1切れ口に放り込んで厚く切りつけすぎた、と後悔した。
食感が半日経っても強いのである。
この食感の強さは身に張りがある証拠である、ということで、とても健康的だと言えるだろう。
自分のぶよぶよお腹を見ながら、この障害を乗り越えたサバに乾杯したくなって、シャブリをそそぐ。
上等なシャンパンがあればよかったのにな、なんて思ったほどに味がある。
マサバの味は、うま味成分の多さから来る味である。
決して濃厚でも、くせのある味でもない。
ストレートな、そのまんまのうまさだ。
そのうまさが、今回の固体は取り分け大きい。
そして噛むほどに脂が浮き上がって来て、まったりした舌触りになる。
脂は呈味成分でもないし、当たり前だけど糖質でもないのに、溶ける時間だけ甘く感じさせてくれる。
その味が、誰かがくれた、冷蔵庫で2年近く寝ていた、高そうなシャブリにとても合う。
いずれにしても、今回の固体に当てはまった、「苦労して大きくなった魚の方が、のほほーんと大きくなった魚よりもうまい」法則は、これからどこまで当てはまるのか?
こうなりゃ、小田原で障害を負った魚を探すしかない。
食感が半日経っても強いのである。
この食感の強さは身に張りがある証拠である、ということで、とても健康的だと言えるだろう。
自分のぶよぶよお腹を見ながら、この障害を乗り越えたサバに乾杯したくなって、シャブリをそそぐ。
上等なシャンパンがあればよかったのにな、なんて思ったほどに味がある。
マサバの味は、うま味成分の多さから来る味である。
決して濃厚でも、くせのある味でもない。
ストレートな、そのまんまのうまさだ。
そのうまさが、今回の固体は取り分け大きい。
そして噛むほどに脂が浮き上がって来て、まったりした舌触りになる。
脂は呈味成分でもないし、当たり前だけど糖質でもないのに、溶ける時間だけ甘く感じさせてくれる。
その味が、誰かがくれた、冷蔵庫で2年近く寝ていた、高そうなシャブリにとても合う。
いずれにしても、今回の固体に当てはまった、「苦労して大きくなった魚の方が、のほほーんと大きくなった魚よりもうまい」法則は、これからどこまで当てはまるのか?
こうなりゃ、小田原で障害を負った魚を探すしかない。
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「ぽんだら」の鍋は関東では郷土料理に近いものではないかと思っている。江戸川区の魚屋などでも秋も深まると、鍋用に調理されて並べられていたものだ。
安くてそれでいながら満足度が高い、「ぽんだら」はいの一番に鍋がいい。
ということで埼玉で買った「ぽんだら」をさっそく水洗いして適当に切る。もちろんこの時季の個体で、このサイズなので真子も白子もない。肝だけを取り分けておく。
湯通しして冷水に落としてぬめりや残った鱗を流す。水分をよく切る。
これを昆布だしに酒・塩の味つけで煮ながら食べる。
野菜などはお好みで。
今回は山東菜を使ったが、最近安くなってきたロケット菜(ルッコラ)、レタスなどもいい。
きのこは欲しいけど、これもなんでもいい。
栽培ものの種類が増えたのもあり、特にこの時季、きのこ買いが楽しくて仕方がない。
あとは豆腐でもいいし白滝でもいい。
鍋は無法でなければならない。
それにしても今季初鱈鍋はやたらにうまいものだな、と思う。
あっさりとして柔らかく、ほろほろと舌の上で脆弱にくずれる。
上品ななかにも味があるところもいい。
マダラは小さくてもおいしい魚なのである。
最近、魚界にも強烈な色物が増えて、このスタンダードなおいしい魚にスポットライトが当たらなくなっている。取り分け魚に無知な人に限って、普通の日常的な魚を知らないのはなぜだろう?
水産生物はできる限り多種多様に食べて欲しいが、至って日常的な地味でおいしい魚も忘れてはならぬ。
今年もみそ仕立て、韓国風とひとり鍋をつつくのだろうなー。
安くてそれでいながら満足度が高い、「ぽんだら」はいの一番に鍋がいい。
ということで埼玉で買った「ぽんだら」をさっそく水洗いして適当に切る。もちろんこの時季の個体で、このサイズなので真子も白子もない。肝だけを取り分けておく。
湯通しして冷水に落としてぬめりや残った鱗を流す。水分をよく切る。
これを昆布だしに酒・塩の味つけで煮ながら食べる。
野菜などはお好みで。
今回は山東菜を使ったが、最近安くなってきたロケット菜(ルッコラ)、レタスなどもいい。
きのこは欲しいけど、これもなんでもいい。
栽培ものの種類が増えたのもあり、特にこの時季、きのこ買いが楽しくて仕方がない。
あとは豆腐でもいいし白滝でもいい。
鍋は無法でなければならない。
それにしても今季初鱈鍋はやたらにうまいものだな、と思う。
あっさりとして柔らかく、ほろほろと舌の上で脆弱にくずれる。
上品ななかにも味があるところもいい。
マダラは小さくてもおいしい魚なのである。
最近、魚界にも強烈な色物が増えて、このスタンダードなおいしい魚にスポットライトが当たらなくなっている。取り分け魚に無知な人に限って、普通の日常的な魚を知らないのはなぜだろう?
水産生物はできる限り多種多様に食べて欲しいが、至って日常的な地味でおいしい魚も忘れてはならぬ。
今年もみそ仕立て、韓国風とひとり鍋をつつくのだろうなー。
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この時季のイサキに見向きもしない料理人がいるのが残念でならない。
ばらつきはあるものの、2歳・20cm前後のイサキは年間を通じて味がいい。
難しいのは2歳で産卵する固体が3割くらいあることだ。
今回触って脂を強く感じたのは産卵しなかった固体で、やや脂が少なく感じたのが産卵した固体だろう。
いずれにしても2歳魚は安定している。
二宮定置の水揚げを見ている限りでは、2歳のイサキはみな左右幅、体高ともにある。
明らかに2歳魚は今、味の盛期の入り口に到達している。
刺身を見ると黄色みががかった部分がある。
脂の層が厚い腹部だ。
鮮度がいいのにとても柔らかいが、これも脂がものすごく多いためだ。
この脂に独特の風味がある。
口溶け感が強いので口中、甘味ともうま味ともわかりにくいもので満ちる。
表面こそ脂だけど噛みしめるとちゃんと食感も感じられるのが不思議。
9月の終わりから10月の始めまで、体長30cm超えの痩せたイサキを食べているので、まったく別の魚のように思える。
ちなみに最近、1㎏超えのイサキはキロ1万円以上するのが当たり前なのである。
なんどか万超えのイサキを買っているが、味からすると今回このあまり高値のつかない2歳に負けていると思う。
ばらつきはあるものの、2歳・20cm前後のイサキは年間を通じて味がいい。
難しいのは2歳で産卵する固体が3割くらいあることだ。
今回触って脂を強く感じたのは産卵しなかった固体で、やや脂が少なく感じたのが産卵した固体だろう。
いずれにしても2歳魚は安定している。
二宮定置の水揚げを見ている限りでは、2歳のイサキはみな左右幅、体高ともにある。
明らかに2歳魚は今、味の盛期の入り口に到達している。
刺身を見ると黄色みががかった部分がある。
脂の層が厚い腹部だ。
鮮度がいいのにとても柔らかいが、これも脂がものすごく多いためだ。
この脂に独特の風味がある。
口溶け感が強いので口中、甘味ともうま味ともわかりにくいもので満ちる。
表面こそ脂だけど噛みしめるとちゃんと食感も感じられるのが不思議。
9月の終わりから10月の始めまで、体長30cm超えの痩せたイサキを食べているので、まったく別の魚のように思える。
ちなみに最近、1㎏超えのイサキはキロ1万円以上するのが当たり前なのである。
なんどか万超えのイサキを買っているが、味からすると今回このあまり高値のつかない2歳に負けていると思う。
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魚づくめの日々で水産生物の中心は、魚類だが、そこに甲殻類(エビ・カニ)、軟体類(貝・イカ・タコ)を適度に加えていく。
これは料理店と同じである。
近年、この軟体類が全般的に少ない。
そんな中、山口県産のケンサキイカが見るからに魅力的だった。
山口県の日本海側は日本屈指のケンサキイカだけど、秋になって揚がるのはブドウイカ型である。
今回のものも鰭(耳)が長いので、ケンサキイカのブドウイカ型と見た。
味はケンサキイカ(ゴトウイカタイプ。細長いもの)と変わらない。
ケンサキイカに季節感がなくなって久しいが、秋のブドウイカは季節通りだ。
味はケンサキイカ属ならではの甘味の豊かさがあり、ねっとりとした舌触りである。
この甘ねっとりが日本酒にとても合う。
これは料理店と同じである。
近年、この軟体類が全般的に少ない。
そんな中、山口県産のケンサキイカが見るからに魅力的だった。
山口県の日本海側は日本屈指のケンサキイカだけど、秋になって揚がるのはブドウイカ型である。
今回のものも鰭(耳)が長いので、ケンサキイカのブドウイカ型と見た。
味はケンサキイカ(ゴトウイカタイプ。細長いもの)と変わらない。
ケンサキイカに季節感がなくなって久しいが、秋のブドウイカは季節通りだ。
味はケンサキイカ属ならではの甘味の豊かさがあり、ねっとりとした舌触りである。
この甘ねっとりが日本酒にとても合う。
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味で考えると、相模湾のタカサゴと、沖縄の「ぐるくん(タカサゴ)」とが同種とはとても思えない。これは熱帯域でのヨコシマサワラと、石川県産ヨコシマサワラとの違いに似ている。
鮮度がいいと熱帯の方が透明感があり、きれいだ。
ただし味は透明感がなく曇っている相模湾の方が格段にいい。
脂は皮の直下に層を作り、身にも混ざり込んでいる。
驚いたことに撮影していると、刺身の表面が室温でにじんでくる。
口に入れるとほどよい食感が感じられ、舌の上に脂のざらっとしたものが残る。
このざらっとしたものが脂である。
一瞬、脂ののったイサキに似ていると思ったが、より濃厚な味だ。
非常に味わい深く、舌の上で味が長続きする。
わさび醤油よりも酢みその方が合うかも知れない。
見た目はともかく味からすると、相模湾に新しいスターが誕生した、そんな気がする。
このタカサゴをテーマとして、また小田原に行かねばならぬ。
鮮度がいいと熱帯の方が透明感があり、きれいだ。
ただし味は透明感がなく曇っている相模湾の方が格段にいい。
脂は皮の直下に層を作り、身にも混ざり込んでいる。
驚いたことに撮影していると、刺身の表面が室温でにじんでくる。
口に入れるとほどよい食感が感じられ、舌の上に脂のざらっとしたものが残る。
このざらっとしたものが脂である。
一瞬、脂ののったイサキに似ていると思ったが、より濃厚な味だ。
非常に味わい深く、舌の上で味が長続きする。
わさび醤油よりも酢みその方が合うかも知れない。
見た目はともかく味からすると、相模湾に新しいスターが誕生した、そんな気がする。
このタカサゴをテーマとして、また小田原に行かねばならぬ。
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とても奇妙な姿なので、初めて見る人はびっくりしそうである。ただしそんなに珍しいエビではない。日本列島の暖かい海域の岩場に普通にいる。
イセエビの刺し網などに混ざってとれ、昔は見向きもされなかったが、近年、人気急上昇中である。
漢字「草履海老」、「足袋海老」などの名があるが、たしかに草履にも足袋にも似ている。
大きなくくりではイセエビに近く(イセエビ下目)、もっと近い親戚筋には、ミナミゾウリエビ、セミエビ、コブセミエビ、ウチワエビ、オオバウチワエビ、ウチワエビモドキ(以上セミエビ科)がいる。
以上総てが今現在、この国では高級エビとして人気が高い。
ただし、知名度が高いわけではない。
この中で1種類でも見た事のある人は、かなりエビを知っていると思う。
今回はかなり残酷なやり方で料理した。
いつもはゆでているが、今回は焼き上げたのだ。
焼いている最中から強いエビの香りが部屋に充満する。
この香りがたまらないという人は真のエビ好きだろう。
イセエビの刺し網などに混ざってとれ、昔は見向きもされなかったが、近年、人気急上昇中である。
漢字「草履海老」、「足袋海老」などの名があるが、たしかに草履にも足袋にも似ている。
大きなくくりではイセエビに近く(イセエビ下目)、もっと近い親戚筋には、ミナミゾウリエビ、セミエビ、コブセミエビ、ウチワエビ、オオバウチワエビ、ウチワエビモドキ(以上セミエビ科)がいる。
以上総てが今現在、この国では高級エビとして人気が高い。
ただし、知名度が高いわけではない。
この中で1種類でも見た事のある人は、かなりエビを知っていると思う。
今回はかなり残酷なやり方で料理した。
いつもはゆでているが、今回は焼き上げたのだ。
焼いている最中から強いエビの香りが部屋に充満する。
この香りがたまらないという人は真のエビ好きだろう。
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自分のご飯なので腹の中に隙間が出来たら、あれこれ考えて、今回は「かます飯」にする。
カマスさえ解凍すれば調理時間10分以下なので腹の虫をなだめるのには持って来いだ。
橙を搾り込んだ麦飯に塩辛い山東菜、これだけでも青菜飯で完成品だ。
ここに香ばしく焼いた脂の乗ったヤマトカマスを加えると、ちょっとだけよそ行きの着飾った感じになる。
それにしても秋のヤマトカマスの「かます飯」は、他に置きかえるもののない味である。
強いうま味と脂のこげた香り、これが麦飯と一体化しただけなのに、大御馳走化している。
ボクはここに焼いた栗を添え、デザートというか口直しにするのが好きだけど、忙しいので我慢するのだ。
昼間から大きな声で鳴くアオマツムシも秋の風物詩と思えば思えるので、秋だな、と言ってみる。
カマスさえ解凍すれば調理時間10分以下なので腹の虫をなだめるのには持って来いだ。
橙を搾り込んだ麦飯に塩辛い山東菜、これだけでも青菜飯で完成品だ。
ここに香ばしく焼いた脂の乗ったヤマトカマスを加えると、ちょっとだけよそ行きの着飾った感じになる。
それにしても秋のヤマトカマスの「かます飯」は、他に置きかえるもののない味である。
強いうま味と脂のこげた香り、これが麦飯と一体化しただけなのに、大御馳走化している。
ボクはここに焼いた栗を添え、デザートというか口直しにするのが好きだけど、忙しいので我慢するのだ。
昼間から大きな声で鳴くアオマツムシも秋の風物詩と思えば思えるので、秋だな、と言ってみる。
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10月の「水がます(ヤマトカマス)」にハズレなし。
うまくて当たり前だと思いながら食べても、ちょっと脳みそが痺れる。
皮下に脂の層ができるのではなく、身に小さな粒子となって脂が混在している。
だから程よい食感と口溶け感が一緒に楽しめる。
キロ万超えの魚も裸足で逃げる、痺れるくらいのおいしさだ。
だから小田原行きは止められない。
これほどの美味を開いて干ものにしても、それはそれでおいしいけど、まず刺身だよなと思う。
このおいしさを知らないと、ちょっとだけ損な気がする。
問題はよほどの温度管理でもしないと、翌日昼までの味ってことだけだろう。
ある意味、産地に近づかないと食べられない味でもある。
うまくて当たり前だと思いながら食べても、ちょっと脳みそが痺れる。
皮下に脂の層ができるのではなく、身に小さな粒子となって脂が混在している。
だから程よい食感と口溶け感が一緒に楽しめる。
キロ万超えの魚も裸足で逃げる、痺れるくらいのおいしさだ。
だから小田原行きは止められない。
これほどの美味を開いて干ものにしても、それはそれでおいしいけど、まず刺身だよなと思う。
このおいしさを知らないと、ちょっとだけ損な気がする。
問題はよほどの温度管理でもしないと、翌日昼までの味ってことだけだろう。
ある意味、産地に近づかないと食べられない味でもある。
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