70cm SL 前後になる。細長い紡錘形で、断面は楕円形で側へんしない。全身が赤く、背の方が濃い。下あごが上あごよりも前に出ている。尾柄部に隆起線がある。鰓腔後縁に2つの肉質突起がある。[35cm SL ・0.774kg]
ハチビキの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)
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珍魚度・珍しさ
★★
少し努力すれば手に入る魚貝の物知り度
★★★★
知っていたら達人級食べ物としての重要度
★★
地域的、嗜好品的なもの味の評価度
★★★★
非常に美味
分類
顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目スズキ亜目ハチビキ科ハチビキ属外国名
学名
Erythrocles schlegelii (Richardson, 1846)漢字・学名由来
漢字 葉血引、端血引 Standard Japanese name / Hatibiki
由来・語源 本当は「血引」であるはずが、「は」をつけてしまったのは、魚類学上の謎。
〈血引魚(ちびき) 思うに、血引魚の形は鯔(ぼら)に似ていて、大きなもので二、三尺。全体は深赤色。肉も血のような色をしている。味は美(よ)くない。それで血の色を悪(い)んでこれを食べる人は少ない。〉『和漢三才図会』(寺島良安 東洋文庫 平凡社 正徳2年 1712)
〈和歌山県田邊でハチビキ又はニセチビキ〉。
和歌山県田邊での呼び名。血引は身が血のように赤いという意味。古くは単にチビキだったが、同県でヒメダイを「本チビキ」というのに対してハチビキ、ニセチビキと呼ばれてもいたので、「チビキ」をヒメダイにあて、本種に「ハチビキ」を当てた。「端物」もしくは「半端なチビキ」の意味でヒメダイ(チビキ)よりも劣るという意味合いである可能性があるがいずれにしても意味がわからない。
『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年)
〈チビキ科チビキ属チビキ〉。『日本産魚類検索』(岡田彌一郎、松原喜代松 三省堂 初版1938)
血引魚 〈思うに、血引魚の形は鯔に似ていて、大きなもので二、三尺。全体は深い赤色。肉も血のような色をしている。味は美くない。それで血の色を悪んでこれを食べる人は少ない〉『和漢三才図会』(寺島良安 正徳3年/1713 東洋文庫 平凡社)
小種名「schlegelii」 ヘルマン・シュレーゲルに献名。Richardson
ジョン・リチャードソン(Sir John Richardson 1787-1865 スコットランド)、博物学者、魚類学者(ichthyology)。
Schlegel
ヘルマン・シュレーゲル(Hermann Schlegel 1804-1884年)はドイツの動物学者。テミングとともにシーボルトの持ち帰った脊椎動物を整理、記載。『Fauna Japonica』(日本動物誌)を執筆。地方名・市場名
生息域
海水魚。水深65〜300メートルの岩礁域。
青森県下北半島、茨城県、小笠原諸島、千葉県館山から土佐湾の太平洋側、宇和海、新潟県〜九州北岸の日本海沿岸、琉球列島、東シナ海、九州-パラオ海嶺。
朝鮮半島東岸・南岸、台湾、南沙諸島、アフリカ東岸ケニア。生態
産卵期は夏だと思われる。基本情報
比較的暖かい海域のやや深場にいる大型魚。身色が赤いのが特徴である。この赤い色合いは色素からくるもので、カツオなどの赤身魚がヘムタンパク質ミオグロビンで赤いのとは根本的に違っている。
関東などでは昔、筋肉が赤いので「赤鯖」と呼ばれて非常に安い魚であった。なかなか売りにくい魚であったようで、なんども安く買い求めている。それが長崎県、鹿児島県などがていねいな荷の作りをして出荷するようになり、評価が上がる。今現在、大型は高級魚そのものといってもいいだろう。
白身なのにミオグロビンで赤い赤身魚のように赤い、という逆手にとった提供の仕方で飲食店でも人気が高まってきている。味のよさからも将来的にも評価が下がることはないと思われる。
珍魚度 普通の食用魚であるが、入荷量はそれほど多くない。手に入れるには少々努力を要す。水産基本情報
選び方
身が硬く、目が澄んでいる。鰓が鮮紅色のもの。味わい
旬は4月前後から8月前後の産卵前。産卵後以外は味がよく、寒い時季にも脂がのっている固体がある。
鮮度落ちは遅い。700g以上くらいから味がぐんとよくなる。大型の方がうまい。
鱗は強いがそれほど取りにくくない。皮はしっかりしている。
筋肉は赤く、血合いは紫色を帯びた濃い赤だが、カツオなど赤身の魚とは違い硬く締まりすぎず、ほどよく繊維質で白身同様の食感をしている。頭部の筋肉量は少ない。頭部、あらあどからいいだしが出る。栄養
ー危険性など
ー食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)
ハチビキの料理・レシピ・食べ方/生食(刺身、焼霜造)、焼く(塩焼き)、煮る(煮つけ)、汁(みそ汁)、揚げる(フライ、唐揚げ)、ソテー(ムニエル、バター焼き)クリックで閉じます
ハチビキの尾の刺身 全長1m前後になる魚である。大型魚の尾に近い部分は前方の部分とは別種の味である。
水洗いして三枚に下ろす。腹骨・血合い骨を取り、皮を引く。尾鰭から10cm前後を刺身状に切る。この部分はとても食感が強いので比較的薄く切りつけるとよい。
筋が多く食感が強いので、よく噛んで食べないといけない。この食感がとても心地よく、またうま味が強い。ハチビキの刺身は非常に美味だが、取り分け尾がうまいかも。
ハチビキの刺身 下ろすと身色が赤いので驚くかも知れない。関東ではこの色合いで嫌煙されてきた。水洗いして三枚に下ろす。皮を引いて刺身にする。見た目の意外さに驚かされるかも知れないが、実際に食べてみるとうま味が強く、食感もほどよくとても味わい深い。強い味なのに、後口がいいのも魅力だろう。料理店などでは、赤いのに白身の味というのも面白いのでは。クリックで閉じます
ハチビキのたたきなます 関東でたんに「たたき」というと、「たたきなます」のことだ。細かく叩いて香辛野菜と合わせる。大型魚なので刺身などにすると無駄な部分が出てくる。そんな部分を細かく切る。これをみょうが、しょうがの搾り汁、大葉、ねぎなどを刻んだものと和える。クリックで閉じますハチビキのにんにく醤油和えタイム風味 醤油で和えてもとてもおいしい。しょうが、にんにく、ゆずなどいろんな味をプラスし、香りのある野菜で風味づけ為る。ここでは水洗いして三枚に下ろし皮を引く、やや厚めに切りつけ、しょうゆ・にんにくで和える。ここにタイムを散らして風味づけしてみた。生魚にタイムはとても合う。クリックで閉じますハチビキのみそたたき(なめろう) 中落ち、腹身などを使って作ると合理的。中落としはスプーンでかき出す。刺身などの切れ端なども集めて置く。細かく切り、香辛野菜(青じそ、ねぎ、しょうが)などと合わせてみそを加えてたたく。ハチビキには強いうま味があるので、青魚に負けない味がする。クリックで閉じますハチビキのセビチェ 刺身にしたときの端切れや、刺身の残りを使ってもいい。細かく切り、塩・ライムと紫玉ねぎ(普通の玉ねぎでもいい)、辛い青唐辛子を刻んだものと和えて、1時間程度寝かせる。とても酸味と塩味が強いが食べて爽やかである。スピリッツにあう。クリックで閉じますハチビキの焼霜造り 皮は厚く強くうま味がある。湯をかける皮霜造には剥かないが、焼き切ると皮の味わいが堪能できる。水洗いして三枚に下ろし、腹骨・血合い骨を取る。皮目をバーナーでやや強めに焼く。氷水に落として粗熱を取る。布巾などにくるみ冷蔵庫で皮目を落ち着かせて刺身状に切る。身色が赤いのに白身とはいいながら単に白身以上に味がある。ここに皮を焼いた香り、食感、うま味が加わると至極美味である。クリックで閉じますハチビキのづけ山かけ 水洗いして三枚に下ろし皮を引く。やや小振りに切り、醤油・みりんの地に1時間以上つけ込む。水分をよく切り、すった大和芋をかける。タイ科などの白身魚は大和芋の味の強さに負けてしまうが、本種は赤身魚のような独特の風味を併せ持つ。大和芋(とろろ)との相性がいい。クリックで閉じますハチビキのフライ 筋肉の色は赤だけど、身質はマアジなど背の青い魚と、ハマダイなどとの中間的なもの。小型はフライにすると実に味わい深い。水洗いして三枚に下ろし、塩コショウして小麦粉をまぶし、衣(小麦粉・卵・水。溶き卵でもいい)を絡ませ、パン粉をつけてやや高温で短時間に揚げる。クリックで閉じますハチビキの唐揚げ 水洗いして刺身にしたときの切り落としや鰭下の部分を集めて作る。水分をよくきり片栗粉をまぶしてじっくり二度揚げにする。鰭や小骨などが香ばしく揚がり、ビールによく合う。クリックで閉じますハチビキの兜煮(煮つけ) 大型魚なので身(体幹部)だけではなく頭部やあら、卵巣、白子などを使ってもいい。湯通しして、冷水に落とし、鱗や血液などを流す。これを酒、砂糖、しょうゆ、水の地で煮上げる。酒と塩のみの味つけでも、みりん、酒、しょうゆの味つけにしてもいい。甘味をつけるとご飯に合う。煮ると硬く締まるがイヤミのない味である。クリックで閉じますハチビキのムニエル 水洗いして三枚に下ろす。腹骨・血合い骨を取り、水分をよくきる。塩コショウして小麦粉をまぶして多めのオリーブオイルでじっくりとソテーする。皮が香ばしくなったら身側もソテー。皿に移しておく。火を止めて白ワイン、バター、柑橘類、フルーツ、ナッツ類を加えてデグラッセする。バターを加えてもいい。クリックで閉じますハチビキのポワレ 水洗いして三枚に下ろして適宜に切る。単に熱を通すとぱさつくが油でソテーすることでそれが補える。ここでは赤い身に赤ワインでデグラッセしてみたが、バターを加えたり、ソテーして新たにオリーブオイルを垂らしてもうまい。クリックで閉じますハチビキのみそ汁 刺身などにした残りのあらを湯通しして、冷水に落とし鱗やぬめりなどを流す。水をきり、水から煮出してみそを溶く。みそとの相性が抜群によくておいしい汁になる。ご飯のおかずにも酒の肴にもいい。クリックで閉じます好んで食べる地域・名物料理
ー加工品・名産品
釣り情報
三浦半島などからの中深場サビキ釣りでは本種も対象魚のひとつ。水深100以上の海底近くで釣れる。これを関東では「赤さば」という。サバに似ているとは思えないが、外見も身の色までもも赤い。歴史・ことわざ・雑学など
血引魚 〈思うに、血引魚の形は鯔に似ていて、大きなもので二、三尺。全体は深赤色。肉も血のような色をしている〉『和漢三才図会』(寺島良安 正徳二年 1712)参考文献・協力
『日本産魚類検索 全種の同定 第二版』(中坊徹次編 東海大学出版会)、『原色魚類大図鑑』(安倍宗明 北隆館)、『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂)、『商用魚介名ハンドブック』(日本水産物貿易協会編 成山堂)、『魚の辞典』(能勢幸雄 東京堂出版)、、『伊豆・小笠原の魚たち』(東京都水産試験場 2004)