マボヤ

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高さ15cm前後になる。赤く強い皮に包まれ、無数の角状の突起のあるイボがある。身体の上部には入水管、出水管がある。養殖ものは赤が強く、天然ものは薄い。瀬戸内海などには真っ白い個体がいる。[青森県産天然で突起の先が尖る]
高さ15cm前後になる。赤く強い皮に包まれ、無数の角状の突起のあるイボがある。身体の上部には入水管、出水管がある。養殖ものは赤が強く、天然ものは薄い。瀬戸内海などには真っ白い個体がいる。[広島県倉橋島 日美丸さんから]
高さ15cm前後になる。赤く強い皮に包まれ、無数の角状の突起のあるイボがある。身体の上部には入水管、出水管がある。養殖ものは赤が強く、天然ものは薄い。瀬戸内海などには真っ白い個体がいる。[宮城県産養殖で疣状で先が丸みを帯びる]
出水管は−(マイナス)形、入水管は+(プラス)形をしてる。

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物知り度 ★★★
知っていたら通人級
食べ物としての重要度 ★★★
一般的(流通量は普通)
味の評価度 ★★★
美味
分類
脊索動物門尾索動物亜門ホヤ綱マボヤ目マボヤ亜目マボヤ科マボヤ属
外国名
英名/Sea squirt 韓国/멍게
学名
Halocynthia roretzi (Drasche, 1884)
漢字・学名由来

漢字 真海鞘、真老海鼠、真保夜 Maboya
由来 ホヤの代表的なもの。
〈老海鼠〉『易林本節用集』(易林著 1597[慶長2]年以降刊 国立国語研究所)
『魚鑑』(武井周作天保辛卯 1831)には〈奥州仙台にはほやほや笑うというに因みて、佳節吉事(せっくめでたき)の時、必食うなり、近年相海(さがみうみ)も希に出つ〉。
■ 炎のように赤い色をしているから「火焼け(ホヤ)」。
■ ほや(宿り木)が根を張るに似ているから。
■ 海鼠(なまこ)の老いたものだから「老海鼠(らうかいそ)」か? [『和名抄』、『魚鑑』(武井周作天保辛卯 1831)

地方名・市場名
ホヤ トツイ
備考一般的に単にホヤ。 

概要

生息域

海水生。
九州北部、瀬戸内海、日本海、三河湾以北の太平洋側、北海道。
朝鮮半島、黄海、山東半島。

生態

産卵期は秋から冬、春。
岩や貝などに付着。
入水管と出水管を持ち、入水管で水中の微少なプランクトンなどを摂取、出水管でこした海水や排泄物を出す。
雌雄同体。
幼生期にはオタマジャクシに似た形態をしていて(オタマジャクシ幼生)、脊索がある。その後付着生活に入る。

基本情報

マボヤは国内、朝鮮半島、中国黄海・渤海沿岸などに生息。
国内ではもともとは青森県、三陸などで細々と食べられていたもの。
国内ではいまだにローカルな食材だが、韓国ではマボヤの仲間を多種食べる上に本種も大量に消費している。この韓国と三陸という食用とする地域の分布は非常に面白い。
宮城県では1920年代に養殖がはじめらて、岩手県などにも広まっている。
東京都内には古くから入荷してきていて、量的には少ないものの珍しい食材ではなかった。ある意味ホヤの食文化が根づいている。
20世紀の終わりから全国的に流通するようになり、現在では加工品をはじめ、徐々に認知度が高まっている。


流通するホヤはアカボヤ(左)とマボヤ(右) アカボヤは被囊に疣状の突起がない。マボヤは疣状の突起があり、ときに角状になる。

水産基本情報

市場での評価 宮城県、岩手県、北海道などで養殖が行われていて年間を通して入荷の多いもの。天然ものはやや少ない。皮をむいて海水と一緒に袋詰めされたものと、活けのものがある。重さではなく1個単位で売る。養殖もので1個卸売り価格で100円前後。天然もので200円ほど。
漁法 養殖、潜水漁
主な産地 宮城県、岩手県、青森県

選び方・食べ方・その他

選び方

触って膨らみがあり、張りのあるもの。しぼんでいたり、触ってしぼむものは古い。

味わい

旬は夏
袋状の殻のなかに橙色、薄い黄色の筋肉があって、これを食べる。
筋肉は弾力がありかむとシコっとした食感がある。
独特の苦みがあり、甘みが微かにする。食べた後に水を飲むと冷たく感じる。


アカボヤ(左)とマボヤ(右) アカボヤはオレンジ色をしている。泥を噛んでいる個体が多く取りにくい。マボヤの筋肉は黄色く赤みがほとんどない。また内臓は比較的きれいで黒ずむ部分がしっかりしていて取りやすい。

栄養

危険性など

食べ方・料理法・作り方

マボヤの料理法・レシピ・食べ方/生食(刺身、セビチェ、醤油漬け、酢の物)、汁(だし)、揚げる(天ぷら)、焼く(焼き物)、蒸す(ゆでる)、飯(炊き込みご飯)
ホヤの刺身(マボヤの刺身) ホヤの殻の根元を切り、筋肉部分を縦方向に切る。切り方はお好みで。宮城県で。切らないでそのままかぶりつくという人もいたが、要するにどう食べてもいいということだ。醤油、三杯酢、塩などお好みで。柑橘類との相性がとてもいい。

マボヤのセビチェ 剥き身にして筋肉の内側の黒い部分などを取る。繊維を切るように縦方向に適当に切り、塩・ライム・辛い青唐辛子で和えて、1時間以上寝かせる。辛味と塩味、ライムの酸味があいまって実に涼やか。スピリッツにあう。
マボヤの醤油漬け 剥き身にして筋肉の内側の黒い部分などを取る。筋肉を適当にきり、生醤油に漬け込む。1時間以上、一日くらい漬ける。塩よりもうま味成分が多いせいかこくのある味わいになる。塩・醤油は好みだ。
マボヤの酢のもの 剥き身にして筋肉の内側の黒いところを切り取る。適当に切っておく。きゅうりは薄切りにして塩もみする。しばらく置き塩が馴染んだら洗いながら塩加減をみる。やや強めの塩分を感じたら、ホヤを一緒にして合える。
ホヤの天ぷら(マボヤの天ぷら) 剥いて筋肉内部にある黒い部分を取る。3〜4当分に切り、水分をよく取り、小麦粉をまぶしてやや硬い衣をつけて短時間煮揚げたもの。甘味がとても強くなり、苦みなどは緩和される。非常に美味。
焼きホヤ(マボヤの炭火焼き) 根元を切り、二等分して水分をよく切る。これを強火で焼き上げる。炭火に直に落としてもいい。渋味苦み、そして甘味が強くなり、筋肉にほどよい食感が生まれる。焼いたホヤの鞘の香りもいい。
蒸しボヤ(マボヤの蒸し物) 根元を切り、縦方向に二等分する。筋肉内側に黒いものがたまっていたら適当に切る。これ少量の酒と水で蒸し煮にする。味付けは不要。ホヤらしい香り、風味が強くなり、筋肉は熱を通すことで食感も強まる。
マボヤの炊き込みご飯 根元を切り、真半分に切る。筋肉内側に黒いものがたまっていたら取る。これを塩ゆでする。完全に火を通さなくてもいいので、ホヤを取りだし身を外して適当に切る。冷ましたゆで汁と水で炊飯の加減をし、醤油・酒を加えて炊飯する。蒸らしの時にゆでたホヤを加える。非常に好き嫌いの出そうな味わい。ホヤ好きにはたまらないかも。

好んで食べる地域・名物料理

岩手県 生のままどんぶりに入れてつるつる食べる。汁の身にする。豆腐やネギと食べる。塩を振っておくと1ヶ月くらいもつ。
ホヤご飯 ホヤを適当に切り、しょうゆをかけてご飯にのせて食べる。岩手県釜石。
干しホヤ、塩ホヤ、生ホヤ 宮城県。ほやだしの汁。ホヤの皮(殻)でだしをとり、醤油で味つけ。野菜やうどんを加えて食べる。
ほやとみずの水もの ミズ(ウワバミソウ)は皮を剥きゆでる。ホヤは皮を剥き塩水などで洗い、切る。昆布だしに塩味をつける。マボヤとミズに昆布だしをそそぐ。「ほやと昆布だけの水もの」もある。[青森県弘前市・青森市・黒石市]
ほや雑煮 宮城県石巻で作られている、干しホヤのだしで作った雑煮。だしに使った欲しホヤが具の中心となり、根菜類、青菜などが加わる。『ごっつぉうさんー伝えたい宮城の郷土食』(みやぎの食を伝える会編著 河北新報出版センター)
ほやの焼き干し ホヤを二つ割りにして振り塩、炭火で焼き、10日ほど干したもの。このままで食べると硬すぎる。軽く炙って食べてみると、マボヤの渋味・苦みよりも甘味がまし、後味がいい。『ごっつぉうさんー伝えたい宮城の郷土食』(みやぎの食を伝える会編著 河北新報出版センター)
ほやだし マボヤの殻を水から煮出してだしを取る。ここにマボヤの身を入れて汁にする。大根など野菜を加えたりしてしょうゆで味つけする。うどんを入れることもある。[宮城県] 『聞き書 宮城の食事』(農文協)

加工品・名産品

蒸しほや マボヤを少量の液体で蒸し煮したもの。
干もの 珍しいものに三陸でからからに干したものが売られているが、これなど海の味のチップスとも言えそう。
ほやの塩辛 もっとも定番的な加工品。レモンなどの柑橘類と合わせるとうまい。[木村商店 岩手県下閉伊郡山田町]など
莫久来(ばくらい) マボヤとこのわた(ナマコの内臓の塩辛)を合わせたものが莫久来(ばくらい)というのがあるが、これは非常に美味。[ヤマ食 岐阜県岐阜市]
ゆでほや 「ゆでっぽや」とも言うらしい。皮つきのままゆでたもの。[キマル木村商店 宮城県石巻市、橫田屋本店 宮城県気仙沼]など
ほや燻製 マボヤのむき身を燻製にいたもの。どこかしらウニに通じる風味があり、生よりも食べやすい。[マルタ水産 宮城県名取市下余田]
むきほや マボヤの皮を剥きワタなどを除き適宜に切ったもの。[大勝水産 宮城県南三陸町]

釣り情報

釣り物として紹介するのはどうかと思うが、実際の釣り上がってくるのだから仕方がない。福島などでソイ、メバルなどを胴つき仕掛けで海底をとんとんやっていると、頻繁に根がかりする。これを強引に引くとやや鈍い感触がして海底を離れ上がってくるのがまさしくマボヤである。マボヤが好きならソイなんて見向きもしないでマボヤ釣りもいいものである。

歴史・ことわざなど

魚鑑 〈奥州仙台にはほやほや笑うというに因て、佳節吉事(せっくめでたき)の時、必食うなり〉『魚鑑』(武井周作天保辛卯 1831)
皮嚢類 殻皮(皮嚢)または外套膜という丈夫な膜で包まれているので「皮嚢類」とも。
脊索動物門 脊索動物門尾索亜門で人、魚、カエルなどの脊椎動物亜門と「門(分類のもっとも上位)」を同じくする脊索動物門頭索動物亜門にナメクジウオ。
韓国 食用となるのは国内ではマボヤ、アカボヤ。韓国などではマボヤ、エボヤ、シロボヤ、カラスボヤなど多種類を食べている。
養殖 東北太平洋側青森県、岩手県、宮城県などで主に養殖されている。出荷までは4年かかる。明治時代、宮城県気仙沼で船のイカリ綱に使っていたヤマブドウの蔓についたマボヤを採取したのが養殖の始まり。
漁獲生産量 年間約1万トン、8割前後が宮城県で、2割前後が岩手県産。
食文化 マボヤを食べる習慣があったのは東北太平洋側、青森県、岩手県、宮城県。
味がわからなくなる 青森県青森市では「食事をとる前にホヤを食べると、味がわからなくなる」と言う。
ホヤのあとに 「ホヤを食べて水を飲むとたいへんうまい」といわれる。
海のパイナップル 「海のパイナップル」と呼ばれたことがある。
藤の花とホヤ 「藤の花が咲くとホヤがうまくなる」といわれる。
なれずし 「延喜式に胎貝(イガイ)と保夜(ホヤ)のすしがある。これは乳酸発酵させた「なれずし」。
チュウインガム 岩手県釜石市生まれの方に「子供の頃には、ホヤの皮をチュウインガムのように噛んだ」という話を聞いた。このようなマボヤに関する情報がありましたらメールでお知らせください。
三河のマボヤ 愛知県三河湾では冬に底引き網の副産物として漁獲される。