202406/02掲載

北海道産アカホヤの色は限りなくマゼンタ

少しブラックが入るけど赤々強い


田中小実昌(1925-2000)の文章が味わえるようになったとき、自分の文章読力が上がったな、と思ったものだ。文字を真面目に追っていくと、非常に稚拙であったり、どこにも修辞を感じられなかったり。無造作にほうり投げた文章の中にいろんな事象が散らばっていたりする。とりとめがなく、結句がない。
山口瞳とは両極端にある。中学生にとっても面白くて仕方がなかった山口瞳的脳みそで田中小実昌を読むとは大変なことになる。
今、枕周りに四五十冊の本が散らばっているが、昨日手に取った田中小実昌に、
〈ホヤは北のほうにいくほど、ピンクに近い色だ。それが西(南)に下るにつれて色がうすれ、仙台湾あたりでは、ほとんど砂色だ。〉『ほろよい味の旅』(田中小実昌 中公文庫 単行本1988)
という文章がある。

マボヤと比べると入荷量は非常に少ない


国内で流通するホヤはマボヤ、アカボヤの2種で、圧倒的にマボヤが多く、アカボヤはさほど多くない。アカホヤはマゼンタそのもの。仙台湾の砂色はともかく、マボヤの色は基本的に黄が混ざり、南西にいくと色あせてくる。もちろん田中小実昌が動物の地域差がわかっているとは思えないが、色の違いには気づいていたことになる。また、思春期に広島県呉市にいたので、瀬戸内海のマボヤを見ていた可能性もある。

持ち味は食感で、ほどよい苦味、甘味もそれほど強くない


アカボヤは北海道道太平洋・オホーツク海特産で、マボヤと比べるとほんの少し、食感が強く、味が淡泊である。
このところマボヤ、アカボヤが代わりばんこにやってくる。
ホヤの季節到来といった感じである。
マボヤの口中に残る渋味を楽しみ、こんどはアカボヤの爽やかな味を楽しむという代わりばんこの楽しみ方で、6月のホヤ生活を送りたいと考えている。

このコラムに関係する種

マボヤのサムネイル写真
マボヤ英名/Sea squirt 韓国/멍게海水生。九州北部、瀬戸内海、日本海、三河湾以北の太平洋側、北海道。朝鮮半島、黄海、山東半島。・・・・
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アカボヤのサムネイル写真
アカボヤ海水生。潮下帯の砂礫地。本種が「大発生してホタテガイ漁業の障害になった」『新北のさかなたち』(水島敏博、鳥澤雅他 北海道・・・・
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