだけがなれる特別な存在だと教わっている。
確かに大きな金額が動く、アジの仕入れは特別なのだろう。
アジのよしあしを見て取るのはそれだけに、とても難しい。
たぶんだけど、二宮定置のマアジがずーっとトップとは限らない。
基本的に8月くらいまでが安定期だけど、今年の小田原のアジ、他の産地のアジの味はどうなるんだろう。
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くどいようだが、1968年の本なので、1970年前後に始まる情報化の波に、地域本来の食文化が破壊される前である。
郷土料理は急速に失われつつある。
実際、小田原魚市場で「魚玉茶漬」を知っているか、聞いてもだれも知りはしない。
さて、ご飯をチンするところから。
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