ボラ

ボラの形態写真一覧 (スワイプで別写真表示)
SL 50cm前後になる。体は細長い。側線がなく、体に5、6本の暗色の縦筋がある。頭部が平たく、口は小さく先端にある。目に脂瞼(脂肪の膜)がある。鱗は大きく硬い。脂瞼(しけん)という脂の皮膜が目に発達する。背鰭第1〜3棘の根元は接する。[イナサイズ 19.5cm SL・94g]
SL 50cm前後になる。体は細長い。側線がなく、体に5、6本の暗色の縦筋がある。頭部が平たく、口は小さく先端にある。目に脂瞼(脂肪の膜)がある。鱗は大きく硬い。脂瞼(しけん)という脂の皮膜が目に発達する。背鰭第1〜3棘の根元は接する。[ボラサイズ]
SL 50cm前後になる。体は細長い。側線がなく、体に5、6本の暗色の縦筋がある。頭部が平たく、口は小さく先端にある。目に脂瞼(脂肪の膜)がある。鱗は大きく硬い。脂瞼(しけん)という脂の皮膜が目に発達する。背鰭第1〜3棘の根元は接する。[トドサイズ 49cm SL・2.1kg]
SL 50cm前後になる。体は細長い。側線がなく、体に5、6本の暗色の縦筋がある。頭部が平たく、口は小さく先端にある。目に脂瞼(脂肪の膜)がある。鱗は大きく硬い。脂瞼(しけん)という脂の皮膜が目に発達する。背鰭第1〜3棘の根元は接する。[トドサイズ 49cm SL・1.6gg]
SL 50cm前後になる。体は細長い。側線がなく、体に5、6本の暗色の縦筋がある。頭部が平たく、口は小さく先端にある。目に脂瞼(脂肪の膜)がある。鱗は大きく硬い。脂瞼(しけん)という脂の皮膜が目に発達する。背鰭第1〜3棘の根元は接する。[トドサイズ 49cm SL・2.1kg]
SL 50cm前後になる。体は細長い。側線がなく、体に5、6本の暗色の縦筋がある。頭部が平たく、口は小さく先端にある。目に脂瞼(脂肪の膜)がある。鱗は大きく硬い。脂瞼(しけん)という脂の皮膜が目に発達する。背鰭第1〜3棘の根元は接する。[トドサイズ 49cm SL・2.1kg]
頭部が平たく、口は小さく先端にある。目に脂瞼(脂肪の膜)がある。

全関連コラム

珍魚度・珍しさ★★
少し努力すれば手に入る
魚貝の物知り度 ★★
これは常識
食べ物としての重要度 ★★
地域的、嗜好品的なもの
味の評価度 ★★★★
非常に美味
分類
顎口上目硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スメグマモルフ系ボラ亜系ボラ目ボラ科ボラ属
外国名
Flathead gray mullet, 밀치
学名
Mugil cephalus cephalus Linnaeus,1758
漢字・学名由来

漢字/鯔、母羅 Bora
由来・語源/鰡は本来は「し」で、それに俗名の「ぼら」を当てたもの。この漢字を「なよし」と読むこともある。
要するに明治になり、一般的に使われていた呼び名を標準和名として採用したものだ。
成長とともに呼び名が代わる出世魚。ボラは古くは成魚のことをさす呼び名。
〈鰡(ぼら・なよし・ツウ) 音は支点 子魚〔黒色のことを鰡(し)という。この魚は黒いのでそれで鰡という。その声が訛って子魚となったのである〕 〔和名は奈与之。俗に保良という〕 〔小さなものを江鮒(えぶな)という。また簀走りともいう〕〉、〈伊勢の人は名吉(なよし。本朝食鑑では「みょうきち」)と称する〉『和漢三才図会』(寺島良安 正徳3年/1713 東洋文庫 平凡社)
〈初生(できたち)をおぼこといひ、微しく育ちたるをゑふな…中略…二歳のものをいなといひ、三歳をすばしりといふ、…中略…四歳以上を、ぼらといふ、即鯔魚(しぎょ)なり、十歳以上を、とゞといふといえり〉『魚鑑』(武井周作天保辛卯 1831)
その他
■ 漢字「鯔」はイナとも読む。イナはボラの若魚、稚魚で田にも入ることからだろうか。
■ 「『角笛』に似ているところから、中国の胡語〈はら〉が転じて、わが国語〈ぼら〉になった」。
■ 「ほばら(太腹)が転じて」。
■「掘るの意味で、ボラは頭を泥に突っ込んで餌を食べるから」。
■ 古名に「クチメ」、「ツクラ」、「シクラ」。

Linnaeus
Carl von Linné(カール・フォン・リンネ 1707-1778 スウェーデン)。二名法を確立。
地方名・市場名

概要

生息域

沿岸の浅場、河川汽水域、淡水域。
オホーツク海をのぞく北海道〜九州南岸の日本海・東シナ海・太平洋沿岸、瀬戸内海、種子島・屋久島、琉球列島、伊豆諸島、小笠原諸島。
アムール川河口、サハリンのオホーツク海沿岸、千島列島南部の太平洋岸、朝鮮半島全沿岸、台湾北部・西部・南部、中国遼寧省〜海南島・トンキン湾、ベトナム沿岸。北緯51度〜南緯42度の全世界の海域(熱帯アフリカ西部〜モロッコ沿岸を除く。熱帯海域には少ない)

生態

3〜4歳で成熟。
低層に沈積した微生物や藻、原生動物、有機性のデトリタス(生物の死骸や排泄物が微粒状になったもの、微生物、藻類で多くが泥などに沈殿している)などを泥と一緒に食べている。
胃の内容物の出口である幽門部はそろばん玉の形をしていて、その壁は膨らんで硬く丈夫。胃の内容物を細かく咀嚼するのに適している。
産卵期は10月〜1月。秋になると暖流の影響のある海水温の高い場所に回遊、産卵する。
産卵場は黒潮や対馬暖流の影響を受ける外洋に面した海域。
産卵場は長崎県、三重県志摩半島、高知県須崎沖、薩南諸島。

基本情報

全世界の温帯域から熱帯域の汽水域、海水域に群れを作る。都内ビルが建ち並ぶなかを流れる河川や水路、堀などにもいる都会にいてすらも出合えるありふれた魚である。
出世魚としても有名で、生まれたばかりのハクから、産卵に向かうトドまで食用として親しまれている。
古くから国内では重要な食用魚で、日常的に盛んに食べられていた。また産後の肥立ちがいいなどとして経産婦に食べさせたり、高級魚で江戸時代などは贈答用などにも使われていた。
都市化や工業廃水の影響で臭みのある個体が多くなり、今や食用魚としての認知度は非常に低い。今やボラ本体は未利用魚の最たるものとなっている。
秋から冬にかけて南に産卵回遊する。この卵巣で作るのが「日本三大珍味」のひとつ唐墨。中国で作られる墨に似ているところからこの名があり、塩漬けしてじっくり干し上げたもの。世界各地で作られており、独特の風味があり、非常に高価である。越前の海胆、三河のこのわた(海鼠腸)とともに日本三大珍味のひとつだ。またボラの「へそ」と呼ばれる胃の幽門部も珍重されている。
利用法/ほとんどが鮮魚で、卵巣のみ唐墨に加工されている。鮮魚は丸魚と白子で流通する。白子がおいしいのでもっと煮る、焼く、揚げるなどで利用するといい。丸魚は、生食、焼く、煮る、ソテーするなどとても多様。近年、大きな湾などの水質がよくなり臭味がある個体が減っている。また外洋や磯周辺にいる個体は一度も臭味を持ったことがない。
珍魚度 日本各地で水揚げがあり、流通もするが、都市部で見かけることはめったにない。産地などで探すしかない。

水産基本情報

市場での評価 寒い時期に関東では千葉県などから入荷してくる。非常に安い。
卵巣は秋から新年にかけて入荷してくるが、非常に高価なもの。幽門部、白子も地域によっては単独で流通する。
漁法 刺し網
主な産地 長崎県、兵庫県、千葉県、愛知県、大阪府など

ボラの卵巣 秋の声を聞くと市場に出てくる。安くてもkgあたり7000円前後、高いと20000円以つく。これで自家製の鱲(唐墨、からすみ)を作る。
ボラの白子 精巣も卵巣と同じくらいに大きい。希に関東の市場にも入荷してくる。非常に美味だが卵巣と比べると遙かに安くて人気が薄い。
ボラの幽門 「うす(『本朝食鑑』に「臼子」)」、「へそ」ともいうとある。その形から「そろばん珠」とも。鮮度のいいものは刺身に、また焼き物などにもなる。全国的な流通は少なく、産地で消費されることが多い。卵巣などの出回るときに、味がいいのでもっと知られてもいい。

選び方・食べ方・その他

選び方

触ってしっかり張りのあるもの。また黒っぽいものの方がよく、白っぽくなったものは古い。

味わい

旬は秋から早春。大小での味の差は少ないが、大きいほど脂がのっている場合が多い。下ろすときには内臓に泥を噛んでいることがあるので注意が必要。
鱗は硬く大きいが取りやすい。皮は厚みがありしっかりしている。骨はやや硬め。
血合いが赤く、透明感のある白身。死んで時間が経つと白濁する。熱を通しても硬く締まらない。
あらなどからいいだしが出る。
幽門、白子も美味。卵巣は唐墨にしておいしい。
生息場所によっては泥臭い個体がある。

栄養

危険性など

食べ方・料理法・作り方

ボラの料理法/【本体】生食(洗い、刺身)、焼く(塩焼き、祐庵焼き、魚田)、煮つけ(みそ、しょうゆ)、汁(鍋物、みそ汁)、ソテー(ごま油焼き)、揚げる(唐揚げ) 【へそ】生食(たたき、刺身)、焼く(塩焼き)、煮る(煮もの)、炒め物 【白子】焼く(塩焼き)、煮る(ゆでる、煮つけ)、揚げる(揚げ出し、フライ)
トドの刺身(寒トドの刺身) 2月の鹿児島県錦江湾のトドの刺身である。きれいな水域で育った2㎏上のトドのうまさは食べてみないとわからないと思う。
水洗いして三枚に下ろす。腹骨・血合い骨をとり、皮を引き、刺身状に切る。
切りつけたそばから脂がにじみ出してくる。口に含むといきなりトロっとした感じがして、その後にボラならではのうま味がくる。強いうま味の割りに後味がいい。寒のトドでなければ味わいぬ味である。わさび醤油でもいいし、酢みそをつけて食べてもいい。

ボラの刺身(酢みそ) 酢みそで刺身を食べる地域は多い。ボラは泥臭いとか、クセがあるなどというわけのわからないことを言う人がいるが、実は淡泊で上品な味なのである。今回のものは神奈川県真鶴町岩定置で揚がった新鮮なもの。水洗いして三枚に下ろし、皮を引き、薄く造る。これを辛子の利いた酢みそと洗いねぎで食べる。食べ飽きぬ味である。
トドの湯引き(ボラの湯引き) 2月の脂がたっぷりのったトドを使って作った。水洗いして三枚に下ろす。血合い骨・腹骨を取り、腹の方を熱湯にくぐらせる。数秒で氷水落として水分をきり、皮目が落ち着いたら切りつける。寒のトドなので身に脂のたっぷりで口溶け感があるが、それ以上に湯引いた皮がおいしい。
ボラの洗い ボラは生で食べるのが、いちばんうまいと思っている。これは定番中の定番である洗い。できれば活魚をしめて、すぐに料理したい。水洗いして三枚に下ろす。腹骨・血合い骨を取り、薄くそぎ切りにし、流水で洗い、氷水でしめる。切り身のなかからアデノシン三リン酸が失われ、ぎゅっと縮む。手前はへその刺身だ。味がないはずなのに、味をしっかり感じる。食感のよさが涼しさを呼ぶ。
ボラのポキ 刺身や塩焼きなどにすると無駄な部分が出る。それを使って作る。身は細かく切り、ねぎ(写真は島にんにく)と醤油・ごま油をかけて和える。自由な料理なのでトマトを使ってもいいし、キウイなどを混ぜてもいい。ここでは冬の橙をふった。
ボラの蒸魚(清蒸) 本種の頭部にはあまり筋肉は着いていないが、その少ない身が矢鱈にうまいのである。また目と脂瞼なども他に類を見ない味だ。これを中華風の甘いタレ、野菜と絡めて食べる口福感は例えようもない。残ったタレやあらに湯をかけてスープに、また煮だしてラーメンにしてもいい。
ボラは水洗いして頭部を梨子割りにする。頭部の鱗を包丁で削り取るようにして取る。皿にねぎを台にして置き、頭部(兜)を乗せて10〜15分蒸す。蒸し上がりにタレをかけ、香りのあるネギなどを乗せて煙が出るくらいに熱した油をかける。

ボラの鍋 上質の白身で、いいだしが出るので鍋材料に最適。大きさによって下ごしらえは違ってくる。小さなものはぶつ切りにしてもいい。湯通しして冷水に落として残った鱗やぬめりを流す。これを昆布だしに酒、塩で味つけしたもので煮ながら食べる。野菜や豆腐など具はお好みで。
ボラの韓国風鍋 韓国にはだしを使った鍋がある。上品なだしに塩味の中で煮ながら食べると実に箸が進む。韓国の辛すぎない唐辛子が合う。水洗いして適当に切る。白子や胃袋などと一緒に湯通しして冷水に落として粗熱を取る。水分をよくきり、だし・塩・酒の中で煮ながら食べる。だしは煮干しだしでもカツオ節出しでもいい。
ボラの煮つけ 水洗いして筒切りにして水分をよくきる。湯通しして、冷水に落として残った鱗やぬめりを流す。しょうゆ、酒、ざらめ糖で煮つけて、仕上げにしょうがの搾り汁をたらしたもの。煮ても硬くならず、うま味が感じられて美味。
ボラのみそ煮 水洗いして筒切りに。湯通しし、冷水に落として残った鱗やぬめりを流す。水分をよくきり、酒、水を合わせて煮る。煮加減を見ながらみそ、みりん、砂糖を合わせたものをとき入れていく。仕上がりにしょうがの搾り汁をたらす。すりみそでなければすって、裏ごしするときれいにあがる。
ボラのみそ汁 あらを集めるか、小型のものはぶつ切りにする。湯通しして、冷水に落として残った鱗やぬめりを流す。これを水(酒を少量入れる)から煮出してみそをとき入れたもの。うま味豊かなだしがでて味わい深い。
ボラのごま油焼き 水洗いして三枚に下ろして血合い骨を抜き切り身にする。薄く小麦粉をまぶしてごま油でソテー。コチュジャン、酢、砂糖、煮きり酒、昆布だしを合わせたたれをかけたもの。淡泊な白身魚に向いている料理法だ。
鰡の塩焼きにオリーブオイル 外国の方の食べ方に習ったものである。水洗いして三枚に下ろし、塩をする。少し寝かせて焼き上げ、香りのあるパセリやハーブなどを散らして、香辛料(ここではチリパウダー)をかけにんにくを混ぜたオリーブオイルをたっぷりとかけて食べる。単に塩焼きにするよりも万人向きでパンにも合う。
ボラの塩焼き 水洗いして切り身にする。振り塩をして1時間以上置き、じっくりと焼き上げる。二枚に下ろして焼いてもいい。寒のボラは脂がのっていて、表面が揚げたようになる。皮がぱりっと香ばしく、身はとても豊潤である。焼くと魚魚したところが出る。それが苦手ならショウガの搾り汁を振る。しょうが酢をかけたり、柑橘類を振るなどするといい。
ボラのねぎみそ焼き 水洗いして三枚に下ろして血合い骨を抜き、切り身に。じっくりと素焼き。焼き上がりにみそ、砂糖、みりん、酒、卵黄を鍋で練ったたれをのせて焦げ目をつけたもの。魚臭さ自体がダメという人はこんな料理もいいのでは。ほぐしてみそと絡めながら食べる。
ボラの幽門(うす、へそ、そろばん珠)
ボラのうすのたたき うすはざっと水洗いして水分をよく拭き取る。表面を火で炙り、適宜に切ったもの。単に刺身で食べてもうまいが、軽く炙ることでよりうま味が増す。心地よい食感が楽しめるのもいい。
幽門(うす、へそ、そろばん珠)
ボラうすの塩焼き よく水洗いして、ちょうどそろばん珠のような形の穴の部分まで包丁を入れて切る。水分をよく切り、振り塩をして串に刺し、やや強火で焼き上げる。コリコリとした食感のなかに甘味があって非常に美味。
幽門(うす、へそ、そろばん珠)
ボラへその山椒煮 幽門は水洗いして中心の管状の部分まで包丁を入れて半分の厚みに切る。繊維に沿って包丁目をとんとんと入れておく。鍋に酒、みりん、砂糖を煮立たせておき、下ごしらえした幽門を入れてさっと煮て鍋止めする。仕上げに山椒を振る。
幽門(うす、へそ、そろばん珠)
ボラへその中華炒め 幽門は水洗いして管状の部分まで包丁を入れて、外側に細かく包丁目を入れる。厚みを半分に切ってもいい。中華鍋にしょうが、にんにくのみじん切りを入れて油をそそいで火をつけて香りづけする。ねぎを加えて軽く炒めて幽門を入れて炒め、塩と山椒(コショウでも)で味つけする。
精巣(白子)
ボラ白子の塩焼き 白子は水洗いして一対をふたつに切り分ける。振り塩をして1時間以上寝かせて焼き上げる。表面に焦げ目がついても中はクリーミーで甘味がある。臭味はなく、白ワインにも好相性だ。
精巣(白子)
ボラ白子のゆでポン酢 白子は適宜に切る。鍋に塩水をわかし、しょうがもしくはハッカクを入れて、白子をゆでる。冷水に落として水分を切る。丸のままでゆでて、ゆで上がりに切ってもいいが火を通すのに時間がかかる。これをポン酢で食べる。紅葉下ろし、一味唐辛子などお好みで。
精巣(白子)
ボラ白子の揚げ出し 白子はざっと水洗いする。適宜に切り、片栗粉、もしくは小麦粉をまぶして強火で短時間揚げる。これを器に盛り、だしをはる。だしはカツオ節出し、みりん、酒で加減。酢をきかせてもいい。
精巣(白子)
ボラ白子の煮つけ 水洗いして適宜に切る。これを一度湯通しして冷水に落とす。こうすると煮汁が濁らない。これを酒、しょうゆ、みりんの味つけで煮て鍋止めする。鍋止めしないで熱いうちに煮汁と一緒に食べてもうまい。煮汁に昆布をきかせてもいいし、だしの素を使ってもいい。

好んで食べる地域・名物料理

産後に食べる 島根県安来市広瀬町比田地区。産婦(出産直前、直後の女性)には「うす(臼)」のある魚を食べさせるとよいといって、鯔(ボラ)などを食べさせた。
ぼら雑炊 雑炊ではなく、ボラの炊き込みご飯。ボラをゆでて、ゆでた水で加減した米にほぐしたボラの身を混ぜて炊く。もしくはボラの身を入れてご飯を炊き込む方法がある。ねぎやにんじん、油揚げなどを入れる。[蟹江町]
ボラの水炊き(鍋) 寒い時期に魚屋に鍋の材料を買いに行くと、「はげかぼら」とよく言われた。魚は瀬戸内海か徳島県でも紀伊水道のものだったので、カワハギかボラが寒い時期を代表する鍋材料だった。[徳島県美馬郡貞光町南町(現つるぎ町)]

いなまんじゅう 愛知県海部郡蟹江町。いな(ボラの若魚)の内蔵と中骨を口から出し、代わりにあん(ぎんなん、しいたけ、麻の実、ゆずの入った練りみそ)を入れて焼き上げたもの。[いなまん 愛知県海部郡蟹江町]
ぼらちゃず 「ボラの茶漬け」のこと。みりん、酒、砂糖、しょうゆなどでタレを作る。切り身にして素焼きし、たれを塗り、また数回焼く。これをご飯にのせてお茶をそそぐ。[石川県穴水町、能登町]『聞き書 石川の食事』(農文協)
ぼらの色づけ ボラの照り焼き。三枚に下ろして5〜6等分したものを素焼き、たれを塗りながら焼き上げる。たれはしょうゆ、砂糖、酒、甘酒などで作る。この「色づけ」、「色付け焼」は江戸時代から作られていたもので、言語とともに石川県に残ったものと思われる。[石川県金沢市]『聞き書 石川の食事』(農文協)
ぼら飯 ボラを水洗い。適宜に切り、しょうゆに漬け込んでご飯と炊き込んだもの。野菜は里いも、にんじん、ごぼうなど。ご飯を炊くときに中骨の部分を入れておくと味がいい。味つけは漬け込んだしょうゆだけでもいいが、酒を加えた方がうまい。[香川県東部『聞き書 香川の食事』(農文協)]
ぼらと大根のだいだい酢のなます(ぼらのなます) ボラを三枚に下ろして薄き切り、塩をする。大根、にんじんはせん切りにして合わせて塩をしておく。塩をしたボラ、大根、にんじんを洗い、ほどよい塩加減にして橙(だいだい)の搾り汁で和える。砂糖を加えると酸味が抑えられて美味しい。[香川県東部『聞き書 香川の食事』(農文協)]

加工品・名産品


唐墨(からすみ)三年もの 寝かせることで塩の角がとれて、渋みがむしろ甘味とも深みともなって限りなく奥深い味わい。間違いなく「からすみ」のなかの最高峰のひとつ。[長宗商店 三重県熊野市]

台湾の唐墨(からすみ) 卵巣を塩漬けして、じっくり干し上げたもの。脂からくる独特の風味があり、旨みが濃厚。少しずつ切り取って微かにあぶって食べる。台湾、イタリアなど世界各地で作られている。国内ではボラが獲れる地域ではどこでも作られているが、長崎県が古くから有名である。肥前野母(長崎県長崎市野母)の唐墨、越前の雲丹、三河(知多とも)の「このわた」とともに日本三大珍味とされる。[写真は台湾高雄市]
生唐墨(なまからすみ) 卵巣の塩漬け。三重県尾鷲市などで作られるもの。思ったよりもあっさりした中に、ボラの卵巣の風味が生きていて、非常に美味。名品だと思う。パスタやおこわに加えるなど用途が非常に広い。[はし佐商店 三重県尾鷲市]
ボラみりん 古くから珍重されてきた魚ではあるが、今日、加工品は意外なくらいに少ない。そんなボラの干ものを作り続けているのが『北村商店』である。淡泊な味わいのボラに素朴な甘さをつけ、醤油の風味が程よく感じられる。ご飯のおかずにも酒の肴にもなる。[北村商店 三重県尾鷲市]
ボラのへその干もの 三重県尾鷲市ではからすみ作りが盛んである。それだけ大型のボラがふんだんにとれるのだが、そのボラの幽門(へそ、うす)を塩干しにしたもの。焼いてもいいが煩わしいので、テフロンフライパンなどでから煎りするといい。コショウが合う。[北村商店 三重県尾鷲市]

釣り情報

内湾ではギャング針に赤い浮子で狙う。時にコマセを使うこともあるが、赤い大きな浮子に好奇心旺盛なボラが引き寄せられ、これを引っかけて釣る。

歴史・ことわざなど

出世魚 ハク(3cm前後)、スバシリ(10cmくらいまで)、オボコ(5〜18cm)、イナ(10〜25cm)、ボラ(30〜40cm)、トド(40cmもしくは50cm以上)。
寒鯔 関東の陸釣り(防波堤などからの釣り)をする人の間で「寒鯔(かんぼら)」という言葉がある。
うす(臼)のある魚 〈産婦にはうす(臼)のある魚を食べさせるとよいといって、鯔(ぼら)などを食べさせた。また乳がよく出るようにといって鯉を食べさせるふうもある。〉。現島根県安来市広瀬町比田。『能義奥の民俗』(畑伝之助 島根県文化財愛護協会 1967)
歳時記、俳句季語では「秋」。
いなせ 一説に〈勇み肌で、粋な若者のこと。またその様子。威勢よくさっぱりした気っ風の若者のこと。魚河岸の若者が、ボラの若魚であるイナの背のように髪を結んだ〉ことから。
江戸前の魚 〈東都(えど) 佃洋(おき)、すなわち其処なり、あじわひも、泥臭なくして、甚よし、只いなのみにあらず、諸(もろもろの) 魚神奈川沖より、こなたに生きるもの、所謂江戸前と称て、賞味せぬものぞなき〉。『魚鑑』(武井周作 天保辛卯 1831)
養殖 アフリカ、イスラエル、東南アジアでは重要な養殖魚。
鸚鵡籠中記
吸物鯔など 婚礼の膳や引き出物に。「塩鰡弐本」。夕食に「鰡焼物」。元禄6年4月24日 『鸚鵡籠中記』(朝日重章著 塚本学編注 岩波文庫)
すばしり打ち(魚へんに走る) 汽水域でボラの幼魚である「すばしり」の投網打ちにしばしば出掛けている。元禄7年閏5月27日 『鸚鵡籠中記』(朝日重章著 塚本学編注 岩波文庫)
吸物 赤みそ へそ 「今日御慶帯を結ぶ。懐胎五月」。祝いの膳で出る。赤みそ仕立ての吸物にボラのへそという意味らしい。元禄7年9月26日 『鸚鵡籠中記』(朝日重章著 塚本学編注 岩波文庫)
七夜の祝儀 産後七日目の祝いの膳に「なよし指身(さしみ)」、祝いに「大鰡二」。(元禄8年3月16日)、他にも「魚へんに走(すばしり)の川の吸物」(元禄9年9月17日) 『鸚鵡籠中記』(朝日重章著 塚本学編注 岩波文庫)
滝沢馬琴(曲亭馬琴)
鯔五本 馬琴の孫、太郎などの祝儀に、赤飯、鰹節などとともに、鯔五本を送る。
鯔開き 嘉永元年(1948)八月、〈赤雑毛の女猫を持っていって渡した。 鯔一尾をそえて渡した。〉
その他
鯔色付け焼 小石川の御家人、小野家の忠四郎は幕臣舘野家に養子に行く。小野家からなにくれとなく援助。田安家の御近習番である勤め先に〈鯔色付け焼、鮑フクラ煮、……〉などを差し入れている。『小石川御家人物語』(氏家幹人 朝日新聞社 169)
ぼらの刺身 紀州和歌山藩の衣紋方(衣冠装束などを整える役目)であった酒井伴四郎はしばしば装束の稽古に三井家(江戸)に出向いている。装束の稽古のあとに料理を振る舞われているが、万延元年十一月二十四日(1860)には、「ぼらの刺身」が出てくる。『紀州藩士 酒井伴四郎関係文書』(小野田一幸 髙久智広 清文堂)
鯔開き 滝沢馬琴の日記から暮らしに関するものを考察した『馬琴一家の江戸暮らし』高牧實(中公新書)に【鯔開き】というのがある。贈答などに使うくらいなので高価なものと思われる。単に塩をして作ってみた。塩加減は保存も考えて強め、干し加減も強めにした。臭味などはまったくなくとても味わい深い。

地方名・市場名

ウス[臼]
部位幽門部 参考聞取 場所一般に。 
デンブク
サイズ / 時期若い個体 参考『木曽川の魚 河川魚相生態学・中下流篇』(丹羽彌 大衆書房 1967) 場所三重県桑名市伊曽島 
エブナ
備考紀伊續風土記。〈ボラ、幼者をイナ(紀州各地)、紀伊續風土記には一年生をエブナ、至って小なるをスバシリとある。〉 参考文献、『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 場所三重県西部・和歌山県、長崎県西海、熊本 
クロメゴ
サイズ / 時期若魚の小さなもの 備考セスジボラとの混称。 参考佐賀県鹿島市 場所佐賀県鹿島市 
アシノミ
参考文献 場所兵庫県播磨 
イナコ
参考文献 場所千葉県銚子 
イセシロメ
参考文献 場所富山県氷見 
カンヅカ カンズカ
サイズ / 時期30cm前後 参考文献 場所山口県長門・長州(萩のことか) 
オボロ
参考文献 場所岐阜 
デンボコ
サイズ / 時期若い個体 参考『木曽川の魚 河川魚相生態学・中下流篇』(丹羽彌 大衆書房 1967) 場所岐阜県海津市海津町 
カワボラ
参考文献 場所岐阜県美濃地方 
イツサイ イッサイ
サイズ / 時期幼魚 参考文献 場所愛知県豊橋 
ハク
サイズ / 時期稚魚 参考文献、『木曽川の魚 河川魚相生態学・中下流篇』(丹羽彌 大衆書房 1967) 場所愛知県豊橋、木曽川河口域 
アマボラ
参考文献 場所新潟県越後 
エビナゴ
参考文献 場所有明海周辺 
イナゴ
参考『木曽川の魚 河川魚相生態学・中下流篇』(丹羽彌 大衆書房 1967) 場所木曽川河口域 
イナッコ
サイズ / 時期10cm前後 参考文献 場所東京 
オボコ
サイズ / 時期幼魚 参考文献 場所東京、静岡県浜名湖、岐阜県 
ボラ
参考『種子島の釣魚図鑑』(鏑木紘一 たましだ舎 2016年) 場所東京都、神奈川県など日本各地、鹿児島県種子島 
イナ
サイズ / 時期幼魚 参考文献 場所東北地方、千葉県、東京、高知、三重県西部・和歌山県、広島県、兵庫県明石など 
イセゴイ
参考文献 場所石川県河北潟 
オオシママワリ
参考文献 場所石川県邑知潟 
エフナ
サイズ / 時期中型 参考文献 場所長崎県西海 
ソロバンダマ[そろばん玉]
部位幽門部 参考聞取 場所関東周辺、一般に 
キララ
サイズ / 時期2cm前後 参考文献 場所静岡県浜名湖 
イキナゴ
サイズ / 時期6cm以上幼魚 参考文献 場所高知県 
オオボラ
サイズ / 時期超大型 参考文献 場所高知県 
カネウチボラ
参考文献 場所鹿児島 
エビナ
サイズ / 時期幼魚 参考『種子島の釣魚図鑑』(鏑木紘一 たましだ舎 2016年) 場所鹿児島県種子島 
イセゴイ[伊勢鯉]
参考『勢陽五鈴遺響』(安岡親毅 1833) 場所三重県伊勢市(旧伊勢地方)、石川県河北潟 
クロメ[黒目]
備考メナダをアカメ(赤目)という。 場所佐賀県鹿島市 
シロメ
場所石川県七尾市七尾魚市場 
ミョウギチ ナヨシ
場所三重県尾鷲市(岩田昭人) 
ヘソ
部位幽門部 場所三重県尾鷲市 
ウス
部位幽門部 場所徳島県徳島市 
カラスミボラ
サイズ / 時期産卵期 参考文献 
ギンコ キンビシコ グイナ クロメ クロメゴ ケラナゴ コイナ コチヨボ コッテボラ コッテブラ コッブラ コブラ サクシ サンザイ シゴイ シバ シバシリ シママワリ シュクチ シロメ シロメボラ シンコ スクチ スバ スボオ スバコ セイゴ チクラ ヂゴイ チョボ ツクラ ツボ ヅボ ツボウ ツボオ ヅボオ テコロボ デコロボ トオザイ トオリボラ トド ナイシ ナタネボラ ナヨシ ナンシ ニサイ ノボコ バイ ババ ヒカリコ ブラ ボラコマクチ ミョウギチ ミョウゲメ ミョウキチ ミョギチ メウギチ メジロ メジロボラ ヤチミコ ヤチミゴ
参考文献 
ソロバンダマ[そろばん珠]
部位幽門部 備考形から。