アイゴ
代表的な呼び名バリ
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珍魚度・珍しさ | ★★★ がんばって探せば手に入る |
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魚貝の物知り度 | ★★★★ 知っていたら達人級 |
食べ物としての重要度 | ★★ 地域的、嗜好品的なもの |
味の評価度 | ★★★★ 非常に美味 |
分類 | 顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目ニザダイ亜目アイゴ科アイゴ属
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外国名 | Mottled spinefoot, 褐臭肚魚、褐籃子魚
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学名 | Siganus fuscescens (Houttuyn, 1782)
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漢字・学名由来 | 漢字 藍子、阿乙呉 Standard Japanese name / Aigo Houttuyn Maarten Houttuyn (Martinus Houttuijn マールテン・ホッタイン 1720-1798年)。オランダの医師、博物学者。リンネの継承者。ドクダミなどを記載。 |
地方名・市場名 |
概要
生息域
海水魚。沿岸の浅い岩礁地帯。
青森県〜[新潟県親不知]〜九州南岸の日本海・東シナ海、青森県から九州南岸の太平洋沿岸、伊豆諸島、小笠原諸島、琉球列島。
朝鮮半島南岸、済州島、台湾、フィリピン、ミャンマー南沿岸、南シナ海・インドネシア、ニューギニア島、ソロモン諸島、ニューカレドニア、バヌアツ、オーストラリア西岸・北岸・東岸、ミクロネシア、東インド・西太平洋域。
生態
7月から8月に産卵。
稚魚・幼魚期藻類を食べ、成長すると藻類を主とした雑食性になる。藻場、海藻の生える場所の減少が甚だしいのだが、海藻などを食べるアイゴはその一因とも言われている。
背鰭、尻鰭、腹鰭の棘の両側に毒腺があって刺されると激しく痛む。
シモフリアイゴ型
産卵期は4月〜7月。孵化後1ケ月で体長30ミリ前後になり、沿岸浅場に群れをなしてよせる。
基本情報
本州以南の浅場に普通に診られる。定置網などでとれるが、扱いが悪いと臭みがあるので「ねしょんべん(寝小便)」、「ばり(尿)」などと呼ばれる。逆に非常に美味だという人も多く、毀誉褒貶大の魚でもある。
ちなみに偉大な魚類学者である蒲原稔治は〈なかなか美味である〉としている。個人的には魚類中最もおいしい魚だと考えていて、これは何度食べても揺るぎがない。問題(臭味)があることもあるが、扱い方に原因がある場合が多い。特に産卵期の成魚はとても美味、秋にとれる小型は瀬戸内海では高級魚である。
また背鰭・腹鰭・臀鰭の棘に毒を持つので「おいしゃ(お医者で注射をすることから)」などとも呼ばれ危険でもあるので、嫌われがちである。
国内では紀州(紀伊半島周辺)、四国徳島、瀬戸内海、沖縄県など一部地域以外では未利用魚・マイナー魚であり、好んで食べる地域は少ない。食文化を持つ地域とまったく食べない地域があり、関東など消費地ではまったく知られていない。
和歌山県、徳島県などで作られている干ものは名品である。卵巣・白子は非常に味がよく、山陰などでは好んで食べられている。
九州南部、奄美、沖縄には全身にゴマ状の白い斑紋が散らばっているシモフリアイゴ型がいる。この稚魚を塩辛にし、成魚を「まーす煮」、唐揚げにする。
このシモフリアイゴ型はオーストラリア周辺まで生息していて、国内よりも台湾や熱帯域で非常に重要な食用魚だ。煮つけ(塩煮、しょうゆ煮)、唐揚げ(素揚げ)などにし、その地域の主食(米、タロイモ、ヤムイモ、バナナ、キャッサバ)との組み合わせるところなど和食と同じだ。
本種は雑食性で海藻などを好んで食べ、磯焼けの原因とみなされている。また未利用魚を強調するために臭い魚といいすぎている。そんなに問題のある魚ではないことも書いておきたい。この魚を積極的に食べることが、磯焼け防止にもなる。
珍魚度 水揚げ量が多い魚だが、流通しない。未利用魚である度合いも高い。
鰭の棘に毒を持つので手に入れたら鰭を切り取り、臭みが出やすいので内臓も除去するといい。
水産基本情報
市場での評価 瀬戸内海兵庫県、岡山県、徳島県では秋にとれる小型に高値をつける。関東では冬に活けで入荷したものはある程度の値段がつく。野締め(漁のときに死んだもの)は非常に安い。またシモフリアイゴ型は沖縄では一般的な食用魚。やや庶民的な値段。
漁法 刺し網、定置網、釣り
産地(漁獲量の多い順) 徳島県
選び方・食べ方・その他
選び方
くすんだ黒っぽい暗い色合いよりも、明るい色のものがいい。腹がエサで満たされていないものがいい。
味わい
大型(産卵参加固体)は6月から9月に脂が乗っている。産卵期の個体は消化管が縮小しており、内臓にも臭味があまりない。産卵期は地域によってばらつきがあるので、どうしてもずれがある。産卵後は痩せてしまうがまずくはない。
25cm前後以下は秋〜冬。
背鰭(せびれ)、尻鰭(しりびれ)の棘には毒があるので、さされないように注意。最初に棘を切り取ってから料理する。内臓さえとればとても保ちのいい魚で保存さえよければ1週間くらいは食べることができる。
生きている状態で臭みのある個体は食べないこと。臭みを感じない個体は手に入れたらできるだけ早く内臓を抜く。持ち帰る前に棘を切り取り内臓を取っておくといちばんいい。
鱗は非常に微少で厚い皮と一体化していてはぎ取ることができる。骨はあまり硬くない。皮は熱を通すと柔らかくなり気にならなくなるので刺身以外の料理では取る必要がない。
透明感のある非常に上質な白身であり、熱を通しても硬くしまらないが、場所や季節によっては臭みがある。
生殖巣 卵巣(たまご)、白子(精巣)は非常に美味。各地で好んで食用となっている。
スク 沖縄県、鹿児島県諸島部奄美大島などで孵化後すぐはプランクトン食でこれを「スク」という。生で食べても美味。唐揚げなどにもなる。すくがらす(塩漬け)にしてもよい。
漁獲後、締めて、内臓と頭部をとってから流通させるといい。
栄養
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危険性など
食べ方・料理法・作り方
水揚げしてから8時間後に水洗いする。生殖巣はない。ペーパータオルにくるんで保存する。これを水揚げ後14時間後と、38時間後に刺身にして食べ比べしてみた。
三枚に下ろし、血合い骨・腹骨を取り、皮を引き刺身にする。ともにまったく臭味はなくうま味豊かで素晴らしい食感だった。食感は少々落ちているものの、味の点では38時間後の方が上である。
気温34度と猛暑なので、塩とライム、ホットチリと2回とも同じ食べ方にする。意外に脂が感じられて、口溶け感も微かにあり、何よりも噛めば噛むほどうま味がにじみ出てくる。食べていて、味のダレがない。
これを三枚に下ろして皮を引き、できるだけ薄く切りつける。皿ににんにくをこすりつけ塩コショウしてオリーブオイルを加える。ここに薄切りにした身を並べて行き、並べ終わったらスプーンでとんとんと馴染ませる。上からも塩コショウしてオリーブオイル、シーカーサーを振り、またとんとんと馴染ませる。香りのある野菜を散らす。
薄く切りつけてもオリーブオイルや柑橘類を振っても豊かな身自体の味が感じられる。不思議なことにフランスパンなどにとてもよく合う。
水洗いして水分をよくきり、皮付きのまま素揚げにする。皮も皮下の身も香ばしく、身にうまみがある。手で身を引き剥がしながら食べる。揚げたてに塩コショウをしているが、しょうゆなどを振ってもいい。
好んで食べる地域・名物料理
煮つけ 兵庫県姫路市家島群島坊勢島、徳島県、兵庫県明石など日本各地。基本的に内蔵はとらないで煮つける。多くの地域ではもっともうまいのは内蔵(「ぜんまい」などとも)と言われている。
以下に宇井縫蔵のアイゴの項を引くが、確かに8月の丸のまま焼いただけの塩焼きは内臓・生殖巣を含めて非常にうまい。
〈田邊地方では酒糟を餌とし夏秋の候多く釣獲せられる。遊漁魚の一である。主に盬焼・煮付とし、肉しまり八九月頃頗る美味〉『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929)
ヤノウオの湯引き 長崎県雲仙市小浜では、旬の6月のヤノウオ(アイゴ)を食べる。内臓を傷つけないように三枚に下ろし、腹骨・血合い骨を抜く。皮つきのまま厚みを揃えて刺身状に切る。これを6〜7秒湯引きする。これをしょうがに酢みそ、梅肉などで食べる。[佐藤厚さん 長崎県雲仙市]
加工品・名産品
紀ノ川 〈東京へ出ている姪御に対して叔父が「『節がきたらバリゴやの何やの、紀州の香りを送ろうかいうておりますのし』……バリコというのは、紀州西北寄りの海でとれる皮剥に似たあいという魚を開いて乾したこの地方独特の珍味の称であった」〉『紀ノ川』(有吉佐和子 1959 婦人画報)
釣り情報
磯釣りでの代表的な外道、西日本では本種を対象にもする。浮きづり、オキアミなどの餌。
沖縄ではゴマアイゴの外道として釣れる。
歴史・ことわざなど
磯焼け 海藻を食べるので磯焼けの原因動物のひとつとされている。
小便 「ばり」は小便のこと。臭いからくる呼び名が多い。
あいのなますで皿ねぶり 徳島県海部郡海陽町宍喰ではアイゴの刺身を酢みそで食べる。これを「なます」というが、食べると皿をなめるほどにうまいということ。
地方名・市場名
参考『土佐の魚』(蒲原稔治 高知縣文協協会1949) 場所三重県、高知県
参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 場所三重県熊野市二木島
参考丹後地方で使われている魚名方言集 場所京都府丹後地方
参考丹後地方で使われている魚名方言集 場所京都府京丹後市丹後町
場所和歌山県太地
サイズ / 時期全長20cm前後 備考アイゴは若魚でも味がよく、干ものなどにすると成魚よりも価値が高い。 場所和歌山県田辺市、徳島県海部郡美波町
サイズ / 時期老成魚 参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 場所和歌山県白崎
参考『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂) 場所宮崎県、熊本県、有明海
参考『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂) 場所富山県新湊
参考『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂) 場所富山県氷見
参考『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂) 場所山口県小野田
参考『山口県瀬戸内海側で使用 されている魚介類の地方名称 について』(木村博) 場所山口県山口市秋穂
参考『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂) 場所山口県山陽小野田市小野田
参考『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂) 場所山口県萩・小野田
場所島根県、福岡県
場所島根県浜田、山口県下関市
場所愛媛県
参考『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂) 場所愛知県熱田
場所愛知県豊橋・三谷町
備考シモフリアイゴ型。 参考『魚名からみる自然認識:沖縄・伊良部島の素潜り漁師の事例から』(高橋そよ 2014年03) 場所沖縄県伊良部島
備考「真のエーグヮー」という意味。 参考『美ら海市場図鑑 知念市場の魚たち』(三浦信男 ぬにふぁ星 2012)、河村雄太さん 場所沖縄県南城市知念漁協・石垣島
参考河村雄太さん 場所沖縄県石垣島白保・伊良部
参考聞取 場所熊本県上天草市大矢野町・苓北町
参考『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂) 場所石川県宇出津
参考『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂) 場所福岡県、有明海
参考『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂) 場所福桶間宗像市津屋崎・有明海
参考伊東正英さん 場所福桶間宗像市津屋崎・有明海、鹿児島県南さつま市笠沙
参考福島の海産動物方言 場所茨城県大洗
参考『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂) 場所長崎県大村
参考福畑敏光さん 場所長崎県平戸市度島
参考佐藤厚さん、聞取 場所長崎県雲仙市小浜、熊本県上天草市大矢野町・苓北町
参考有江商店(熊本県天草市)、佐藤厚さん 場所長崎県雲仙市小浜、熊本県熊本市
参考静岡県水産・海洋技術研究所・伊豆分場 場所静岡県伊豆稲取
場所静岡県浜名湖周辺
参考聞取、三重県『東紀州のお魚リスト』、『種子島の釣魚図鑑』(鏑木紘一 たましだ舎 2016年)、『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂) 場所静岡県静浦・駿河湾周辺、三重県東紀州、岡山県、広島県、山口県宇部市、福岡県、長崎県平戸市度島、鹿児島県種子島など
場所香川県坂出市
参考『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂) 場所鹿児島県
参考『種子島の釣魚図鑑』(鏑木紘一 たましだ舎 2016年) 場所鹿児島県種子島
参考日比野友亮さん/和具の方言、三重県『東紀州のお魚リスト』、阿波学会研究紀要・由岐町の魚類と淡水エビ類、『山口県瀬戸内海側で使用 されている魚介類の地方名称 について』(木村博)、聞取 場所愛知県、三重県志摩市志摩町和具・東紀州、和歌山県田辺市、山口県東和町、徳島県海部郡北灘・伊座利・由岐町・牟岐町・海陽町宍喰、沖縄県宮古
参考文献そのた 場所福島県、東京都、千葉県富津市萩生、神奈川県三﨑・小田原、兵庫県二見・家島群島
参考『島根のさかな』(島根県水産試験場 山陰中央新報社) 場所島根県
場所三重県尾鷲・熊野市二木島、和歌山県串本、徳島県阿南・海陽町宍喰
場所愛媛県宇和郡愛南町、高知県宿毛市田ノ浦すくも湾漁協
場所愛知県
場所徳島県阿南市
備考シモフリアイゴ型。 場所沖縄本島
備考シモフリアイゴ型。 場所沖縄県石垣市スーパー
備考シモフリアイゴ型のアイゴや他のアイゴ類の総称。 参考河村雄太さん 場所沖縄本島・八重山
参考聞取 場所京都市京丹後市美浜町
場所静岡県雄踏町
場所和歌山県田辺市、香川県東讃岐、徳島県海部郡
場所鹿児島県南さつま市笠沙
参考福畑敏光さん、聞取 場所長崎県平戸市度島、熊本県上天草市大矢野町・苓北町
備考シモフリアイゴ型。 場所沖縄県宮古
サイズ / 時期2-3cm前後の稚魚 場所鹿児島県奄美大島、沖縄県
参考文献より。
ウズマキ ゼンマイ
部位内臓 参考文献より。