日常的な塩蔵品の塩かつおは矢鱈にうまい
ケの日に食べる、塩かつおは家庭でも作れる

静岡県西伊豆で年越しに食べられていた「塩かつお」は、「潮かつお」とも書かれ、11月になると丸のままの姿で塩漬けにし、干し上げたもの。単なる塩蔵品ではなく、干すという工程が入る。
もうひとつの、より一般的な「塩かつお」がある。こちらはカツオの半身、もしくは切り身の塩漬け(塩蔵品)である。
静岡・関東・東北だけではなく全国で作られていた可能性が高い。聞取をすると関東では日常的なおかずだったようだ。
関東、静岡県では「塩かつお(塩がつお)」、宮城県石巻で「かつおのだぶ漬け」、気仙沼で「かつおの塩引き」という。
カツオの産地での「塩かつお」の呼び名はもっとたくさんあると考えているので、ご存じの方がいらしたら教えて頂きたい。
静岡県西伊豆で年末に作られていた「塩かつお」がハレの加工品だとしたら、カツオの産地で長年作られていた「塩かつお」はケの加工品である。
思い切って大量に塩をまぶしつける

3月28日、八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産で買い求めたで鹿児島県産カツオで「塩かつお」を作ってみた。
作り方は簡単である。
今回は半身で作ったが切り身で作ってもいい。切り身の方がより簡単に、より短時間で作れる。
バットなどに大量の塩(安い塩でいい)を敷いて、半身をべたっとつける。これを何回か返して、まんべんなく塩をまぶす。時間がたつと水分が出てくるので、なんどかひっくり返して、またそのまま置く。
これを2〜4日間続ける。切り身で作ると丸々1日くらいでいい。
短期間で作るので見た目もきれいだ

完全に塩が馴染んだら、表面の塩を流水で洗い流す。
表面の塩分が少なくなると、中心部分の塩がまた表面に上がってきて、より塩分が均質化すると思っている。
水分をよく拭き取り、ビニールに密閉して1週間程度寝かせる。
ビニールから出し、表面の水分をまた拭き取り、好みの厚みに切る。
あとは焼くだけ。
表面の香ばしさは例えようがない

我が家で作るものは塩分少なめだ。焼いても表面に塩は浮かんで来ない。
今回のカツオは思った以上に脂がのっていた。表面が狐色にコーティングされているのは脂のせいである。
そのまま食べて、酒をやるのもいいし、ご飯を食べてもいい。
カツオは塩漬けにして寝かせると、酸味が薄くなり、うま味がより複雑化する。しかもどことなく甘いと感じるのが不思議である。まろやかになっていると表現すべきかも。