202005/20掲載

西伊豆の潮かつお

西伊豆で作られている「塩かつお」

静岡県田子の潮かつお

静岡県伊豆半島西岸、カツオ漁の基地であった田子、安良里で、盛んに作られていたのが「潮かつお」だ。
カツオの内臓を取り、丸ごとを塩漬けにして寝かせ、干し上げたもので、保存性がただの塩蔵品よりも高い。
秋に塩につけ込んで干し、暮れには出来上がるのだが、生ハムのように独特の風味が生まれ、ものによってはスライスして生でも食べられる。西伊豆ではこれを正月飾りに使う。
西伊豆から沼津周辺までの地域ではハレの日に食べるもので、年取・正月魚の代表的なものであった。
塩蔵して干すという工程があり、明らかに冬の保存食の意味合いがあったものと考えられる。
この干しの工程のあるものとは別により手軽に作れる「塩がつお」もある。浜に揚がったカツオ(サバ科のソウダガツオ類やハガツオなどでも作られている)、もしくは比較的近くの都市部に送られていた。干しの工程のあるよりもより日常的な味のものである。東北太平洋側、伊豆半島周辺、紀伊半島で作られているものでカツオだけではなくハガツオ、ヒラソウダなどでも作られていた。

西伊豆安良里のハガツオの「潮かつお」


西伊豆安良里ではハガツオの「潮かつお」も作られていた。安良里の魚武水産が作っていたもので名品中の名品であった。
よほど新鮮なものを使っているためか苦みやえぐみは皆無だったのも印象的で、生で生ハムのような独特の風味があり、焼いても最上級の味であった。

「潮かつお」の食べ方 生

生潮がつお

鮮度のいいカツオやハガツオを使った「潮かつお」はスライスして生で食べてもいい。
塩分濃度が強いのでできる限り薄くスライスして柑橘類などを振って食べる。
魚のうま味成分に熟成した味が加わってとても味わい深い。

「潮かつお」の食べ方 焼く


焼いて食べるのが基本である。塩分濃度が強いので薄くスライスして焼く。これで十分ご飯が食べられる。
米食が基本であった昔はご飯のおかずこそが魚に求められていたものである。1個体丸々買うと高価であるが、何ヶ月もの間食い繋ぐことができる。この削り取るように食べるものでも、動物たんぱくをわずかしか摂らなかった昔は贅沢であったのだと思う。
これなど塩ザケ、塩マスなども同じである。長野県などでは塩辛い塩ザケは贅沢なものであった。

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