202311/20掲載

晩秋かと思ったら冬到来、今季初へそでへそ焼きを作る

知らない人が見たら不気味かも

ボラの幽門部

11月13日から11月19日の1週間で食べた、水産生物のなかでもっとも印象深かった、ウマスギをば。今回は非常に地味ものとあいなる。
秋になると日本各地でボラ漁が始まる。お目当てはボラ自体ではなく卵巣である。唐墨を作るためにとるボラだが、このボラサイズ、トドサイズのボラは非常に脂が乗っていておいしいのである。ボクはこの本体の行方が気になって仕方がない。昔、相模湾平塚などでは産卵個体をとる刺網があり、本体は安く買えたが、今はどうなんだろう。
高度成長期以来、売れない魚の代表的なボラではあるが、江戸時代など上物でもありながら、庶民にも手が届くものでもあり、老若男女に好まれて引っ張りだこだった。
今や、秋から初春にかけての産卵回遊する個体をとる専門の漁はあるが、周年日本周辺を泳いでいる近所のボラをとろうなんて人はいないはずである。
昔は千葉県浦安の沖合いで養殖まで行われていたのに、今では東京都内では水路を群れ泳ぐ謎の魚とかしている。東京都中央区日本橋から日本橋川を泳ぐボラを見る大勢の人の何人ぐらいが、この魚を食べたことがあるのか、と思ったことがあるが、まずいないと思う。
さて、秋になると卵巣、白子、ときどき「へそ(臼/うすとも)」が市場にやってくる。残念ではあるが本体はまったく姿を見せない。
さて、八王子総合卸売センター、福泉にボラの「へそ」がやってきていた。唐墨材料である卵巣にも秋を感じるが、副産物である「へそ」にだって秋、もしくは冬近しを感じる。

油はいらない、とにかく熱い鉄鍋に押しつける

鉄鍋で煎る

今回のものは兵庫県淡路産である。愛知県産も見ているが、「へそ」へその産地は関西以西に多い気がする。
見た目がそろばんの玉のような形をしているので、そのものずばり「そろばん玉」などともいう。西日本では料理人にとって、いたって普通の食材だが、意外に関東では馴染みがない。
ボクの故郷、徳島でも普通なので、帰郷したら必ず買う。関西などでも同様。当然、地元八王子の市場で見つけると欣喜雀躍って感じになる。
さて、持ち帰ったらいの一番に輪になっているので、1カ所を截断して開く。
塩をまぶして揉み洗いする。これでヌメリや微少な泥などが落ちる。
水分をよく切って、後は食べたいだけ料理する。
料理すると言っても時間にして数分以下だ。
より細かく切れ目をつんつん入れながら切り、ふたたび水分をきる。
これを熱した鉄鍋に押し当ててキュウキュウと鳴かせる。

少しだけつけ込んで置く、漬け込みすぎてはいけない

ボラのへそを焼きびたす

終始強火で焼いて、酒と醤油を合わせた中に放り込む。
山椒を加えて少し寝かせるが、その間に酒でも用意しよう。

小鉢にほんの少しでもインパクトありの酒のつまみになる

ボラのへその焼き浸し

安くなった柚子を数滴振って、小鉢に盛ったら出来上がり。
食感は砂肝に近い。
しこしこと噛めば噛むほどうま味がにじみ出てくる。
これがやたらに酒に合う。
ボラは泥に関わりが深いので、酒泥棒と呼びたい。

このコラムに関係する種

ボラのサムネイル写真
ボラFlathead gray mullet, 밀치沿岸の浅場、河川汽水域、淡水域。オホーツク海をのぞく北海道〜九州南岸の日本海・東シナ海・太平洋沿岸、瀬戸内海、種子島・・・・・
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