
センターに向かう道すがら左右に広がる田を見て、悲しくなる。
それにしても上越市の田の状況は異常だと思う。
高田城市公園にもどりしばしテキストを打つ。
散歩中のご夫婦に一番近い食堂の名前を聞いて向かう。
教わった『食堂なかしま』という店は見た目からして真新しい。
少々不安に感じたが、中はいたって普通の食堂だった。
お腹と背中がくっついた末の、朝昼兼用なので、かつ丼と冷や奴にする。
客の前に必ずあったのを見て取った冷や奴は、びっくりするほど安かった。
それにしても腹の中が空っぽになると、ついついかつ丼とは、我ながら平凡な男よな、……。
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釣ってすぐに首を折ってあるので、身はまだ堅堅である。
脂はさほど乗っていないが、食感がこの上なくいい。
しょうが醤油で食べて、おお、うまいじゃないかと思い、今度はへべす(宮崎県日向市の酢みかん)をじゃばじゃばかけて食べる。
酢みかんと醤油まみれのマアジの刺身を、ご飯のせるうれしさよ、真夏日よ。
なんて感じである。
ものすごく酢みかんを欲するのは、暑いせいでもある。
それにしても横須賀沖のマアジはいつ食べても、うまいねー。
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少しだけ歩いてみたかった南本町だが、時間がなかったので笹飴だけを買った。
『高橋孫左衛門商店』は1624年創業という。となると徳川三代将軍家光の時代で、貨幣経済はまだ不完全な時代である。
また、十返舎一九(明和2年〜天保2年/1765-1831)も立ち寄ったことがあるという。東海道中膝栗毛が売れに売れた後、生活のためもあって、死ぬまで道中記を書いていた。その一九が『越後紀行集』を書くにあたって立ち寄っていたらしい。
そしていちばん有名なのは、夏目漱石の『坊ちゃん』(明治39/1906)に出てくる越後の笹飴である。小説の筋とは無関係に唐突に下女の清の好物として越後の笹飴が登場し、笹ごと飴を食べる清の姿が坊ちゃんの夢に出る。
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ボクなどまだまだ修業が足りないが、日々水産物を生かすことに精進している。
新潟県に行ったら、必ず買うのが麩だ。
車麩は必ず買い、ときに新発田麩、そして「おしぶ」なども買う。
今回買ってきたのは「おしぶ」だ。
半分に切るとそのまま汁の実などになり、丸のまま使うときには10分くらい水につけると戻る。
今回は我が家の魚の煮汁ストックで「おしぶ」となすをたく。
いろどりが地味で、茶色で、華のない料理だけど、まあボクの脳みその大方に染みついている、おいしいの色が茶色では、こうなるのが当たり前だ。
スルメイカ、コウイカ、カサゴ類など魚類他種、煮ハマなどの味が凝縮された煮汁で単純にたいただけ。
魚貝類の味で煮染まった「おしぶ」くらいうまいものはない。
このおいしさは豆腐にもなく、野菜にもない。
麩にしかない麩のおいしさで、麩を知らなかった40年くらい前のボクはおいしいをひとつ知らなかったことになる。
これがやけにご飯に合うし、ビールにも合う。
ビタミンが足りない気がするけど、ボクにとっての完全無欠の味である。
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漁港内で落ちたらまず助からない。子供用など2000円以下のものもある。
浮かんでいるだけで助かる可能性が高い。
さて新潟県西区五十嵐新川漁港周辺の生物・食物図鑑を作っているが、漁港内にもいろんな魚がいるのである。
ヒイラギは隣で釣っていた高校生がダブルで揚げていたので、魚影が濃いのかも知れない。
潮時と関係なく釣れるのもありがたい。
浅場にいるので、防波堤釣り(波止釣り)をしていると結構釣れる魚ではあるが、マアジなどとは違い持ち帰らない人が多い。
棘があるしヌメリがあるけれど、マアジよりもおいしいんだよ、と言いたい。
島根県中海周辺では高級魚だし、高知県でも好んで食べる。
持って帰ってねといいたい。
しかもしかもこの魚、シイカシイカっと光るのである。
食道にいる発光細菌の光りなのでそんなに強い光ではない。
でもこのかそけき光が幻想的なのだ。
浅場で見ていると、惹かれて魅了される。
ついでにこの魚かなり愚痴っぽい。
ぐちぐちは言わないけど、ギギギーと鳴く。
そーっと観察して御覧、なのだ。
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上越市は高田の朝市が3,4、7、9のつく日、直江津が3、8のつく日にある。
新潟県の魅力のひとつが県内各地に散らばる朝市である。
ボクなど朝市が好きで新潟に行く。
ところが年々、新潟の朝市が寂しくなるが上越市もその例に漏れない。
専業農家が少なくなり、兼業農家ばかりになり、現金収入があるために市に来なくなったのかも。
主役となる農家の出店が消えている。
しかも名物、「どらやき」がない。
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「みそたたき(なめろう)」は何十回作っても、たぶん何千回作っても飽きが来ないだろう。
よく作るので、体調のバロメーターにもなる。
最近、やけにみそ多めなのである。
極端に長時間のディスクワークで汗をかくわけでもないのに、みその塩気が欲しい。
今回は胸鰭を切り取り、腹鰭を抜いて三枚に下ろす。
腹骨・血合い骨を取り、皮付きのまま細かく切る。
大葉、みょうが、ねぎ、玉ねぎ、しょうが、にんにく、三重県尾鷲市の青く辛い唐辛子など多種類少しずつ刻む。
この日は長崎県長崎市、『チョーコー』の長崎みそをたっぷり加えて、たたく。
塩分取り過ぎで身体に悪そうなのに、爽快感を覚える。
トビウオは強い味つけ、香りのある野菜と一緒でも、背の青い魚特有のうまみがあるので、塩気よりも魚のうま味が勝つ。
合わせたのは冷蔵庫の隅に残っていたホッピーだけど、「みそたたき(なめろう)」には、このような下町居酒屋的なものが会う。
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赤い縁取りをした紙のパッケージに入っていて、昔ながらの文様が描かれている。
山陰以北の日本海ではヒジキがとれないので、新潟県では古くより伊勢(三重県伊勢地方)からヒジキを取り寄せて流通させていたのかな? などと思ったりする。
今回、「伊勢ひじき」を買った新潟県西区内野町『ichiman』は、新潟市の地スーパーといったところで、新潟を感じさせるものがたくさん売られていた。
「伊勢ひじき」、『角平商会』(三重県多気郡明和町大淀乙655)は三重県伊勢地方のものだけど新潟らしいと感じて買ってしまう、ものでもあるのだ。
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