旬は冬。
赤身魚のひとつ。
鱗は前方だけにあり、硬い。皮は薄く弱い。骨はあまり硬くない。
黄色みを帯びた赤身で血合いはやや大きい。熱を通すとやや硬く締まる。
赤身とは マグロ族の魚(マグロ属/クロマグロ、タイセイヨウクロマグロ、タイセイヨウマグロ[Thunnus atlanticus (Lesson, 1831) : Blackfin tuna/一般的ではない] )、ミナミマグロ、メバチマグロ、キハダマグロ、コシナガ、ビンナガマグロ ソウダ属/マルソウダ、ヒラソウダ スマ属/スマ カツオ属/カツオ) および、カジキ類のシロカジキ、マカジキ、バショウカジキのこと。これにあえて加えるならカマスサワラかも。
ビンナガマグロの料理法/生(刺身、たたき、づけ、カルパッチョ、セビチェ、マリネー)、汁(ねぎま汁、潮汁、みそ汁)、煮る(コンフィ、煮食い、魚すき、がね炊き、佃煮)、揚げる(フライ、唐揚げ)、焼く(腹も)
ビンナガマグロの刺身 ビンナガは大きいほど味がいい。またインド洋などのものは脂が少なく、本州の東沖、三陸などで揚がるものの方が脂があるようである。宮城県気仙沼産の比較的脂がある背の部分を刺身にしてみた。
三枚に下ろして背と腹に分けて、皮を引く。今回のものは70cmほどなので、マグロのように体に対して平行に切り分ける必要はない。
思った以上に脂があり、口溶け感が感じられる。マグロ属特有の酸味はほどんとなく、赤身のおいしさが堪能できる。
小ビンナガの皮付き刺身 全身鱗があるものの弱い。小型は鱗をそのままに刺身にしても気にならない。水洗いして三枚に下ろし腹骨を取り、腹と背に分ける。腹側をやや薄めに切りつける。特小と呼ばれる50cm弱なのに身に甘味とうま味があり、皮に独特の風味が感じられる。非常にうまい。
ビンナガマグロのやまかけ サイコロ状に切ったビンナガマグロの身を生じょうゆに数分つけ込む。余分なしょうゆをペーパータオルで取り、へらいも(岩手県大槌町のやまいも)をすってかける。やまいもの甘さと味わいとマグロの酸味がとても相性がいい。
ビンナガマグロのカルパッチョ あまり脂ののっていないものは薄く切り、カルパッチョにする。皿ににんにくの風味をつけてオリーブオイルを敷き薄切りを並べる。塩コショウして上から叩き、香りのある野菜、ハーブを並べ、柑橘類などを搾る。
ビンナガマグロの焼きづけ 4分の一の背部分を皮付きのままあぶる。これを冷たく冷やした、地(醤油・煮きりみりん・煮切り、酒に強い人ばかりなら煮切る必要はない)の地に半日から一日つけ込む。わさびよりもからしほ方が合う。
ビンナガマグロのポケ(ポキ) ハワイで切り身を「ポケ(poke ポキと発音することも)」という。生の切り身と野菜を合わせて味つけしたもの。材料、調味料などに厳密な定義はなく、要するに小振りに切った刺身(サイコロ状がきれい)に野菜などを合わせて、しょうゆでも塩でもなんでいいので味つけする。生魚入りのサラダのようなものでもあり、マリネのようなものでもある。
ビンナガの冊を小さく切る。これを好みの野菜(ここではミニトマト、玉ねぎ、小ネギ)と合わせて、ごま油と醤油で和えた。
ビンナガマグロのマリネサラダ 刺身になる冊を、白ワインビネガー、砂糖、塩、クールブイヨンを煮つめて地を作り、マリネする。これに適当に切り、レモン、塩で味つけしたセロリ、アボカドを合わせてコショウを振り混ぜる。味見して塩を加えるなどする。
ビンナガマグロの刺身、酢みそ 刺身といえばわさび醤油やしょうが醤油ではなく、本種などあっさりした魚には酢みそでもいい。沖縄などで刺身を買うと酢みそがついてくる。また辛子を加えて辛子酢みそというのもおすすめである。
ビンナガマグロの魚すき(へか焼き、煮ぐい) 脂ののった部分を適当に切り身にして、すき焼きの地(しょうゆ・酒・砂糖・水、すき焼きのタレでもいい)の地で煮ながら食べる。島根県大田市ではこれにコンニャクを入れる。この煮染まったコンニャクが素晴らしい味になる。
ビンナガマグロの煮つけ あっさりした味わいで火を通すと締まるので煮方にはコツがいる。切り身を湯通しして冷水に落とし、霜降りにし、水分をよく切る。鍋に酒・みりん・醤油(甘いのが好きなら砂糖)・水を煮立てた中で短時間煮る。中まで煮染まらないようにし、煮汁とからめながら食べる。
ビン長マグロのコンフィ かたまりに塩コショウ、ハーブ類をまぶして1日寝かせる。これを低温のオリーブオイルで煮て、そのまま1日寝かせたもの。漬け込んだオイルと食べてもいいし、マヨネーズで食べてもいい。白ワインに好相性。
ビンナガマグロのカツレツ 比較的脂ののったビンナガマグロをフライにすると実にうまいが、普通のものをフライにすると硬く締まっておいしくない。ここではバターでじっくり焼き上げる。切り身にして塩コショウして、小麦粉をつけ、溶き卵にからめパン粉をつけて、多めのバターもしくはマーガリンでソテーする。
ビンナガマグロの味つけ天ぷら 脂のないものを単に揚げてもおいしくない。ここでは沖縄や長崎のように、塩コショウして、味のついた衣で揚げた。切り身に塩コショウする。衣は小麦粉・少量のマヨネーズ・塩・砂糖・水をつけて揚げる。衣は厚めがいい。意外にご飯のおかずになり、冷めてもおいしい。
ビンナガマグロの竜田揚げ 水洗いして三枚に下ろし、背と腹を分けるとき出る、血合いの周辺を使う。血合いは適宜に切り、しょうゆ、みりん、にんにく、コショウの地につけ込む。水分をよくきり、片栗粉をまぶして揚げる。少々淡泊なので濃いめの味つけがいい。
ビンナガマグロのムニエル 脂の乗ったものの方がおいしいが、脂のないものでも工夫次第でおいしい。切り身に塩コショウする。小麦粉をまぶして多めの油でソテーする。仕上げにバターで風味づける。このバターの香りと風味で淡泊なビンナガマグロが別の味わいになる。
ビンナガマグロのねぎま汁 脂がのったものが手に入ったらクロマグロ同様に「なぎま(ねぎとマグロ)汁」、「ねぎま鍋」が作れる。しょうゆ・酒・みりん・水で割り下で、適宜に切ったビンナガマグロとネギを煮る。濃厚そうに見えるが、後口のいい汁。
ビンナガマグロのみそ汁 あらが手に入ったら作るといい。あらは適当に切る。湯通しして冷水に落として、水分をきり、水から煮出してみそを溶く。汁の味がもの足りなかったら化学調味料などを使ってもいい。ややあっさりした味わいで嫌みがない。
ビンナガマグロの幽庵焼き 脂ののったものが手に入ったら焼きものにしてもうまい。切り身にして祐庵地(酒・みりん・醤油同割り)に2時間以上つける。水分をよくきり、焦がさないようにじっくりと焼き上げる。ちょっと飽きが来やすい味わいであるが、番頭などに少し入っていると魅力的だと思う。
ビンナガマグロの腹も干し 大型の腹もは産地では干ものにもなり、また生でも売っていたりする。比較的脂が乗っている部分なので焼いても硬く締まることがない。腹もに振り塩をする。1時間以上寝かせて、表面に出て来た水分をきり、じっくり焼き上げる。
ビンナガマグロの西京焼き 脂ののったものが手に入ったら、みそと合わせて焼きものにしてもいい。振り塩をして、1時間以上寝かせて、出て来た水分を拭き取り、白みそとみりんの時につけ込む。一日以上漬けて、じっくり焦がさないように焼き上げる。少し硬く締まるがお弁当などには最適。
ビンナガマグロの胃袋湯引き 三陸、紀伊半島などの産地などに行くと売っているのが胃袋など内臓。これを産地では湯引きにして辛子酢味噌で食べる。意外にうま味が強く、歯ごたえもいい。部分部分での味の違いがあって楽しい。
ぬた 三重県鈴鹿など伊勢平野では「しび」のぬたを作る。
ビン長マグロのひゅうが 大分県津久見市の郷土料理。マグロ類をすりごま、しょうゆ、みりんなどの地につけ込んで、少し置き、ご飯にのせて食べる。茶漬けにしてもいい。
ビンチョウの刺身 徳島県海部郡海陽町宍喰町竹ヶ島はマグロ漁師の島。島には何艘ものマグロ船がある。マグロ類は好んで食べられているが、新鮮なビンナガマグロの刺身がとりわけうまいとされている。
とんぼしびの心臓 産地のスーパーでしばしば見かけるのが内臓である。心臓はそのまま塩ゆでしたり、醤油で煮て食べたりする。ブタの腎臓を思わせる味わいで、好みの分かれるところだが、おいしいと思っている。
ビントロ ビンナガマグロの「びん」とトロを合わせた呼び名。ビンナガマグロには中トロや大トロはないが、非常に脂ののった時期があり、これをフィレにして急速冷凍したものをいう。
なまり節
そのまま食べる 二等分、もしくは4当分した身をボイルし乾かしたもの。半生状態でこのまま食べてもいいし、煮ものなどに使ってもいいだしが出る。カツオ、ソウダガツオよりもさっぱりしている。静岡県、三重県、和歌山県などで見かける。[小石商店 静岡県焼津市]
なまり節
ビンチョウマグロのなまり節と野菜の煮もの そのままあぶって食べてもいいが、煮物に使うことが多い。適当に切り、季節の根菜類やささげなどと煮て惣菜とする。
干物
とんぼしびみりん干し 三重県、和歌山県で作られているもので、比較的スーパーなどでもよく見かける。しょうゆ、砂糖、みりんで味つけした切り身を干したもの。焼いても硬く締まらず、総菜として優れている。[魚鉄商店 三重県尾鷲市、松屋水産 三重県熊野市]
ツナ缶/ホワイトミート ツナ缶の原材料の代表的なもののひとつ。一般的にツナ缶に使われるのはライトミートと呼ばれるキハダマグロ、カツオ。ビンナガはホワイトミートと呼ばれている。
つな缶
ツナサンド 今やサンドイッチの定番的なもの。ツナ缶をほぐすか、フレークを使い、マヨネーズ、ゆで卵などを加えて作る。好みの野菜、玉ねぎやきゅうりなどを加えてもいい。
つな缶
そーみんチャンプルー 沖縄県ほどツナ缶の消費の多い地域はない。本州などでは1、2個購入するのが普通だが、沖縄では箱単位で買うことが当たり前だ。ソーミンチャンプルーは少し硬めにゆでた素麺と、ツナ缶、野菜などと炒めたものだ。