アイナメ

アイナメの形態写真一覧 (スワイプで別写真表示)
SL45cm前後になる。紡錘形でやや細長い。頬と鰓蓋の大部分に鱗がある。背鰭は1つで中央部に切れ込みがある。側線は5本。尾鰭はまっすぐ。
SL45cm前後になる。紡錘形でやや細長い。頬と鰓蓋の大部分に鱗がある。背鰭は1つで中央部に切れ込みがある。側線は5本。尾鰭はまっすぐ。[宮城県唐桑半島東岸]
SL45cm前後になる。紡錘形でやや細長い。頬と鰓蓋の大部分に鱗がある。背鰭は1つで中央部に切れ込みがある。側線は5本。尾鰭はまっすぐ。[上が産卵期を迎えた雄で、これを関東では「わたり」と言う。下が雌。12月、函館]
頬と鰓蓋の大部分に鱗がある。

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珍魚度・珍しさ★★
少し努力すれば手に入る
魚貝の物知り度 ★★★
知っていたら通人級
食べ物としての重要度 ★★★
一般的(流通量は普通)
味の評価度 ★★★★
非常に美味
分類
顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目カジカ亜目アイナメ科アイナメ属
外国名
Green ling
学名
Hexagrammos otakii Jordan and Starks, 1895
漢字・学名由来

漢字 鮎並、鮎魚女、愛魚女、相嘗 Standard Japanese name / Ainame
由来・語源 東京都での呼び名を標準和名としたもの。
鮎魚女 形が鮎に似ていることから「鮎魚女」とした。『本朝食鑑』(人見必大 島田勇雄注釈 東洋文庫 平凡社 元禄10年/1697)
鮎並 〈俗に鮎並の字を用ゆ〉『魚鑑』(武井周作 天保辛卯 1831)
〈あいなめ(したくぢめ) 東京市場(注/日本橋魚河岸だと考える)〉『帝国博物館天産部魚類標本目録.帝国博物館』(石川千代松・松浦歓一郎 1897)
〈東京附近では一般にアイナメ〉。(田中茂穂)。
鮎のように縄張りを持つため。「鮎並」が転訛したもの。
大言海 アユに似て滑らかであるから。
愛な魚 〈愛〉は「愛でること・賞味すること」、〈な〉は「の」、「め」は魚名語尾で「賞味すべき美味な魚」の意味。
小種名「otakii」は明治時代の魚類学者、大瀧圭之介に献名。

Jordan
David Starr Jordan〈デイビッド・スター・ジョーダン(ジョルダン) 1851-1931 アメリカ〉。魚類学者。日本の魚類学の創始者とされる田中茂穂とスナイダーとの共著『日本魚類目録』を出版。
otakii
大瀧圭之介。明治時代の魚類学者。スタンフォード大学で学士に。『日本魚類圖説』(明治36-42 1903-1909)を表す。
地方名・市場名

概要

生息域

海水魚。浅い岩礁域。
北海道全沿岸、青森県〜九州南岸の日本海・東シナ海沿岸[東シナ海では鹿児島県北部だけにいる可能性が高い]、青森県〜九州南岸[鹿児島県ではほとんど水揚げがない]の大平洋沿岸、瀬戸内海。四国徳島では南部など比較的暖流の影響を受ける地域にはいない。高知県でも同様かも。
黄海・渤海、浙江省、朝鮮半島全沿岸、済州島、ピーター大帝湾、沿海州北部、サハリン南部。

生態

産卵期は関東では晩秋から冬。寒い北海道では9月から11月と早い。
産卵期にはオスが縄張りを持ち、メスに求愛運動をし、岩礁域の窪みなど潮通しのよい場所(縄張り)に産卵させ、産卵後はオスが卵を保護する。この縄張りを持つ産卵期にオスは婚姻色の鮮やかな黄色になる。卵を守る習性があるのに、逆に卵を好んで食べる。
雑食、夜行性で岩礁域などに縄張りを持っている。

基本情報

北海道から九州までの浅場にいる魚である。東北などでシジュウというのは「始終いる(とれる)」からだと教わったことがある。内湾に多く、古くから国内の大都市でも馴染み深い白身魚である。漁獲量が少ない割りに知名度が高いのは、消費地に近い場所でとれ、とても味がいいからだ。
基本的に煮つけなどになる魚だが、近年生で食べることが当たり前になっている。野締めが多かったのが活け締め、活魚での入荷量が増えている。
野締めの値段はやや高い程度だが、活け締めは高級魚、活魚は超高級魚といっても過言ではない。
珍魚度 多少季節によって多い少ないはあるものの安定した入荷してくる。比較的手に入れやすい魚だ。ただ一般的な人には知名度が低く消費地のスーパーなどにはあまり並ばない。

水産基本情報

市場での評価 量的にはあまり多くない。活け、活け締めは高く、野締め(漁のときに死んだもの)は安い。また旬である晩春、夏に高値になるのも特徴的だ。
漁法 延縄(はえなわ 釣り)、刺し網、カゴ漁(アイナメカゴ)
産地 関東には北海道常磐(茨城)、東北(福島)などから入荷を見る。

選び方・食べ方・その他

選び方

白身魚。皮目に味がある。
活けは死後硬直まえのまだ柔らかいものがいい。
また活け締めものも、あれば死後硬直する前の軟らかいものを選ぶ。
鰓は鮮やかに赤いもの。目の澄んだものがいい。

味わい

旬は夏から秋。産卵個体も産卵後すぐに味が回復するのだと考えている。
鱗は小さく、鱗引きではなく、カナブラシなどの方が取りやすい。皮は厚みがあって強い。骨は柔らかい。
白身でクセのない上品な味わい。小骨がなく、淡泊ななかにも旨みがある。皮には旨み、脂が多い。

婚姻色の出た雄 黄色い固体はまずいという人にあったことがある。本当だろうか? 写真は生殖巣が見当たらず、産卵後のようだが、そこそこに脂があり、美味であった。秋から冬にかけてよしあしの見極めの難しい魚なのかも知れない。

栄養

高タンパク低脂肪で低カロリーです。
カルシウムと、その吸収を高めるビタミンDが豊富です。骨や歯を丈夫にし、骨粗鬆症を防止してくれます。
ビタミンB1、ビタミンB2が豊富です。
ビタミンB1は糖質の消費を活発にして肥満を防止します。ただし熱に弱いので、生(刺身)で食べるか、加熱が短時間の料理法で効率的に摂取できます。
ビタミンB2は脂肪の消費を活発にし肥満を防止、肌や髪の毛、爪を綺麗にしてくれます。
またビタミンB1、B2は水に溶けやすいので、加熱する場合は〝煮汁ごと食べる料理法〟にするのがベスト。中でも、お吸い物は、加熱時間が短く、汁も美味しく飲めるのでアイナメにぴったりの料理法と言えます。

危険性など

食べ方・料理法・作り方

アイナメの料理・レシピ・食べ方/生食(刺身、焼霜造り)、焼く(魚田、漬け魚)、煮る(鍋、煮つけ、落とし)、汁(みそ汁、すまし汁、潮汁)、揚げる(幼魚/唐揚げ、天ぷら 成魚/唐揚げなど) アイナメ真子料理法/煮る(煮つけ)、づけ
アイナメの刺身 鮮度が落ちやすいので野締めは避けたい。三枚に下ろして皮を引き、単純に刺身にしたもの。これは2kg弱を福島県郡山市にある郡山水産が血抜きして送って来てくれたもの。いちばん脂ののった初夏の個体で、血抜き3日くらいまではあっさりしすぎているが、4日目からうま味がぐんと増してきた。うま味が豊かで脂に甘味がある。

アイナメの焼霜造り 全長30cmほどのものを水洗いして三枚に下ろす。血合い骨を抜いて皮目をあぶる。これを刺身状に切る。ねぎ、みょうがなどをのせてポン酢で食べてもいいし、わさびしょうゆで食べてもいい。
アイナメの蕗の薹みそ みそとの相性もいい。季節の山菜・野菜などの加減みそをつけて焼き上げたい。水洗いして三枚に下ろす。腹骨をすき、水分をよく紙などに包んでとる。身側、中央に縦に切れ目を入れて素焼きにする。7分通り焼けたら蕗の薹みそ(油で蕗の薹を炒め、みそ・みりん・砂糖を合わせて練り上げたもの)を乗せて焼き上げる。身にみそをからめながら食べる。
アイナメの木の芽焼き 中型のアイナメを水洗いし、三枚に下ろして中骨側から切れ目を入れる。ていねいに水分をとり、じっくりと焼き上げる。8分通り火が通ったらみりん・しょうゆを合わせたたれを塗りながら仕上げる。仕上げに山椒の葉を刻んで散らす。上品な白身ならではの料理で、アイナメなど最たるもの。
アイナメの木の幽庵焼き 中型を水洗いして三枚に下ろし、酒・みりん・しょうゆ(柚子や山椒、唐辛子の風味をつけてもいい)の地に1日つけ込んだもの。焦げないようにていねいに焼き上げる。アイナメはしょうゆやみそとの相性がよく、層状効果を感じさせるうまさ。
アイナメのちり鍋 水洗いして食べやすい大きさにきって鍋に仕立てたもの。鍋の地は昆布だしに酒塩味。しょうゆを加えてもいい。アイナメの切り身は一度湯に通して冷水に落として残った鱗やぬめりを流している。好みの火の通し加減で食べる。ポン酢や柑橘類としょうゆで食べるといい。アイナメの白身のよさを堪能できる。
アイナメの煮つけ 中型のアイナメを鍋に入る大きさに切って煮上げたもの。アイナメはここでは二等分して湯にくぐらせて残った鱗やぬめりを流してある。酒・みりん・しょうゆで味つけしたが、酒・塩、酒・砂糖・しょうゆで味つけしてもいい。上品な白身なのであまり強く煮つけないで、煮汁をからませながら食べる。
アイナメの落とし 脂ののったものを三枚に下ろして、血合い骨はそのままに中骨の方から薄く骨切りをする。これを塩を落とした湯に一瞬くぐらせて氷水であら熱を取る。少し温かい状態でもいい。これを梅肉しょうゆでというのが夏らしい味。
アイナメのすまし汁 こぶだしをとり、薄く切れめを入れたアイナメの身をすまし汁の具にしたもの。脂のあるアイナメの身からは上品なうま味が出て、昆布だしと相まって実に味わい深い出しになる。昆布だしに直接身を落としたがあまり濁らなかった。
アイナメの木のみそ汁 小振りのものを水洗いする。これを器に入る大きさに切る。水分をよくきり、水から煮出してみそをとき、少しまた煮る。みそのせいかアイナメの身がしごく柔らかくふんわりとして甘い。うま味豊かな汁と一緒に味わう煮ものといった感じ。徳島県ではこのように魚の姿が感じられる大きさでみそ汁を作るが、とてもおいしい。
アイナメのエスカベーシュ 兵庫県明石市など瀬戸内海では春にアイナメの稚魚がとれ、徐々に成長する。この小指程度の大きさのものを唐揚げにして、ワインビネガー・砂糖・少量の白ワイン・バーブブイヨン(酸味を加減する)の地につけ込んだもの。野菜は玉ねぎやにんじん、セロリなどの香りのあるものを。骨が柔らかい若い個体はうま味豊かで食べやすい。
アイナメの唐揚げ 春に瀬戸内海で揚がるアブラジャコ(アイナメの若魚)を開いて唐揚げにしたもの。ここでは市販のソース(ドレッシング)をかけた。小振りのアイナメは骨が柔らかく、皮がさくっと香ばしく揚がり、スナック菓子の感覚で楽しめる。
アイナメの天ぷら 明石産アブラジャコ(アイナメの幼魚)を天ぷら用に開いて、水分をよくとる。小麦粉をまぶして衣をつけて短時間高温で揚げる。皮目が香ばしく独特の風味が生きている。身はほどよくしっとりして甘味があって非常にうまい。
アイナメの南蛮漬け 中型を三枚に下ろして中骨の方から薄く切れ込みを入れる。これに片栗粉をまぶしてかりっと香ばしく揚げる。揚げたてを三杯酢に漬け込む。三杯酢はしょうゆ、煮きりみりん(砂糖)、酢を合わせたもの。野菜は玉ねぎやピーマン、にんじんなどの香りのある野菜。

好んで食べる地域・名物料理

全国的に煮つけ、塩焼き、刺身などで盛んに食べられている。
ねうのたたき・アイナメのたたき 三陸ではみそと魚の身をたたいたものを、「みそたたき」、「たたき」という。
ウミタナゴやマルタ(ウグイ)など様々な魚で作られる。アイナメは水洗いして三枚に下ろして腹骨・血合い骨を取り、皮を引く。にんにく、ねぎ、みそと一緒にたたく。
マアジなどの背の青い魚よりもあっさりしている。日常的に食卓に上らせても飽きの来ない味である。[『農文協 聞き書 宮城の食事』・『農文協 聞き書 福島の食』(農文協)]

加工品・名産品

加工品はほとんどない

釣り情報

東京湾のブラクリによるアイナメ釣りは最高に面白い。ブラクリという軽い重りに短いヒモ1本に針がついているだけ。餌はアオイソメをつけ、湾内の岩場やテトラまわりの浅い場所を探るように釣る。単純な仕掛けだけに引き味はすばらしく、病み付きになる可能性大。

歴史・ことわざなど


煮つけ魚 〈比目魚、鰈、鮎並、鰺、鱈、鯡、鮫、生節等は皆煮つけで、焼くのは蒸し鰈、魴鮄、鰯、飛び魚くらいであたが、煮肴は私は嫌いであった〉『幼少時代』(谷崎潤一郎 岩波文庫 初版は文藝春秋社1957)

地方名・市場名

モマ
参考丹後地方で使われている魚名方言集 場所京都府京丹後市丹後町間人 
ヤスリ
備考クジメとともに。 参考藤田晴大さん、文献、聞取 場所佐賀県、長崎県大村湾 
シジウ
参考文献 場所兵庫県但馬 
カクゾウ
参考文献 場所兵庫県淡路 
スボコ
参考文献 場所兵庫県淡路島 
クロテン クロアイ
参考文献 場所兵庫県美方郡新温泉町 
トトロ
サイズ / 時期大型 参考文献 場所兵庫県高砂 
トロロ
参考文献 場所兵庫県高砂市 
アブラッコ[油子]
参考松宝丸 場所北海道、青森県下北、秋田県男鹿 
タボ
参考文献 場所千葉県木更津 
エエナア
参考文献 場所千葉県銚子 
アブラウオ
参考文献 場所和歌山県、三重県西部 
メントリ コツクリ
参考文献 場所大阪府 
スイ
参考文献 場所宮城県松島 
ネウ[根魚]
参考聞取、福島の海産動物方言 場所宮城県気仙沼市・石巻市、福島県相馬 
モイオ
参考文献 場所富山県 
ホツケンジュウ
参考文献 場所富山県新湊・四方 
ホッケ
参考文献 場所富山県氷見・魚津、東京 
マンサ
参考文献 場所富山県生地 
イジュウハチメ
参考文献 場所富山県高岡 
モウオ
参考文献 場所山口県下関 
モツ
参考文献 場所島根県松江・大社、山口県萩 
モアブラメ
参考文献 場所愛媛県三津 
クジメ
参考文献 場所東京、神奈川県子安 
シタクヂメ シタクジメ
参考『帝国博物館天産部魚類標本目録.帝国博物館』(石川千代松・松浦歓一郎 1897) 場所東京都日本橋魚市場(東京市場) 
モチウオ
参考文献 場所熊本県八代 
モロコシ
参考文献 場所神奈川県横浜 
シンゾウ
参考文献 場所福井県鷲巣 
エナイ
参考文献 場所福島県・茨城県常磐 
アイナ
参考文献 場所福島県全域、茨城県常磐地方 
アイナメ
参考文献 場所福島県相馬市・小名浜など全域、東京、神奈川県、有明海 
シンジョウ
参考文献 場所秋田県象潟、富山県氷見市藪田浦漁業協同組合、福井県三国 
アアナ
参考福島の海産動物方言 場所茨城県大洗・那珂湊 
エエナメ
参考福島の海産動物方言 場所茨城県平磯 
エイナ
参考文献 場所茨城県水戸・大洗・那珂湊 
キロキロ キロ
参考文献 場所青森県八戸 
シンジュ
参考青森県水産技術センター 場所青森県深浦・鰺ヶ沢 
ワタリアブラメ
備考産卵期のものをいうのではないか? 参考文献 場所青森県龍飛 
ベロ
参考文献 場所静岡県静浦 
モヨ
参考文献 場所鳥取県岩美町浦富 
モズ モヅ
参考文献 場所鳥取県米子、島根県出雲市今市 
シジュウモズ
参考文献 場所鳥取県赤崎 
アブラコ
場所北海道、青森県下北 
アブラメ[油目]
場所青森県むつ市大畑、大阪、兵庫県明石、徳島 
オキシンジョウ
場所富山県氷見市藪田浦漁業協同組合 
シジュウ[四十]
場所新潟、秋田、京都府 
シジョウ
場所北海道函館、山形県、新潟県上越市、秋田、京都府 
シンジョ
参考文献 場所秋田県男鹿、山形県鶴岡市由良漁港、福井県鷹巣 
ツムギ
サイズ / 時期若魚 場所兵庫県明石市、徳島県阿南市 
ネウオ ネエウオ[根魚] ネエオ
参考『石巻の四季のさかな』(石巻魚市場株式会社) 場所宮城県石巻市ほか東北 
ノソ
場所愛知県佐久島 
モミダネウシナイ[籾種失]
備考広島県ではうますぎて来年の田植え用の種まで食べてしまうということで。 場所広島県 
ビールビン[ビール瓶] イッショウビン[一升瓶]
備考【出世魚】30cm超えをビールビン(ビール瓶)。40cm以上をイッショウビン(一升瓶)。 場所関東の釣り師 
アブラジャコ サイズ / 時期3~4cm 
コゼッポ サイズ / 時期10cm前後 
アブラメ サイズ / 時期それ以上30cm未満 
ポン サイズ / 時期30cm以上 
備考【出世魚】出世魚で春先にとれる3~4cmくらいをアブラジャコ、10cmゼンゴに成長したものをコゼッポ、それ以上30cm未満をアブラメ、30cm以上をポンという。 場所兵庫県明石市 
ワガ
参考文献 場所愛知県知多