コウイカ

コウイカの形態写真一覧 (スワイプで別写真表示)
外套背長20cm前後。外套膜(身体の周り)を「えんぺら」と呼ぶ鰭が縁取っていて、鰭の基部に沿って白い線が走る。長い腕が獲物を捕らえるための触腕で、目の下に収納する穴があってしまっておくことができる。貝殻(甲)の先端には棘がある。[頭足類なので足が上を向いている方が正向き。外套長19cm・759g]
外套背長20cm前後。外套膜(身体の周り)を「えんぺら」と呼ぶ鰭が縁取っていて、鰭の基部に沿って白い線が走る。長い腕が獲物を捕らえるための触腕で、目の下に収納する穴があってしまっておくことができる。貝殻(甲)の先端には棘がある。[頭足類なので足が下は逆向き。外套長19cm・759g]
外套背長20cm前後。外套膜(身体の周り)を「えんぺら」と呼ぶ鰭が縁取っていて、鰭の基部に沿って白い線が走る。長い腕が獲物を捕らえるための触腕で、目の下に収納する穴があってしまっておくことができる。貝殻(甲)の先端には棘がある。[外套長19cm・759g]
外套背長20cm前後。外套膜(身体の周り)を「えんぺら」と呼ぶ鰭が縁取っていて、鰭の基部に沿って白い線が走る。長い腕が獲物を捕らえるための触腕で、目の下に収納する穴があってしまっておくことができる。貝殻(甲)の先端には棘がある。[片方の触腕を引き出したところ]
コウイカの甲、貝殻。後ろの先端に棘があるために西日本では「針烏賊」と呼ばれている。
外套背長20cm前後。外套膜(身体の周り)を「えんぺら」と呼ぶ鰭が縁取っている。長い腕が獲物を捕らえるための触腕で、目の下に収納する穴があってしまっておくことができる。貝殻(甲)の先端には棘がある。[新イカ 外套長95mm・110g前後]
外套背長20cm前後。外套膜(身体の周り)を「えんぺら」と呼ぶ鰭が縁取っている。長い腕が獲物を捕らえるための触腕で、目の下に収納する穴があってしまっておくことができる。貝殻(甲)の先端には棘がある。[新イカ 34g]
生きているとき外套背がざまざまな模様に変化、鰭の基部に白い線が出たり、明滅したり、消えたりする。
外套背に虎斑模様があり鰭の基部に白い線がくっきり見える。コウイカの特徴がよく出ている固体。コウイカモドキは模様・白い線がはっきりしていない。

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魚貝の物知り度 ★★★
知っていたら通人級
食べ物としての重要度 ★★★
一般的(流通量は普通)
味の評価度 ★★★★
非常に美味
分類
軟体動物門頭足綱鞘形亜綱十腕形上目コウイカ目コウイカ科コウイカ属Platysepia亜属
外国名
Cuttlefish
学名
Acanthosepion esculentum (Hoyle, 1885)
漢字・学名由来

漢字 甲烏賊 Kouika
由来・語源 貝殻(甲)を持つイカの意味。
甲烏賊(コウイカ)について
■ 貝殻(甲)を持つイカの意味。
■ 貝殻(甲)は貝殻の名残、浮きの役割をしている。
■ コウイカ(ハリイカ)類の鰭を一般に「えんぺら」と呼ぶ。
烏賊魚(ウゾクキヨ) 〈魚類(江海無鱗)〉で魚のひとつとされている。〈烏を食べるのを好み、いつも自ら水上に浮く。飛鳥はこれを見て死んでいると思い烏賊を啄みに舞い降りてくる。そこを巻き取って水中に引き込み食べてしまう。これで「烏賊(いか)」という。〉『和漢三才図会』(寺島良安 東洋文庫 平凡社 正徳2年 1712)
Sepia (Platysepia) esculenta Hoyle,1885→Acanthosepion esculentum (Hoyle, 1885)

地方名・市場名

概要

生息域

海水生。水深10-100m前後の砂泥地。
富山湾・外房以南、瀬戸内海、有明海、東シナ海。
朝鮮半島、中国大陸、南シナ海、インドシナ半島、台湾、フィリピン北部。

生態

■ 水深10メートルから100メートルの砂泥の底近くに棲息。
■ 早春から初夏に浅場に来て藻などに産卵、そして死んでしまう。
■ 孵化した子イカは浅場で成長。夏には「新いか」として利用されるまでに育つ。そして翌年春には成熟、産卵して死ぬ。寿命は1年。

基本情報

比較的温暖な海域で漁獲されるコウイカは国内でもっとも普通の貝殻(甲)を持ったイカである。関東ではスミイカ(墨烏賊)、西日本ではハリイカ(針烏賊)と呼ばれることが多く、すしネタとしても天ぷらネタとしても非常に重要なものだ。味がいいので高値で取引され、消費地ではほとんどが料理店などで利用される。
関東では墨にまみれた状態での入荷を好み、中部以西では海水できれいに洗って出荷と地域性が感じられた。古く関東では昔は墨まみれを好んだが、近年洗ったものでも値が変わらなくなっている。
東京では生まれて間もないピンポン球大の「新いか」を非常に珍重する。特に夏に鹿児島から入荷してくる走りのものなどは1キロあたり1万円以上は当たり前といった超高級なものとなっている。これが秋から冬になり、春から初夏にかけて盛期を迎え一年で寿命を終えるので、季節によって味が変わる。

水産基本情報

市場での評価/コウイカモドキと混同 夏から秋にかけては新イカが、秋になると大きくなって冬に入荷の盛期を迎える。新イカは東京をはじめ関東で非常に高値となり出始めはキロあたり40000円を超える。親の方も高値で安定。
漁法/コウイカモドキと混同 刺し網、カゴ漁、底曳網
主な産地/コウイカモドキと混同 瀬戸内海沿岸、三河湾、九州

関東周辺での荷/千葉県 特に東京湾沿岸では墨がついたまま出荷してくる。たくさん墨がついて真っ黒な状態をよしとする。
墨を洗い流す/西日本 瀬戸内海沿岸や長崎県佐世保市、長崎市、長崎市茂木では丸のまま出荷する場合には海水で墨を丁寧に洗いながす。近場への出荷は外套膜を開き、内臓を除き墨を海水でていねいに洗い流してしまう。
新イカ/鹿児島県 春に生まれたコウイカは、夏、秋に外套長5cm前後に育つ。この夏のイカが「新いか」である。一匹でせいぜい1かん、もっと小さなものになると2匹で1かんにしかならない。これが東京では珍重される。本来東京湾では秋のものだが、九州などからの入荷で夏のものとなっている。走りの時にはキロ当たり50000円前後する超高級品。一匹で1かんの握りになるサイズが喜ばれる。本来江戸前では初秋の味わいだったが、今では鹿児島県などのものが初夏から夏に多く入荷してくる

選び方・食べ方・その他

選び方

関東で揚がったものは墨(すみ)の中にあって、この墨の黒くて粘液質であるもの。また表側が褐色で白くないもの。変に重く感じるものは砂を飲んでいることがあるので避ける。

味わい

旬は秋から春で、漁の盛期は春。初秋までの新イカと以後の成イカでは味が違う。
墨をつぶさないように下ろす。
冬から初夏にかけての親は肉厚で、甘みが強い。
熱を通してもあまり硬くならない。

栄養

良質なタンパク質に富む。
タウリン(コレステロール低下作用、視力向上、肝機能強化作用がある)を多く含む。
イカスミには抗がん作用がある。
またイカスミには防腐効果も。

危険性など

食べ方・料理法・作り方

コウイカの料理法・レシピ・食べ方/生食(刺身、湯引き)、ソテー(中華炒め、アヒージョ)、揚げる(天ぷら)、焼く(たれ焼き、塩焼き、干もの)、煮る(野菜との煮もの、煮つけ、トマトソース煮、ゆでる)、パスタ他
成イカ
コウイカの刺身(スミイカの刺身) 新イカが持てはやされる関東ではあるが、真の意味でのコウイカの味は成イカになってから、だ。墨をつぶさないように甲、内臓を取り去る。できるだけ手早く汚れを取り、以後絶対に水で洗わないようにする。皮を向き切れ目を入れて刺身にする。ねっとりとして呈味成分からくる甘味が強い。
新イカ
新イカの刺身(コウイカ稚イカの刺身) 春に生まれたコウイカは、夏、秋に甲の長さ5センチ前後に育つ。この夏・秋のイカが「新いか」である。非常に高価だが、季節感を感じるものでもある。水洗いしてさっと湯に通して氷水にとり、水分をきっただけのもの。完全な生よりもうまい。
新イカ
新イカの湯引き 秋の新イカぎりぎりの外套長10cmを水洗いする。皮をていねいに剥き。沸騰した塩を加えた湯に冷水を半カップ入れて温度を下げた中にいれて2、3秒湯引き、氷水に摂る。水分をよくきり、刺身状に切る。あまり味のない新イカは湯引くと味が増し、食感もよくなる。
成イカ
コウイカのあぶり納豆和え
産卵期のものなど比較的安いのでいろいろ工夫して造るといい。ここでは水洗いして厚みのある皮を剥き、外套膜(胴の部分)の表側をあぶって薄く切り取る。これを納豆と和える。単にわさび醤油で食べてもいいが、納豆と和えると佳肴にもなる。
成イカ
コウイカのマリネ
成イカ
コウイカの中華炒め(スミイカの中華炒め) もっとも美味しい食べ方のひとつが炒めものだと思っている。ここでは塩味にしたが、しょうゆ(中国醤油)味にしてもいい。野菜はつぼみ菜を使ったがお好みで。ニンニク・ショウガ風味をつけた油でいためて野菜を加えて、海鮮味と塩を酒で合わせたもので味つけ、粒コショウを振る。
成イカ
コウイカのアヒージョ(スミイカのアヒージョ) 水洗いして適当に切る。墨を入れてもいいのかも。パンに多めの油を入れて塩味をつけニンニクを入れて、熱する。イカだけならたぎった油に入れて和えるだけでできあがり。和えなくてもソテーするだけでもいい。トマトなど野菜を使った場合、材料を入れて強火でもう一度熱する。ワインとパンに合う。
新イカ
新イカの天ぷら
成イカ
コウイカの天ぷら(スミイカの天ぷら) 江戸前天ぷらの代表的な種のひとつ。高温でできるだけ短時間で揚げるのがコツ。水洗いして皮を向く、表面に切れ目を入れて、水分をよくふきとり、小麦粉をまぶす。衣をつけて揚げる。衣の香ばしさに相反して中はほとんど生という感じがいちばんうまいと思う。揚げすぎると硬くなる。
成イカ
コウイカのげそ湯引き 本種はときに外套膜よりも腕がうまいと思う事がある。大型になると頭部と腕は別々の料理に出来るので、ここでは腕だけを使った。まず塩を加えてていねいに揉み洗い。流水で洗って水分をきる。これを湯の中で5〜10秒前後ゆでる。おか揚げして冷めたら食べやすい大きさに切る。わさび醤油で食べても、酢みそで食べても無類のうまさだ。
成イカ
コウイカのぬた(スミイカのぬた) げそを使ったが、どこを使ってもいいし、小さなものなら丸ごと使ってもいい。げそは塩をまぶしてぬめりを取り、塩水で硬くならない程度にゆでて氷水に落とす。水分をよくきり、時期の野菜などと辛子酢みそで和える。酒の肴として最高である。
成イカ
成イカ
コウイカのげそ、わた、卵の煮つけ
新イカ
コウイカの煮もの(新イカの煮もの) げそは野菜と煮て美味である。ここでは秋の小振りのもののげそと、これまた秋に出始めた土垂(サトイモ)を煮たもの。イカの甘さとサトイモの癒やし系の甘さがあいまってとてもおいしい。
成イカ
コウイカの網焼き(スミイカの網焼き) 刺身になる程度に鮮度のいいものを水洗いして表側だけの皮を剥く。酒・醤油に30分ほどつけて網の上で焼き上げる。仲間で火を通さないで、中は刺身という感じで火を通す。
中は生という状態なので柔らかく、イカらしいうま味と風味が豊かで、実に味わい深い。ここでは大型を使ったが小さいものは1尾丸ごと焼いてもうまい。

成イカ
コウイカの一夜干し(スミイカの一夜干し) 単に塩焼きにするよりも軽く干し上げて焼いた方がうまい。水洗いして左右に開く。少し塩辛い塩水に10〜15分(塩辛くてもいいなら長くする)つけて水分をよくきり、半日干し上げる。干すことでうま味が強くなり、イカの香りが強くなる。この鼻に抜けるイカの香りが実に魅力的だ。
新イカ
コウイカの煮つけ飯
新イカ
コウイカの墨汁

好んで食べる地域・名物料理

かき揚げ 江戸前天ぷらの天丼のかき揚げに使う。かき揚げには上と並があり、上ネタのひとつ。

加工品・名産品

干物が各地に見られるが絶品。
甲つきするめ コウイカ類の甲(貝殻)をつけたまま開き干しにしたもの。

ゆではりいか 「はりいか(コウイカ)」の内臓を取り去り、塩ゆでにしてもの。このままわさびしょうゆやしょうがしょうゆで食べてもいいし、煮つけやパスタ、サラダにしてもいい。[鮮魚 さわだ 徳島県勝浦郡勝浦町]

釣り情報

東京湾では本種の釣りが盛んである。寒い時期にシャクリ竿、もしくは比較的軽い竿を使い、テンヤという2本の引っ掛け針がついた道具にシャコの餌をつけて釣る。当たり年と釣れない年があり、また腕の差が釣果にでるなどある程度月謝が必要な釣りだ。近年、疑似餌での釣りも行われているという。これは古くは鹿児島での釣法。

歴史・ことわざなど

■ コウイカ(ハリイカ)類の鰭を一般に「えんぺら」と呼ぶ。
Sepia 属名の「Sepia」は絵の具のセピアをとったことによる。
歯磨き原料 甲は歯磨きの原料、薬用に利用されたことがある。
季語歳時記で春 俳句では春の季語・花烏賊(はないか)。
ことわざ 「いかの甲より年の功」ことわざ。『夢蛤 電子版』(大阪市全市博物館)
傷薬にする 佐藤垢石(群馬県群馬郡東村出身)「(ケガをして)先ず傷を石油で洗って、烏賊の甲羅を削ってその粉を薬としてなすったのであるが……」。『新釣り百科』(佐藤垢石、松崎明治 大泉書店)

地方名・市場名

シイイカ シイカ
サイズ / 時期新イカ 参考『鮓・鮨・すし すしの辞典』(吉野ます雄 旭屋出版) 場所東京都すしネタとして。 
ボタモチ[ぼた餅]
参考20190330/二宮定置 場所神奈川県小田原市・二宮町 
コブイカ
参考福畑敏光さん、聞取 場所高知県、長崎県平戸市度島 
シンイカ[新いか]
サイズ / 時期小イカ 備考関東周辺で初夏から秋にとれる当歳の小イカ。非常に高価で、若いイカという以上の意味をもつ。 場所東京都、千葉県、神奈川県、兵庫県明石など 
スミイカ[墨烏賊]
場所関東周辺 
ハリイカ[針いか]
備考貝殻(甲)の後端(普通一番上と思われる部分)に針状の突起があり、それが身体の後部から飛び出しているため。『和漢三才図会』(寺島良安 東洋文庫 平凡社 正徳2年 1712)にも「針烏賊」 場所大阪府、兵庫県、岡山県など西日本各地。 
マイカ
場所愛媛県八幡浜市、松山市 
モンゴイカ モンゴウイカ
備考「ハリイカ、コウイカ、コウイカ」ではわかりにくいので、この名を使う。 場所徳島県の山間部[鮮魚 さわだ 徳島県勝浦郡勝浦町]