202406/01掲載

医者いらずのナスとカツオの血合いで惣菜

酒の肴よりもご飯の友を作る方が楽しい


書籍の整理をしていて、坪内祐三の1冊に足を取られてはかが行かない。神保町の人生劇場の前で一度だけすれ違っている。あっと思ったのはボクの方だけで、それだけのことだけど、この若き文芸評論家の死が返す返すも残念でならない。
ページをめくっている内に、脳みそが慶応3年生まれの正岡子規の世界に持って行かれている。子規のまざまざとした表現力は天成の明るさから来るものなか、とか、明治27年からのこととか、いろいろ思っている内に疲れてきた。
我が家にあるはずの子規の書籍を探したら、どうしても見つからない。書籍を処分するつもりが岩波文庫を大量に買うはめになる。
子規が脳みそにへばりついて離れないので、故人を偲び、大好きだった堅魚の刺身を作り、残りは医者いらずのナスと合わせてご飯の友を作った。
最近、惣菜作りが非常に楽しい。
その日、八王子綜合卸売センター、八百角のバアチャンに、「なすの医者いらず」という諺を教わる。あんなへなへなした味の野菜に薬効があると思えないけど、90近くのバアチャンの言うことなので説得力がある。
カツオを買うと、血合いは「みそたたき(なめろう)」とか煮つけにしてしまうが、たまには思いつき料理を作ってみることにした。
血合いは骨ごと細かくたたく。
少量のみそとしょうが、水溶きの小麦粉を合わせて、ふたたび徹底的にたたく。
ナスは適当に切り、水に放っておく。
ナスの水分を切り、油通しをする。
血合いをたたいたものは香ばしく揚げる。
鍋に酒・みりん・水を合わせて煮立て、アルコールを煮切る。
醤油、化学調味料、下ろしにんにく、八角3分の1くらいを合わせて、甘辛味をみて味加減する。
少し煮つめた中にナスと、血合いたたきを加えてからめ、火を止めて、粗挽き黒コショウを振る。
あっと言う間の一品なのだけど文字にすると面倒くさそうなのはなぜだろう。
これを常備菜として保存。
折々にご飯の友とする。
この甘辛醤油味、八角風味にカツオとナスという組み合わせは、ご飯にとって最良の夫かも知れない。
どことなく新婚家庭のように、忙しいうまさである。
岐阜の三千盛の肴としてが、やはり酒とは縁がない。

このコラムに関係する種

カツオのサムネイル写真
カツオStriped tuna, Skipjack tuna, Oceanic bonito海水魚。日本近海。本州以南にいる。日本海には昔は少なかったが2023年時には増えつつある。朝鮮半島南岸、済州島。世界・・・・
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