コノシロ
代表的な呼び名コハダ
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珍魚度・珍しさ | ★★ 少し努力すれば手に入る |
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魚貝の物知り度 | ★★★ 知っていたら通人級 |
食べ物としての重要度 | ★★ 地域的、嗜好品的なもの |
味の評価度 | ★★★★ 非常に美味 |
分類 | 動物界脊椎動物門顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱真鰭区ニシン・鰾下区ニシン上目ニシン目ニシン科コノシロ亜科コノシロ属
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外国名 | Dotted gizzard shad
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学名 | Konosirus punctatus (Temminck and Schlegel, 1846)
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漢字・学名由来 | 漢字 鰶、子代 Konosiro Temminck コンラート・ヤコブ・テミンク Coenraad Jacob Temminck(1778-1858 オランダ) シュレーゲルとともにシーボルトの持ち帰った脊椎動物を整理、記載。『Fauna Japonica』(日本動物誌)を執筆。 Schlegel ヘルマン・シュレーゲル(Hermann Schlegel 1804-1884年)はドイツの動物学者。テミングとともにシーボルトの持ち帰った脊椎動物を整理、記載。『Fauna Japonica』(日本動物誌)を執筆。 |
地方名・市場名 |
概要
生息域
内湾、汽水域(河口域)。
北海道積丹半島南部〜津軽海峡東部・青森県八戸・岩手県大槌町・大船渡湾、仙台湾〜九州南岸の大平洋沿岸、瀬戸内海、新潟県〜九州南岸の日本海・東シナ海。
沿海州、朝鮮半島全沿岸、済州島、渤海、黄海、海南島までの中国東シナ海・南シナ海、台湾。
生態
内湾に棲息し、汽水域にも進入する。プランクトンや小型の甲殻類、珪藻などを食べている。
産卵期は九州では早く初春、そして初夏まで。
春には汽水域近くに大型のコノシロが群れている。
孵化は2、3日で初夏には新子と呼ばれる4センチ前後のものがとれはじめる。
寿命は3年ほど。
基本情報
日本各地の浅い内湾、汽水域に群れを作る。古代からの食用魚だ。
本種の若魚「こはだ」は東京では江戸時代以来、江戸前を代表する「光りもの」である。本来は江戸時代、握りずしの種を色合いと、酢でしめるという仕事をほどこす魚という意味合いから生まれた言葉だが、本種こそ光りものの中の光りものといった存在である。すし種でも欠かすことのできないもので、需要が高いので東京での価格が日本で一番高く、消費量も多いのではないかと思っている。
全国各地でとれるが、好んで食べる地域とあまり歓迎しない地域にわかれる。
関東、兵庫県瀬戸内海側、徳島県瀬戸内海、熊本県などで好まれる。また国内以上に韓国で食用魚として重要、養殖まで行われている。
残念なのは大型になると小骨が硬く、食べにくいこともあって需要がなくなり価格的にも急落すること。とてもおいしい魚なので実に残念。このおいしさをもっと多くの方に知って欲しい。
珍魚度 一般的な食用魚だ。ただしコノシロは食べるところと食べないところに分かれる。食べる地域は少ないので探すしかない。
水産基本情報
市場での評価 最近は「こはだ」は関西でも普通になってきているが、基本的に関東が本場。
首都圏の方が寿司屋が多いため、値が高い。関東の市場に入荷のない日はない。重要な魚である。
値段は6月前からの新子は非常に高く1キロあたり4万円〜11万円というのも珍しくない。
小鰭(こはだ)はやや高め、なかずみになると値が下がり、コノシロサイズは非常に安い。(サイズに関しては市部名・地方名を参照)
●20120709 4グラム前後 4枚から5枚づけ キロ22000円
●20120709 3枚、2枚づけ キロ18000〜90000円
漁法 刺し網、投網、すくい網、定置網
産地 鹿児島県、静岡県、熊本県、大阪府、愛知県、千葉県
選び方・食べ方・その他
選び方
銀色に光っているもの。触って硬いもの。目が赤くないもの。
味わい
旬は秋から冬
ただし大きさによって別種の味わいがあるので、夏の産卵後をのぞくといつでもうまい。
白身で旨味の強い味わい深い魚。難点は小骨の多さだが、工夫次第で一品となる。
普通酢締めにすることが多い。すしネタとしては生酢で、関西などでは甘酢に漬け込む。
関東では生まれてすぐの新子からなかずみ(現在では18センチ前後)までをよしとし、骨が気になるコノシロを嫌う。
ただし大きくなったコノシロは旨みが強く、本当はいちばんうまい。
卵巣・精巣はとても美味。
栄養
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危険性など
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食べ方・料理法・作り方
好んで食べる地域・名物料理
「鰶のすし」 兵庫県姫路市。市内では、たくさんの祭りが10月に行われる。秋は祭のシーズンなのである。なかでも松原八幡神社秋の例大祭(通称「けんか祭」)など姫路の祭につきものなのが、「鰶のすし」。独特の開き方をしたコノシロが売られている。大きさは関東では考えられない「コノシロサイズで190グラム〜200グラム、体長25センチ前後だ。酢じめにして家庭家庭ですしが作られる。
なます 福岡県福岡市・北九州市小倉。大根、ニンジンと甘酢で和えてなますにする。博多湾周辺では、神社の祭祀の直会やお寺のお斎(おとき)で紅白なます(コノシロ入り)がでる。
加工品・名産品
釣り情報
堤防(波止)から浮木を使ってアミエサで釣る。
歴史・ことわざなど
■ 「子供が生まれても死んでしまうという家で、その胞衣(えな 胎盤など)とともにコノシロを地の中に埋めると、その子は丈夫に育つという。その子は生涯コノシロを食べてはいけない」
この城 「武士は“このしろ”は〈この城〉に通じるところから食べなかった」
親の借金 福岡県福岡市博多ではコノシロのことを「親の借金、子の代」としゃれて言う。『ごりょんさんの台所』(長尾トリ 明治42/1909年生まれ 葦書房)
将軍の禁忌食 徳川将軍に出してはいけない魚貝類。
鰶魚(コノシロ)、こはだ、秋刀魚、鰯、鮪、鮫、ふぐ、胡沙魚(アイサメ)、鯥、あかえい、撥尾魚(いな)、鯰、鰌、鮒、干もの類 『江戸の食空間』(大久保洋子 講談社学術文庫 2012)
切腹魚 〈切腹魚といって、武士の切腹の時に使われたタメ嫌われた〉田中茂穂『日本魚類図鑑』
こはだの天ぷら 「小平次を竹槍で突く天麩羅屋」。小平次とは小幡(こはだ)小平次のことで鶴屋南北の歌舞伎演目などの登場人物。どちらかというと才能のない小物的な歌舞伎役者で惨殺されて化けて出るようになる。ようするに「(安い種である)こはだを串に刺している天麩羅屋」ということで江戸時代コノシロ(こはだ)を天麩羅だねにしていた証拠となる。
こはだの天ぷら 日本橋にある和菓子店『榮太樓』主人の著書に「三越呉服店」の夕食の献立に「こはだの天ぷら」がある。『江戸っ子菓子屋のおつまみ噺』(細田安兵衛 慶応大学出版会)
バッテラ 大阪のバッテラは当初はコノシロのすしだった。大阪市内順慶町「うお常」が明治26年に大阪湾で豊漁だった格安のコノシロを使って小舟(バッテーラ)の形につくった押しずし。
紋日・祝祭日などの食物「魚ずし」 〈秋の産土祭の時に少しつくられた貴重食であったが、1955年(昭和30年)頃から物が多く出まわり、ほとんどの家庭でつくられるようになった。材料は「さば」または「あじ」(二枚にひらいて塩漬けにしたもの)であるが、一部に「ぼうぜ(イボダイ)」「このしろ」などを使う〉[徳島県美馬郡一宇村(現つるぎ町一宇)]。
地方名・市場名
備考和歌山県では五寸以上、クロサギなどと混同して。 参考日比野友亮さん、『高知の魚名集』(岡林正十郎 リーブル出版)、『種子島の釣魚図鑑』(鏑木紘一 たましだ舎 2016年) 場所三重県志摩市和具、和歌山県、高知県一切・大津・三崎・志和、鹿児島県種子島
備考築地に送ることから。 参考日比野友亮 場所佐賀県藤津郡太良町
参考文献 場所兵庫県神戸
サイズ / 時期小型 参考文献 場所兵庫県神戸市駒ヶ林
サイズ / 時期極小 参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 場所和歌山県周参見
サイズ / 時期3cm-6cm 備考〈一二寸位のもの〉 参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 場所和歌山県湯浅
参考文献 場所大阪
サイズ / 時期若魚 参考文献 場所大阪、兵庫県神戸
参考文献 場所広島県旧安芸郡
参考文献 場所愛知県豊橋市外大崎町
参考文献 場所有明海
参考文献 場所東京
備考東京では4cmくらいのもの。高知県では6cmくらい。 参考文献 場所東京、高知県浦戸
参考文献 場所石川県
参考文献 場所石川県七尾
参考文献 場所石川県木場潟・今江潟
参考文献 場所秋田県八郎潟
参考文献 場所高知県浦戸
参考文献 場所鳥取
参考文献 場所鳥取県米子
サイズ / 時期7、8cm~10cm 備考【出世魚】ただし実状は若干違う。和歌山県では〈幼者〉、〈三寸〉。 参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929)、『寿司技術教科書』(旭屋出版) 場所和歌山県塩屋、関東
サイズ / 時期12cm~13cm 備考【出世魚】ただし実状は若干違う。 参考『寿司技術教科書』(旭屋出版) 場所関東周辺過去
サイズ / 時期10cmくらいまで 備考【出世魚】4cmほど(五枚づけ)から6cm前後(二枚づけ) 注):五枚づけとは、五匹で1かん、丸づけとは一匹で1かん。片身づけとは一匹で2かん(片身で一かん)ということ。古くはコハダであった。 場所東京都など関東周辺、愛知県
サイズ / 時期20cm前後まで 備考【出世魚】最近では。古くはコノシロ。 参考聞取 場所関東周辺
コノシロ
サイズ / 時期20cm以上 備考【出世魚】最近ではこのサイズ以上を言う。 参考聞取 場所関東周辺
サイズ / 時期中型・小型魚 備考中型・小型魚。 参考佐藤厚さん、『木曽川の魚 河川魚相生態学・中下流篇』(丹羽彌 大衆書房 1967) 場所愛知県、三重県桑名市伊曽島、岡山県、長崎県雲仙市小浜
オオイタ サイズ / 時期大型
備考【出世魚】 場所愛知県
場所三重県、和歌山県、瀬戸内海、徳島県
参考文献 場所静岡県浜名湖
サイズ / 時期4cm~5cm 備考【出世魚】 ただし実状は若干違う。 参考『寿司技術教科書』(旭屋出版)
コノシロ
サイズ / 時期15cm以上 備考【出世魚】ただし実状は若干違う。 参考『寿司技術教科書』(旭屋出版)
コハダ[小鰭]
サイズ / 時期10cm~14cm 備考【出世魚】10cm(丸づけ)から、14cm(片身づけ)まで。古くはナカズミ。