202402/25掲載

錦江湾、寒トドの味は別格以上

腹が丸い錦江湾のトド

トド,ボラ

できるだけ大きなボラを探している。こんなときに頼りになるのが、鹿児島市の田中積さんである。
鹿児島の魚と言ったら田中水産といった会社で、すぐに錦江湾で揚がったばかりの寒トドを送ってくれた。
ボクにとっては未知のサイズである。普通、魚の味は見ただけで想像がつくことが多いのだが、この2㎏上ばかりは勝手が違った。
ボラは熱帯域を除く世界中の海域に生息している。世界中で食べられているといってもいいだろう。庶民生活の記録されはじめた江戸時代には明らかに高級魚であり、ときに贈答用にも使われていた。
汽水域や内湾にいるおいしい魚が食卓から消えたのは、川と海の汚染のせいである。いまだに臭味のあるボラがいるけれど、きれいな水域のボラに臭味はない。
ボラを食べるたびにこの国の水域のことを考える。

刺身が室温で涙を潤ませる

トドの刺身

さて、驚いたことに、鱗を引くと鱗下の皮がぬめっととするのである。ボラの特徴は皮に厚みがあることだが、切り身にするとその分厚い皮下に透明な脂の層が見えた。白い層は見た事があるが、こんなのは初めてかも知れない。
とりあえずは水洗いして三枚に下ろして皮を引き、背側を刺身にする。
驚いたのは刺身の表面が泣いたように濡れ始めたではないか。
これが透明な脂の正体である。
醤油をつけずに口に入れたら、臭味がないのは当然として、脂の口溶け感の中にボラ特有の川魚のいい意味での風味がある。
この独特の風味が苦手なら、通常通りわさびをつければ大丈夫。
醤油をつけない刺身に感動する方が変かもわからない。

湯引いた皮がこんなにうまいとは

トドの湯引き

腹側は皮付きのまま、湯をくぐらせる。
氷水にとって水分をよく切る。
これを切りつける。
全体の味のボリュームはこちらに軍配が上がる。
とにかく皮が非常にうまい。
半生の皮は皮のうま味だけではなく、皮の裏側にも独特の風味の層が感じられる。
身(筋肉)はまったくくせがなく、後味が軽い。
ひょっとしたら、ボラの評価が低いと何度も行っているボクは、考えが甘かったのかも知れない。
ボラももっと高くていいけれど、トドはもっともっと値を上げてもいい。
鹿児島県鹿児島市、田中水産
http://tanakasuisan-kagoshima.com/

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ボラのサムネイル写真
ボラFlathead gray mullet, 밀치沿岸の浅場、河川汽水域、淡水域。オホーツク海をのぞく北海道〜九州南岸の日本海・東シナ海・太平洋沿岸、瀬戸内海、種子島・・・・・
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