イカの大きさについて
イカの大小はどこで見るのか
昔、釣り雑誌と関わっていたとき、たぶん読者の方から、「スミイカの11cmはありえないでしょう?」というメールをもらったことがある。その方が釣った東京湾のスミイカのサイズは総て30cm近いとして、写真も添付してあった。
それもそのはず、触腕をわざわざピンと伸ばして測っていたのだ。触腕は小魚などに狙いをつけて急激に突き出して吸いつき取るためのもの、例えて言えばウミンチュの水中銃のようなもの。このような特殊な腕まで加えるとイカの長さは、やたらに長くなる。
ときどき底曳き網などにシシイカという貝殻(甲)のあるイカが入るが、これなど第2腕(目のある方を正面に向け、いちばん前の小さな2本の第1腕の両脇の腕)が信じられないくらいに長い。
軟体類学者・頭足類(イカやタコ)の父といってもいい佐々木望(まどか 1883〜1927年)はこの長い腕を歌舞伎連獅子の髪の毛と見立てて「獅子烏賊」と名付けたのだと思っている。
これなど胴(刺身にする部分)の4倍の長さの足が生えていることになり、小さいイカなのに全長で測ると35cmくらいになる。見た目の大きさは全長では表せない。
イカの足は8本?
【横道に逸れるが、「イカなのに足(腕)が8本しかありません。新種ではありませんか?」というメールをもらったこともある。イカの足が10本というのは触腕も含めてだ。実はこの触腕は体に収納できるので見えないことが多い。それは単なるカミナリイカ(モンゴウイカ)だった。】
刺身にする部分の長さで測る
それでは、イカの長さはどのように測るのか? イカは足(腕)が目のある頭部についているが、その頭部の前方(進行方向)の刺身になる部分で胴にあたる部分を測るのである。この部分を外套膜(外套)といい、イカの大きさはこの外套膜だけの長さ(外套長/ML)で測る。写真はコウイカ(スミイカ)だが、外套長12cmである。