10月、釧路産ハタハタを湯煮にする
ハタハタは焼くか煮るかで、まずは煮る

台風が2つ通り過ぎたのもあって、八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産の店頭にはめぼしい魚が少ない中に、台風の影響を受けなかった北海道ものがそれなりにある。
いきなり目に飛び込んできた釧路産ハタハタを、いきなり袋をちぎって、いきなり確保する。
これを夜、湯煮にする。
「湯煮」とは液体でゆっくり魚などに火を通す料理法で、言語自体は北海道道東からオホーツク海のもの。
山形県庄内では「湯上げ」である。
なぜ、「湯煮」としたかというと根室市であった釧路町の方に「道東では「『めんめ(キチジ)』を『湯煮』にすることが多いがハタハタでも作る」と聞取しているからだ。
このあたり釧路市、釧路町、厚岸町に行って調べたいものだと思っているが果たせていない。
ちなみに今回、「湯煮」を使ったのは根室での聞取があったためで、無闇に料理名を当てはめるべきではない。
フレンチではポシェに近いもので、熱を通す本体からできるだけうま味、というかエキスを煮汁に放出しない、ための料理法だ。
今回はズボ抜きして、そのまま水からゆっくり火を通し、あくをすくいながらことこと15分くらい煮たもの。
ハタハタ、キチジはきれいな魚なので湯通しは無用。
これを高知県土佐市『白木果樹園』の「ぶしゅかん(モチユ)」と醤油だけで食べる。
煮上がりにも果汁を落としているので酢みかんを使わない北海道の料理に酢みかんと、異色の取り合わせとなる。
真子と肝の味だけで値千金かも

非常に身離れがよく、この薄い皮と身に強い味がある。
豊かなうま味をともなっているのに、身が上質なので嫌みがない。
そして肝心なのは肝と真子(卵巣)である。
今年最初の「湯煮」なのにこれ以上望めない火の通し方ができた。
卵粒はあまり硬くなく、ねっとりとしている。
食感がいいだけではなく、強いうま味があるのがハタハタの真子のよさである。
汁は単調な味だが、「ぶしゅかん(モチユ)」の酸味と香りが引き締まった味に変化させている。
煮汁ごとほとんど食べた後、最後に肝を食べると、また作りたくなるのが「湯煮」である。
合わせた酒は新潟市西区内野町の「鶴の友 別撰」。