クサヤモロ

代表的な呼び名アオムロ

クサヤモロの形態写真一覧 (スワイプで別写真表示)
SL 35cm前後になる。マアジなどと比べると細長く断面は円形に近い。全体に青く(黄色い固体もある)、体側に青い縦縞がある。背面前方鱗域は目の中心か前方まである。背鰭・臀鰭と尾鰭の間に離鰭がある。稜鱗は側線後方の直線部分の半分を占める(ムロアジは3分の2)。口床先端部分が黒く後半は淡い色をしている(ムロアジはは全体に黒い色素で覆われる)。
SL 35cm前後になる。マアジなどと比べると細長く断面は円形に近い。全体に青く(黄色い固体もある)、体側に青い縦縞がある。背面前方鱗域は目の中心か前方まである。背鰭・臀鰭と尾鰭の間に離鰭がある。稜鱗は側線後方の直線部分の半分を占める(ムロアジは3分の2)。口床先端部分が黒く後半は淡い色をしている(ムロアジはは全体に黒い色素で覆われる)。[38cm SL・0.67kg]
SL 35cm前後になる。マアジなどと比べると細長く断面は円形に近い。全体に青く(黄色い固体もある)、体側に青い縦縞がある。背面前方鱗域は目の中心か前方まである。背鰭・臀鰭と尾鰭の間に離鰭がある。稜鱗は側線後方の直線部分の半分を占める(ムロアジは3分の2)。口床先端部分が黒く後半は淡い色をしている(ムロアジはは全体に黒い色素で覆われる)。
背面前方鱗域は目の中心か前方まである。
口床先端部分が黒く後半は淡い色をしている(ムロアジはは全体に黒い色素で覆われる)。
触って見ないとわかりにくいが、稜鱗は側線後方の直線部分の半分を占める(ムロアジは3分の2)。

全関連コラム

珍魚度・珍しさ★★★
がんばって探せば手に入る
魚貝の物知り度 ★★★★
知っていたら達人級
食べ物としての重要度 ★★★
一般的(流通量は普通)
味の評価度 ★★★★
非常に美味
分類
顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目スズキ亜目アジ科ムロアジ属
外国名
Mackerel scad
学名
Decapterus macarellus (Cuvier, 1833)
漢字・学名由来

漢字 臭屋鰘、臭屋鰘 Kusayamoro
由来・語源 伊豆諸島、伊豆半島で作られる「くさや」の材料として、もっとも優れているため。『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年)
「もろ」は「むろ」が変化したもの。

むろの語源
室鰺 〈多く播州の室津(現たつの市)から出る。それで名づける。形は鰺に似ていてやや円く白刺がある。眼が大きい。冬月に醃(しおづけ。本来は魚へん)とする。東海にも多く出る。味は脆くて佳くない。下級品である。〉『和漢三才図会』(寺島良安 東洋文庫 平凡社 正徳2年 1712)など多くがこの説をとっているがムロアジ属の魚は播磨灘ではほとんど今でも揚がらない。揚がったとしてもマルアジくらいだ。
牟婁鯵 「むろ」は和歌山県の牟婁地方(串本や周参見のある)でとれたため。もともとは「むろ」で、これが「もろ」に変化する場合としない場合がある。本種は「もろ」に変化したものを標準和名にした。また「あじ」は分類学的な位置(科)を現すもの。

Cuvier
バロン・ジョルジュ・レオポルド・クレティアン・フレデリック・ダゴベール・キュヴィエ(Baron Georges Léopold Chrétien Frédéric Dagobert Cuvier 1769-1832)。フランスの分類学者。キュビエとされることが多い。スエーデンのリンネ、フランスのビュフォンの分類体系に解剖学や古生物学などを加味して現在の形の礎を作った巨人のひとり。
地方名・市場名

概要

生息域

海水魚。沿岸や諸島部の水深40-200mの中・下層。
伊豆〜小笠原諸島、青森県津軽海峡、相模湾〜九州南岸・屋久島の太平洋沿岸、[京都府舞鶴]、山口県日本海沿岸、鹿児島県笠沙、琉球列島、南大東島。
済州島、台湾、福建省、海南島、中沙諸島、西沙諸島。
全世界の温帯・熱帯域。

生態

寿命は8年。
産卵期は伊豆諸島では夏ではないかと考えている。

基本情報

古くは伊豆半島以南、九州以南だったが、最近では本州日本海でも揚がっている。ムロアジよりも若干南にいる魚で、水揚げとしては相模湾以南だと考えている。
旬がはっきりしている魚で、鮮度さえよければ非常においしい魚だが、残念ながら鮮度落ちが早い。
基本的に干ものなどの加工原料として重要。本種は伊豆諸島海域に非常に多く、本種の標準和名「くさやもろ」も伊豆諸島などで作られている「くさや」にもっとも適した魚だからだ。
「くさや」はその昔、「塩汁干(しょっちるぼし)」と呼ばれていた。「塩汁」は貴重な塩を節約するために、立て塩の液をなんども繰り返し使う内に独特の臭み、風味のある干物ができるようになったもの。「塩汁」は非常に臭いが、なかにクサヤ菌がいて、アミノ酸発酵をし、独特の味わいが産まれる。近年「くさや」は高価なものとなっている。
鮮魚として出回るのはわずか。鮮度が落ちやすいので生食などは産地周辺のみに限られる。
珍魚度 珍しい魚ではないが、丸のまま鮮魚での流通は非常に少ない。産地などで見つけるしかない。

水産基本情報

市場での評価 鮮魚としてはまったく知られていない。「くさや」、干物原料として使われるもの。
漁法 巻き網、定置網
主な産地 関東以南の太平洋側。

選び方・食べ方・その他

選び方

体側が青いもの。触って硬いもの。鰓が鮮紅色のもの。

味わい

旬は伊豆諸島に関しては春から初夏。海域によっては寒い時季にも脂ののった個体がいる。
鱗は小さく細かいが取りやすい。ぜんごも細く短い。皮は比較的強い。
透明感のある白身で血合いが大きく濃い。熱を通しても硬く締まらない。
クサヤモロの料理の方向性
マアジよりも血合いが大きく、水分が多いのがムロアジ属の特徴。同属のムロアジが鮮魚流通するのに対して、本種がほぼ加工されてしまうのは水分が多いため。非常に鮮度落ちが早い。ただし鮮度さえよければ煮ても焼いても、生で食べてもおいしい。

旬と脂ののり 旬は4月の後半から5月いっぱい、6月はじめまでだと思っている。夏になると産卵後急激に身の張りがなくなり、脂が消える。また脂がのっている方が鮮度は落ちにくい。

栄養

危険性など

食べ方・料理法・作り方

クサヤモロの料理・レシピ・食べ方/生食(刺身、酢洗い、づけ、みそたたき〈なめろう〉、焼き切り〈たたき〉)、揚げる(フライ、コロッケ、唐揚げ)、ソテー(ハンバーグ、ムニエル)、煮る(煮つけ、塩ゆで)、焼く(干もの)、汁(みそ汁、潮汁)
クサヤモロの刺身 時季にもよるが、伊豆諸島などでは初夏になると脂がのってっくる。この時季の刺身は魚類中でも最上級の味である。三枚に下ろして腹骨・中骨をとり皮を引き刺身にする。室温で表面がにじむくらいに脂がたっぷり。口に入れると口溶け感があり、甘く、青魚特有のうま味が豊かである。
クサヤモロの酢あらい 脂がイマイチのっていない個体で、身に張りがあるもの、うま味があるものは目先を変えて酢洗いにする。水洗いして三枚に下ろす、皮を引き、強い塩をして1時間程度寝かせる。刺身状に切り、酢でゆっくり洗って酢を切らないでまな板などの上に放置する。10分ほどしたら酢を拭き取り、ショウガのせん切りなどをからめる。
クサヤモロのみそたたき(なめろう) やや水分が多いために、単純に刺身にしても見た目も味もイマイチ。これをみそや青じそ、たまねぎ、ねぎ、みょうがと細かくたたいて、作るのが「みそたたき(なめろう)」だ、水分の多さの割りにうま味豊かで、血合いの酸味がいい役割をしてくれている。実にうまいと思う。
クサヤモロのづけ(茶漬け・ごま漬け・りゅうきゅう) 本種は鮮度落ちが非常に早い。下ろした当日食べきらなければならない。これを漬けにして、翌日まで保たせる。基本的に刺身にして、醤油・みりんの漬け地に翌朝までつけ込む。また脂のない個体などは刺身ではなく漬けにしてもいい。すりごまを合わせたり、香辛野菜を合わせて食べる。これを茶漬けにするのが九州のやり方だ。
クサヤモロの焼き切り(たたき) 三枚下ろしにして血合い骨を抜く。水分をよく拭き取り、皮目をバーナー(ガスの直火でも)であぶる。これを刺身状に切り、ねぎやしょうが、辛いトウガラシと合わせる。柑橘類は必須。
クサヤモロのフライ 水洗いして三枚に下ろす。血合い骨を抜き、塩コショウして、小麦粉をまぶし、溶き卵をくぐらせてパン粉をつけて揚げる。意外にもマアジに負けない味である。フライにしてまずい魚はないとはいうものの、味に深みがある。
クサヤモロのコロッケ 水洗いして二枚下ろしにする。これをジャガイモと一緒にハーブブイヨンでゆでる(塩水)でもいい。取り出して、岡上げ。冷えたら骨と皮を取り去る。ジャガイモと一緒につぶして牛乳(場合によっては煮汁)を加えて耳たぶくらいの軟らかさにする。小麦粉をまぶし、溶き卵をからめパン粉をつけて揚げる。
クサヤモロの天ぷら(薩摩揚げ) 水洗いして三枚に下ろす。腹骨・血合い骨を取り、皮を引いて細かく切り、まな板で皿に叩く。これをすり鉢ですり、酒・塩・砂糖・水多めの水溶き片栗粉・しょうがを加えてねる。団子状にして揚げる。スケトウダラやシログチなどのような弾力は望めないがうま味が強くてやたらにおいしい。
クサヤモロのあら煮(煮つけ) 旬のものでも、旬を外れた個体でも、煮つけは定番的な料理である。背の青い魚のうま味の豊かさが生きる。丸のままでもいいが、刺身したときのあらを使ってもいい。食べやすい大きさに切り、湯通しする。冷水に落として残った鱗やぬめりを流す。これを酒・砂糖・醤油・水で煮る。味つけはお好みで。
クサヤモロのポテトサラダ 水洗いして二枚に下ろす。これをハーブブイヨンと塩、水(水・塩・月桂樹の葉・白ワインでも)でゆでる。岡上げして冷やし骨と皮を除く、ジャガイモと一緒につぶし、ヨーグルト・ハチミツ・塩コショウ・ここではメースリーフのソースで好みの野菜と一緒に和える。
クサヤモロの開き干し クサヤモロは水洗いして開き、水分をよく拭き取り、強めの塩水につける。漬け込み時間は季節と大きさによって変わる。難しければ振り塩をして密閉して半日寝かせてから干してもいい。水分の多さが解消され、干すことでうま味性分も濃縮される。後味がよく美味。
クサヤモロのハンバーグ 旬の個体は刺身などいろいろ使えるが旬を外すと鮮度落ちも早くなり、身に水分が多くなる。このようなものは三枚に下ろして腹骨・血合い骨を取る。皮を引いてとんとんとたたく、脂が少なければバターかマヨネーズを加え、塩コショウ、ナツメッグを加えて、油で炒めた玉ねぎを加えてねる。これを焼き上げる。硬く締まるときには水、もしくはブイヨンを足すと柔らかくふっくら仕上がる。
クサヤモロのムニエル、焼肉のタレ 水洗いして三枚に下ろす。腹骨・血合い骨を取る。塩コショウして小麦粉をまぶして多めの油でソテーする。仕上がりに焼肉のタレをからめる。短時間のソテーだと硬く締まらず、ややうま味に欠けるところを市販の焼肉のタレで味付けする。
クサヤモロの潮汁 刺身などにしたときのあらを集めて置く。湯通しして冷水に落として残った鱗やぬめりを流す。水分をよくきり昆布だし(水でも)で煮だして酒・塩で味つけする。濃厚なだしが出る。うま味豊かで御馳走そのものである。
クサヤモロのみそ汁 水洗いして適当に切る。これを湯通しして冷水に落として残った鱗やぬめりを流す。これを水(昆布だしでも)から煮出してみそを溶く。実に濃厚な味わいの汁になるが、後口は比較的軽い。少しみそを多めにするとやたらとご飯に合う。

好んで食べる地域・名物料理

くさや を大量に消費していた地域が八王子である。その昔、織物の町として栄えていた頃、織り子(機織りする女性)のおかずとなっていた。(八王子市天野鮮魚店他)

加工品・名産品

干もの原料 日本各地で干物に加工されている。

青むろのくさや 東京都伊豆諸島、静岡県伊豆半島などで作られているもの。塩が貴重な諸島部で、干ものを作るときの塩水を繰り返し使う内に、クサヤ菌が増殖する。このクサヤ菌の増殖した塩水で味つけすると独特の臭いと味わいが生まれる。これが「くさや(臭魚で「や」は魚を表す語尾)」だ。臭みはあるものの、独特の風味があって非常に美味。水産加工品の研究家(主にかまぼこ)清水亘が『新説三珍味』のひとつとして挙げている。あとの2つの『新説三珍味』は滋賀県琵琶湖の「ふなずし」、富山県の「黒作り」。

釣り情報

歴史・ことわざなど

地方名・市場名

アオサギ
参考文献 場所和歌山県串本 
ムロ ムロアジ
参考『種子島の釣魚図鑑』(鏑木紘一 たましだ舎 2016年)、聞取 場所日本各地、東京都八丈島、神奈川県小田原市、熊本県熊本市、鹿児島県種子島 
ボウムロ
参考『伊豆・小笠原諸島の魚たち 改訂2版』(東京都水産試験場 2004) 場所東京都伊豆諸島 
オオムロ
サイズ / 時期大型 参考『伊豆・小笠原諸島の魚たち 改訂2版』(東京都水産試験場 2004) 場所東京都八丈島など 
ムロムロ
参考『伊豆・小笠原諸島の魚たち 改訂2版』(東京都水産試験場 2004) 場所東京都大島 
ナガムロ
サイズ / 時期大型 参考『伊豆・小笠原諸島の魚たち 改訂2版』(東京都水産試験場 2004) 場所東京都大島町 
シッカリ
参考『伊豆・小笠原諸島の魚たち 改訂2版』(東京都水産試験場 2004) 場所東京都神津 
シンカク
参考『伊豆・小笠原諸島の魚たち 改訂2版』(東京都水産試験場 2004) 場所東京都神津島 
ウク ウクグワ
参考文献 場所沖縄 
ユッル
参考『魚名からみる自然認識:沖縄・伊良部島の素潜り漁師の事例から』(高橋そよ 2014年03) 場所沖縄県伊良部島 
オームルー
参考『美ら海市場図鑑 知念市場の魚たち』(三浦信男 ぬにふぁ星 2012) 場所沖縄県南城市知念漁協 
アオド
参考静岡県水産・海洋技術研究所・伊豆分場 場所静岡県仁科 
シロムロ[白ムロ]
備考鮮魚店で 参考20190927 場所静岡県伊東市 
アオ
参考静岡県水産・海洋技術研究所・伊豆分場 場所静岡県稲取・妻良 
アオゾ
参考静岡県水産・海洋技術研究所・伊豆分場 場所静岡県西伊豆町田子 
シロウルメ
場所鹿児島県奄美大島 
アオムロ
場所東京都伊豆諸島・小笠原、高知県宿毛市田ノ浦すくも湾漁協 
ミズムロ ミヅムロ アヲムロ
参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 場所和歌山県 
ビークン ユッル オオシマナガユ オオシマナガユー
場所沖縄本島 
クサヤムロ アオモロ
参考文献より。