小田原産活け締めアイゴで干ものを作る
やはりすだちと来るのが徳島県人の性なのだ
神奈川県小田原の魚の話だが、いきなり寄り道をさせていただく。
アイゴをボクの故郷徳島県では「あいのばり」とも、「あい」ともいう。
同じく、和歌山県でも「あい」、小型のアイゴを「ばりこ」という。
徳島、和歌山ともにアイゴを干ものに加工する。
「ばりこの干もの」は有吉佐和子の名作、『紀ノ川』にもある。
徳島県では干ものに、すだちを搾り、和歌山県では「さんず」を搾りかける。
和歌山県田辺で干ものを買ったら、立ち話をしたオヤジサンが「さんず」をもいでくれた。
アイゴの干ものは香酸柑橘類ととても合う、というのが常識なのだ。
今回のものは神奈川県小田原のアイゴで作った干ものだが、せめてもということで徳島県産のすだちを搾りかける。
骨周り、身、皮で3つの味がある、これぞアイゴの干ものの魅力
アイゴだけではなく、ニザダイ亜目の魚は焼くと身が赤褐色に染まる。
取り分けアイゴは染まり方が強い。
この焼き色を愛でながら、焼き上がりの香りを楽しむのも、アイゴならでは、だ。
いちばんうまいのは皮である。アイゴの皮は微少な鱗が一体化しているが、皮下に独特の脂があり、これが濃厚なうま味を持つ。
いちばん平凡なのは身であるが、それにしても干すことでうま味が凝縮されている。たっぷり頬張ってもうま味がだれない。
終いに中骨に張りついた赤褐色に染まった身を、指で引っぺがしながら食べる。
これがまさにトリを務めて、またうまいのである。
和歌山県田辺市でボクに「さんず」をもいでくれたオヤジサンは、「ばりこの干ものが魚の中でもいちばんうまい(意訳)」と言っていたが、うなずくしかなかった。
ジンハイボールがビックリするくらい好相性だった。
見た目は地味であるが、食べてビックリ玉手箱
8月26日、二宮定置は大漁だった。種類も多く、今の時季、なくてはならないメイチダイもたっぷりとれていた。
こんなたいへんなときに、ボクのためにわざわざアイゴを活かして置いてくれた。しかも締めたのは名人、カイくんである。
ちなみに持ち帰って下ろしていると身が盛り上がってきた。
以上は前々回に書いた。
二枚下ろしにして骨つきの方を干ものにする。
水分をよく拭き取り、塩水(なめると渋味があるくらい)に25分つけこむ。
今回のは産卵間近であるにも関わらず、少し脂分が感じられての25分だ、脂のない時季ならもっと短くてもいい。
ただし自分の塩分濃度があると思うのでご自由に、としか言いようがない。
再度、水分をよくきり、外は熱帯なのでエアコンのきいた部屋で扇風機で半日干す。
干し加減は定期的に触ってみて加減するといい。
二宮定置のみなさん、Kai’s Kitchenのカイくん、ありがとうございました。