ケンサキイカ

ケンサキイカの形態写真一覧 (スワイプで別写真表示)
外套長(胴の長さ)40cm前後になる。胴は細長い。雌より雄の方が遙かに大きくなる。
胴が短く耳の幅が長いもの。ブドウ型とするには当たらないが、このタイプも多い。

赤イカ・アカイカと呼ばれるイカ

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珍魚度・珍しさ★★
少し努力すれば手に入る
魚貝の物知り度 ★★★★
知っていたら達人級
食べ物としての重要度 ★★★
一般的(流通量は普通)
味の評価度 ★★★★
非常に美味
分類
軟体動物門頭足綱鞘形亜綱十脚形上目ツツイカ目閉眼亜目ヤリイカ科ケンサキイカ属
外国名
Swordtip squid
学名
Uroteuthis (Photololigo) edulis (Hoyle,1885)[goto-ika]
漢字・学名由来

漢字 剣先烏賊 Kensakiika
由来・語源 本州で使われている方言からとったとされている。剣の先のように尖ったイカ。佐々木望が採取してつけたもの。

Sasaki
佐々木望(ささき・まどか/明治16年〜昭和2年 1883年〜1927年)。広島県広島市生まれ、ハンガリー、ブダペストで客死。動物学者。軟体類とくに頭足類の分野で大きな業績を残す。多くの軟体類を記載。
地方名・市場名

概要

生息域

海水生。
[山形県酒田]、舞鶴湾から山陰・九州北部の日本海・東シナ海、青森県八戸・岩手県・宮城県沿岸、外房・東京湾・相模湾、伊豆諸島の太平洋沿岸。
東・南シナ海からインドネシア。

生態

雄の方が雌よりも大きい。
小魚などをとらえて食べる肉食性。
水深 20メートルから40メートルくらいの内湾で春から秋に産卵する。
秋には水深60メートルから100メートルくらいの深場に移動する。

基本情報

ケンサキイカはスルメイカやヤリイカよりも温暖な海域を好み、日本列島の暖流の影響の強い沿岸域からインド洋-西太平洋に広く分布する。近年国内では北上傾向にあり、東北太平洋側でもとれている。
小型のメヒカリイカ型、中型で山陰に見られるブドウイカ型、大型になるゴトウイカ型の3型がある。また熱帯域にかけてヒラケンサキイカが生息するが同定はとても難しい。
関東では「赤いか」、山陰などでは「白いか」と呼ばれているが、3型に対する様々な呼び名があって複雑だ。
古くは山陰・房総半島以南に多く地域性があったが、急激に北上して青森県でも上がっている。実験した例では宮城県気仙沼では普通に水揚げがある。本州以南どこでも普通に見られるイカになる日も近いのだと考えている。
長崎県から島根県にかけて作られる「一番するめ」は本種で作られている。
ヤリイカ、アオリイカとともに高級イカで、関東ではスーパーなどに並ぶことはまずない。主にデパートや高級魚店、料理店、すし店などで出合うものだ。
珍しさ度 至って普通の食用イカだが、高価なので、高級なスーパーとか魚屋でなければ出合えない。丸のままの状態で見ることもできない。

ケンサキイカ・メヒカリイカ型 日本各地で水揚げされ、外套長11-14cm前後で生殖巣が膨らんでいる。瀬戸内海、伊勢湾、相模湾などにこのタイプがいるのでは、と考えている。関東ではこの小型を「だるま」と呼ぶ。

水産基本情報

市場での評価 暖かくなると入荷が増える。値段は高値で安定。
漁法 釣り
産地 島根県、山口県、長崎県

選び方・食べ方・その他

選び方

消費地では赤いもの。とれたばかりは白く透明、徐々に赤くなり、また時間がたつと白くなる。消費地で白いものは古い。触って張りのあるもの。

味わい

旬は地域によって違う
表皮はしっかりして取りやすい。内皮は鮮度がよいと取りにくい。
身に厚みがあり、熱を通しても硬く締まらない。

栄養

危険性など

食べ方・料理法・作り方

ケンサキイカの料理法・調理法・食べ方/生食(刺身、ゆびき、なめろう)、ゆでる(ぬた、サラダ)、塩焼き(一夜干し)、煮る(煮つけ、アヒージョ)、揚げる(天ぷら、唐揚げ)、炒める、レンチン
ケンサキイカの刺身 胴の部分、耳を刺身に。げそはゆでて添えた。ケンサキイカの味の特徴はねっとりとして、甘味が強いこと。それでいながらイヤミのない上品な味わいも魅力的である。耳の部分の食感が強いのも素敵だ。

ケンサキイカの湯引き 兵庫県産の小振り、「だるま」と呼ばれているものを、下ろす。皮を剥き湯通しして冷水に落として、水分をよくきる。これを適当に切ったもの。表面だけ火が通り中は生。小型は甘味やうま味は少ないが湯通しすると強まり、食感もよくなる。
ケンサキイカのなめろう ケンサキイカの胴、頭部、耳の皮を剥き、しょうが、ねぎ、みそとよく切れる包丁でたたいたもの。スルメイカやヤリイカよりもみそとの相性がよく、ねっとりしている分、全体に馴染みやすい。絶品である。
ケンサキイカの一夜干し 開いて内臓を取り除いて立て塩につけて、半日ほど干したもの。比較的温かい時期にとれるので冷蔵庫で干してみた。焼いても硬くならず、イカの甘味をともなう香りがたち実にうまい。
ケンサキイカの天ぷら 軟らかくて熱を通すとより甘さが増すので天ぷらは絶品。水洗いして適当に切り、皮目に切れ込みを入れる。小麦粉をまぶして、衣をつけて高温で揚げる。揚げたてを食べるのが前提だが、香ばしく、イカのうま味が堪能できる。
ケンサキイカの炒め物 小振りのケンサキイカのげそや耳の部分をししとうとさっと炒めて、しょうゆ、みりんで味つけしたもの。一味唐辛子をきかせているが、酒の肴にもご飯のおかずにも向いている。
ケンサキイカのげそ煮 げそ(足の部分)をしょうゆ、みりん、酒であっさりと煮たもの。煮すぎると硬くなるので要注意。軟らかく、イカ本来の甘さが楽しめて美味。しょうがで煮てもうまいが、一味唐辛子はとても合う。
ケンサキイカと若ごぼうの炒め煮 ケンサキイカだけではなく、イカのげそはすぐに食べるのではなく、冷凍保存して置くととても便利である。大阪市八尾の「若ごぼう」を見つけたので、一緒に煮てみた。ごぼうに似た風味がして青菜のよさもある。いかげそは解凍して適当に切る。これを下煮した「若ごぼう」と一緒に炒めて酒、みりん、薄口醤油で煮る。
ケンサキイカの酢みそがけ 小振りのものをゆでてぬたにしてみた。胴とげそを分ける。内臓と墨を取り塩ゆで、おか上げする(ザルなどの上に乗せて冷やす)。熱を通しても軟らかく、身に甘みがあってとてもうまい。青みはコシアブラだが、晩春の春の宵にまさにという佳肴となった。
子ケンサキの塩ゆで 外套長(胴に見える部分)10cm前後の今年生まれたばかりの個体がきていた。おいしいが、鮮度落ちが早いためかめったに入荷してこない。これを買い求め、帰宅後するに多めの塩水に洗うことなく放り込んで1〜3分ゆでて火をとめる。冷めたらゆで汁の中でげそを胴から外し、内臓・墨などを取り去る。水分をよくきる、ゆで汁は他の料理にも使えるのでとっておくといい。
ケンサキイカのトマト煮込み 小振りのものの内臓と貝殻を取る。水洗いして適宜に切る。トマトと玉ねぎは細かく切り、にんにくはつぶしておく。フライパンにオリーブオイルを入れてにんにくを加えて香りを出す。トマトと玉ねぎを加えて、炒める。水分が出て来たらローリエの葉とイカを加える。火が通ってきたら白ワインを加え、塩コショウして味をつける。トマトの甘味が出て来たら出来上がり。
ケンサキイカのアヒージョ 小振りの筋肉、白子、卵巣、ミミなどを集めて置く。オリーブオイル、にんにく、辛い唐辛子、ここではトマトも入れた。これをオイルで煮る。ニンニクの香り、イカの味わいとイカとニンニクのうま味の出たオイル、それぞれが相まって実に美味。パンを用意してオイルをつけて食べるといい。
ケンサキイカのガリシア風 小型を水洗いして、皮を剥き適当に切る。これを電子レンジで30秒熱する。出来上がりにパプリカとオリーブオイル、振り塩をする。楊枝などでちょこっとつまむというのがいい。

好んで食べる地域・名物料理


長崎県平戸市度島、あかいかの湯引き 冠婚葬祭などのときの料理の盛り合わせに、「ばり(アイゴ)」の湯引きとともに添えられる。水洗いして胴の部分は幅1cm、長さ5cm位に切り、足は適当に切り放す。これを塩水で5-6秒くらい湯がく。完全に火が通るぎりぎりの状態がいい。柔らかく、イカのうま味が浮き上がってきてとても味わい深い。[福畑光敏さん]

加工品・名産品


剣先するめ 長崎県、山口県北浦(日本海側)、島根県などで作られている「一番するめ」で非常に高価なもの。胴のいちばん先の部分の皮を剥いて干すが、胴のいちばん先の部分のみ皮を残すのが伝統的なやり方。この部分も取り去っているものも少なくない。
冷凍白いか 島根県隠岐・海士町でいちばん味のいいときにとれケンサキイカを刺身用に処理、CAS冷凍したもの。解凍してそのまま適宜に切ると、まったく通常の流通品と変わらない味である。[ふるさと海士 島根県隠岐郡海士町]
白いか塩辛 小振りのケンサキイカの塩辛。塩辛と言ってもみりんや砂糖で甘味を添加している。スルメイカよりもあっさりと軽い味で万人向きかも知れない。[岡富商店 島根県大田市久手町]
ゆでいか いわゆる「煮干し」である。稚イカをゆでて硬く干し上げたもの。そのまま食べてもうまいが、軽くいって食べるとなおうまい。ビールや酒に合う。[中野海産 高知県宿毛市]
いかの酢漬け 島根県浜田市で盛んに作られているのが「いかの酢漬け」。イカを調味された酢に漬け込んだものでそのまま食べてもとても味わい深いものだ。スルメイカなどでも作るがケンサキイカのものは貴重でほんのり甘味があってうまい。[佐々木商店 島根県浜田市国分町]

釣り情報

イカツノを使い浅場で釣る。関東ではこれを「アカイカ釣り」という。

歴史・ことわざなど

金にあやかる 長崎市茂木では「節分にカナガシラ(イゴダカホデリを含む)を食べると金持ちになる」という言い伝えがあり、節分にカナガシラはなくてはならない一皿だという。また長崎県でも「金にあやかる」として節分に「かながしら(イゴダカホデリでもよい)の煮つけ」を食べる。「赤大根の酢のもの」。『長崎の郷土料理』(井上寿子・片寄真木子 長崎出版文化協会 1982) 他には「笹いか(ケンサキイカ)」を巾着袋(これも財布などお金がたまるという意味合い)丸のまま煮るか、約化する。

地方名・市場名

ヤリイカ
参考田崎鮮魚市場20181121 場所佐賀県北部、福岡県、熊本県熊本市 
マイカ[真いか]
場所島根県、山口県 
メトイカ
サイズ / 時期小型 参考荷、聞取 場所神奈川県三崎など相模湾周辺、愛媛県 
ササイカ[笹いか]
参考石田拓治さん 場所長崎県長崎市 
アカイカ[赤いか]
参考福畑敏光さん、伊東正英さん、三重県『東紀州のお魚リスト』 場所関東の市場、愛知県豊浜・一色、三重県尾鷲など東紀州、和歌山県和歌山市雑賀崎、長崎県平戸市度島、鹿児島県南さつま市笠沙 
ケンイカ[剣いか]
場所島根県東部、三重県、山口県 
ゴトウイカ
場所九州西部 
シロイカ[白いか]
場所兵庫県日本海漁港、鳥取県、島根県 
スルメイカ
場所高知県宿毛市田ノ浦すくも湾漁協 
ナガツル
場所愛知県三谷 
マルイカ[丸烏賊]
場所相模湾、東京湾の沿岸 
ミズイカ[水いか]
場所広島県広島市・呉市・三原市 
ダルマ
参考荷 場所兵庫県淡路島沼島